「家族はつらいよ」シリーズ全主要キャスト徹底紹介
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山田洋次監督の「家族はつらいよ」シリーズとは!
『家族はつらいよ』は山田洋次監督による日本映画で、第1作目が2016年3月12日に公開されました。三世代で暮らす平田家で起きるトラブルをユーモアたっぷりに描いた作品で、家族は一家の大黒柱である周造に振り回されています。 第1作目のテーマは熟年離婚で、周造と富子夫婦を中心とした家族の有様を描きます。その後、第1作目の人気も手伝い、第2作目が2017年5月27日に公開。無縁社会をテーマに平田家の在り方を描きました。 2018年には第3作目も公開。3作目では「主婦への賛歌」がテーマとなり、主役も長男の嫁の史枝とシフト。史枝が家出騒動を起こし、平田家は大パニックに。 ここから作品のあらすじ、キャスト、監督や前身となった作品などをご紹介していきますので、どうぞお付き合いください。
第1作目『家族はつらいよ』のあらすじ
東京の郊外で三世代暮らす平田家。家には一家の大黒柱の周造に妻の富子、長男の孝之助に妻の史枝とその子供たちが。長女夫婦も実家の近くで暮らしており、既に定年を迎えた周造は趣味に興じながら気ままな毎日を送っていました。 しかし、そんな周造に悲劇が訪れます。妻の富子が離婚届を渡してきたのです。富子は落ち着き払っていましたが、突然の離婚騒動で平田家はパニックに。離婚の理由を富子に聞けば、自由気ままで自分のことを振り返りもしてくれない夫に嫌気が差したのだと言います。そして、今度は家族が互いの意見を言い合う中、興奮した周造が倒れてしまい、救急車を呼ぶ羽目に。 一命を取り留めた周造は入院の間にいろいろな事を考えます。そして退院後、富子が望むなら、と離婚届にサインし「今までずっと一緒に居られて良かった、ありがとう」と言うのです。富子は「その言葉が聞ければ十分」と離婚届を破り捨て、離婚騒動は終止符を打ったのでした。
第2作目『家族はつらいよ2』のあらすじ
2でも頑固な周造がいろんな問題を引き起こします。 家族は最近周造の車に傷が増えていることを思い悩んでおり、周造に免許証の返納を提案します。しかし、頑固な周造は聞く耳を持ちません。そして、あろうことか妻・富子の旅行中に、周造がいきつけの居酒屋の女将・かよとのドライブで事故まで起こす始末。 その際は、かよの機転により事なきを得た周造でしたが、この旅で偶然にも同級生の丸田と遭遇。後日、周造は丸田を探し出して旧友と盛り上がりました。しかし、よくよく聞いてみれば丸田は輝かしい過去とは裏腹に、事業には失敗し、家族と別れ1人ひっそり暮らしていると言います。 そんな丸田を激励し、自宅に連れ帰った周造。翌朝、免許証返上の件で家族会議を開こうと集まった家族が周造を起こしに行くと、寝室で見知らぬ老人が亡くなっていました。それは、丸田でした。 警察が事情聴取に来るも訳も分からず、警察官の前で口喧嘩を始めてしまう平田家。次男の庄太と妻の憲子が丸田に付き添って警察へ行くと、身寄りのない丸田は葬儀を開いてくれる人もいないと言います。それを聞いた周造は「何故真面目に働いてきた丸田がこんな目に」と悔しさを露わにします。 周造は平田の大好きだった銀杏を棺桶に入れ、火葬場で銀杏のはじける音を聞きながら丸田を見送ったのでした。
第3作目『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』のあらすじ
3はしっかりものの長男の妻・史枝の物語です。 日頃家族のために尽くす明るいしっかり者の史枝。しかし、ある時部屋を掃除している最中、疲れからか転寝をしてしまい、その間に泥棒に入られ40万の現金が盗まれてしまいます。史枝はその事実を夫に打ち明けたのですが、ヘソクリをしていたことをピンハネと言われ、昼寝のことも夫に責められます。 日頃から我慢の連続だった史枝はとうとう家出し、実家へ帰ってしまいます。今まで家事を一手に引き受けていた史枝がいなくなり、平田家は大混乱。それでも、なかなか妻への感謝の気持ちを見せない幸之助。この性質は父の周造譲りのようです。 しかし、出会った当時はロマンスもあった2人。庄太の根気強い説得の甲斐もあり、史枝の大切さを実感した幸之助がいよいよ史枝を迎えにいきます。そして「お前がいないと困るんだ」と史枝に告げました。 こうして無事、史枝を連れ帰った幸之助。離婚の危機を無事に乗り越えることができたのでした。
