北野武が描く、バイオレンス満載のヤクザ映画『アウトレイジ』シリーズ
これまで17作品を世に送り出し、今や「世界のキタノ」と称されるに至った映画監督・北野武。「キタノブルー」と名づけられた特徴的なブルーの色調、壮絶なバイオレンスとその表裏をなす圧倒的な孤独など、その世界観は世界で高く評価されています。
ヤクザ同士の壮絶な抗争を描いた15作目にあたる作品が2010年公開の『アウトレイジ』、そして16作目となる2012年公開の『アウトレイジ ビヨンド』です。続編が製作されたのは北野作品としては初めてのこと。また、ビートたけしとして主演も兼ねています。
2017年には完結編となる『アウトレイジ 最終章』の公開も予定されている同シリーズの主要登場人物とキャストについてまとめてみます。
大友/ビートたけし
関東を牛耳る巨大暴力団・山王会の直参団体である池元組の傘下に属する大友組。よって権力規模はそれほど大きくはありませんが、下部団体ゆえ武闘派として知られる先鋒です。
ビートたけし扮する、組長である大友は、シリーズ通しての主人公。ストイックで忠義に熱く、昔ながらの任侠道に生きています。池元組から村瀬組を「締める」仕事を押し付けられ、それを実行に移したことをきっかけに、熾烈な権力抗争に巻き込まれていきます。
1作目の最後、獄中で元村瀬組若頭・木村に刺されて死亡ということになっていましたが、それは片岡刑事の流した嘘。出所後、密かに韓国人フィクサーの元で身を潜めていました。続編では、再び片岡の汚い策略で、ヤクザ抗争の矢面に立たされることになります。
水野/椎名桔平
椎名桔平が演じたのは、大友組若頭で組長の側近中の側近・水野。大友に対する忠誠心は強く、武闘派として知られる組を代表する顔の一人です。村瀬組との抗争でも最前線に立ち、自ら手を汚しました。
池元組の裏切りに端を発し、大友が池元を殺害してからは、その後継を狙う若頭の小沢から命を狙われるようになります。大友の指示で一時は愛人の元に身を潜めていましたが、結局は小沢に見つかり、無残な死を遂げました。
はまり役だった椎名桔平の端正で野性的な魅力もあり、1作目で死んでしまう登場人物の中では、ファンから人気の高いキャラの一人です。
石原/加瀬亮
大友組の単なる金庫番から、2作目では山王組の若頭にまで上り詰める石原。水野とは全くタイプが違うインテリのヤクザで、当初から腹の中では何を考えているかわからないところがありました。村瀬組解散により大友組が手中にした闇カジノ利権を仕切り、次第に頭角を現していきます。
小沢と大友組の抗争では、小沢に密通し、組を裏切って壊滅させた張本人の一人です。山王会の新しい組長に加藤が就くと、その側近として権力を持つに至り、残忍な男に豹変します。最後は、大友の前で情けなく命乞いしながらも受け入れられず、ピッチングマシンによる拷問で死亡しました。
続編では主役級の活躍を見せる石原を演じたのは加瀬亮。インテリでクールな顔から、次第に過激な男へと変貌する姿を見事に演じ、第67回毎日映画コンクール男優助演賞を受賞しました。
片岡/小日向文世
組織犯罪対策部、通称「マル暴」の刑事である片岡。主要登場人物の中では唯一ヤクザではないキャラですが、「全員悪人」のキャッチフレーズ通り、ある意味ヤクザより腹黒い悪党だと言えるでしょう。
単に組と癒着しわいろを受け取っているばかりか、内部抗争の裏で暗躍し、大友らを利用します。大友とは旧知の仲で、1作目では大友の命を守るために刑務所に入れ、死んだとの嘘の情報を流しましたが、そこには汚い策略が。続編では、さらに私利私欲に絡んだ策士ぶりをみせ、その汚さに気づいた大友の手により、皮肉な形で死の制裁が与えられます。
片岡を演じたのは小日向文世。腹黒さとしたたかさを裏に隠した偽善ぶりを、さすがの演技力と存在感で魅せてくれました。
関内/北村総一朗
