2018年1月18日更新

無音ですけど何か?最高のサイレント映画5選

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『アーティスト』(2011)
©The Weinstein Company/zetaimage

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発生音無し、動きですべてを伝えるサイレント映画

サイレント映画は、映画が誕生したとされる19世紀末から1920年代後半頃まで主流となっていた上映形態です。登場人物が声を発しない代わりに、テロップでセリフを表示して説明されていました。ここ日本においては、活弁士と呼ばれる人物が、内容やセリフを映像を見ながら解説する上映形態が一般的でした。 しかし1927年に、世界初のトーキー映画と云われる『ジャズ・シンガー』の公開を機にトーキー映画が普及、これによりサイレント映画は衰退していきます。21世紀となった現代では、新たにサイレント映画が製作される事は皆無に近いですが、メル・ギブソンやジョージ・ミラーのようにサイレント映画のようにセリフに極力頼らない作品作りを心がける監督も存在します。

ホラー映画の原点にしてドイツ表現主義の頂点【1919年】

あるドイツの田舎町で発生した連続殺人事件を起こしたとされる医師のカリガリ博士と、彼のしもべにして夢遊病患者のチェザーレ。彼らに遭遇した男フランシスの回想を通して、事件の全容が描かれます。 極端に白と黒のコントラストが強い映像や奇妙に歪んだセット、不気味なメイクアップといったサイレント映画ならではの特色を活かした、ドイツ表現主義を象徴する映画として知られます。今日のホラー映画の原点とも称されており、アルフレッド・ヒッチコックやティム・バートンなど、数多くのフィルムメーカーに多大な影響を与えました。

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孤児を拾った浮浪者の愛と涙の物語【1921年】

ある女性が子供を産むも、金銭的事情から育児ができないとして見知らぬ車の中に置き去りにしてしまいます。偶然その子を見つけた浮浪者は、紆余曲折の末に育てることを決意。5年の歳月を経て、その子は浮浪者の仕事を手伝うまでに成長するのでした。 サイレント映画の大スターと称されたチャーリー・チャップリンが、製作・監督・脚本・主演を兼ねたハートフルドラマ。冒頭で「笑いと、おそらくは涙の物語」というテロップが出るように、チャップリンのキャリア初といってもいい感動作に仕上がっています。 成長した子供を演じたジャッキー・クーガンは本作でスターとなるも、両親が彼のギャラを浪費した事により親子間で訴訟に発展。後にクーガン法という法律を生む事となりました。

一攫千金を求めて悪戦苦闘!名シーン続出の傑作コメディ【1925年】

山に眠る金鉱を求めて探検家たちが集っていた1920年代のアラスカ。同じく一攫千金の夢を抱くチャーリーは、大男の探検家ビッグ・ジムやお尋ね者の強盗とのいざこざや、麓の町に暮らす酒場の女性への片思いといった幾多の経験をします。そして、金鉱があるとされる手がかりを元に雪降る山へと向かうのでした……。 ロールパンにフォークを刺してダンスするシーンや飢えをしのごうと革靴を食べるシーン、クライマックスの山小屋での悪戦苦闘シーンなど、後々の映画で模倣されたシーンが多数登場します。チャップリン作品では初のキスシーンがあるのも特徴。しかし、1942年にチャップリン自身がナレーションを担当してリバイバル上映したバージョンでは、そのシーンはカットされてしまいました。

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チャップリンの代表作、盲目の女性に恋した放浪紳士の奮闘【1931年】

金無し宿無しの生活を送る男が、ある日偶然から、花売りをする盲目少女に金持ち紳士と誤解されてしまいます。これをきっかけに男は、酒癖の悪い富豪に振り回されながらも、彼女を助けるべく金策に走り回ります。 貧しい少女を献身的に支える浮浪者をユーモラスに描いたチャップリンの代表作と言える一本で、3年の歳月をかけて製作されました。中でも、チャップリン演じる浮浪者と少女との出会いのシーンは、1年以上かけて撮影したと云われています。またサイレント映画でありながら、拳銃の発砲音やボクシングのゴング音といった効果音を積極的に取り入れ始めています。

古き良きサイレント映画にオマージュを捧げたアカデミー賞作品【2011年】

1927年のハリウッドで人気を博していたスターのジョージは、駆け出し女優のペピーと出会い親しくなります。折しも映画界はサイレントからトーキーへと移行しつつあるも、ジョージは自身がアーティスト(芸術家)であるという気概からサイレントに固執。一方でペピーはトーキーの波に乗り、スター街道を歩んでいきます。 キャスト、スタッフの大半をフランス人で固めた、往年のサイレント映画にオマージュを捧げたラブロマンス。サイレントに馴染のない世代には新鮮と取られたこともあって高い評価を受け、アカデミー賞では第1回の『つばさ』以来の、実に83回ぶりに作品賞を受賞したサイレント映画となりました。全編サイレントで進行するも、2か所のみセリフを発するのも特徴。

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まだまだある、傑作サイレント映画

ここで取り上げた以外にも、面白いサイレント映画はたくさんあります。チャップリンと並ぶ喜劇王のバスター・キートンやハロルド・ロイドの出演作や、『散り行く花』などの悲恋物語。またはロシア製戦争映画『戦艦ポチョムキン』といった、今日の映画界に影響を及ぼした作品もあります。 サイレント映画の多くは著作権が切れたパブリック・ドメインとなっていて、中には動画サイトなどで手軽に見られたりする物もあるので、これを機に古き良き映画に触れてみるのはいかがでしょうか。