山田洋次監督のおすすめ映画15選

『男はつらいよ』をはじめとする人情喜劇の第一人者山田洋次監督。80歳を越えた現在も良作を世に送り出し続けています。20歳を越えたら観て欲しい、大人をほろりとさせる山田洋次のおすすめ映画をご紹介いたします。
目次
- 日本を代表する巨匠山田洋次
- 1.48本作成された国民的人気シリーズの第1作【1969年】
- 2.山田洋次の最高傑作【1977年】
- 3.日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作品【1991年】
- 4.当時は認知度の低かった夜間中学を描いた名作シリーズ【1993年】
- 5.映画館オデオン座の情熱的な館長と、アルバイト、館長の未亡人の幼なじみなどの仲間との人情ドラマ【1996年】
- 6.山田洋次監督が構想10年という歳月で作成した時代劇【2002年】
- 7.最後の最後でタイトルの意味がわかります【2004年】
- 8.山田洋次監督の時代劇3部作に外れなし!【2006年】
- 9.昭和初期の夫のいない家族を支える母親を描いた感動の家族ドラマ【2008年】
- 10.涙と笑いに溢れる家族の物語【2010年】
- 11.家族のありかたなどを考えさせられる作品【2013年】
- 12.黒木華がベルリン国際映画祭最優秀女優賞を受賞した作品【2014年】
- 13.山田洋次監督が故・井上ひさしの遺志を継いで実現させた作品【2015年】
- 14.熟年離婚による騒動を描いたコメディ・ドラマ。山田洋次監督20年ぶりの喜劇【2016年】
- 15.最新作は熟年離婚騒動の数年後を描く『家族はつらいよ』続編【2017年5月公開】
日本を代表する巨匠山田洋次
国民的人気映画の『男はつらいよ』シリーズの監督をした山田洋次監督。
落語の影響をうけている監督は、人間ドラマをメインとした日常的なシーンに定評があります。『たそがれ清兵衛』『隠し剣 鬼の爪』『武士の一分』の時代劇3作品では海外からも高い評価を受けています。
数多くの映画作品を世に送り出している他、脚本家としても『釣りバカ日誌』シリーズなど多くの国民に愛される映画を作っている日本映画界の巨匠です。
1.48本作成された国民的人気シリーズの第1作【1969年】
20年ぶりに帰ってきた寅さんは妹の見合いをぶち壊してしまい……


世界一の長編シリーズ、下町人情大河喜劇映画『男はつらいよ』シリーズの第1作。TVドラマ版のラストにクレームが殺到したことから、脚本の山田洋次がメガホンを取り映画化されました。
中学生の時に家出した車寅次郎は、20年ぶりに故郷の東京・葛飾柴又に帰って来ました。妹のさくらたちと再会を果たすも、翌日のさくらの見合いの席で大失態を犯し、再び柴又を去ることに。奈良を訪れた寅次郎は幼馴染みの冬子と出会い、彼女と共に再び柴又へと戻り・・・・・・。
主演を務めたのは、役と同じく”寅さん”の愛称で親しまれた故・渥美清です。さくら役の倍賞千恵子を始め、シリーズの初代マドンナに起用された、故・光本幸子らが共演しています。
2.山田洋次の最高傑作【1977年】

ポート・ハミルのコラム『Going Home』を基に、刑務所帰りの男が妻の元へ向かう過程を描く、北海道を舞台にしたロード・ムービー。主演に高倉健、倍賞千恵子・武田鉄矢・渥美清・桃井かおりなど主役級のキャストが勢揃いした、日本の映画史に残る名作の一つです。
失恋で自棄になった鉄也は、買ったばかりの新車で北海道へ旅に出ました。途中で一人旅をする朱美、刑期を終えたばかりの中年男・勇作と出会い、共に旅することになった3人。やがて勇作は、妻に「自分を待っていてくれるなら、鯉のぼりの竿に黄色いハンカチを下げておいてくれ」と書いた葉書を出したことを語り始めます。
第1回アカデミー賞や第20回ブルーリボン賞など、同年の日本映画賞を総なめにした作品でもあり、後に国内外で多数のリメイク作品が誕生しました。
3.日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作品【1991年】
それにしても三國連太郎は尋常じゃなく演技が上手いです。横綱のような貫禄のある演技です。20半ばの私のような若僧を共感させてしまうのは凄いなと。全部伝わってきます。
原田美枝子はいい年のとり方をしたなぁと思うとともに、和久井映見は、この映画が一番きれいなんじゃないかとひそかに思っています。
それにしても、山田洋次は安定していい映画撮りますね。古き良き日本の心があります。
「おまえがもしあの子を裏切ったら、おれはあの子の両親の前で腹切らねばならねぇんだぞ」 「わかってるよ」
こんなやりとり、最近の邦画じゃ観られないですよね。