関東を牛耳る山王会本家の会長・関内。表向きはさすが堂々した貫禄漂う会長ぶりですが、気にいらない存在には容赦ない残虐性と腹黒さを持っています。関内が、傘下の池元組と独立系の村瀬組が繋がっているのをよく思わず、「締める」ことを命じたのが全ての発端です。
それを実行に移した大友組が握った闇カジノを手に入れようと内部抗争を焚きつけるも、ナンバー2の側近・加藤に裏切られ、呆気なく銃殺されました。
演じた北村総一朗は、普段は穏やかで温厚な役柄の印象が強い役者ですが、本作ではまさかの暴力団トップ。外見と内面の乖離、残酷な二面性を醸し出す圧巻の存在感は、さすが大御所俳優です。
安倍/森永健司
大友組組員の安倍は、水野と同じく武闘派ヤクザの一人です。村瀬組との抗争では、謝罪にやってきた若頭の木村に、容赦なく指詰めを強要した人物であり、水野と並ぶ激しさを持ち合わせています。小沢との抗争において射殺されました。
屈強な体躯と強面が特徴の森永健司は、まさに安倍役にぴったりでした。
上田/三浦誠己
大友組組員で、安倍と行動を共にすることが多い武闘派の一人・上田。恫喝や脅しといった飛沫の仕事をすることが多いヤクザです。最後は喫茶店にいるところを山王会の手下が投げた手りゅう弾で爆破され死に至りました。
安倍を演じた森永健司とは対照的に、ややナイーブな外見の上田。演じた三浦誠己は、元吉本興業所属のお笑い芸人。そうした独特の個性が光り、不思議な印象を残しました。
岡崎/坂田聡
上田以上に、気弱で情けない風貌の大友組組員・岡崎。単細胞で短気、お調子者なチンピラ風存在です。最初、大友に言われ、村瀬組が仕切るバーに忍び込んだのも岡崎でした。最後は、木村らから壮絶な暴行を加えられ死亡。その遺体は見せしめのように、大友組事務所の前に放置されていました。
演じたのは坂田聡。俳優として活動するほか、お笑い芸人としても数々の舞台を踏んでいる個性派です。
江本/柄本時生
武闘派で知られる大友組の中では珍しく冷静で物静かな組員・江本。村瀬組に代わって手中に収めた闇カジノでは、江本がディーラーを務めていました。岡崎が拉致されたときに役立たずだった江本は、水野から酷い暴行を受けるなど、やや間抜けキャラ。
小沢との抗争において、最後は逃亡を図ってトイレで自殺を試みるも、追ってきた男に射殺されました。
演じたのは柄本時生。両親・兄とも俳優一家の次男坊として、目覚ましい活躍をしていますが、下っ端の組員ながら強烈な印象を残したあたりはさすがです。
佐山/芹沢礼多
芹沢礼多が演じた村瀬組組員の佐山。大友組の力で村瀬組が解散した後も、一人したたかに麻薬取引を続けていた男です。それが見つかって大友組の事務所に連行された後も、自身の持っていた極秘情報を流すことによって、しぶとく生き残ります。
村瀬組の組員の中ではちょっと異質な存在でした。
山王会本部若衆/真田幹也
山王会の若衆の一人として、俳優としてのみならず2014年の映画『オオカミによろしく』などで監督としても注目されている真田幹也が出演しています。
役名もない若衆の一人ですが、どこに登場するか探してみてください。
山本/貴山侑哉
組織犯罪対策部(マル暴)の刑事で、片岡刑事の後任として山王会を担当することになるのが山本です。
片岡同様に金に汚い悪徳刑事であり、それが度を過ぎたことから山王会の組員に殺害されてしまいます。乗っていた車ごと海中に沈められました。続編で抗争が激化するきっかけにもなる事件です。
2時間サスペンスドラマ等でも活躍している貴山侑哉が山本を演じています。
飯塚/塚本高史
村瀬組の若手組員である飯塚。チンピラ風で、組が仕切るぼったくりバーで恐喝まがいの客引きなどを担当していました。大友組との抗争に関わり逃亡を図った道中、射殺されました。
長髪が印象的な飯塚を演じたのは塚本高史です。ややチャラい今風な雰囲気が、人気イケメン俳優として知られる塚本高史が演じることで、不思議と印象に残る男になりました。
