『マイ・ブロークン・マリコ』あらすじをネタバレ考察 最後の手紙には何と書いてあったのか？

ブラック企業に務めるシイノトモヨは、テレビのニュースで親友のイカガワマリコがマンションから転落死したことを知ります。彼女の死を受け入れられないシイノでしたが、マリコの遺骨が毒親の手に渡ったと知り、居ても立っても居られず彼女の実家へ。 マリコの遺骨を奪い取ったシイノは、幼いころから父親や恋人に暴力を振るわれてきた親友のために自分にできることは何なのか考えます。そしてマリコが行きたがっていた海に、最後の“2人旅”に出ることにしました。

詳細なあらすじをスキップし、最後の手紙の考察を読む。

ブラック企業に務めるシイノトモヨは、外回り中に昼食をとるため定食屋に入ります。彼女はそこにあったテレビのニュースで、親友イカガワマリコの死を知りました。 親友の死をすぐには受け入れられないシイノ。何度も連絡を送りますが既読はつきません。マリコが住んでいた部屋を訪れた彼女は、マリコの遺品は両親が引き取り、遺体は直葬になったと大家から聞かされます。 マリコが幼いころから父親にひどく虐待されていたことを思い出したシイノ。中学生のころ、花火をする約束に来ないマリコを迎えに行くと、父親に殴られていました。さらに高校生の時には性的虐待も受けていました。 親友の遺骨がそんな父親のもとにあると知り、シイノは居ても立ってもいられず走り出します。そして包丁を片手にマリコの実家へ突撃。遺骨を奪い取って、ベランダから飛び降り逃走しました。

マリコの遺灰を抱いて部屋に帰ったシイノは、昔マリコからもらった大量の手紙を引っ張り出します。彼女は手紙を書くのが好きでした。彼女はマリコからの手紙を読み返し、最後に親友にしてあげられることはないかと考えます。 中学時代、シイノが海へ行こうを誘うと、マリコは行きたいと言いながらも「お父さんが怒るから」と断りました。シイノは彼女の遺灰に「もう怒られっこないよ」とつぶやき、むかし行けなかった海へ連れて行くことにします。 しかしどこの海に行けばいいのかわからず、困惑するシイノ。そのとき、以前マリコが「自分の名前に似ているから」と“まりがおか岬”に行きたがっていたことを思い出します。そして彼女は、位牌を抱えて深夜バスに乗り込んだのでした。

深夜バスと電車、バスを乗り継ぎ、まりがおか岬にたどり着いたシイノ。しかしひったくりに遭い、スマホや財布、マリコからの手紙を失ってしまいます。そんな彼女のそばを、釣り帰りの男が通りかかりました。 手紙を取り戻したい一心でひったくりを追いかけたシイノは、うっかり遺灰を道路に置いてきてしまいます。 ひったくりを捕まえられずにシイノが戻ってくると、なんと男が遺灰の番をしていました。しかも彼はシイノが一文無しだと知ると金を渡します。 シイノが連絡先を尋ねると、「名乗るほどの者ではありません」と男は去っていきました。しかし彼が持っていたアイスボックスには“ナリタ商店 マキオ”と書いてありました。 マキオにもらったお金で酒を飲んだシイノは、マリコがそばにいるような幻覚を見ました。 翌朝マキオに再会し、「ご自分を大事にしてください」と言われたシイノ。彼女はかつて自分がマリコにそう言ったことを思い出しました。 かつてシイノは、マリコが恋人に殴られていたところを助け、男を追い払いました。しかしマリコはその男から呼び出されて会いに行き、腕を骨折して帰ってきます。激怒するシイノにマリコは「わたしはシイちゃんが本気で怒って、心配してくれるのがうれしいだけ」と言いました。

マリコが自分に黙って自殺したことに腹を立て、衝動的に海に飛び込もうとするシイノ。マキオは彼女を羽交い締めにして止めます。2人がもみ合っていると、ヘルメットをかぶった痴漢に襲われた女子中学生の叫び声が聞こえてきました。 その姿にマリコを重ねたシイノは、骨壷でヘルメットを殴ります。そして割れた骨壷から海に飛び散ったマリコの遺灰をつかもうと飛び出し、崖から転がり落ちてしまいました。 浜辺に打ち上げられて目覚めた彼女のもとに、マキオがやってきます。彼もまた大事な人を失い、自殺を試みたことがあるのでした。彼は生きている人の思い出の中に死んだ人間が生きつづけるなら、シイノが死ぬことでマリコも永遠に消えてしまうと語ります。 シイノが倒した痴漢はひったくりと同一人物で、彼女はマリコの手紙を取り戻すことができました。その後彼女は自宅へ帰り、日常へと戻っていきます。 あるときシイノが自分の部屋に帰ると、玄関のドアノブにマリコの実家に脱ぎ捨ててきた靴が入った紙袋が。キョウコが持ってきたらしいその袋には、マリコが彼女宛てに書いた最後の手紙も入っていました。シイノは立ったままその手紙を読み、微笑みます。