椎名誠による『倉庫作業員』を原作に、田舎の父親と都会でフリーターを続ける息子の対立と和解、2人の葛藤を通して家族の幸福を描くヒューマン・ドラマです。
東京・新宿フリーター生活を送る哲夫は、母の一周忌を機に地元・岩手へ帰省します。しかし、父・昭夫との折り合いは悪いまま、再び戻った東京の鉄工場で働くことに。取引先の倉庫で働く征子との出会いを糧に肉体労働にも耐える哲夫は、やがて彼女が聾唖者だと知るのです。
主演を務めたのは『釣りバカ日誌』シリーズで有名な名優の故・三國連太郎、息子役の永瀬正敏、和久井映見や原田美枝子らが出演しました。
4.当時は認知度の低かった夜間中学を描いた名作シリーズ【1993年】


山田洋次が15年もの間企画を温め、松崎運之助の『青春夜間中学』を下敷きにした作品。当時は知名度の低かった夜間中学を舞台に、様々な年代、境遇の生徒と教師の交流が描かれました。
夜間中学に熱意を持ち、下町のとある夜間中学長年務める黒井。卒業式が控えるある日、卒業文集を制作するための作文の授業行い、生徒たちはそれぞれの思いを綴ります。黒井は競馬好きのイノさん、不良のみどりや焼肉屋を営むオモニなど、生徒たちとの思い出を振り返るのです。
主演は”黒井先生”役の西田敏行、田中邦衛や萩原聖人らが出演しました。設定やキャストを変えながら、2000年公開の『十五才 学校Ⅳ』までシリーズ4作が制作されています。
5.映画館オデオン座の情熱的な館長と、アルバイト、館長の未亡人の幼なじみなどの仲間との人情ドラマ【1996年】


主演・渥美清の急逝により終了した、『男はつらいよ』シリーズに代わる松竹の看板シリーズ。映画を愛する映画館主と周囲の人々の人間模様を、多くの名作のシーンと共に描く人情喜劇です。
平山亮は、就職に失敗し親と喧嘩して家出した末、四国・徳島の小さな町に辿り着きます。そこで、白銀活男が経営する古い映画館、オデオン座のアルバイトとして働き始めた亮。映画の灯を守り続ける活男には、未亡人の八重子という想い人がいると知り、亮は彼を叱咤するのですが・・・・・・。
『学校』シリーズ2作目で共演した、西田敏行と吉岡秀隆が主演を務めました。『男はつらいよ』のレギュラー陣が勢ぞろいしている他、CG合成による”寅さん”が登場するのも注目です。
6.山田洋次監督が構想10年という歳月で作成した時代劇【2002年】
ある時、清兵衛は、大きな決断をして……


藤沢周平の3つの短編を基に、寡夫の下級武士が幕末の世を生き抜く様を描く時代劇。主演の真田広之や宮沢りえらキャスト陣、制作陣が国内の賞を独占し、海外でも高い評価を得ました。
時は幕末、庄内の海坂藩の下級藩士・井口清兵衛。幼い娘2人と老いた母を抱える貧困生活のため、下城の太鼓と同時に帰宅することから、”たそがれ清兵衛”と揶揄されていました。しかし、幼馴染みの朋江の危機を救った際の剣の腕を見込まれ、清兵衛にある藩命が下されて・・・・・・。
再現が難しいとされる藤沢作品の映画化に当たり、山田監督は構想に10年以上を費やしました。時代考証には1年以上をかけ、家屋などの様子から髷に至るまで、苦心の末に結実させたそうです。
7.最後の最後でタイトルの意味がわかります【2004年】

『たそがれ清兵衛』に続き、山田監督が藤沢周平の短編を映画化した、本格派時代劇第2弾。近代化の波が押し寄せる幕末を舞台に、下級藩士の悲喜と身分違いの恋を描きました。
幕末、海坂藩の下級武士・片桐宗蔵は、家族と貧しくも穏やかな生活を送っていました。ある雪の日、かつて奉公に来ていた娘・きえと再会し、彼女が嫁ぎ先で冷遇されていると知ることに。堪らなくなった宗蔵はきえを助け出すも、身分違いの2人の恋は許されないものだったのです。
『息子』で数々の賞を受賞した永瀬正敏が主演を務め、苦悩の恋の相手・きえ役に松たか子、『たそがれ清兵衛』で注目を浴びた田中泯らが出演しました。
8.山田洋次監督の時代劇3部作に外れなし!【2006年】