木村/中野英雄
2作品通じて、キーパーソンとなる存在が村瀬組若頭の木村です。村瀬組の先鋒として大友組に挑み、実際、組員の岡崎を殺害しました。恨みを抱く形で服役した刑務所で大友に切りかかり、復讐を果たします。が、命を奪ったというのは片岡が流した嘘で、傷を負わせただけでした。
続編では、片岡の仲介で大友と和解し、兄弟の契りを結びます。大友と共に、黒幕である山王会に対抗するため関西の花菱会と手を結び、抗争の矢面に立つことになりました。最後は結局、裏で暗躍していた片岡の汚い策略で射殺されることになります。
クールな大友とは対照的に激情型で、そのためまんまと利用されてしまう木村を演じたのは中野英雄です。Vシネマなどで極道を何度も演じてきただけあって、ドスの効いた迫力は満点。それでいて、木村をどこか愛すべき存在に仕立て上げることに成功しています。『アウトレイジ』ファンの間では人気のある登場人物の一人です。
小沢/杉本哲太
池元組組長の側近で若頭の小沢は、1作目で抗争のカギを握る存在です。忠誠を誓っていた池元が大友に殺害されてからは、山王会幹部に敵討ちをそそのかされ、大友組との抗争に身を投じていきます。
しかし、大友組壊滅に成功し、関内会長のもとに報告に赴いたところで、加藤に射殺されることになります。加藤は関内をも殺し、その罪をきせられた上での非業の死でした。
小沢を演じたのは杉本哲太です。最近のドラマなどで演じる役柄は、穏やかで人のいい人格者のイメージが強いですが、若い頃はかなりのワルだったらしく、本作でその本領を発揮しているのかもしれません。
村瀬/石橋蓮司
山王会系列ではなく、独立した存在だった村瀬組。麻薬取引に絡み、池元組と深い関係を持っていたがゆえ抗争に巻き込まれていきます。
村瀬組長は穏便にことを収めることを意図しましたが、若頭の木村が暴走したこともあり、大友の手で引退に追い込まれる形に。最後は結局、ひそかに続けていた麻薬売買がばれ、大友の手で射殺されました。
演じたのは石橋蓮司です。歯医者における、大友による残酷な拷問シーンが話題に。射殺されるときもサウナにいる最中でした。石橋蓮司の独特の存在感もあって、強い印象を残す人物です。
池元/國村隼
悪人だらけの人間模様の中で、特に下劣な男の一人が池元組組長の池元です。私利私欲のためには巧みに二枚舌を駆使し、平気で兄弟分を裏切ります。山王会から村瀬組を締めるよう命令され、それを大友に押し付けたことがそもそもの発端でした。
結局、その下劣極まる動きが大友の怒りを買い、無残な形で射殺されます。いかにも二枚舌らしい死にざまが強烈でした。
実力派俳優として知られる國村隼のさすがの名演技で、独特の悪人ぶりが強烈な個性を放つ存在です。
加藤/三浦友和
山王会の若頭として、関内会長の側近だった加藤。冷静で、一見したところは会長に忠実に従う右腕ですが、実は相当腹黒い策士です。結局、関内を射殺し、その罪を小沢に着せた形で自分が山王会の会長の座におさまります。
続編ではさらに巨大化した山王会のトップとして君臨。しかし、石原を重用したことなどで、古参幹部たちから不満をかっていました。花菱会によって、関内会長殺害の事実が暴かれ、結局引退を余儀なくされます。最後は大友の手で復讐され、死に至りました。
2作通じて主役級の加藤を演じたのは三浦友和です。爽やかな青年から、歳を重ねるに従い渋い存在感を放ち始めた役者として、最近の活躍は目覚ましいばかり。本作における従来のイメージを裏切るヤクザ役は、代表作の一つになりました。
西野/西田敏行
西田敏行扮する、花菱会若頭・西野は知略に優れた頭脳派で、山王会の事情に精通する人物。怒鳴った際の迫力は凄まじく、会長の布施を敬わない者、軽薄な態度の者には容赦がありません。
