映画『犬鳴村』ネタバレあらすじ解説 ラストの意味とは?恐怖の都市伝説を徹底考察
福岡県に実在し“最凶の心霊スポット”として知られる「旧犬鳴トンネル」と、近年の都市伝説から人気となった「犬鳴村伝説」を織り交ぜたホラー映画『犬鳴村』。
この記事では解説や実際の都市伝説との比較を交えながら、映画を考察していきます。映画『犬鳴村』の結末までのネタバレが含まれます。未鑑賞の方、結末を知りたくない方はご注意ください!
公開日 | 2020年2月7日 |
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上映時間 | 108分 |
監督 | 清水崇 |
キャスト | 三吉彩花(森田奏役) , 坂東龍汰(森田悠真役) , 古川毅(成宮健司役) , 石橋蓮司(中村隼人役) |
『犬鳴村』のあらすじ
あるとき、臨床心理士の森田奏の周囲で突然不可解な出来事が立てつづけに起きはじめます。 奇妙なわらべうたを口ずさみ、精神に異常をきたしてしまった女性。行方不明になった兄弟。そしてつぎつぎと起こる変死事件……。そんななか、彼女はひとりの女性が突然死する現場に居合わせます。その女性は死の直前に、心霊スポット「犬鳴トンネル」とその先にある村について口にしました。 女性の言葉が、これまでの奇妙な出来事の数々に関連していると考えた奏は、謎を解くため「犬鳴トンネル」へ向かうことに。その先で彼女が見た、決して足を踏み入れてはいけない、驚愕の真実とは――。
『犬鳴村』ラストまでのネタバレあらすじ
【起】次々と起こる怪事件と不審死
とある病院に勤める精神科医の森田奏。彼女の担当患者のひとりに遼太郎という少年がおり、彼は最近悪夢を見る様子。よくよく話を聞いてみると、彼は「言っちゃいけないって。ママが悲しむから」「あっちのママ(に言われた)」と不思議なことを口にします。 そして奏は、遼太郎が誰もいないはずの場所に手を振っているのを観て、幽霊である“あっちのママ”を目撃しました。 それより少し前、奏の兄・悠真は恋人の明菜とともにある場所を訪れていました。そこは、心霊スポットとして有名な"犬鳴村”。最初ははしゃいでいた明菜でしたが、悠真と離れた間に錯乱するほどの恐怖を体験します。 それ以降、彼女は奇妙なわらべ唄を口ずさみながら、不気味な絵を描くようになりました。明菜はトイレに行く、と言って部屋を出たきり帰ってきません。きょうだいは全員で明菜を探しますが、彼女は悠真に「もうすぐ行くよ」と電話をかけ、鉄塔から投身自殺。彼女の身体が悠真の目の前に転がります。しかし、のちに明らかになった彼女の死因は“溺死”でした。
【承】奏の祖母の秘密
その後、明菜の死の謎を解明するため、悠真は再び犬鳴村へ。友人3人も連れて行きますが、トンネルを塞ぐブロック塀を登ってなかに入った悠真を置いて、彼らは帰ってしまいます。そこに現れたのは、車の中に隠れてこっそりついてきた弟の康太。 ブロック塀を登りトンネルの外に出ようとしていた悠真と、彼を助けようと塀に登った康太は、2人ともトンネル内に姿を消してしまいます。 その後、森田家の主治医・山野辺が病院に運ばれ、ベッドの上で溺死。悠真の友人3人は、トンネル近くの電話ボックスで遺体で発見されました。 奏の父は母にとても冷たくあたっていました。そのことを不審に思った彼女は母方の祖父の家へ。祖父と亡くなった祖母の思い出話をしていると、意外なことが発覚します。 それは、祖母は祖父が幼いころに彼の家の前に捨てられていた子供だったということ。また、彼女には幼いころから不思議な能力があり、他人の妊娠や死亡を察知したりすることができたといいます。その話を聞いて、奏は幼いころに祖母とある青年を見かけたことを思い出しました。
【転】犬鳴村の悲しい歴史
祖母の墓参りに行った奏は、そこで幼いころに見かけた謎の青年に出会います。彼は見せたいものがある、と奏をある場所につれていき、むかしの犬鳴村の様子を撮影したフィルムを見せました。 それは、作物もならない痩せた土地に暮らす村人たちが、山犬を狩ってその肉を食べ、その毛皮で日用品を作って暮らしていた記録でした。しかし、ある企業が村にやってきて、その様子は様変わりします。彼らは犬鳴村について悪評を流し、ほかの部落との交流を絶たせます。なかには村の女性たちは犬と交わっているという噂まで。 犬鳴村の住人たちがすっかり周囲の嫌われ者になったころ、企業のトップは村があった場所にダムを建設することを決定。映像を見ていた奏は、その社長が自分の父方の祖父であることに気づきます。 青年に「悲劇を止められるのは君しかいない」と言われた奏は、その夜、彼と一緒に犬鳴村へ行くことにしました。 そして犬鳴村を訪れた奏は、行方不明の兄・悠真と弟・康太を探します。