三世代で暮らす平田家の魅力的なキャストたち
親子三世代の家族というのは昔と比べて減少しており、厚生労働省の発表では2018年現在はその数自体もかなり少なくなっているとのこと。昔は当たり前のようになった大家族も核家族化しつつあり、平田家のような家族というのは珍しい存在なのかもしれません。 大家族は魅力的にも思えますが家族とはいえ、1つの家に多くの人が住めばそれだけトラブルも発生するというもの。作中ではドタバタな平田家を俳優陣が魅力的かつユーモラスに演じています。ベテラン俳優が揃い、豪華キャストとなった『家族はつらいよ』。 ここから1人ずつご紹介していきます。
平田周造/橋爪功
自由で気ままな一家の大黒柱
自由気ままに人生を謳歌する、一家の大黒柱平田周造。妻は家のことをやって当たり前というところがあり、それが理由で離婚の危機に陥りました。 自由奔放で我儘ですがどこか憎めない、そんな周造を演じたのは橋爪功です。橋爪功は1941年9月17日生まれ、大阪出身の舞台、映画俳優です。1961年から劇団で活動を始め、暫くは芽が出ませんでしたが1974年に舞台『スカパンの悪だくみ』で主演を演じたことで一気に注目が集まりました。 1975年からは劇団集団円の創立に参加し、数々の舞台に登場するように。過去には日本アカデミー賞優秀助演男優賞、主演男優賞を受賞するなどテレビ界になくてはならない人物となっています。代表作は数えきれないほどありますが、NHKの大河ドラマ『武田信玄』やアカデミー賞を受賞した『おいしい結婚』『お日柄もよくご愁傷さま』などが有名です。
平田富子/吉行和子
私小説を趣味にする優しい母
カルチャースクールで小説を習う、オシャレで上品な母・富子。我儘な周造と長年連れ添い、面倒を見てきましたが1ではその不満が爆発してしまったようです。 穏やかな富子を演じるのはベテラン女優の吉行和子です。1935年8月9日生まれ、東京出身の女優でエッセイスト、俳人でもあります。1955年頃から舞台、映画女優として活動を始め数多くのドラマ、映画に出演。1978年に出演した『愛の亡霊』への出演では、性愛をテーマにした映画ということもあり、主人公役を演じ、周囲を驚かせました。 この『愛の亡霊』では日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。そのほか、本作品の前身となった『東京家族』でも同じく優秀主演女優賞を受賞しています。
平田幸之助/西村まさ彦
父親譲り?の頑固な一面を持つ長男
周造・富子の息子、幸之助。少々頑固なところがあり、妻に対して理屈っぽくて素直ではないのは父の周造譲りのような気がします。3作目で妻が家出というピンチに陥りました。 長男の幸之助を演じたのは西村まさ彦です。1960年12月12日生まれ、富山県出身の俳優です。『有頂天ホテル』などで知られる脚本家の三谷幸喜の作品に数多く出演しています。特に1994年から放送された「古畑任三郎」シリーズが有名で、この時に演じた今泉慎太郎役から知名度がぐっと上がっています。 三谷作品では『王様のレストラン』『ラヂオの時間』にも出演しており、コミカルな役からシリアスな役まで器用にこなす人物です。
平田史枝/夏川結衣
いつも明るく家族を支える長男の妻
三世代家族を支えるしっかり者です。義両親の世話、夫の世話、子どもの世話に追われ、3作品目でついにその不満が爆発し家出をしてしまいました。 しっかり者の史枝を演じるのは夏川結衣です。1968年6月1日生まれ、熊本県の出身でモデル活動を経て1992年にドラマ『愛という名のもとに』で女優デビューを果たしました。 本作品も含め数多くの代表作を持つ夏川。『人間ドキュメント 夏目雅子物語』では、美女で有名な夏目雅子役に抜擢され、第二の夏目雅子と言われて話題となりました。
金井成子/中嶋朋子
気の強い平田家の長女