山王会先代会長殺しの真相に辿り着くと、加藤体制に不満を持っている古参幹部たちを唆し、反旗を翻させることで加藤を追い詰めました。白山と五味を花菱会の進出に利用し、加藤体制が崩壊すると木村に大友を離反させ、大友を全ての抗争の首謀者に仕立て上げます。
西野は一連の出来事の収拾をつける形で、後見人として山王会の人事権を握り、花菱会の影響下に置くことで自身の組の勢力拡大を成功させたのです。
嶋/桐谷健太
嶋は木村の舎弟で、表向きは堅気のバッティングセンターの店員です。村瀬組組員の子どもで、出所後に引き取ってくれた木村を慕い、親分の大友にも非常に忠実に従っています。
後に木村から大友の警護を任されるも、油断から大友が加藤の差し金に襲われてしまい、その罪悪感から小野と共に山王会へ殴り込みます。そこで舟木に拘束され、凄惨なリンチで返り討ちにあって死亡し、死体は鉄くず置き場に撃ち捨てられました。
子どもっぽい一面もあった嶋を演じたのは、マルチな才能を発揮する俳優・桐谷健太。CMのコミカルな演技も注目を浴びており、純粋な性格のキャラクターにぴったりのキャスティングでした。
小野/新井浩文
小野は、嶋と同じく表向きは堅気の木村の舎弟で、バッティングセンターの店員。村瀬組組員の子どもで、嶋よりは比較的温和な性格ですが、時おり感情を爆発させることがあります。
潜伏先のホテルのレストランにいた際、警護対象の大友が加藤の策略で負傷してしまい、嶋と共に山王会に殴り込みを敢行することに。最後は嶋と同じ運命を辿ることになり、木村組の事務所には2人が笑顔で映る写真が飾られ、彼らが好きなブランドのタバコが供えられていました。
小野を演じた新井浩文は、鋭い目と強面な風貌が特徴の俳優です。今作でもその魅力を存分に発揮していますが、刑事役や教師役など、幅広く演じ分ける実力派として活躍しています。
繁田/松重豊
組織犯罪対策部、通称「マルボウ」に所属する片岡の後輩刑事の繁田。片岡とは違い”警察官らしい”実直な正義感を持つため、ヤクザと共謀して利用する片岡に反感を抱いていました。
暴走する片岡を客観的に眺めていましたが、旧加藤派に木村が暗殺されたのは彼の策略だと見抜き、なおも大友を利用しようとする姿に失望します。木村の葬儀の席で片岡を見限り、「それでは出世できない」という言葉に、「一生ヒラでいい」と返してその場を去っていきました。
厳つい顔のヤクザ嫌いな刑事を演じたのは、強面俳優として有名な松重豊。キャッチコピーが「全員悪人」という中で、唯一”善”の要素があるキャラクターを見事に演じています。
白山/名高達男
名高達男演じるのは、富田・五味の兄弟分で山王会古参幹部の白山。部下が石原の代わりに出頭した事件などもあり、兄弟分と同じく加藤・石原体制に対する不満を募らせていました。
機転や洞察力などに欠ける一方で、富田には加藤殺害を促し、片岡には加藤への裏切りを「筋が通らない」と跳ね除ける自己保身面での狡猾さを持っています。内通した富田を裏切ると、花菱会の西野の力添えを得て傘下に下り、反加藤派として山王会の新会長に就任しました。
結局は花菱会に実権を握られており、シマに進出してきた木村組の背後にある花菱会の陰に気付き、事の成り行きを見守る姿勢を取ることにしています。
五味/光石研
山王会古参幹部の一人で、富田・白山とは兄弟分の五味。加藤・石原体制に不満を抱きつつも、主体性がなく流されやすいため、自らに危険が及ばないようにだけ立ちまわります。
富田が舟木に殺害された後は白山の後につく形で行動し、加藤が組を締め出され加藤体制が崩壊すると、新会長の白山の元で若頭に就任します。加藤の先代会長殺しが露見した際には、これまでとは一変した
態度で加藤に詰めより、激怒した組員たちと恫喝しました。
中間管理職的な立場の五味は、淡々とした物言いが特徴の俳優・光石研が演じました。クセの強い役から、穏やかな役までこなす名脇役の一人として、流石の演技力を発揮しています。