改めてキムタクの演技のうまさがわかる映画でした。

山田洋次監督が手がける、藤沢周平原作による本格派時代劇3部作の第3弾です。主演には木村拓哉を迎え、小藩の下級藩士が武士の名誉のために戦う姿と、夫婦のきずなを描きました。
東北の小藩の下級武士・三村新之丞は、美しく気立ての良い妻・加代と幸せに暮らしていました。しかしある日、藩主の毒見役を務めた際に失明したことから、夫婦の平穏な生活は一変。さらには加代と番頭の島田の不貞が発覚し、新之丞は”武士の一分”賭けて島田に果たし合いを挑みます。
”武士の一分”とは、侍が命を賭して守るべき名誉、面目のことなのだとか。加代役の檀れい、坂東三津五郎や緒方拳ら実力派俳優の共演による、胸を打つ感動巨編に仕上がっています。
9.昭和初期の夫のいない家族を支える母親を描いた感動の家族ドラマ【2008年】


野上照代の自伝エッセイを基に、昭和初期の激動を生き抜こうとする一人の母とその家族を通して、現代家族のありかたを問うヒューマン・ドラマ。主演を務めた吉永小百合、夫役の坂東三津五郎や子役の志田未来らが、混乱の中を懸命に生きる人々を熱演しました。
戦前の昭和15年の東京、家族と幸せに暮らしていた野上佳代。しかし、”父べえ”ことドイツ学者の夫・滋が反戦思想の”思想犯”として投獄され、穏やかな生活は一変します。悲しみにくれる”母”べえと2人の娘でしたが、滋の教え子の山崎や周囲の人々に助けられ、力強く生きることを決意するのです。
反戦を強く叫ぶのではなく、どんな苦境の中でも強く生きた人々の姿を映し出す今作は、日常や家族の大切さを見つめ直すきっかけを与えてくれます。
10.涙と笑いに溢れる家族の物語【2010年】
主演の姉役に吉永小百合、芸人の弟役に笑福亭鶴瓶というキャストにも注目


山田洋次監督の10年ぶりの現代劇にして、市川崑監督作『おとうと』にオマージュを捧げた作品。しっかり者の姉と、芸人に憧れる破天荒な弟の再会と別れを、笑いあり涙ありで綴る家族の物語です。
若いころに夫を亡くし、今は東京の商店街で薬局を切り盛りしている高野吟子。女手一つで育てた娘・小春の結婚が決まり、喜びの中ようやく式の当日を迎えるも、突然弟の鉄郎が紋付袴姿で大阪から現れます。酒癖の悪い鉄郎は酔って披露宴を台無しにしてしまい、それでも弟を庇う吟子でしたが・・・・・・。
主演は『母べえ』に続いての出演となる吉永小百合、弟役を笑福亭鶴瓶が好演しました。山田監督ならではの視点から、移ろう時代と姉弟の絆、現代と未来の家族の姿を映し出しています。
11.家族のありかたなどを考えさせられる作品【2013年】
瀬戸内の小島すむ老夫婦は上京した子供達と久々に対面するが……。


山田洋次監督第81作目であり、映画監督生活50周年を記念して、巨匠・小津安二郎監督の『東京家族』にオマージュを捧げたファミリー・ドラマ。物語の舞台を現代に変更し、現代日本における夫婦や親子の絆とそのありかた、老いることや死を見つめていく作品です。
2012年5月、瀬戸内海に住んでいた平山周吉、とみこ夫妻は東京へとやって来ました。子どもたちと再会し、家族揃った和やかな時を過ごすも、長居する両親を厄介に感じてしまう子どもたち。そんな中とみこは、何かと心配していた次男の昌次から、恋人の紀子を紹介されます。
小津監督作の”戦争”に代わり、”東日本大震災”という悲劇をクローズアップした本作。意図せず生まれた溝を埋めようとする家族を、橋爪功と吉行和子、妻夫木聡ら実力派キャストが熱演しました。
12.黒木華がベルリン国際映画祭最優秀女優賞を受賞した作品【2014年】

黒木華さんが助演女優賞をとったことでも話題になりましたが、彼女、主演女優だよなあ。

中島京子の第143回直木賞受賞作を映画化した、山田洋次監督初のラブ・ストーリー。ある屋敷の女中奉公の視点から、昭和初期の庶民の暮らしと、美しい女主人の禁断の恋の行方を描きます。
大学生の健史は、亡くなった大叔母・タキが綴った自叙伝を託されます。戦争の足音がする昭和11年、タキは東京の赤い三角屋根のモダンな屋敷で、平井家に女中奉公することに。穏やかな生活を送っていたある日、タキは女主人の時子が、夫の部下・板倉に惹かれていると気付いてしまうのです。
主演は時子役の松たか子、女中のタキ役の黒木華の他、倍賞千恵子や吉岡秀隆が出演。ノスタルジックかつミステリアスな物語と意外な真実、舞台となる”小さいおうち”のセットにも注目です。
13.山田洋次監督が故・井上ひさしの遺志を継いで実現させた作品【2015年】
息子の婚約者を演じる黒木さんも山田作品の世界にとても合っていて素晴らしかったです。
山田監督らしい丁寧で丹念に作られた良い映画でした。

