映画『デスノート Light up the NEW world』が酷評されたワケ【ネタバレ注意！】

名前を書かれた者は必ず死ぬという死神のノート“デスノート”を巡る争いを描き、2006年に公開された映画も大ヒットした本シリーズ。2016年には、続編という形で映画『デスノート Light up the NEW world』が公開されました。 前作とは違う設定として、7冊目以降のデスノートは人間界では効力を発揮しないという新たなルールが追加されたことで、6冊のノートを確保する重要性が強調された本作。 新たな設定と新キャラにより展開されましたが、過去作を思わせる演出や、前作の登場人物が登場するなどファンにとっては嬉しい小ネタもありました。 記事全編にわたってネタバレを含みますので、作品未視聴の人は気を付けてください。映画の詳しいあらすじやネタバレは記事後半にて紹介しています。

前作の「デスノート」のファンは頭脳戦を期待していたようですが、この続編は圧倒的にアクションが見どころになっています。 また、前作の夜神月、Lのような強烈な天才と呼べる人物もいません。3人の主要キャラクターを演じる俳優たちの力量もあって、よりリアルな人物像が示された、とする見方も存在するようです。

前作『DEATH NOTE デスノート』および『DEATH NOTE デスノート the Last name』では、夜神月、Lという天才2人の頭脳戦を主軸として、人間のモラルと正義という根源的かつ哲学的な問題に取り組みました。 本作『デスノート Light up the NEW world』では、情報化・デジタル化がより進んだ世界で、アナログなノートをめぐって人間・死神たちの欲望が交錯するという逆説が描かれます。 これが前作のファンの期待を超えられず、つまらないという評価が多く上がってしまったのでしょう。 「デスノートLNW」には突出した天才こそ登場しないものの、より理解しやすい身近な人間性が示されているのです。

「デスノート対策本部」に所属する捜査員でありながら、実はキラの後継者だったという複雑きわまりない役をこなしたのは、東出昌大です。この結末にはファンも驚きを隠せなかったよう。 ノートに触れることで真実を思い出すと、良心の呵責に耐え切れず心を痛める、など人間臭さのあるキャラクターでした。竜崎や紫苑が常人離れした狂人的な立ち位置にあるからかもしれませんが、この三島の人間臭さが今回の結末を導いたとも言えるのではないでしょうか。 三島を演じた東出は、本作で「棒演技」という厳しい意見もあがりましたが、2016年には『聖の青春』で羽生善治を好演して評価されました。

今や邦画には欠かせない俳優・菅田将暉が演じたサイバーテロリストであり、デスノートを独占しようと目論む紫苑優輝。美しくも怪しい紫苑を菅田が見事に演じており、彼への感想は高評価が目立ちました。 前キラの崇拝者であり、新生キラを名乗る人物だった紫苑。月の音声を合成して使ったのは正体を隠すためのアイデアでしたが、キラに対する愛情や敬意も篭められていたかもしれませんね。 しかし、本当のキラは別に存在しており、彼は操られていただけでした。行動力や狂気的な部分など、キラとしての要素を持ち合わせつつも、キラにまではなり切れない人物、といったキャラクターだったのでしょうか。

前作で松山ケンイチが演じ、そのキャラクターを確立したL。『デスノート Light up the NEW world』では、その新たな後継者である竜崎が登場しました。しかし、Lと新たな竜崎を比較して、彼の頭脳に肩を落としたファンも多いようです。 原作漫画と1作目映画の、一人称を“私”で統一し、です・ます調で喋っていたミステリアスなLとは大分雰囲気が変わりました。遺伝子を引き継いでいるとはいえ、口調や態度などからはLを思わせる雰囲気はなく、天才肌、という以外は別人のようでした。 しかし、正義を貫く意思だったり、死神アーマと親しくしたりと、常人離れした部分はLの雰囲気を継いでいるとも言えます。 Lの後継者としてインターポールから派遣された探偵・竜崎を演じたのは、池松壮亮です。自らデスノートを所有しつつも、ストイックにそれを使うことがなかったのは、Lの轍を踏むまいという決意からなのですが、そうした奥行きを感じさせる演技でした。