舟木/田中哲司
山王会幹部の舟木は、山王会先代会長・関内の元ボディガードです。彼の死の真相を加藤に告白したことから、加藤・石原の有能な部下としてのし上り、組の事実上のNO.3に。2人に歯向かうものには容赦がなく、加藤の失脚を目論む富田、討ち入りに来た嶋や小野を殴り殺します。
その後、大友と木村に連行され、部下が顔をドリルで穿たれる様を目撃。ついに加藤の先代殺しを証言し、必死に命乞いをしましたが、死亡したほのめかす最期が描かれました。
山王会きっての武闘派、舟木を演じたのは田中哲司。台詞は少ないながらも、「いるだけで攻撃的な雰囲気を醸す」役作りを心がけたそうで、作品にリアリティーを与えています。
岡本/菅田俊
岡本は山王会古参幹部で、遥かに年下の石原に手駒として扱われています。そのため、その様を見ていた白山や五味からは陰口を叩かれていたとのこと。岡本組の組員が、ホテルで大友の襲撃に失敗した際には、部下の不手際を石原に激しく叱責されました。
最終的には、大友率いる花菱会のヒットマン集団に、組員たちと共に殺害されます。
岡本を演じたのは、ハリウッド映画や海外作品でも活躍する菅田俊。Vシネマを始め、ヤクザ映画への出演数は非常に多く、数々のヤクザを演じてきた経験を存分に発揮しました。
城/高橋克典
花菱会構成員の城は、警察に身元が特定されていないことを活かし、標的を淡々と的確に葬る”殺しのプロフェッショナル”。西野と中田の部下の中から、自身と同じように顔が知られていないヒットマン集団を率いて、加藤に従う山王会組員を次々と殺害します。
城を演じるのはイケメン俳優・高橋克典ですが、寡黙な設定のために本編ではほぼ台詞が無く、DVD特典のナビゲートキャラクターを務めた際に始めて話しました。
李/白竜
李は、大友が身を寄せる在日コリアンの大物フィクサー・張の側近です。出所した大友を車で迎えに行き、彼が加藤へ復讐する際には、パチンコ店の店員を装って協力しました。
作中においてそれほど重要の役ではありませんが、ヤクザ映画やVシネマなどのバイオレンス作品で有名な強面俳優・白竜が演じるだけあり、強い存在感を放っています。
富田/中尾彬
富田は山王会古参幹部で、白山と五味、花菱会若頭・西野とは兄弟分です。加藤・石原体制では、実績が上がらないために扱いが悪く、組の現状に不満を抱いていました。
先代会長・関内の死に疑問を抱き、片岡や白山の後押しで加藤派への反逆を計画するも、優柔不断な態度を理由に協力者全員から裏切られる羽目に。最後は加藤の側近である舟木にボディーガードを殺され、涙を浮かべながら土下座をするも、命乞いの甲斐無く舟木に射殺されます。
富田を演じたのは、個性派ベテラン俳優の中尾彬。2作目の序盤であっさりと死んでしまう役ですが、これまで数々の任侠映画に出演した中尾が、役と作品に重みを与えました。
中田/塩見三省
塩見三省扮するのは、強面の武闘派で恫喝術を駆使する花菱会の幹部・中田。交渉の席では、大友らを相手に一触即発の駆け引きを展開し、木村を自傷と謝罪に追い込む形で優勢を得ます。
筋を通す善意的な顔を建前に、相手を思い通りに動かすための打算と強かさを持ち、大友と和解した経緯を持つ木村には特に辛く当たっていた様子。一連のケリを付けるという体で、自分の組を与える代わりに大友との関係を断つよう迫るなど、木村には最後まで慈悲をかけませんでした。
布施/神山繁
神山繁が演じたのは、関西で最大規模を誇る暴力団、花菱会の会長・布施。軽快な語り口や人当たりの良い雰囲気をまといながらも、利益のために手段を問わない典型的なマキャベリストです。
関東への勢力拡大を狙っており、山王会の加藤・石原体制の不和を嗅ぎ付けると、杯を受けに来た大友と木村を操って策謀を巡らせます。ヒットマン集団に裏から攻撃を仕掛けさせ、表では得意の話術で加藤を追い詰めていき、ついに加藤・石原一派を壊滅させました。
