2017年7月6日更新

映画に学ぶ。LGBTってなに?【『キャロル』『リリーのすべて』を観る前に知っておきたい】

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リリーのすべて

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LGBTをテーマにした映画が注目を浴びている

キャロル
ケイト・ブランシェットがアカデミー主演女優賞にノミネートされたことで注目を集めている映画『キャロル』が2016年2月に公開されました。 また2016年3月に公開された映画『リリーのすべて』では、主演を務め、アカデミー主演男優賞にノミネートされたエディ・レッドメインの好演が話題となりました。
リリーのすべて4
これらの映画の共通点、それは同性愛をテーマにした映画であること。 『キャロル』で主演を務めたケイト・ブランシェットも語ったように、かつては広く受け入れられることが難しかった同性愛をテーマにした映画が、賞レースでも高く評価されるようになってきており、映画においても実社会においても非常に関心の高いトピックであることがうかがえます。

そもそもLGBTってなんだろう?

アデル、ブルーは熱い色
映画だけでなく、ドラマやテレビ番組においても性的(または性的指向)マイノリティについて多くとりあげられており、彼らがマイノリティだからといって受ける差別や偏見は社会問題にもなっています。 最近よく耳にする”LGBT”という言葉は、そういった性的マイノリティの人々への理解を深めようという風潮とともに広く使われるようになっていきました。 しかしながら、ひとくちにLGBT、性的マイノリティといっても実にさまざまなタイプの人たちがいるのです。 今回はそんな今知っておきたいLGBTについて、性的マイノリティに焦点を当てた映画からわかりやすく解説していきたいと思います。

L:レズビアン

映画『キャロル』よりキャロル(ケイト・ブランシェット)とテレーズ(ルーニー・マーラ)

ケイト・ブランシェットがアカデミー主演女優賞にノミネートされたほかアカデミー賞に計9部門でノミネートされるなど注目を集めている映画『キャロル』では女性同士の恋愛が描かれています。 デパートのおもちゃ売り場で働いていたテレーズ(ルーニー・マーラ)は子供のためにおもちゃを買いに来た主婦・キャロル(ケイト・ブランシェット)の美しさに心を奪われます。彼女が忘れた手袋をきっかけに交流することになったふたりは、しだいに惹かれあっていくのでした。
ルーニー・マーラ『キャロル』
自らの性も女性であり、女性のことを好きになる人のことはレズビアンと称されています。『キャロル』に登場するふたりもそうであるように、決して”どちらかがボーイッシュな女性で、もう一方はフェミニンな女性”というわけではありません。 そういう場合も含まれますが、自らも女性として、女性を対象に恋をする人のことを指した言葉です。

G:ゲイ

『ブロークバック・マウンテン』よりイニス(ヒース・レジャー)とジャック(ジェイク・ジレンホール)

ブロークバック・マウンテン
2006年に公開されて、世界で大きな注目を集めた映画『ブロークバック・マウンテン』では男同士のラブストーリーが描かれています。 羊の放牧を手伝う期間限定の労働者として出会ったイニスとジャックは過酷な労働のなかで友情を深め、ふたりの気持ちはいつしか恋愛感情へと発展していきます。お互いに思い合いながらも、関係を続けるわけにはいかないと葛藤していたふたりは、それぞれ家庭を築き、別の道を歩もうとしますが、思いを断ち切れず――。
ヒース・レジャー
自らの性が男性であり、男の人を好きになる人のことはゲイと称されます。 近年のテレビでは多くのオネェタレントとよばれる人々が活躍していますが、女性らしい言葉で話すひとやオネェキャラと言われるひとがゲイだというわけではありません。 男として男を恋愛対象としているひとを全体的に含んだ言葉です。ドラァグクィーンとよばれるように派手な衣装やメイクでパフォーマンスをする人も、外見の変化を好まずにいる人もさまざまです。

B:バイセクシュアル

『ショー・ミー・ラヴ』よりエーリン(アレクサンドラ・ダールストレム)