弥海砂は前作に引き続き戸田恵梨香が演じています。前作もその可愛さから多くの高評価を得ていましたが、今作で大人になったミサにも多くの高評価の声が集まりました。共犯者であり、恋人だった夜神月を失った悲しみをたたえた演技が評判でした。 海砂はノートの所有権を放棄して平和に暮らしていましたが、月の遺したノートに触れたことで、キラとしての記憶が復活。最終的には、自ら「弥海砂、夜神月の腕の中で死ぬ」という1文をノートに書き残し、死という結末を迎えました。 実際には月は既にこの世を去っているため、心臓麻痺という結末になっています。しかし、死神の目の影響で寿命の少ない海砂にとって、叶わぬ望みだったとしても、月を思いながら死ねたことは幸せだったのかもしれません。

SNS上では、本作の「“6冊ルール”は意味あるのだろうか？」という疑問が散見されます。しかし、人間界で機能するデスノートの上限は6冊まで、というルールは当初からあったようです。 6冊のデスノートが人間界にもたらされた理由ですが、死神大王が「キラの後継者」を探すように命じたため、という設定があります。後継者探しに成功した死神が次の死神大王となることが約束されており、死神は次期王の座を争っていたのでした。 また、デスノートのうちの1冊はアレクセイというロシア人医師の手に渡ります。彼は不治の病で余命幾ばくもない患者を、安らかに安楽死させるためにノートを使っていました。 竜崎はデスノートを密かに所有しているものの、Lの死を教訓としてそれを使わないと決めています。しかも、死神の目をもつ者を警戒して、部屋を出るときはノートの所有権を放棄してから出かけていました。 単純に考えれば、焼却するなどしてノートを破棄してしまえば良いように思われますが、ノートに憑いているアーマという雌の死神と奇妙な友情を結んでいたようです。実際、アーマは竜崎が撃たれそうになったとき、身をていして庇いました。

10年前、大学生・夜神月(やがみライト)が「キラ」を名乗り、犯罪者などを無差別に粛正する、大量殺人が行われました。その通称「キラ事件」で使われていたのは、名前を書かれた人間が必ず死に至る「デスノート」という道具でした。 「L」と自称する優秀な探偵によって、夜神月の計画は阻止されますが、デスノートは行方が分からなくなってしまっていました。そして、10年後、再びデスノートを使っていると思われる殺人事件が起きるのです。

警視庁に設置されていた「デスノート対策本部」に、渋谷で無差別殺人事件が続行中であるという一報が入り、三島創(東出昌大)と対策チームは現場に急行します。通り魔的に犯行を行っていると思われるのは、青井さくらという女性(川栄李奈)。三島が逮捕しようとすると、探偵Lの後継者・竜崎(池松壮亮)が麻酔銃で青井を倒し、デスノートを奪います。 ところが、青井さくらは心臓麻痺で死亡していました。現場にいた白いパーカーのフードを被った男が、別のデスノートで殺したというのです。 青井から回収したデスノートに竜崎が素手で触れると、ベポと名乗る死神が見えました。その死神を尋問した結果、次のようなことが判明します。現在、人間界に存在するデスノートは6冊であること(人間界で機能するデスノートの上限は6冊というルールがあります)、死神はキラの後継者を探すため人間界にデスノートをもたらしたこと、などです。 三島たちは「6冊のノートをすべて回収して封印すれば、デスノート犯罪はなくなる」と結論づけます。青井のノートを奪った竜崎でしたが、実は竜崎は元々デスノート所有者だったのです。竜崎は部屋を出る度に、デスノートの所有を放棄していたのです。これは死神の目をもつ者に、所有者であることがバレないようにするためです。

数日後、スマホ、PCなどあらゆるネット機器に夜神月の映像が映し出される、大規模なハッキングが発生しました。ハッキングされた端末は「キラウィルス」に感染してしまいます。 「キラウィルス」の真の目的は個人情報を盗み出すこと。これを実行し、青井さくらを殺害したパーカーの男は、紫苑優輝(菅田将暉)というサイバーテロリストでした。紫苑は、家族を殺した異常者をキラが粛正してくれたことで「キラ信奉者」となり、デスノートを集めているのです。 一方、10年前に夜神月の共犯者だったタレント・弥海砂は過去の記憶を失っており、今では女優として活躍していました。そんな彼女の前に、「キラの使者」を自称する紫苑優輝が現れます。夜神月と交わした「約束の地」を教えてほしいと、海砂に頼み込む紫苑。 対策本部は紫苑の居場所を割り出すために、竜崎に紫苑とチャットをさせます。逆探知で判明した場所に松田桃太ら捜査員が向かうと、そこにはデスノートの切れ端があり、「松田桃太、笑顔で拳銃自殺」と書いてありました。 そして、松田は三島たちの眼の前でこめかみに拳銃を当てて、笑顔で引き金を引いたのです。