最終的には、大友や木村の活躍を利用して関東に進出し、山王会を支配下に置いています。
花田/ピエール瀧
前作の最後から5年後を舞台にした最終章。ピエール瀧が演じる花田は、関西最大の勢力を誇る花菱会の構成員です。西田敏行演じる花菱会若頭の西野や、塩見三省演じる花菱会幹部の若頭補佐である中田の部下にあたり、“全員暴走”というキャッチフレーズに似つかわしい演技を見せてくれる事でしょう。
北野演じる大友とどういう関わり合いを見せるのでしょうか。特報映像では両肩に刺青が入っている花田のどっしりと構えた姿が公開され、ファンの間ではすでに「怖そう!」という声が飛び交っています。優しい父親役から冷徹な元極道役まで幅広い役柄をこなしてきたピエール瀧が、北野映画に初参戦します。
丸山/原田泰造
ピエール演じる花田の部下にあたる花菱会の組員・丸山役で出演するのはネプチューンの原田泰造です。公開された特報映像ではジャージ姿で誰かに銃を構える姿が映っています。前作の花菱会には城というプロの殺し担当がいましたが、今作では丸山がヒットマンとなっているのでしょうか?その点にもご注目下さい。
2016年はドラマ6作品、映画1作品に出演し念願の北野作品にも出演が決まった原田。脇役ながらも常に作品に深みを与えてきた味のある演技は、最終章と銘打たれている今作にも一風変わった風を吹かせてくれることでしょう。
吉岡/池内博之
池内博之演じる吉岡は、名高達男演じる三代目会長・白山が率いる関東最大規模の山王会に属する木村組の組員です。光石研演じる山王会若頭・五味の部下にあたります。特報ではスーツ姿で女性を両手に抱えながらお酒を飲む吉岡の姿が映し出されました。中野英雄演じる木村は前作で射殺されてしまいましたが、そんな木村組の部下・吉岡はどんな暴走ぶりを披露するのか、見ものです。
爽やかな好青年から意地汚い犯人役までそつなくこなす池内も今回北野組初参加。強面ばかりの濃い俳優陣の中でも池内の濃いハーフ顔は、まさに極道にいそうなリアリティーをかもし出しています。
市川/大森南朋
市川は北野演じる大友を慕う韓国の組織・済州島グループの幹部を務めています。前作にも出演した白竜演じる李とも繋がりがあります。特報では派手な貴金属を身に付け誰かと電話をしている市川の姿が。市川も大友と協力体制にあるのでしょうか……?白竜もまた出演しますので韓国マフィアたちの関係性にも目が離せません。
市川を演じたのは、これまで『Dolls』と『アキレスと亀』の2作品の北野映画に出演してきた大森南朋です。これまでに出演してきた多くの作品同様、念願の出演となるアウトレイジでも大森特有の独特の存在感を放っています。
森島/岸部一徳
岸部一徳演じる森島は関西最大の勢力を誇る花菱会の若頭補佐です。西田敏行演じる西野の側近で、塩見三省演じる中田とは同等の立場という事になりますが、その辺りの力関係は非常に複雑なもの。“全員暴走”と銘打たれているだけあって、仲間内の暴走ぶりにも期待できるでしょう。
岸部は2003年の『座頭市』以来、14年ぶりの北野作品出演。極道役はこれまでも何度か経験があり、今作でも穏やかそうに見えて実は迫力があるというギャップのある演技で観客を驚かせます。
野村/大杉漣
大杉漣が演じるのは花菱会の新会長・野村です。前作・ビヨンドでは神山繁演じる布施が会長を務め、山王会を支配下にするという功績を残しましたが、5年後が舞台になっている今作では野村が三代目会長に就任。大幅な勢力拡大を成し遂げた偉大な会長の後釜はどんな活躍を見せるのでしょうか。
北野映画の常連となっている大杉ですが、今作ではとても重要な役どころに抜擢。堅実なサラリーマンから精神異常のサイコパスなど、幅広い役どころを演じ分けるカメレオン俳優・大杉の暴走具合は必見です。