【結末】犬鳴村の村人の正体とは?そしてその血は受け継がれ……
奏は途中、犬に襲われながらも、なんとか兄と弟が檻に閉じ込められているのを発見。檻の鍵は別の犬が眠っている場所の奥の柱にぶら下がっており、彼女はなんとかそれを取ることに成功しました。 すると、奥の部屋から女性のうめき声が聞こえます。一緒に来ていた青年が彼女に駆け寄ると、そこには産まれたばかりの赤ん坊と、ぐったりと横たわる女性がいました。 青年は、奏に赤ん坊を託します。しかし女性は「赤ちゃんを返して!」と必死に手を伸ばしました。青年に促され、奏は兄弟とともに村を脱出しようとしますが、トンネルを抜けようとしていたとき、兄が女性に捕まってしまいます。彼女の後ろには、獣のように変貌した村人が大勢押し寄せていました。 女性の容貌もみるみるうちに人間離れしていき、言葉もまともに発することができなくなっていきます。彼女はその口に生えた牙で兄の腕に噛みつきます。「俺たちの子供を守ってくれ」と言う青年の制止で奏と弟はなんとかトンネルを脱したものの、ある民家の前で気を失ってしまいました。 家から出てきた少年は、赤ん坊に気が付き、家の中へと連れて行きました。彼には、奏たちの姿は見えていないようです。 この少年と赤ん坊は、のちの奏の母方の祖父と祖母だったのです。 その後、兄の遺体も発見されましたが、彼の足元には、すでにほぼ骨だけの状態の2人の遺体がしがみついていました。 こうして事件は収束し、奏の患者、遼太郎も退院します。病院を出る彼の傍らには“あっちのママ”が。そして振り返った奏の口元からは、牙が覗いていました。
【解説】地図に存在しない犬鳴村の都市伝説
本作の舞台となる「犬鳴村」は、ネット掲示板やSNSで「最凶の心霊スポット」と話題になっている実在の場所から着想を得ています。 福岡県に実在する旧犬鳴トンネルは、かつて犬鳴村という集落に続いていたのだとか。現在トンネルは封鎖され、中には入れないようになっています。しかし、どうにかしてトンネルの先に行ったという人々の体験談から、さまざまな都市伝説がささやかれるようになりました。
「コノ先 日本国憲法 通用セズ」と書かれた看板がある
旧犬鳴トンネルの入り口は現在ブロックで塞がれていますが、その出口には「コノ先 日本国憲法 通用セズ」という看板があると言われています。 憲法が通用しないということは、無法地帯か村独自のルールで生活している人々がいるような印象を持つのではないでしょうか。いったいなにが禁止され、なにが容認されているのか、想像もつかないところに恐怖を掻き立てられます。
全ての通信会社の携帯電話・スマートフォンが圏外に
犬鳴村では、全ての通信会社の携帯電話やスマートフォンが圏外になるとか。そもそも山奥ではそういうこともあるかもしれませんが、「心霊スポット」ですぐに外部に連絡できる手段がないというのは恐ろしいでしょう。
トンネル付近にある電話ボックス
旧犬鳴トンネル付近にある電話ボックスは、必ず幽霊が出ると有名だったようです。中にある公衆電話で電話をかけると不気味な女の声が聞こえる、電話ボックス付近に若い女の幽霊が出るなど、奇妙な噂が数多くあります。 なお、実際の電話ボックスはすでに撤去されたそう。また、最寄りのコンビニ前にある公衆電話からは、警察に電話をかけることができないという都市伝説もあります。
なぜ実際の「犬鳴村」は地図に載っていないのか
実際に存在した犬鳴村の正式名称は、「犬鳴谷村」だといわれています。しかし、この村は過疎化が進み、1994年の犬鳴ダム建設にともなってダムの底に沈みました。 「犬鳴」という地名自体は残っており、犬鳴山をはじめ新犬鳴トンネル、そして犬鳴ダムは現在の地図でも確認できます。
【解説】最後に奏が犬化した意味は?
『犬鳴村』は、「血筋」をテーマにしたストーリーになっています。 奏の母方の祖母は、彼女自身が犬鳴村から助け出した赤ん坊でした。その後、奏の母が産まれ、3人きょうだいに犬鳴村の血が引き継がれます。犬鳴村の血を引いているということは、クライマックスで現れた「犬人(いぬびと)」になってしまう運命にあるということです。 奏や彼女の兄弟は犬鳴村の血筋であるため、村に足を踏み入れても殺されることはありませんでした。村から脱出し入院していた奏は、摩耶について「あの人がいなかったら私たちはいなかったかもしれない」と、彼女の存在を受け入れます。そのとき同時に、自分に流れる犬鳴村の血も受け入れたのです。 彼女の弟である康太は、犬鳴村での出来事は「怖い夢」で、摩耶のことを「女の化け物」と言っていました。彼はまだ自身の血筋を受け入れていないので、犬化していないのでしょう。 奏が犬化したのは、彼女が自身は犬鳴村の血を受け継いでいると認めたからではないでしょうか。
【考察】わらべ唄「ふたしちゃろ」の意味とは?
