映画『イニシエーション・ラブ』結末までのネタバレあらすじ解説と感想!衝撃のラスト・タイトルの意味とは?
「最後の5分すべてが覆る。あなたは必ず2回観る」と宣伝された『イニシエーション・ラブ』。そんな本作のあらすじや時系列、タイトルの意味について解説していきます。 ※記事内に『イニシエーション・ラブ』の結末までのネタバレを含みます。ご注意ください。
映画『イニシエーション・ラブ』のあらすじ
舞台は1980年代後半、バブル真っ只中の静岡市。ぽっちゃり体型の大学生・鈴木は、数合わせの合コンで出会った成岡繭子と交際を始めます。何とか彼女にふさわしい男性になろうと、服装や髪型にも気を遣って自分を磨いていくことに……。 その後、就職した鈴木は東京本社へ異動が決まり、繭子との間に物理的・心理的な距離が生まれます。
映画『イニシエーション・ラブ』の結末までのネタバレあらすじ
【起】Side-A:鈴木と繭子が合コンで出会う
1987年7月10日。鈴木夕樹は大学の友人の誘いで渋々合コンに参加し、歯科助手の成岡繭子という女性に一目惚れをしてしまいました。 繭子の左手薬指にはルビーの指輪がありましたが、彼女曰く「自分で買った」とのこと。 2人は毎週金曜日に食事をする約束をし、鈴木は繭子のために自分磨きを始めます。繭子は「夕」がカタカナの「タ」に見えるから「たっくん」、鈴木は「まゆちゃん」と呼ぶようになり、共通の趣味の読書を通じて仲を深めました。 9月15日は合コンメンバーでテニスへ。鈴木は繭子への告白にOKをもらい、初体験を済ませます。 クリスマスイブ当日、2人は偶然キャンセルが出て予約できた高級ホテルに来ていました。繭子からエアジョーダンのスニーカーをもらい、幸せで踊りだしてしまう鈴木。しかし、通りすがりのカップルに「釣り合ってない」と悪口を言われます。
【承】Side-B:美弥子との出会い&繭子の堕胎
6月19日。鈴木はエアジョーダンを履いてダイエットに励み、見違えるほどスリムになりました。繭子のために地元で就職し、彼女との交際も順調に続いています。 しかし最長で3年間、東京にある親会社への転勤を命じられ、7月1日に上京。毎週末、週1で車を飛ばして繭子に会いに行くものの、肉体的にも精神的にも疲弊します。そんな中、配属部署の同僚・石丸美弥子に少しずつ気持ちが傾き始めました。 8月9日、「生理が来ない」と言う繭子に結婚を提案するも、彼女の返事は後ろ向きでした。8月末、相談の末に妊娠していた子供を堕胎。そして9月4日、一度はフッた美弥子から繭子に対する今の微妙な気持ちを指摘され、猛アプローチに押されてホテルへ……。
【転】Side-B:繭子と別れ美弥子と正式に交際するも……?
10月31日、鈴木は会うのが隔週になった繭子に「おい、美弥子」と呼びかけてしまいました。 すべて察した繭子に問いただされ、「お前は一度も会いに来ない」と逆ギレ。一方的に別れを告げ、11月4日には彼女へ贈ったルビーの指輪が返送されてきます。 そして11月14日、繭子とイブに泊まる予定だったホテルの予約をキャンセルすることに。その後は美弥子と正式に交際を始め、「クリスマスは両親と会って欲しい」と言われます。12月18日、泥酔状態で美弥子に電話しようとして、間違って繭子にかけてしまいました。 電話の向こうから「たっくん?」と無邪気な声が聞こえ、鈴木は急いで電話を切ります。この日以降、再び繭子の存在が頭から離れなくなりました。
【結】Side-A&B:最後の5分ですべてが覆るラスト!
クリスマスイブ当日。鈴木は美弥子の実家を訪れますが、別れたと認識していない繭子がホテルで待っているのではないか、と気になって仕方がありません。 信じがたい様子の美弥子を放って、車を飛ばして東京都から静岡市へと向う鈴木。放置された美弥子は両親に鈴木の名前を聞かれ、「鈴木辰也、辰也よ。」と答えます。一方、辰也はホテル前で繭子を見つけ、彼女の気持ちがまだ自分にあると確信しました。 笑顔で駆け寄ろうとした瞬間、小太りの男性とぶつかって倒れ込んでしまいます。しかし繭子が「たっくん!」と言いながら近寄ったのは、辰也ではなく男性の方でした。 2人のたっくんが状況を理解し表情を一変させる中、繭子だけは可愛らしく微笑んでいました。
映画『イニシエーション・ラブ』の感想・評価
公式が煽りまくっていて少し心配でしたが、映像化不可能な原作を上手く表現したな……と。ただ、小説のラスト2行を丁寧に説明したのは賛否両論あると思います。個人的にはわかりやすくなったけど、余韻や想像の余地が薄れて残念でした。
小説の繭子は恋愛依存のヤバい女に思えたけど、ちょっと印象が変わった。映画は辰也のクズっぷりが強調されてる……?あざとい系小悪魔女子のあっちゃんがたまらん。生まれてもない時代だけど、知ってる曲も流れるし雰囲気がすごくいい。
【解説】誰が・いつから浮気した?混乱させる時系列のトリック
時系列を理解する上で注意すべきは、「たっくん」と呼ばれる鈴木が2人いること。 Side-Aのたっくんは鈴木夕樹ですが、Side-Bのたっくんは別人の鈴木辰也です。ジョギング中の足が細くなっていくシーンで、夕樹から辰也に切り替わっています。優しかったはずの夕樹が、社会人になって二股DV男へ変貌したのではありません。 もうひとつ大切なのは時間軸。Side-AとSide-Bは視点が違うだけで、同じ1987年に起きた出来事です。 Side-Aの開始は1987年7月10日、Side-Bの開始は1987年6月19日となっており、繭子が夕樹と出会った時点で辰也とは1年以上交際しています。 つまり、先に別の異性にアプローチをしていたのは繭子の方。辰也が繭子・美弥子に二股するのと並行して、繭子も辰也・夕樹に二股をかけていました。
【考察】「イニシエーション・ラブ」の意味とは?
イニシエーション(Initiation)とは、社会や集団において一人前として認知される手続き・儀式のことで、いわゆる通過儀礼を意味します。 美弥子が劇中、元カレの話に絡めて触れたように、通過儀礼の恋愛=イニシエーション・ラブです。 辰也と繭子の恋愛は、大人になるため・本当に幸せになれる人と出会うための通過点。繭子は夕樹と出会った時、「女慣れした男性より(夕樹みたいに)純粋な人が良い」と言っています。あざとい誘い文句のようで、辰也との比較から出た本音だったのかもしれません。 そして妊娠した子供を堕胎した辺りで、恋に恋した頃の繭子はいなくなったのでしょう。 一方、ラストシーンでようやく現実を思い知ることになった辰也。彼は美弥子と、繭子は夕樹と新しい恋愛を始め、お互いの人生を通過していったのでした。
映画『イニシエーション・ラブ』をネタバレ解説・考察でおさらい
『イニシエーション・ラブ』の魅力は、観客を巧みに騙すトリックとミスリード。映画では丁寧にネタばらしされますが、後味が良いとは言い切れないでしょう。特に辰也と繭子の印象は、観る人によって180度変わる可能性もあります。 ネタバレを踏まえて深掘りすると、また違った見方や解釈ができるかもしれません。