その深い“謎”が魅力!?映画『縄文にハマる人々』レビュー【ギャルと縄文の共通点とは?】
何故?縄文時代にハマってしまう人が続出!
そのタイトルを聞くと、「なんで?」と言ってしまいたくなるようなドキュメンタリー映画『縄文にハマる人々』。 誰しも縄文時代という言葉は知っていると思いますが、それに“ハマる”とはどういうことなのか?武将やお城、刀も登場しない、一見地味とも言える古の時代。本作では、そんな時代になぜか惹きつけられ、調査や研究を続ける人々に迫ります。
『縄文にハマる人々』のあらすじ
本作はタイトル通り、何故か“縄文時代”にハマってしまった人々を追ったドキュメンタリーです。誰しもが一度は歴史の授業で習ったことがある縄文時代。しかし、「縄目模様がついた土器を使っていた時代」ぐらいの認識しかないのではないでしょうか。 その縄文土器や、土偶など縄文時代のものと思われる出土品はとても奇怪な形状をしています。明らかに実用からは程遠いデザインの出土品について、人々は様々な解釈をし、調査していくうちにハマってしまうようなのです。 今からおよそ1万2000年ほど前に存在していた縄文時代。そこに暮らす人々が何を思って暮らし、そして土器を作ったのか。それの謎を紐解いて見えてくるのは一体なんなのでしょうか?
映画に登場するハマってしまった人々
いとうせいこう
作家、アーティストであるいとうせいこう。タレントとしてバラエティ番組にも多く出演しています。 彼が縄文時代にハマった理由は、“ギャル度が普通じゃない”から。神格化されたものだという説もある土偶のほとんどが女性の体を彷彿とさせるものです。また、その中には土に混ざった雲母により、キラキラと輝くものも存在します。 女体を神として崇め(ていたかもしれない)、さらにはそれをデコってしまう縄文文化に、いとうせいこうはギャルの精神に通じるものを感じ、縄文時代に惹きつけられているのだそうです。
佐藤卓
グラフィックやパッケージデザイナーとして活躍している佐藤卓。NHK Eテレで放送されているデザイン番組『デザインあ』の監修でも知られています。 彼は、縄文の女神と呼ばれる国宝指定の土偶のデザインに衝撃を受けます。パンタロンを履いているような下半身のデザインは、現代の車のデザインと同じ考えに基づいているのだそうです。 21世紀で活躍するデザイナーを驚かせるほどのデザイン力を秘めた縄文人。それこそが佐藤卓が縄文時代にハマってしまった要因です。
安芸早穂子
縄文復元画家という一風変わった肩書きを持つ彼女。イラストレーターとして、数々の歴史本の表紙になっているイラストを手がけています。 縄文人というと、ほぼ裸でザンバラ髪というのが定番のイメージでした、しかし、彼女はそんなイメージを一新し、土偶からインスピレーションを受けたファッショナブルな民族衣装に身を包んだ縄文人のイラストを描いています。 実際、縄文時代の出土品の中には櫛も発見されています。緻密なデザインの縄文土器を作り、髪を飾る櫛も持っていた縄文人が、原始的な姿で生活しているはずがないというのが彼女の考えです。安芸早穂子は、歴史学者が発見した事実に、アーティストとしての想像力を加えてイラストを製作しています。そして、より具体的に私達に縄文時代の姿を感じさせてくれるのです。
猪風来
縄文時代に魅せられたあまり、縄文アーティストを名乗ってしまった猪風来。縄文様式にインスパイアされた美術作品の数々を発表しています。 彼は縄文時代をより身近に感じるため、北海道に移住し、実際に竪穴式住居を建てて暮らしています。竪穴式住居は地面を掘って作るため、地上のラインが自分の目線の高さに持ち上げられます。彼は縄文人はそのようにして目線の高さに自然を感じていたことにより、自然を尊いものと捉えていたと主張しています。
『縄文にハマる人々』の監督は?
本作の監督は山岡信貴。元々は映画の編集をしていましたが、1993年に『PICKLED PUNK』を発表し、監督デビューします。以降、実験的な映像スタイルで、定期的に作品を発表しつつ、プロデューサーとしても活躍しています。 監督自身も、全く縁がなかった縄文時代に映画の取材を通してハマってしまったうちの一人。監督は、縄文文化を通じて人間の可能性を実感したそうです。過去の時代を通して、未来を感じるというのは不思議ですね。
ナレーションは「水曜のカンパネラ」のコムアイ
本作のナレーションを担当したのは、音楽ユニット「水曜のカンパネラ」でボーカルを担当しているコムアイ。2013年からユニット活動を開始し、独特な雰囲気とPVが印象的な楽曲を発表しています。 “縄文なんて前すぎてよくわからない”とコメントしているコムアイですが、淡々とした語り口で観客を縄文の世界に誘います。その声は、過去と未来を行き来する声だと監督が絶賛したそうです。
エンディングテーマ担当は、音楽集団「森は生きている」
エンディングテーマを担当したのは音楽集団「森は生きている」。カントリー、ソフトロック、アンビエントなど様々な音楽ジャンルをミックスしたチャンポンミュージックを制作することで知られています。 岡田拓郎をリーダーとして2012年より活動を開始していますが、2015年に解散。現在はメンバーが各々で音楽活動を続けています。
人々はなぜ、縄文時代に魅せられるのか?
現代に存在するありとあらゆるものには理由があります。しかし、縄文時代の出土品についてはその限りではありません。 どうしてそんな形をしているのか、なぜその形に作られたのか。想像し、考察することはできても、明確な理由を知る術はないのです。その深い“謎”こそが人々が縄文時代に惹きつけられる理由なのです。 そしてその謎を紐解くうちに見えてくるのは、今も昔も変わらずそこにある、命というもののに関する普遍的な思いなのです。
あなたもハマってしまうかも!?
1万年も前のことについて考えているうちに、いつの間にか未来につながる人としての普遍的なメッセージを見出してしまう縄文時代。探れば探るほど、その深い魅力にハマってしまいそうです。 この映画を見終わった後、あなたはすでに縄文にハマっているかも!?