本作に登場するわらべ唄「ふたしちゃろ」は、清水崇が作詞したオリジナルのものです。「臭いものに蓋」というように、差別され、ひっそりと暮らしていた犬鳴村の人々が、自らの境遇を自虐的に歌ったものという設定で作られました。 なかでも印象的で、映画内でもよく聞かれるのは「わんこがねぇやに ふたしちゃろ」「赤子は見ずに流しちゃろ」という部分です。 前者は「ねぇや」が“姉や”なのか“寝屋”なのか、もしくはその両方なのかわかりませんが、犬との交わりを示しています。 また後者は、「見ずに」=“水に”ということで、堕胎を意味しています。狭い村のなかで外界からも隔たれ、親戚同士での結婚によって血が濃くなるなか、子供の将来を案じてそうした決断に出ることもあったのでしょう。 自分たちの日常生活の苦しみや悲しみ、自分の出自を恨む気持ちをあえて唄にして慰めあった、と清水監督は説明しています。
感想・評価 ひどいと言われている理由とは
怖いだけじゃなくて、ストーリーもしっかりあるのが良かった。序盤の不気味さも結構好きだけど、後半にいくにつれて主人公と犬鳴村のつながりが少しずつ明かされる感じも面白い。
霊というよりゾンビ?はっきり姿が見えるので怖くないし、殺し方も90%物理だからグロいのが平気なら大丈夫かも……。あと話がとっ散らかりすぎてよくわからない。
ミステリー要素もあって楽しく観てたんだけど、オチがファンタジーというか荒唐無稽すぎてついていけなかった。主人公がタイムスリップして自分の祖母を助けたってことなの?ホラー描写も怖くないし微妙だった。
映画『犬鳴村』の評価は、主人公の奏が自分の祖母を救うというタイムスリップ的な展開をどう受け取るかで分かれるようです。 このシーンについては、奏の曾祖父であり彼女を犬鳴村に連れて行った青年・健司の過去を追体験しただけ(タイムスリップはしていない)という考察もあります。しかしそれでは、悠真の遺体にしがみついていた白骨死体が摩耶ともう1人は誰なのか、という点の説明がつきません。もう1人は摩耶を止めようとした健司であると考えるのが自然でしょう。 また幽霊がはっきり見えて物理的に攻撃してくるなど、心霊ホラーらしい怖さがあまりないのも、低評価の理由のようです。
『犬鳴村』知れば怖さ倍増のトリビアを紹介
脚本執筆のために実際の犬鳴トンネルへ
清水崇監督と脚本を担当した保坂大輔、プロデューサーの紀伊宗之は、本作の脚本執筆のため、福岡県にある実際の犬鳴トンネルに行ったそうです。そのときに不可思議なことが起こったとか。 彼らは、真夏で汗だくになりながらトンネルを目指していたとき、急に寒くなったと話しています。それまで木が揺れる音や鳥の鳴き声などが聞こえていたのが急に無音になったり、トンネルの入り口に積んであるブロックの隙間から風が吹き、肌に水滴がつくほどの冷たさだったとも。 当初は一度昼間に見に行ったあと、夜にもう一度行く予定だったそうですが、昼間でも充分に怖かったので夜に行こうという人は1人もいなかったそうです。 ちなみに、撮影は埼玉県や神奈川県、東京都などで行われています。
清水崇監督渾身の詳細設定
本作のアイディアを思いついた後、清水崇はストーリーよりも家系図やキャラクター設定を考えるのに夢中になったそうです。 劇中ではまったく触れられていませんが、犬鳴村の村人たちには、一人ひとり名前と詳細な人物設定があります。 奏の曾祖母である摩耶は、犬鳴村の長を務める一族の娘という設定。巫女として神事を執り行うほか、女性は犬と交わることで犬の言葉と操り、霊的能力を持つと伝えられている、とのことです。
映画『犬鳴村』キャスト一覧
森田奏役 | 三吉彩花 |
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森田悠真役 | 坂東龍汰 |
成宮健司役 | 古川毅 |
籠井摩耶役 | 宮野陽名 |
西田明菜役 | 大谷凜香 |
優子役 | 奥菜恵 |
圭祐役 | 須賀貴匡 |
内田先生役 | 田中健 |
遼太郎役 | 笹本旭 |
森田康太役 | 海津陽 |
山野辺役 | 寺田農 |
中村隼人役 | 石橋蓮司 |
森田晃役 | 高嶋政伸 |
森田綾乃役 | 高島礼子 |
映画『犬鳴村』のネタバレ解説を読んで恐怖倍増
怪談好きの間では超有名な「犬鳴村伝説」。それが日本のホラーの第一人者、清水崇によって映画化されたのですから、ホラー映画好きは必見です。 実在する心霊スポットと都市伝説を混ぜ合わせた『犬鳴村』で、清水崇ワールド全開の恐怖体験を楽しみましょう!
清水崇監督による“恐怖の村シリーズ”第2弾は『樹海村』
日本に実在する心霊スポットを舞台にした『犬鳴村』は人気を獲得し、2021年には清水崇監督による“恐怖の村シリーズ”第2弾として映画『樹海村』が公開されました。 富士の樹海で起こる次なる恐怖体験については、以下の記事をチェックしてください!