ショー・ミー・ラヴ
日本では2000年に公開されたスウェーデン映画『ショー・ミー・ラヴ』。本国では『タイタニック』を凌ぐ大ヒットを記録した少女の恋をナチュラルに描いた青春映画です。 舞台はスウェーデンのとある学校。クラスに友達がおらず、寂しい毎日を送っていたアグネス(レベッカ・リリエベリ)は密かにクラスメイトの快活な美少女エーリン(アレクサンドラ・ダールストレム)に恋をしていました。いっぽうのエーリンは学校の人気者で、ボーイフレンドからのアプローチも頻繁に受けていました。 まったく対照的なふたりでしたが、エーリンがアグネスの誕生日パーティーに訪れたことがきっかけでふたりの交流が始まっていきます。一筋縄ではいかない少女の恋心のゆくえとは――
ショー・ミー・ラブ2
バイセクシュアルとは、相手の性別にこだわらないひとのことを指します。つまり、恋愛対象は同性でもありうるし、異性でもありうるのです。 エーリンとアグネスは惹かれ合い、お互いに恋愛感情を抱くようになりますが、エーリンはボーイフレンドがいたこともあり、男性を好きになるということもあるのです。 先ほど紹介した映画『ブロークバック・マウンテン』は、男同士の恋愛という部分が注目されるがゆえにゲイをテーマにした映画だとみられることが多いですが、主人公のふたりは結婚し、子供もいることから、バイセクシュアルとしてとらえることができるという見方もあるようです。

T:トランスジェンダー

『リリーのすべて』よりリリー・エルベ/アイナー・ヴェゲネル(エディ・レッドメイン)

2016年3月に公開された『リリーのすべて』は、世界ではじめて性別適合手術を受けたデンマークの画家・アイナー・ヴェゲネルの人生を描いたノンフィクションの物語です。 デンマークで妻のゲルダ(アリシア・ヴィキャンデル)とともに暮らすアイナーは妻に頼まれて女装をして絵のモデルを頼まれたことがきっかけで、自分の中にある女性性に気づきます。時を重ねるなかでますます自分の内なる女性性を強く意識するようになったアイナーは、性別適合手術を受け、女性・リリーとして人生を歩んでいきたいと願うようになります。
リリーのすべて3
LGBTのTは、トランスジェンダーの頭文字です。 トランスジェンダーとは身体上の性別と、心の性別の不一致を感じているひとたちのことを指した言葉です。身体上の性別とは異なる性で生きたいと望む、あるいは性別適合手術などを受けて生まれたときとは別の性で生きるひとのことを称しています。 完全に性を移行したいと考えるひともいれば、場面に応じて性別を区別しているひともいます。 性的指向にかかわらず、自らの性についてを考えたときに使われる言葉です。

自らをクイアと呼ぶひとも。性にとらわれない考え方も。

俳優エズラ・ミラーは自身がクイアだと発言

エズラ・ミラー
『ウォールフラワー』などで知られ、3月公開の『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』にも出演するエズラ・ミラーは恋愛対象は女性に限らないという発言をし、自身のことをある一定の性の概念にはとらわれないクイアであると表現しました。 もとは差別的に使われていた”クイア”という言葉ですが、現在はLGBTの当事者が多様な性を肯定するニュアンスで使う言葉として広まっているようです。LGBTという表現が性的マイノリティをタイプ分けしてしまっているという声もあるため、クイアという言葉で総称されることも今は多いようです。

Q:クエッショニングというあり方も

自分の性を男性・女性といった既存の概念にあてはめない、またはあてはめられないと感じるひともいます。 男か女どちらかの性に自分のアイデンティティをもつことに不安を覚えるひとや、自分の性的アイデンティティを探している段階のひとを指す言葉、クエッショニングの頭文字QをLGBTの頭に付け加えることも多くなっています。

映画でLGBTを知る

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LGBTという言葉も多くの人が知るところとなり、同性婚のニュースなど、社会に多様な性の形が認知されるようになっています。 映画の世界においても、「禁断の愛」としてのイメージが強かった性的マイノリティの恋愛が実にさまざまな作品で描かれるようになってきたといえるでしょう。
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とはいっても、性的マイノリティをテーマにした映画は必ずしも多くの人に届いているとは言い難いのが現状です。そんななかで、性的マイノリティを描いた作品を上映する東京国際レズビアン&ゲイ映画祭が1992年に始まり、昨年も7月に開催されました。 『キャロル』『リリーのすべて』など、性的マイノリティを描いた作品が高く評価されている昨今。作品を楽しむだけでなく、性的マイノリティについて知識を深めてみるいい機会にしてみてはいかがでしょうか。