2018年6月8日更新

【映画天国LGBT映画祭:第3週目】『チョコレートドーナツ』の見どころを徹底解説

6月のLGBT月間(プライド・マンス)に日テレ「映画天国」では、LGBT映画を特集放送。第3週目、6/19に放送される『チョコレートドーナツ 』のあらすじ、見どころをご紹介します。

日テレ「映画天国」LGBT映画祭 第3週目は『チョコレートドーナツ』を放送!

国際的にLGBT月間(プライド・マンス)とされている6月。日本テレビの「映画天国」では、これに合わせてLGBT映画祭と題してLGBTをテーマとした映画を放送してきました。 最終週となる第3週目は、『チョコレートドーナツ』(2012)を放送。差別や偏見にされされる人々が、お互いの居場所となり絆を深めていく本作は、全米の映画祭で上映され多くの観客賞を受賞しました。 1970年代のアメリカ、ブルックリンで実際にあった「障害を持ち育児放棄された子供と、家族のように暮らすゲイの話」をもとにした本作について、あらすじや見どころをご紹介しましょう。

『チョコレートドーナツ』のあらすじは?

1979年のカリフォルニア。同性愛差別がまだまだ色濃い時代、ゲイバーで女装ショーのスターを務めるルディは、同性愛者であることを隠して生きる検察官ポールと出会い、恋に落ちました。 そんなある日、隣の部屋の騒音に腹を立てて乗り込んでいったルディは、そこに住むシングルマザーが夜遊びのために置き去りにしていったダウン症の少年マルコと出会います。ルディはポールに相談しますが、「家庭局に任せるしかない」と突っぱねられてしまいました。 母親が薬物所持で逮捕され、マルコは施設に入れられてしまいますがその夜に脱走。家に帰ろうと歩いているところをルディが偶然見つけ、連れて帰ります。 ルディとポールは合法的にマルコを引き取るため、刑務所にいる母親に、彼女の服役中マルコの監護権を認めてもらうことに。 こうして3人は愛情深い家庭を築いていくのですが……。

キャスト&スタッフをご紹介!

アラン・カミング/ルディ・ドナテロ役

ルディを演じたアラン・カミングはスコットランド出身の俳優です。1985年にグラズゴーのロイヤル・スコティッシュ・アカデミー・オブ・ミュージック・アンド・ドラマを卒業した後、舞台、テレビ、映画と幅広く活躍しています。 ミュージカル俳優としても高く評価されており、1993年にミュージカル『キャバレー』でMC役を演じ、イギリス演劇界でもっとも権威のあるローレンス・オリヴィエ賞にノミネート。1998年には同役でトニー賞主演男優賞を受賞しました。 また、映画「スパイキッズ」シリーズや『X-MEN2』(2003)、テレビシリーズ『グッド・ワイフ』(2010〜2016)などへの出演でも知られています。 カミングはバイセクシャルであることを公表しており、1985年に結婚した女優ヒラリー・リオンと1993年に離婚。2007年にグラフィック・アーティストの男性と結婚しました。

ギャレット・ディラハント/ポール・フラガー役

ルディの恋人であり、弁護士のポールを演じたギャレット・ディラハントは、カリフォルニア生まれ、ワシントン育ちの俳優です。 ディラハントは、ワシントン大学でジャーナリズムを学んだ後、ニューヨーク大学の演技プログラムを卒業し、美術学修士号を取得。オフ・ブロードウェイやブロードウェイをはじめ全米各地の舞台で経験を積み、1993年に長寿ソープオベラ『ワン・ライフ・トゥ・リブ』でテレビデビューしました。 映画では、『ノーカントリー』(2007)や『LOOOPER/ルーパー』(2012)、『それでも夜は明ける』(2014)などに出演。2018年現在はテレビシリーズ『フィアー・ザ・ウォーキング・デッド』にメインキャストとして出演しています。

アイザック・レイバ/マルコ・ディレオン役

薬物依存の母親を持つダウン症の少年マルコを演じたアイザック・レイバは、中学時代から俳優を目指し、学校で多くの舞台に出演してきました。 高校の3年間は、知的障害者の自立・社会参加を支援するスポーツ組織「スペシャルオリンピックス」でも活動。 2010年からは、カリフォルニア州イングルウッドにある障害を持つ大人のための演劇学校パフォーミング・アーツ・スタジオ・ウェストに通いはじめ、数週間後に本作のオーディションテープを撮影しました。レイバにとってこれが初めてのオーディションだったそうです。 2016年には『ブレイキング・バッド』(2008〜2013)で知られるブライアン・クランストン主演の映画『アイ’ム・ホーム 覗く男』に出演しています。