戦争映画には珍しいファンタジーに一抹の不安を抱きつつ鑑賞。息子の幽霊というファンタジー設定を通じて映し出された、残された人達のやり切れない思いや心にぽっかりとできてしまった空洞、沸々とした憤りや哀しみ、その後の選択や葛藤など、静かなる激情に涙した。
このファンタジー設定は賛否両論だと思うし、受け入れ難いという意見もわかる。けれど私は、たとえ幽霊でも一目会いたいと思う気持ちや、亡くなった人の無念、その人を思うが故の葛藤などに、戦場を直接描写した戦争映画とは別の角度からの戦争の爪痕や悲惨さを強く感じた。卵焼き、メンデルスゾーン、生きていたら息子と結婚していたはずの女性・・息子がここにいさえすれば幸福感をもたらすはずのものや人のすべてが喪失感に繋がる苦しさ。。
一番響いた言葉。「地震や津波など自然災害で死ぬのは運命かもしれないけれど原爆は人間の手でやったのだから運命ではない。」わかっていても、この台詞にあらためてガーンときた。原爆や戦争は人災。避けられたかもしれない悲劇。そのことを強く刻み付けられた人が少なからずいるという時点で本作は意味を成し得たと思う。
「硫黄島からの手紙」でも思ったけど大物俳優相手にニノが頑張っていた。「硫黄島・」に比べるとちょっと舞台っぽい演技だったけど設定とか時代背景を考えるとあれぐらいでいいのかも。

広島を舞台にした戯曲『父と暮せば』と対になる作品として、小説家・劇作家の井上ひさしが実現を願った物語を映画化し、この世とあの世の人々が織りなす人間模様を描きました。
1948年8月9日、原爆投下で甚大な被害を受けた長崎県。助産師の伸子のもとに、3年前に原爆で死んだはずの息子・浩二が突然姿を現し、その後もたびたび伸子を訪ねてくるようになります。2人は浩二の恋人だった町子を気にかけながら、たくさんの言葉を交わしていくのですが・・・・・・。
主演の伸子役を演じたのは、山田監督作品ではお馴染みとなった名女優・吉永小百合。幽霊となって現れる息子を嵐の二宮和也が好演し、第39回日本アカデミー賞、最優秀主演男優賞を受賞しました。
14.熟年離婚による騒動を描いたコメディ・ドラマ。山田洋次監督20年ぶりの喜劇【2016年】

『男はつらいよ』シリーズから約20年ぶりに、山田監督がとある家族の喜劇を手がけました。『東京家族』の橋爪功、吉行和子が再び夫婦を演じ、妻夫木聡ら主要キャストが新たな一家に扮します。
平田周造とその妻・富子は、結婚50周年を間近に控えた熟年夫婦でした。妻の誕生日が近付き、周造は何かして欲しいことはないか尋ねるのですが、富子の取り出したのは何と”離婚届”!思いがけない離婚騒動に大慌てする子どもたちも、次第にそれぞれの不満を爆発させてしまうのです。
決して他人ごとではない、現代家族のリアルな姿と重厚なストーリー展開、山田監督らしいコメディ要素を散りばめた家族の物語が胸に迫ってきます。
15.最新作は熟年離婚騒動の数年後を描く『家族はつらいよ』続編【2017年5月公開】
2017年5月27日公開の最新作は、曲者揃いの平田一家を描く『家族はつらいよ』シリーズ第2作。”無縁社会”をテーマに掲げ、熟年離婚危機を乗り越えた一家のその後を追っていきます。
父・周造の定年後の趣味はマイカーでのドライブでしたが、家族は車の凹み傷が増えてきたため、高齢者による危険運転を心配し始めました。運転免許証の返納を勧める家族に反発する周造は、偶然再会した故郷・広島の同級生の丸田吟平と40年ぶりに酒を飲み、彼を自宅に招くのですが・・・・・・。
周造の同級生が来訪したことをきっかけに、平田一家で新たな騒動が勃発します!出演は橋爪功と吉行和子、西村雅彦や蒼井優らが再集結した他、丸田吟平役の小林稔侍が出演します。