2018年2月11日更新

異色のポーランド映画『ゆれる人魚』を詳細解説【宮崎駿からの影響も】

このページにはプロモーションが含まれています
ゆれる人魚(プレス)
© 2015WFDIF, TELEWIZJA POLSKA S.A, PLATIGE IMAGE

AD

異色のホラー・ファンタジー『ゆれる人魚』ついに公開!

アグニェシュカ・スモチンスカ監督の長編デビュー作『ゆれる人魚』は、2016年サンダンス映画祭ワールドシネマコンペティションドラマ部門で審査員特別賞を受賞。その後も各国の映画祭で次々と受賞を果たし、ポーランドの新たな才能に世界が驚かされました。 そんな『ゆれる人魚』が、いよいよ2018年2月10日に日本でも公開。世界を魅了した新鋭監督のホラー・ファンタジーとは、いったいどんなものなのでしょう。 この記事では『ゆれる人魚』について、日本の意外な作品からの影響や、あらすじ、見どころ、視聴者の感想・評価などをまとめました。

『ゆれる人魚』の気になるあらすじ

ゆれる人魚(プレス)
© 2015WFDIF, TELEWIZJA POLSKA S.A, PLATIGE IMAGE

1980年代のポーランド、ワルシャワ。 あるとき美しい人魚の姉妹が、海から陸に上がってきます。ふたりがたどり着いたのはナイトクラブ。そこは、ストリップやライブ演奏を楽しむ大人の社交場でした。得意の歌を披露したふたりは、一夜にしてスターに。 そんななか、姉のシルバーはベーシストの青年と恋に落ちます。初恋に浮かれるシルバーでしたが、妹のゴールデンは複雑な心境。人魚にとって人間は「食べ物」でしかないからです。一方のゴールデンは、残虐な欲望を抑えきれなくなってきていました。 そんなふたりの間で、次第に緊張感が高まっていきます。

AD

様々なコントラストが少女の成長を映し出す

ゆれる人魚(プレス)
© 2015WFDIF, TELEWIZJA POLSKA S.A, PLATIGE IMAGE

『ゆれる人魚』の主人公である人魚の姉妹は、多くの人がイメージするであろう姿とは違っています。美しい上半身とは対照的に、彼女たちの下半身には巨大でグロテスクな尾ひれが。 その異様な姿と同様に、本作には対照的なイメージが多く登場します。 きらびやかなナイトクラブと暗い街並み。美しい姉妹の素朴な日常と残虐な素顔。そして、人間に恋するシルバーと人間を食べるゴールデン。美しさとグロテスクさのコントラストが、そこかしこに散りばめられています。 また、物語を編んでいく80年代ユーロビート風の楽曲の数々にも注目。暗喩的な歌詞が添えられた楽曲は、その豊かなバリエーションで、多くの「はじめて」を経験し成長する姉妹を映し出します。 ホラー、ファンタジー、ミュージカルなど様々なジャンルが融合した、大人のためのおとぎ話です。

人魚の姿は美しく、グロテスク

ゆれる人魚(プレス)
© 2015WFDIF, TELEWIZJA POLSKA S.A, PLATIGE IMAGE

本作で特に印象的なのは、人魚の姉妹の姿です。 美しい上半身とは対照的に、グロテスクで巨大な尾ひれを持つ彼女たち。これは、一般的にイメージされるアンデルセンの童話に登場する人魚姫ではなく、ギリシャ神話の怪物セイレーンをモチーフとしているからだそう。 スモチンスカ監督は、モンスターとしての人魚のありのままの姿を描き、また、この尾びれが醜くあってこそ、人間に恋をしたシルバーが、人間の脚になりたいと望む理由の1つになると語っています。 また、一種エロティックでもある人魚という題材でありながら、「少女」という存在がポルノにならないよう心がけたというスモチンスカ監督。 この尾びれに代表されるグロテスクな要素、シーンもその配慮に一役買っているのではないでしょうか。

AD

意外!?あの宮崎アニメから受けた影響とは

ゆれる人魚(プレス)
© 2015WFDIF, TELEWIZJA POLSKA S.A, PLATIGE IMAGE

スモチンスカ監督は『ゆれる人魚』について、意外にも日本のある有名なアニメ作品から大きな影響を受けたと語っています。 その作品とは『崖の上のポニョ』。どちらも人魚伝説をモチーフとしていますね。本作の人魚姉妹もポニョも、水辺からやってきて人間になることができます。さらに他のキャラクターやメタファーにも「ポニョ」からインスピレーションを得た部分があるとか。 たとえば、姉妹に人間との恋が叶わなければ海の泡になると教えたトリトンというキャラクターは、ポニョの父、フジモトを参考にいているとか。人魚たちを海に戻したいトリトンは、娘であるポニョを取り戻したいフジモトの姿と重なります。 他にも水に関するメタファーなど、多くの点でインスピレーションを得たとスモチンスカ監督は語っています。

多彩な音楽が彩る姉妹の「はじめて」の世界

ゆれる人魚(プレス)
© 2015WFDIF, TELEWIZJA POLSKA S.A, PLATIGE IMAGE

『ゆれる人魚』は、ホラーでありファンタジーであり、ミュージカルです。本作はナイトクラブが舞台ということもあり、様々なタイプの楽曲が登場。アメリカ公開時には、ホラー版『ラ・ラ・ランド』と宣伝されたほどだとか。 姉妹の美しいハーモニー、他のシンガーたちのセクシーな曲、ロックテイストの曲など、暗喩的な歌詞が添えられた楽曲は、そのバリエーションもとても豊か。 シーンによって様々な印象を与える音楽が、はじめて人間界で暮らす人魚姉妹の心情を伝えてくれます。 楽曲提供をしているのは、ポーランドのインディミュージックシーンで活躍するヴロンスキ姉妹。80年代ユーロビート風の楽曲もお聞き逃しなく。

ポーランドの新たな才能が放つ異色のホラー・ファンタジー『ゆれる人魚』は、2018年2月10日(土)から全国順次公開です。