監督/脚本:トラビス・ファイン

本作で脚本/監督を務めたトラビス・ファインは、もともと俳優として活動していました。 ジョージア州アトランタ出身のファインは、俳優として『チャイルド・プレイ3』(1991)や『シン・レッド・ライン』(1998)、『17歳のカルテ』(1999)などへの出演で知られています。 ファインは9.11の後、突然エンターテイメント業界を離れ飛行機学校に入学。パイロット兼脚本家に。自動操縦中の甲板でシナリオを書き上げた監督第6作目『The Space Between (原題)』は、トライベッカ映画祭で世界プレミア上映されました。 『チョコレートドーナツ』は、ファインの監督作で初めて日本公開された作品です。

全米の映画祭で観客賞を総ナメ!

2012年に全米各地の映画祭で上映された『チョコレートドーナツ』は、トライベッカ映画祭をはじめ、シカゴ国際映画祭、プロヴィンスタウン国際映画祭、ナパ・バレー映画祭、ウッドストック映画祭、セドナ映画祭で観客賞を受賞しました。 シアトル国際映画祭ではアラン・カミングが最優秀主演男優賞を受賞し、最優秀作品賞も獲得。 また、「中傷と闘うゲイ&レズビアン同盟(GLAAD)」の主催するGLAADメディア賞と、LGBTをテーマとする作品を対象とした映画見本市であるOutfestでも観客賞を受賞し、Outfestではアラン・カミングが主演男優賞も受賞しています。

トニー賞受賞俳優アラン・カミングの圧倒的な歌声は必聴

先ほどご紹介したとおり、ルディを演じるアラン・カミングは、トニー賞を受賞した世界でも最高のミュージカル俳優の1人です。 ルディは歌手を夢見ながらも、生活のためにゲイバーで口パクの女装ショーをしていますが、劇中で披露する歌声は圧巻の一言。 彼の歌う曲やパフォーマンスはすべて、その時のルディの心境を的確に表現しています。とくに、歌手として認められ始めたルディが歌うボブ・ディランの名曲『アイ・シャル・ビー・リリースト』は、社会の差別や偏見、好奇の目に晒された登場人物たちの魂の叫びそのものです。

脚本家は同じアパートの住人をモデルに『チョコレートドーナツ 』を書いた!?

『チョコレートドーナツ』は、1970年代に実際にあった出来事がもとになっています。 ベテラン脚本家であるジョージ・アーサー・ブルームは、ルディのモデルとなった男性と同じアパートに住んでいました。 実際には、マルコのモデルとなった12歳の少年はダウン症ではなく自閉症だったようで、薬物依存で娼婦だった母親から祖母のもとに預けられていました。しかし、祖母もお金がなく少年は医療ケアを受けていませんでした。近所に住んでいたルディのモデルとなった男性は彼と友達になり、着るものから食事の世話、学校に通わせるなど、実質的に少年を育てたそうです。 ブルームは友人にその男性を紹介され、彼の経験をもとに「もし彼が法的に少年を養子にしようとしたら?」という着想を得て、30年前に本作の脚本を書き上げました。

一緒に過ごした時間はあたたかい思い出になる

監督のトラヴィス・ファインは、最初に本作の脚本を読んだとき泣き崩れたといいます。自身も親であるファインは、愛する我が子を失うつらさはセクシャリティに関係なく普遍的なものだと感じ、映画化を決めました。 ルディとポールの恋愛を描く映画でもある本作では、70年代当時の同性愛に対する差別や偏見がどのようなものであったかを知ることができます。 しかしそれだけでなく、たとえ失ったとしても出会えたこと、愛したこと、一緒に過ごした時間はかけがえのないものになるということを教えてくれる作品でもあります。 決してハッピーエンドではない本作ですが、観た後には悲しみだけでなく胸にあたたかいものが残るのではないでしょうか。

『チョコレートドーナツ』は、6/19(火)2:09〜3:59(月曜深夜)、日本テレビ「映画天国」にて放送です。