平田家の長女で幸之助の妹に当たります。少々気が強く、税理士の仕事をしており夫の泰蔵とは喧嘩が絶えない様です。 気の強い長女・成子を演じたのは中嶋朋子。1971年6月5日生まれ東京都出身で、1981年から放送されたドラマ『北の国から』の黒板蛍を演じて天才子役と評されました。その後、安定した演技力で数多くのドラマ映画に出演、1990年に出演した映画『つぐみ』では、ブルーリボン賞の助演女優賞を受賞しました。
金井泰蔵/林家正蔵
気が弱く少々頼りない長女の夫
妻とは反対に頼りなく、成子に頭が上がらない夫です。成子と同じ税理士事務所で雑務をこなしています。 気の弱い夫、泰蔵を演じるのは落語家の林家正蔵です。1962年12月1日生まれ東京都の出身、前名は林家こぶ平で2005年に林家正蔵を襲名しました。俳優では子役から活動しており、1970年のドラマ出演をきっかけに数々のドラマに出演しています。 2作目のPRイベントの際、今作品のドラマを自分の境遇に重ね、監督の山田にぜひ“海老名家の食卓”を撮ってほしい」と懇願したというエピソードがあります。
平田庄太/妻夫木聡
変わり者で生真面目な次男
ピアノの調律師をしている次男です。とても落ち着いた性格で、家族の中ではパイプ役となっています。 おっとりした雰囲気のある庄太を演じるのは妻夫木聡です。 1980年12月13日生まれ、神奈川県の出身でモデルを経て、1998年にドラマ『すばらしい日々』でデビューしています。2001年の映画『ウォーターボーイズ』では日本アカデミー賞の優秀主演男優賞・新人俳優賞をW受賞しており、作品と共に一躍有名となりました。 数多くの代表作がありますが、近年では2016年に李相日監督の映画『怒り』で綾野剛と同性愛のカップルを演じた事で話題となりました。
間宮憲子/蒼井優
作中で一番の常識人
庄太の恋人で、後に庄太と結婚します。1では周造と富子の離婚について話し合う家族会議の場に巻き込まれたりもしましたが、冷静で忌憚のない意見を述べるしっかり者として描かれています。 看護師の仕事をするしっかり者の憲子を演じたのは蒼井優です。1985年8月17日生まれ、福岡県の出身で女優では1999年のミュージカル『アニー』がデビュー作です。その後は徐々に活躍の場を広げ2006年の『フラガール』で日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞を始め、数多くの賞を受賞したことで演技が認められるように。 山田監督の作品が好きで幾度かオーディションを受けており、映画『 おとうと』で山田作品に初出演して以来、本作品も含め起用され続けています。
加代/風吹ジュン
周造が通ういきつけの居酒屋の女将
周造が通う居酒屋の女将であり、周造の大のお気に入りの女性。2の際には一緒にドライブにまで出掛けています。 周造お気に入りの女将を演じるのは風吹ジュンです。1952年5月12日生まれ、富山県の出身で女優デビューは1975年からです。この年に出演したホームドラマ『寺内貫太郎一家2』での長女・節子役がヒットし、一躍有名に。 1991年の映画『無能の人』では日本アカデミー賞の優秀助演女優賞を受賞し、その演技が認められました。年を重ねても可愛らしい容姿は健在で作中で周造の癒し役となっています。
人情味あふれる作品を描く山田洋次監督とは
山田洋次は1931年9月13日生まれ、大阪府の出身です。葛飾柴又を舞台に寅さんとその周辺の人々との人情物語を描いた「男はつらいよ」シリーズが非常に有名です。彼は、ユーモアで人情味溢れる作品を作る日本を代表する監督として知られています。 元々落語の影響を受けており、庶民的な一般人の生活の中で起きる一喜一憂などに焦点を当てて描く作品が多いです。今作品は前身である『東京家族』を含めると4作となっており、『家族はつらいよ3』の舞台挨拶の際に「撮影中に皆さんの気持ちが、いいハーモニーを奏でる場面が何度かあった。年月がものを言っているんだろうと思いました」と、コメントしました。 2018年現在、既に80歳を超えている監督。ファンからは体調を心配する声も上がっています。これからも元気に良い映画を作り続けて欲しいですね。
前身となった作品『東京家族』とは?
