6月はLGBT月間!『人生はビギナーズ』が地上波初放送
6月は、世界的にLGBT月間とされる「Pride Month(プライド・マンス)」。 セクシャルマイノリティに関するイベントなどでは、誰もが自分の性的指向や性自認に誇りを持つべきという考えから、「プライド」という言葉がよく使われます。 プライド・マンスには、ニューヨークのエンパイア・ステート・ビルがゲイのシンボルカラーであるラベンターピンクにライトアップされるなど、毎年世界各国でパレードなどさまざまなイベントが開催されます。 そんなプライド・マンスに合わせて、日本テレビの「映画天国」ではLGBT映画を特集放送。 今回は、その第1弾となる『人生はビギナーズ』(2010)をご紹介しましょう。
『人生はビギナーズ』のあらすじ
恋愛に奥手なオリヴァーは、38歳独身。母が亡くなって半年がたったある日、オリヴァーは75歳の父ハルから、彼がゲイであることをカミングアウトされます。 戸惑うオリヴァーをよそに父はゲイとして友人をつくり、若い恋人もでき、人生を楽しんでいきます。その姿を見て、オリヴァーも人生を変えなければと考えるようになりました。 しかし、父は末期ガンを発症し亡くなってしまいます。 父が亡くなってから悲しみに沈んでいたオリヴァーは、友人に連れて行かれたパーティーでフランス人女優のアナと出会います。父とその恋人だったアンディの姿を見ていたオリヴァーは、勇気を出してアナと付き合うことにします。
『人生はビギナーズ』のキャストとスタッフをご紹介!
ユアン・マクレガー/オリヴァー・フィールズ役
主人公オリヴァーを演じたユアン・マクレガーは、スコットランド出身の俳優です。 1999年にダニー・ボイル監督の『トレインスポッティング』で映画初主演を務め、世界的に有名になりました。また、「スターウォーズ」新三部作(1999〜2005)のオビ=ワン・ケノービ役やティム・バートン監督の『ビッグ・フィッシュ』(2003)などへの出演で知られています。
クリストファー・プラマー/ハル・フィールズ役
オリヴァーの父、ハルを演じたのはカナダ・オンタリオ州トロント出身のクリストファー・プラマーです。 1958年に映画デビューしたプラマーは、日本では特に『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)のトラップ大佐役や『スタートレック Ⅵ 未知の世界』(1991)でチャン将軍役を演じたことで知られています。 また、2017年には『ゲティ家の身代金』でアカデミー助演男優賞にノミネートし、88歳で演技部門では最年長のノミネートを記録しました。
メラニー・ロラン/アナ役
フランスの女優メラニー・ロランは、オリヴァーと恋に落ちる女性、アナを演じています。 『Un pont entre deux rives (原題) 』(1999)で映画デビューしたロランは、フランスで数々の映画に出演。2006年には『マイ・ファミリー 遠い絆』では、フランスのアカデミー賞と言われるセザール賞で有望若手女優賞を受賞しました。 ロランのハリウッドデビュー作は、クェンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』(2009)です。
監督/脚本:マイク・ミルズ
本作で監督・脚本を務めたのは、カリフォルニア州バークレー出身のマイク・ミルズです。 ミルズはCMやMVなどの監督を経て、2005年にインディペンデント映画『サムサッカー−17歳、フツーに心配な僕のミライ』で長編映画デビュー。 グラフィックデザイナーとしても活躍しており、ソニック・ユースやビースティ・ボーイズのレコードカバーのデザインも手がけています。
様々な賞レースで助演男優賞や作品賞、アンサンブル演技賞などを受賞
本作では、オリヴァーの父ハルを演じたクリストファー・プラマーが、ゴールデングローブ賞や英国アカデミー賞、全米映画俳優協会賞、全米映画批評家協会賞、インディペンデントスピリット賞などで助演男優賞を受賞しています。 なかでもアカデミー助演男優賞は、プラマーにとって長い俳優人生のなかで初めてのアカデミー賞受賞となりました。 また『人生はビギナーズ』は、インディペンデント・スピリット賞で作品賞とキャスト全員の演技が評価されるアンサンブル演技賞を受賞。監督であるマイク・ミルズの代表作となります。
マイク・ミルズの実体験をもとに制作された
『人生はビギナーズ』の脚本は、監督マイク・ミルズが自身の家族をモデルに執筆しています。 ミルズの父親はハルと同じくゲイで、ミルズの母親がガ亡くなった後やはり75歳でカミングアウト。これは、ミルズの父親が亡くなる直前の出来事だったとか。父からのカミングアウトを受け、これから両親を失うことになる自分は、それを受け止め、なんらかの形で乗り越えなければならなかったミルズ。 しかし、この個人的な出来事をただ乗り越えるだけではなく、父のカミングアウトが人として深い意味を持つと考え、本作を制作しました。
ハルの愛犬アーサーがかわいい
ハルの愛犬でジャックラッセルテリアのアーサーは、この物語にスパイスを添える特別な存在です。 ハルの入院闘病中から、アーサーはオリヴァーのもとで暮らすことになりますが、最初はなかなか懐きませんでした。しかし、あるときからひとりで留守番をするのを嫌がり、オリヴァーはどこにでもアーサーを連れて行くようになります。 そしていつのころからか、アーサーはオリヴァーと会話をするようになりました。 アーサーを演じた俳優犬コスモは、本作のほかに『ホテル・バディーズ ワンちゃん救出大作戦』(2009)などへにも出演しています。
誰でもいくつになっても新たな人生を始められる
ゲイであることをカミングアウトし、最後に自分らしい人生を送った父ハル。彼を失った悲しみに打ちひしがれながらも、父のように人生を楽しもうと決意する息子のオリヴァー。 登場人物たちはそれぞれに痛みを抱え、ときに立ち尽くしてしまいそうになるものの、なんとか前を向いて進んでいきます。それはゲイだった父も、恋愛に絶望していたオリヴァーも、そしてオリヴァーが恋に落ちたアナも同じです。 登場人物の誰もが決して若いとは言えない年齢で、新たな一歩を踏み出す姿をチャーミングに描き出した『人生はビギナーズ』。LGBT映画としてあまり意識しなくても楽しめる作品です。
そんな本作は、2018年6月5日(火)2:09~3:59(月曜深夜)、日本テレビ系で放送される「映画天国LGBT映画祭」で地上波初放送!同番組では、6月12日に『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』、6月19日に『チョコレートドーナツ』も放送されます!