『愛の渦』『何者』で描く独特の人間模様。監督・三浦大輔の才能とは?

2017年7月6日更新

劇団「ポツドール」の主宰であり、現代の若者の生態や過激な描写を生々しく表現し、独特の人間模様を描く監督・三浦大輔。自ら手掛けた舞台・映画『愛の渦』、直木賞受賞作を映画化した『何者』など、衝撃作を生み出す才能に迫りたいと思います。

三浦大輔のプロフィール

三浦大輔

出典: enterstage.jp

三浦大輔は、北海道苫小牧市出身、1975年12月12日生まれの劇作家・演出家・映画監督。芸能事務所・マッシュに所属しており、劇団「ポツドール」を主宰、全本公演の脚本・演出を手掛けています。

1996年12月、早稲田大学演劇倶楽部10期生を中心に、自身作・演出の舞台で劇団「ポツドール」を旗揚げしました。劇団の自主制作・共同監督映画『はつこい』は、PFFアワード2003の審査員特別賞を受賞。2010年公開の映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』で、商業映画監督デビューを飾ります。

ポツドールの舞台『愛の渦』は、2014年に自らが脚本・監督を担当して映画化。2016年にはパルコ・プロデュースで作・演出を手掛けた『裏切りの街』をdTVでドラマ化するなど、監督としても才能を発揮しています。

朝井リョウの第148回直木賞受賞作を映画化した、2016年10月15日公開の『何者』でもメガホンを取りました。

劇団ポツドールを主宰

三浦大輔

出典: kyoto-ex.jp

三浦大輔が主宰する劇団「ポツドール」は、早稲田大学演劇倶楽部10期生を母体として、1996年に結成された演劇ユニット。三浦作・演出の舞台、『ブサイク~劣等感を抱きしめて!~』で旗揚げしました。

第4回公演『妻ぜめ』までは、演劇的に過剰なドラマ作りを得意としましたが、2000年7月の第5回公演『騎士クラブ』からは作風を一変。徹底的な”リアル”を追求した、『身体検査』・『メイク・ラブ』・『熱帯ビデオ』と共に「セミドキュメント4部作」と称され、注目を浴びるようになります。

全本公演の脚本・演出を務める中で、人間の性欲と正面から向かい合った『愛の渦』・『恋の渦』の「渦」シリーズ、『夢の城』での無言劇など。様々なアプローチから”リアリティーのある虚構”を描くようになり、「ポツドール」の公演だけでなく、外部プロデュース公演にも参加し幅広く活躍中です。

脚本・演出を手掛けた『恋の渦』が話題に

劇団ポツドール『恋の渦』

2006年11月29日よりTHEATER/TOPSにて上演された、ポツドール第15回公演『恋の渦』は、第13回公演『愛の渦』に続く「渦」シリーズ第2弾。4つの部屋を舞台に、合コンを機に集まった男女9人の本音と嘘が入り混じる恋愛の記録が綴られる、”ポツドール版ラブコメ”です。

ある同棲カップルのコウジとトモコは、友人のオサムと女の子を引き合わせようとホームパーティを企画することに。メンバーは紹介されたユウコの外見にがっかりしてしまい、微妙な空気のままお開きになります。

しかしそれぞれが帰宅した部屋では、下心と恋心が交錯し、本音と嘘が渦巻いていって・・・・・・。

映画『モテキ』の大根仁監督によって映画化

映画ワークショップ「シネマ☆インパクト」内の1企画として、初の長編監督映画『モテキ』などで注目された、大根仁監督による映画化もされています。

2013年3月30日からの「シネマ☆インパクト」で限定上映され、連日満席の上に追加上映も行われる大ヒットを記録。大反響を受けて、8月31日からは全国順次拡大ロードショーされました。スタッフ・キャストは顔合わせ1週間でクランクイン、さらに撮影期間はわずか4日など、様々な方面で話題になった作品です。

そうした事情がありつつも、第5回TAMA映画賞の特別賞などを受賞した本作。大根監督曰はく、無名の俳優を起用したのは”知らないからこそ感情移入しやすい”からなのだとか。三浦が恋愛バラエティ番組『あいのり』に着想を得ていたことにも触れ、近年でいう『テラスハウス』と同じだと語りました。

『愛の渦』で第50回岸田國士戯曲賞を受賞

劇団ポツドール『愛の渦』

舞台『愛の渦』は、2005年にポツドール第13回公演という形で初演され、翌年に第50回岸田國士戯曲賞を受賞した作品です。2009年に一部キャストを入れ替えて再演、2013年11月からは”欧州公演2013”としてフランスでも上演し、国内外で高い評価を得ました。

本作の主人公は、高級マンションの一室にある”裏風俗店”で、午前0~5時に開かれる乱交パーティを目的として集った見ず知らずの男女10人。それぞれが”愛のない行為”に至るまでの経緯、過激かつリアルな会話と描写を通して、人間の性欲に真っ向から挑んだ会話劇です。

三浦は『愛の渦』が岸田國士戯曲賞を受賞し、高く評価されたことについて

『愛の渦』の戯曲は稽古のプロセスで書き直して、最終的にできたものを上演台本として提出したので、稽古の中でつくりあげたものが全部入っているんです。だから演出的なことを含めて評価されたのかなと感じています。

と語っており、劇作家として評価されたことに対する喜びと驚きを明かしています。

三浦大輔自らメガホンを取り映画化!