『東京家族』は2013年に公開された映画で、1953年公開の小津安二郎が監督した映画『東京物語』をリメイクした作品です。2013年版の『東京家族』の映画は監督は山田洋次が担当しています。映画に出演しているキャストや、家族構成は『家族はつらいよ』と同じですが、家族の下の名前、就いている仕事など細かな設定が異なっています。 こちらの映画では、瀬戸内海の小島で暮らす周造・とみこ夫婦が東京で暮らす息子の元を訪ねます。しかし、島でのんびり暮らす夫婦にとって東京は肌に合わない異色の土地。家族の温度差ですれ違いが起き、そんな時家族はどうするのかという展開で、本作品と同じく「家族」がテーマです。
『家族はつらいよ』の舞台となった家
『家族はつらいよ』の自宅は東京郊外にある一軒家となっています。作中では周造が30年前にオーダーメイドで建てたという設定になっており、スタッフが「築30年くらいで建売ではなく駐車場があり、リビング側の庭が道路から見えない物件」を探したのだそうです。 苦労の甲斐あって条件にある家が見つかり、外観はロケ撮影で、内装はセットで建てられました。内装も山田監督の拘りが随所にあり、家族の趣味や好み、嗜好などを考えながら小物を配置。生活感が程よく出るように心掛けたのだそうです。 実際、作中で出てくる家には生活感が溢れており、特に周造や富子の部屋は2人の生活や趣味が良く表れています。細かい所にも拘っているからこそ、映画に臨場感が出るのかもしれません。
作品の音楽を担当したのは久石譲
本作品の音楽は3作とも久石譲が担当しています。久石譲は日本を代表する作曲家で、編曲や指揮もしており、ピアニストとしても活躍する人物で、長編アニメーション映画ジブリシリーズを手掛けていることで有名です。 久石が山田の作品に参加するのは初めてで、今まで山田作品を数多く見ていたという久石。参加については「ぜひ一度参加させていただきたいなと思っていました。今回こうしてお話がきて、本当にうれしかったです」とコメントしました。 今回の音楽については山田の作品を大切する、という意志を尊重し「あまり主張せず、しっかり裏で支える」音楽を作ったのだそう。山田も久石の音楽に非常に満足した様で、ピアノ演奏が終わった際には 「ブラボー!」と絶賛したのだそうです。
『家族はつらいよ』から見る、家族の在り方
『家族はつらいよ』、いかがだったでしょうか。近年、核家族化が進み大家族に憧れるという人も増えていると思います。しかし、実際に三世代で暮らすというのは、魅力も多い反面苦労も多いもの。 昨今、近所付き合いが減ったと言われる現代日本では平田家のような存在は稀有なもので、古き良き日本を代表する存在となっているのかもしれません。特に平田家の大黒柱の周造など、我儘でどうしようもない部分もあるけれど、どこか憎めない昭和のお父さん像が非常にリアルに描かれています。 どこか考えさせられる部分もありながら、ほっこりとしてしまう平田家。多くの人に触れて欲しい作品です。