この失態で、「デスノート対策本部」は解散に追い込まれます。竜崎は単独で捜査すると宣言。まず、自分のノートと青井さくらから回収したノートを使い、紫苑をおびき出そうとしました。 三島たち対策本部の元メンバーたちは、後方支援にまわります。ところが、待ち合わせ場所に現れたのは弥海砂でした。彼女は直前に死神の目の契約をして、竜崎の本名をデスノートに書き込みます。 竜崎は倒れ、夜神月がもはや存在していないことを悟る海砂。彼女は紫苑に「約束の地は和歌山県、甲羅山山頂のホテルの最上階」と告げて、自分の名前をノートに書いて自殺してしまいます。 甲羅山山頂のホテルで、紫苑はキラの後継者を待っていました。6冊のデスノートを得た今、死神の目によって本名を読み取り、キラの後継者を殺そうというのです。そこへ、死んだはずの竜崎が踏み込んできたのです！ 紫苑は構わず素早く竜崎の本名をノートに書き込みますが、竜崎は死にませんでした。どうやら、竜崎の名前はすでにノートに記されているらしいのです。そこへ三島創もやって来て、竜崎は三島こそがキラの後継者だと指弾します。

三島は死神リュークにサイバーテロリストを探させ、密かに紫苑を操っていました。また、竜崎が対策本部に現れた時点で、かなり先の日付でデスノートに竜崎の本名を書き込み、自分はノートの所有権を放棄して記憶を失ったのです。デスノートに触れ、全てを思い出して呆然とする三島。 そこへ特殊部隊の攻撃ヘリが現れ、機銃掃射を受けて紫苑が死亡します。三島と竜崎は拘束され、6冊のデスノートはすべて政府に回収されることに。数日後、独房の中にいる三島のもとへ竜崎がやって来て、今日は自分が死ぬ日だと言いました。 デスノートは輸送中、6冊のうち4冊がテロリストに強奪されてしまいます。竜崎は超法規的措置の手続きをとって、三島と入れ替わり、三島を自分の後継者にしようとしました。竜崎は三島として独房の中で死んでいき、三島は竜崎として奪われたデスノートの捜査に向かうのでした。

デスノートを所持していることを三島に知られ、問い詰められる竜崎。竜崎はLの過去を知っているからこそ、Lを超えるためにノートを使いません。遺志を継ぐものとしての強い決意が感じられました。

竜崎が所持しているノートと紫苑が所持しているノートをお互いに確認し合うシーン。 ほんの小さな紙切れになったとしても、威力を発揮してしまうデスノートの力の確認は緊張するシーンですね。取引や駆け引きは、映画「デスノート」を通じての重要なポイントです。

海砂が自宅に帰るとポテトチップスの袋から携帯の呼び出し音が鳴っており、中には月の遺したノートが入っているというシーン。原作および前作では、月が裁きを下す際に小型テレビをポテトチップスの袋に潜ませ、食べるフリをしながらデスノートに名前を書いていた、というシーンがありました。 海砂にノートを送った紫苑は、月がポテチの袋を使っていたことをどう知ったのでしょう。リュークに聞いたのかもしれませんね。

前作とはまた違う意味での驚きの結末となり、LにはLの正義が、キラにはキラの正義がある、というような終わり方になったのではないでしょうか？ 最終的にデスノートがまた消息不明となったことから、続きが出来てもおかしくない終わり方でした。新たなデスノートに、どこかで出会えるかもしれませんね。 竜崎として三島がデスノートの捜索に乗り出したというエンディングは、続編を期待させるものです。オリジナルのキャラクターはほとんど死んでしまいましたが、まだまだ展開が待たれます。 2017年にはハリウッド・リメイク版もNETFLIXで配信されました。ますます「デスノート」シリーズから目が離せません！