フォックスが8兆円で買収?ディズニーVSコムキャスト、勝者はどちらに?
ディズニーVSコムキャストによる、フォックスを巡る激闘が決着か
20世紀フォックスの買収を巡って、ディズニーと米ケーブルテレビ局「コムキャスト」が激しい攻防を繰り広げていることが報じられて約半年。その争いに、間も無く決着がつきそうです。どちらが勝つにせよ、映画業界を大きく変動させてしまいそうなこの問題。この記事では、その詳細を紹介していきます。
そもそも買収の背景は?Netflixの躍進に焦るディズニー
そもそもディズニー、コムキャストは何故フォックスを欲しがるのでしょうか? その背景には、NetflixをはじめとするVODの躍進が挙げられます。日本ではあまり馴染みのない感覚ですが、アメリカではケーブルテレビや衛星放送に加入している世帯が非常に多く、それらにかかる費用が約100ドル。一方、Netflixは最も安いプランが7ドル99セントと、非常に安いのが特徴的です。 こうした値段の安さも合間って、最近ではケーブルテレビを解約してNetflixだけを契約する世帯も増えているんだとか。そして、Netflixの充実ぶりに伴い、映画館やテレビ離れが進んでいるのです(先のワールドカップも、こうした配信サービスで楽しんだ世帯が多かったようです)。 これに対抗するため、ディズニーはHuluをはじめとするVOD企業の買収を検討したり、自社での配信サービスを開始させる準備をしたりと、多岐にわたる展開をしています。ともあれ、一連の買収騒動の背景に、VODの躍進は無視できないものがあるのです。
映画の権利元が統合されるとどうなるの?わかりやすいのがこの映画
さて、では映画の配給会社が統合されるとどういうことが出来るのでしょうか? わかりやすいのが、ディズニーのこちらの作品『シュガー・ラッシュ オンライン』の予告編。ディズニープリンセスの集合も見事ですが、それ以上に目を引くのが「スター・ウォーズ」シリーズのストームトルーパーとディズニーキャラクターがコラボしている点。 これは、ディズニーが「スター・ウォーズ」シリーズの「ルーカス・フィルム」を買収したから成立したもの。この他にもディズニーはこれまで、「アベンジャーズ」シリーズのマーベルや、「トイ・ストーリー」のピクサーなどを買収し、そのコンテンツを手に入れてきました。
権利元の分割によって生まれる映画界の「ひずみ」
逆に権利元が違うことで生まれている「ひずみ」もあります。 例えばこちらの『ヴェノム』は、元々は「スパイダーマン」のスピンオフキャラクター。しかし、現在スパイダーマンの権利がディズニーのものの為、権利元が「ソニー・ピクチャーズ」のヴェノムは共演出来ません。元は同じマーベルのキャラクターでありながら共演出来ないという現象は、例えば「ウルヴァリン」や「X-MEN」なども同様です。 こうした権利元の問題で、例えば本来原作では交流のあるスパイダーマンとデッドプールが映画内で共演出来ないなどの問題が起きているのですね。
最終的な買収金額は8兆円?戦いはこのままディズニーの勝利に終わる?
さて、そうした問題も、ディズニーが20世紀フォックスを買収してしまえば、だいぶ改善されます。ソニー・ピクチャーズのヴェノムはともかく、20世紀フォックスが権利を有する「X-MEN」シリーズはもちろん、『エイリアン』『タイタニック』『アバター』など、様々なヒット作の権利がディズニーに移るのです。 当初、コムキャストは20世紀フォックスを買収するため、ディズニーが提示していた524億ドルを上回る600億ドル台前半という予算を提示していたそうですが、これを受けてディズニーは買収額を713億ドル(約8兆円)まで釣り上げました。流石のコムキャストもこれ以上戦いを続ける体力は無かったのか、買収問題から撤退をする意向のようです。
ディズニーの一強に対する懸念も
ディズニーが権利を有することで、例えば「アイアンマン」と「スパイダーマン」に代表されるようなマーベルキャラクター同士の夢の共演の実現されたり、ディズニー・ランドにアトラクションが増えることもあるでしょう。 ですが、こうしたディズニーの一強化に対する懸念もあります。 例えば、先日公開された「ハン・ソロ」をはじめ、「スター・ウォーズ」シリーズの量産は必ずしもファンから好意的に受け取られているわけではありません。ディズニーは一つのコンテンツの派生作品を大量生産する傾向にある為、お気に入りの映画が駄作として消費されてしまう可能性があるのです。 もちろん、その辺りは当然対策を打ってきそうなのもディズニーの強みではありますが、今回の買収に端を発し、21世紀の映画業界が大きく変化していくことは間違いなさそうです。