【映画天国LGBT映画祭:第2週目】『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の見どころを徹底解説
【映画天国LGBT映画祭】6/12(火)は『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』を放送!
日本テレビで毎週火曜日2時ごろから放送されている「映画天国」。6月は国際的なLGBT月間であるプライド・マンスに合わせて、LGBT映画を特集放送します。 第2週目となる6月12日は、大ヒットロックミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(2001)が登場。 オフ・ブロードウェイで2年半というロングランを記録したこのロックミュージカルは、日本でも2004年から2009年までに何度か日本語版が上演されています。2012年には森山未來主演、映画監督・大根仁の大胆な再解釈で上演されました。 2017年にはオリジナルキャストであるジョン・キャメロン・ミッチェルが日本公演で主演を務め、ファンが熱狂しました。 2001年に映画化され、舞台とともに世界中でカルト的な人気を誇るこの作品の魅力を解説しましょう。
ロックミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のあらすじ
冷戦下の東ドイツで生まれた少年ハンセル。彼の夢は、いつかアメリカに渡りロックスターになること。 ある日ハンセルは、米兵から結婚を申し込まれたことをきっかけに、女性になることを決意。しかし手術は失敗し、股間には“怒りの1インチ(アングリーインチ)”が残ってしまいます。 ヘドウィグと名前を変えアメリカに渡ったものの、夫に捨てられてしまった彼女は、ロックスターになる夢を思い出し、バンドを組んで歌いはじめます。 そんななか、バイトで出会った青年トミーと恋に落ち、同じ夢を持つ彼に愛も音楽もすべてを捧げたヘドウィグでしたが……。
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のキャスト・スタッフを紹介
ジョン・キャメロン・ミッチェル/監督、脚本、ヘドウィグ役
監督、脚本、主演を務めたジョン・キャメロン・ミッチェルは、テキサス州エルパソ出身の俳優です。 オフ・ブロードウェイやブロードウェイの舞台に立っていたミッチェルは、1994年からミュージシャンのスティーヴン・トラスクとともに『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』に着手。1997年から始まった公演で、自らヘドウィグおよびトミー役を務めました。 「ヘドウィグ」は、舞台に着手する以前から女装ショーに出演していたときの名前で、ミッチェルはゲイであることを公表しています。 2017年には、エル・ファニング主演の『パーティで女の子に話しかける方法』で、脚本と監督を務めました。
マイケル・ピット/トミー・ノーシス役
ヘドウィグが恋に落ちる青年トミーを演じたのは、ニュージャージー州出身のマイケル・ピットです。 1999年にオフ・ブロードウェイでデビューしたピットは、その後、テレビ作品にも出演するようになり、本作への出演で知名度を上げました。 その後、『ラストデイズ』(2005)や『ファニー・ゲーム U.S.A』(2008)で主演を務め、2017年には『ゴースト・イン・ザ・シェル』にも出演しました。
ミリアム・ショア/イツァーク役
ヘドウィグのバンド「アングリーインチ」のメンバーであるイツァークは、女優で歌手のミリアム・ショアが演じています。 舞台、テレビ、映画と幅広く活躍しているショアは、舞台『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』でオリジナルキャストとしてイツァークを演じ、映画にも同じ役で出演。 本作のほかに、映画では『悪いことしましョ!』(2000)や、ミッチェルの長編映画2作目『ショートバス』(2007)などに出演しています。
サンダンス映画祭などで数々の賞を受賞!
人気ミュージカルの満を持しての映画化となった『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ 』は、2001年、インディペンデント映画を対象とするサンダンス映画祭で、最優秀監督賞と最優秀観客賞を受賞しました。 また、ベルリン国際映画祭では、LGBTをテーマとした作品に送られるテディ・ベア賞を獲得。 その他にも、ロサンゼルス映画批評家協会賞でニュー・ジェネレーション賞、サンフランシスコ国際映画祭では、最優秀観客賞を受賞しています。 ヘドウィグ役を務めたジョン・キャメロン・ミッチェルは、ゴールデングローブ賞コメディ/ミュージカル部門で、主演男優賞にもノミネートしました。
大物ミュージシャンたちをも魅了した楽曲の数々
原作となったミュージカルがオフ・ブロードウェイで上演していたころには、デヴィッド・ボウイやルー・リードなど、超大物ロックスターたちがお忍びで観劇したと言われています。 本作の核となる『愛の起源(原題:The Origin Of Love)』は、ミュージカル史に残る名曲と言っていいでしょう。この曲は、マドンナがその権利を取得しようとしたことでも話題になりました。 それ以外にも、映画では観客も歌えるように歌詞が表示されるポップな曲や、パンク調の激しい曲、優しいバラードなど、個性的で完成度の高い楽曲ばかりです。 特に、70年代グラムロックファンにはたまらないでしょう。
ミュージカル映画ではめずらしい撮影現場での生歌
多くのミュージカル映画では、先に演奏と歌を録音し、撮影時は口パクで演技をします。 しかし、ジョン・キャメロン・ミッチェルはその方法を嫌い、撮影現場で生歌を披露しました。 バンドのメンバーは事前にスタジオで演奏を録音し、その音源に合わせてミッチェルが撮影現場で歌うという、カラオケのような手法を採用。バンドの演奏は当て振りです。 その後、別々に録られた演奏と歌をライブ演奏に聞こえるようミックスしています。 実際にその場で歌っているからこそ、映画でもヘドウィグのパフォーマンスには迫力があるのでしょう。
誰もが“魂のカタワレ”を探している
本作の重要なテーマとなっている楽曲『愛の起源』は、ヘドウィグが幼いころ母から聞いた、古代ギリシャの哲学者プラトンの主張に基づいています。彼は、著書『饗宴』の中で「愛はひとつになりたいという願い」と語りました。 詳細は楽曲を聴いていただきたいのですが、手術によって不完全な身体になってしまったヘドウィグでなくても、共感するところのある歌詞なのではないでしょうか。 きらびやかな衣装を身にまとったヘドウィグが胸に秘める、つらい過去と切実な思いが、最高にロックな楽曲とともにつづられる本作は音楽ファンも必見です。
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』は、6月12日(火)の2:09〜3:59(月曜深夜)、日本テレビ「映画天国」にて放送。また、6月19日(火)2:09~3:59(月曜深夜)には、「映画天国LGBT映画祭」第三弾作品として、『チョコレートドーナツ』が放送されます。