2014年3月1日には、主演に池松壮亮・ヒロインに門脇麦を迎え、三浦大輔自身が監督を務め映画化した『愛の渦』が公開。高い演技力を持つ役者が求められ、裏風俗を扱うなどの高いハードル故に、企画の立ち上げから映画化にこぎ着けるまで2年の歳月が費やされました。

三浦は映画化に際して新たな脚本を執筆し、裏風俗店の部屋の情景やパーティ後の切ない光景を始め、新たな要素も付け加えたのだとか。バスタオル1枚での会話・生々しい性描写によって、性欲とは切り離せない”厄介な感情”と向き合い、人間の本質が露わになる瞬間を表現したと言います。

商業映画初監督作品は『ボーイズ・オン・ザ・ラン』

「ポツドール」の自主制作映画『はつこい』などを経て、三浦大輔の商業映画初監督作品となったのは、2010年1月30日公開の映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』です。

原作は花沢健吾による同名の人気漫画で、30代目前の冴えないサラリーマン・田西敏行が辿る、真っ直ぐで不器用な恋の行方を描く笑いと涙の青春映画。主演にロックバンド「銀杏BOYZ」のボーカル・峯田和伸を迎え、松田龍平やYOU、リリー・フランキーなど個性派キャストが名を連ねました。

田西を通して男性の赤裸々な生態や感情を綴った三浦は、「(田西と)同世代の男性に共感してもらいたい」と語りつつ、特に女性に観て欲しいと明かしています。”男はこういうもの”ということや、醜さの果てにあるカタルシスを味わえる、誰もが楽しめるエンタテイメントになっているそうです。

朝井リョウの人気小説『何者』を映画化

三浦大輔監督の最新作は、『桐島、部活やめるってよ』で知られる平成生まれ初の直木賞作家、朝井リョウのベストセラーを原作とした映画『何者』です。主演を務める佐藤健、有村架純・二階堂ふみ・菅田将暉・岡田将生・山田孝之といった、主役級キャストが揃うことでも話題になっています。

御山大学に通う二宮拓人ら就職活動に励む5人は、就活対策のため集まり始めたものの、人間関係や自意識に翻弄されることに。SNS上や面接の発言から見え隠れする本音が、5人の関係を変えていって・・・・・・。

『何者』

出典: natalie.mu

本作ではSNSが効果的に使われ、Twitterの裏アカウントが重要なポイントの一つであり、最後はどんでん返しも存在するのだとか。そうした要素から”就活ホラー”とも称される小説を、独特の人間模様を描いてきた三浦がどう映画化するかという所も注目です。

2016年10月15日の公開を前に、8月30日に実施された完成披露試写会に登壇した三浦は

これだけの豪華なキャストが集まり素晴らしい演技をしてくださって、今皆さんが観る映像にはそれが刻み込まれています。僕にとってこういう機会は初めてですし、自分としてもすごく満足できました。皆さんにも楽しんでいただけたらうれしいです
引用:natalie.mu

と意気込みを語っており、作品への期待感がますます高まりますね!

R-15指定の舞台『娼年』を手掛ける

舞台『娼年』

出典: drm-navi.com

2016年8月26日より東京芸術劇場プレイハウスほかにて上演された、直木賞作家・石田衣良による小説『娼年』、その続編『逝年』を基にした舞台『少年』。脚本・演出を手掛ける三浦大輔は、2015年のネイソン・ロドリゲス作『禁断の裸体-Toda Nudez Sera Castigada-』以来、1年4ヶ月ぶりの舞台となりました。

原作者の石田が、「性の極限を描いた」と語る物語の主人公は、無気力な日々を送るごく普通のフリーター・森中領(松坂桃季)です。ボーイズクラブのオーナー・御堂静香(高岡早紀)の誘いで娼夫になった領が、仕事のやりがいを見つけ、静香と惹かれ合っていく様が描かれます。

舞台『娼年』

出典: natalie.mu

これまで、過激かつセンセーショナルな作品を送り出してきた三浦ですが、今回の『娼年』でも”新たな挑戦”を見出したとのこと。観客の想像力を掻き立てるため、演劇では敢えて隠してきた性描写を前面に出すことで、”セックスを介したコミュニケーション”を表現したそうです。

R-15指定にもなった生々しい性描写の意図について、

セックスを通して生まれてくるもの、その向こう側の景色を見せたい。何が見つけられるかというのが重要
引用:mainichi.jp

と明かしており、最後には優しい気持ちや温かい気持ちになれる作品になっているとのだとか。セクシャルな題材に抵抗がある人、演劇好き以外の人にもぜひ観て欲しいと語っていました。