2018年7月20日更新

何故、我々は恐竜に共感し涙するのか。『ジュラシック・ワールド/炎の王国』J・A・バヨナ監督インタビュー【単独】

J・A・バヨナ
Photo:Kazuhiko Okuno

2018年に公開された『ジュラシック・ワールド/炎の王国』。監督に抜擢されたJ・A・バヨナ、自身のスタイルを思う存分“噴火”させた彼に、本作のテーマや撮影の裏話などを単独取材で余すことなく伺った。【ネタバレ有り】

『ジュラシック・ワールド/炎の王国』J・A・バヨナ監督に単独インタビュー

J・A・バヨナ
Photo:Kazuhiko Okuno

「私の仕事は、脚本家の展開するストーリーを如何に映像的に実現させるかというものです。物語のベースや論理的なものは脚本に任せているので、そこから自分なりにどうするか、を考えます。」 そう語るのは、『永遠のこどもたち』や『怪物がささやく』で知られており、この度『ジュラシック・ワールド/炎の王国』の監督を務めたJ・A・バヨナだ。 『ジュラシック』シリーズ5作目となる本作は、アニマルライツを問うようなダークでヘヴィなテーマを持つ。そこにバヨナ監督の持つ独特な作風が加わった事で、恐竜に対する恐怖心を再び我々に取り戻させてくれる。しかし、それと同時にどのシリーズ作品よりも、恐竜に共感し、愛し、心打たれる……一体監督は、どのようにして恐竜への共感を実現させたのだろうか。

監督をする事が決定した時の感想は?

J・A・バヨナ
Photo:Kazuhiko Okuno

「今回、『ジュラシック・ワールド/炎の王国』の中で、最も気に入ったコンセプトは前のシリーズ作品からの変化、“島を出る”事でした。恐竜が島から出たことで、彼らを取り巻く問題が島の中におさまらず、人類みなの問題になっていくのです。これまでの4作は全て島の中で起きた出来事だったので、そこから解放されていく物語に非常に興味を持ちました。」

ジュラシックワールド2
© Universal Pictures

「『ジュラシック・ワールド/炎の王国』の変化として、とても楽しいと感じたのは「閉塞的な空間」が舞台になるという点です。今までは自然の中など、開けていた場所での出来事だったから、映画後半の舞台が閉ざされた場所へと変わる事が非常に面白かったです。閉所恐怖症的な感覚の中に、人間と恐竜を混在させることで、サスペンス要素が高まるんです。 しかしそこで考えたのは、そんなストーリーの中にも、どこか笑えるポイントを盛り込む事を忘れてはいけないという事です。何故なら、この作品は私の『永遠のこどもたち』のような完全に大人向けの作品ではないから。本作は子供も楽しめるファミリー映画でもあるので、色々な人が楽しんで観ていただけるように心がけました。」

確かに、メイジーの部屋にインドラプトルが侵入するシーンはまさに「閉所×恐竜」として緊迫感が高く、怖いシーンでしたね。映像的にも、少女の部屋に獰猛な恐竜、というコントラストが素晴らしかったです。

ジュラシックワールド2
©Universal Pictures

「あのシーンは僕にとっても、本作において一番のお気に入りシーンなんです!仰ってくれたように、少女の部屋に実際に恐竜が入って行くというのが、アイデアとして非常に面白いと思いました。何故なら、そういったパーソナルスペースに恐竜が侵入してきた事は今まで無かったし、そこで恐竜同士の戦いも繰り広げられるんです。 子供達が小さいときに見る悪夢って、だいたい「邪悪でこわい存在が自分の部屋に入ってくる」というものですよね。それを、ここで実現させたかった。 しかしそれと同時に、美しいと思うのは子供部屋というものは、子供がイマジネーションの中で恐竜と遊ぶ、というスペースでもあるという事です。玩具の恐竜で遊んでいたような子供の部屋に、実際に恐竜が現れる。そんな一種の夢のような出来事にリアリティを持たせるように、実現させる事が楽しかったです。」

「“理解できないものを受け入れる”ことが重要なテーマとなる」

本作はとにかく、涙なしでは観られない。泣けるシーンは全て、恐竜に共感したり、同情したりするシーンなのだ。もはや、彼らが主役といっても過言ではない。そんな、恐竜にエンパシーを感じさせる演出を、監督はどのようにしたのだろう。

J・A・バヨナ
Photo:Kazuhiko Okuno

「脚本を貰って物語を分析し、それを理解してこの作品で何を描くのか考えたとき、もう今回は島とか人は助けない、恐竜を助けるというところがベースにあると感じました。それと共に、“理解できないものを受け入れる”ことが、インドラプトルやメイジーに繋がるテーマとなっていて、そこに恐竜に対する共感も生まれてくると考えたのです。それを実現するために、アニマトロニクスを使用することで出来るだけ現実的な画作りを心がけました。 俳優が恐竜のアニマトロニクスに触れたり、一緒に過ごすなかで、お互いの心を通い合わせる事ができる。そんなシーンが撮りたくて、アニマトロニクスに注力したのです。」

恐竜に対して、俳優と同じ扱いをしていたと伺いましたが?

J・A・バヨナ
Photo:Kazuhiko Okuno

「そうですね。そのために、恐竜(アニマトロニクス)には非常に時間をかけました。恐竜にも感情があるというところを出したかったので、アニマトロニクスを担当した部門、CGを担当した部門の両方と協力して、恐竜の表情であったり、如何に彼らに温かみを持たせ、リアルに観てもらえるかという事を何十時間も考えました。」

シリーズ一作目で印象的だったとある恐竜が噴火する島で終わりを迎えるシーンが、本当に悲しくて涙が止まりませんでした。

J・A・バヨナ
Photo:Kazuhiko Okuno

「そうですね、それが恐竜への共感になるのだと思います。恐竜は、今までパークの中で、人間が鑑賞して楽しむためだけに存在していた、言うなれば「経済的効果」であったんですよ。しかし、そのパークがダメになった時、では彼らの命の価値とは何なのだろうかという事を考えると、皆映画を観終わった時に恐竜に共感してくれると思います。」

バヨナ監督が一番好きな恐竜は?

最後に、監督が今までのシリーズで一番好きな作品やシーン、お気に入りの恐竜を教えてください!

J・A・バヨナ
Photo:Kazuhiko Okuno

「間違いなく、『ジュラシック・パーク』(1作目)ですね。好きなシーンは、『ロストワールド/ジュラシック・パーク』で、バスが崖から落ちかけている中でジュリアン・ムーア演じるサラが、ガラスの上に落ちるシーンですね。映画の画的に、かなり計算されていてスリリングだと思います。 恐竜はティラノサウルスが一番好き。一番アイコニックですし、造形されたものとして、人類が一線を超えたものである証でもあるからです。」