マリコが最後にシイノに遺した手紙は、どんな内容だったのでしょうか。 手紙を書くことが好きだった彼女は、大人になりSNSでシイノと連絡を取り合うようになっても、ときどき子どものときのようにとりとめもないことを手紙に書いていたのかもしれません。彼女の死後にシイノが受け取った最後の手紙も、そのような内容だったと考えられます。 なぜなら手紙を読んだシイノの反応は微笑みだったから。遺書のような深刻な内容だったようには思えません。いつもどおり、手紙に書くほどのことでもないようなことが書いてあったのではないしょうか。

シイノに大きなショックを与えたマリコの自殺ですが、彼女は本当に自殺するつもりだったのでしょうか。 KADOKAWAコミック購入特典として配布された冊子には、マリコの最後の日を描いた数ページの読み切りが掲載されています。それを見ると彼女は飛び降りる直前、明るい表情でベランダにやってきたスズメにパンくずを与えるなどしていました。 自由に空を飛ぶスズメを見たマリコは、ふと魔が差してベランダから飛び降りてしまったのかもしれません。しかしその根底には、マリコの精神の不安定さや自己肯定感の極端な低さがあったのではないでしょうか。

父親から身体的・精神的・性的に虐待されながら育ったマリコは自己肯定感が低く、親元を離れたあとも父親と同じような男性と付き合い、虐待され続けていました。 高校生のころからリストカットしており、いつ死んでしまってもおかしくないような不安定な精神状態のマリコ。彼女をギリギリでつなぎとめていたのがシイノだったのです。 しかし依存していたのはシイノも同じ。彼女もまた“自分がいなければいつ死んでしまうかわからない”マリコとの関係に意味を見出しており、2人は共依存的な関係にありました。

本作のテーマは「女同士の魂の結びつき」となっています。マリコとシイノの関係は、ほかに代替のきかない、唯一無二のものでした。 作中ではシイノの家庭環境や恋愛関係にはあまり触れられていませんが、少なくとも彼女の両親が離婚していることは言及されていますし、中学生のときから喫煙するほど、シイノを取り巻く環境は良くなかったと考えることができます。 それぞれに問題を抱えた2人は、お互いを見つけ、ともに支え合うシスターフッド的な関係を築いていきました。2人は連帯し、特にシイノはマリコを守るため、理不尽な世の中で、たとえささやかであっても反抗をつづけます。 彼女たち2人の魂の結びつきは、マリコの死を経てもなおつづいているのです。

原作漫画の内容は、映画『マイ・ブロークン・マリコ』とほぼ同じです。ただ漫画の方がもっと鮮烈で、鬱な雰囲気が強い印象になっています。 映画にはそこで自分の人生まで振り返らされてしまうような、心地よい余白がありました。また映画では2人のシスターフッド的な関係を一掃強調できるよう、演出・シーンが一部足されています。

ブラック企業に務めるOL。26歳でガラの悪い女性です。幼なじみで親友のマリコの突然の死を知り、彼女のためにできることはないかと考えます。彼女はマリコの遺骨を彼女を虐待していた父親のもとから奪い取り、かつてマリコが行きたいと言っていた海を目指すことにします。 トモヨを演じるのは、永野芽郁。ドラマ『ユニコーンに乗って』(2022年)など主演作が途切れない人気女優です。

シイノの親友イカガワマリコは、幼いころから父親や恋人に虐待を受けてきました。シイノとは長年親交をつづけていましたが、ある日突然、自宅マンションから転落死してしまいます。 演じるのは奈緒です。永野芽郁とは『半分、青い。』以来の共演となりました。

マキオは、シイノがマリコの遺骨を持って向かった「まりがおか岬」の近くに住む若い男性です。偶然出会ったシイノの世話をします。 演じるのは、窪田正孝。「ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜」シリーズなど、数々の作品で主演を務め、実力派として知られています。

幼いころからマリコを虐待してきた彼女の実父。 演じるのは数々の映画やドラマに出演し、バイプレイヤーとして活躍している尾美としのり。大林宣彦監督作品や、宮藤官九郎脚本の作品などに特に多く出演しています。

タムラキョウコは、マリコの実父の再婚相手です。 演じるのは、吉田羊。1990年代後半から舞台を中心に活躍しはじめ、2000年代から映像作品にも多数出演。年齢に縛られず幅広い役柄を演じたいという考えから、年齢は非公開となっています。

SNSを中心に大きな話題を呼んだ『マイ・ブロークン・マリコ』。永野芽郁を主演に迎えた本作の実写映画は、2022年9月30日から公開中です。 多くの人に感動を与えた原作がどのように映像化されているのか、もしまだ映画未鑑賞なら、あらすじやキャストの再現度をぜひ劇場で確かめてみてください。