2023年6月14日更新

映画『母性』結末ネタバレ考察!原作との違いは?なぜ母と娘の“真実”は食い違うのかあらすじ相関図から解説

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映画『母性』
©2022映画「母性」製作委員会

湊かなえ作の『母性』が映画化!主演は戸田恵梨香×永野芽郁で、監督はNetflixドラマ『火花』でなど数々のヒット作を手がけた廣木隆一です。 本記事では映画『母性』のあらすじやキャストをネタバレありで紹介し、母と娘それぞれの視点から考察を深めていきます。

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映画『母性』のあらすじ

清佳(永野芽郁)は平凡で幸せそうな家庭に生まれ、優しい祖母(大地真央)と少し厳しい母(戸田恵梨香)に育てられてきました。しかしあるとき自宅で火事が起こり、祖母は亡くなり一家は父方の実家に身を寄せることになります。 母は義母(高畑淳子)にこき使われるようになり、清佳は母を助けたい一心で戦おうとしましたが、母はそんな清佳に冷たく当たりました。 愛しているつもりの母と、愛してもらえない自分が嫌いな娘。やがて浮かび上がる衝撃の真相とは……? 結末までのネタバレ解説を読む

映画『母性』の感想・レビュー

母性
©2022映画「母性」製作委員会
母性』の総合評価
4 / 2人のレビュー
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20代女性

母性という言葉によって苦しむ人がいるということをこの映画で初めて考えさせられました。母と娘それぞれの視点から違った捉え方、そして違った現実が最後1つの終着点に向かっていくサスペンス要素もたまりません!

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30代女性

母親の役割という観点より、毒親ものだと思って見た方が良い気がする。良くも悪くも鑑賞後はすごく鬱な気持ちになる。さすが湊かなえ。メッセージにはあまり共感できなかったが、演者一人ひとりの演技力が光っていてラストは泣いてしまった。

映画『母性』の感想として1番目立つのは「母性」について深く考えさせられたという声です。「母性とは何なのか」「すべての女性に備わっているわけではないのか」明確な答えは提示せず問いかけがメインの結末に、余計悩み込んでしまった人も多いのではないでしょうか。 また主演キャスト2人の演技も賞賛されています。戸田恵梨香の狂気や、永野芽郁の憐れな瞳に心を揺さぶられた人が多いようです。対照的な2人の母親(祖母)を演じた、大地真央と高畑淳子も大きな存在感を発揮していました。

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母・ルミ子の証言をネタバレ解説

映画『母性』
©2022映画「母性」製作委員会
母の思い
  1. 母が望むような理想的な家庭を築いた
  2. 義母に失礼をはたらく娘が理解できない
  3. 娘のために母が死んだことは忘れたい
  4. 母が望んだ通り、娘には命をつないでほしい

①理想的な家庭が燃えた日

夫と結婚し森の中に家を構え、大好きな母もよく娘に会いに来てくれました。理想的な家庭だったと思います。 しかしあるとき自宅で火災が起こり、母と娘が箪笥の下敷きになってしまったのです。救出に行った私はまず母を助けようとしましたが、母は助けを拒みこう言います。 「あなたの愛を今度はあの子に。愛能う限り大切に育ててあげて」 気づいたら娘を抱いて外から燃え盛る家を眺めていました。母は亡くなりました。

②なぜ娘は義母に逆らうのだろうか

火事で家を失い、夫の実家に居候させてもらうことになります。居候の身として私が家事を引き受けました。 叱責される毎日でしたが、誠心誠意尽くせばいつか受け入れてくれるはずだと私は信じています。それなのに娘は目上の義母に向かって反抗するのです。律子の駆け落ちまで手伝って、義母を憔悴させました。どうして娘はこんなにも失礼なことばかりするのでしょうか。

③娘が祖母の死を掘り返してくる

娘が珍しく夜遅く帰ってきた日、「おばあちゃんが、わたしを助けるために、自殺したって、本当なの?」と私に尋ねます。必死に頭から消していた、娘のために自死した母の姿を思い出してしましました。 しかし私は母親です。母に言われた通り娘を愛そうと、「愛している」と強く抱きしめます。 その夜、娘は私から奪ったものの大きさに気付き命を絶とうとしました。私はとっさに娘の名を叫び、病院に向かう中で祈りました。娘が助かりますように、大切な母が残した命が美しく咲き誇りますようにーー

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④義母を介護する平穏な日々

義母はボケてしまったのもありますが、訪ねてくる人に私のことを娘と紹介してくれるようになります。義母との暮らしはそれは平穏な日々でした。 そして娘から子供を授かったと連絡がありました。命をつないだ母も喜んでくれているはずです。

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娘・清佳の証言をネタバレ解説

映画『母性』
©2022映画「母性」製作委員会
娘の思い
  1. 一生懸命やれば母は私を愛してくれるはず
  2. いびられる母を助けて愛されたい
  3. 祖母が自分のために死んだことを知る
  4. 母は私を愛せないと悟る

①母に気に入られようと必死に育つ

小さい時から母に好かれたいと努力していましたが、母は私を幸せの一部分にしか見ていないようでした。ときどき厳しく躾けられましたが、祖母がいるうちはまだあたたかく笑顔を向けてくれることの方が多かったです。 しかしあるとき火事で祖母は亡くなり、母と私は気づいたら家の外に逃げていました。

②いじめられる母を助けたかった

父方の実家へ引っ越し、毎日義母にいびられる母を目にして、祖母の代わりに母を守ろうと思いました。 しかし母はそんな私を反抗的だと怒り、涙を流して寝ているところを何度も叩きました。私は寝ているふりをしてやり過ごします。母の手を握っても「手がベタベタして気持ち悪い」と言われました。 それでも、いくら拒絶されても、どうすれば母は私を受け入れてくれるのだろうとそればかり考えてしまうのです。

③祖母の死の真相を知り自殺未遂

帰り道に母の生家に向かう父を見つけ追いかけると、仁美さんとの不倫現場を目撃しました。言い争いの中で、母が誰より愛する祖母が、私のせいで自死したことを聞きます。 あまりにショックで申し訳なくて、家に帰り母に尋ねました。母は「愛してる」と言いながら、強く私の首を締めました。 母の思いを感じ、償いとして首を吊ります。かすかな記憶で母が「清佳」と呼ぶ声が聞こえました。私の名前は清佳だったのだとその時ふと思いました。

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④自分はどんな母親になるのか

子供を授かり、母に伝えると、母は血が受け継がれていくことを喜んでいたようでした。 今なら、女には2種類あるとわかります。それは「母」と「娘」。結局「娘」のもとに生まれた娘は一生愛されないのです。私はどちらの母親になるのでしょうか。

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映画『母性』結末ラストシーンの考察

物語の最後、清佳(永野芽郁)は「母」か「娘」か、どちらのタイプなのかと聞かれ悩んでいました。 しかしそれぞれ過去を語る時、ルミ子は教会で神の庇護を得ようとしている一方、清佳は自殺未遂の中学生を助けようとしています。これを見るに清佳は、どちらかといえば「母」の方だと描かれているようです。 また原作小説には、「母に似てきたと言われるけれど<中略>わたしと同じ顔をしているのは、おばあちゃんの方だ。」と記述があります。小説ではより明確に清佳は「母」として描かれています。 しかし女性はそんなにわかりやすく二項対立で区切れるものではありません。現代の母性論争も踏まえた上で映画では、実は誰もが「母性」を持っていないかもしれないと不安な気持ちを抱えていることを、描いたのかもしれませんね。

【解説1】なぜ母と娘の証言は食い違うのか?

映画『母性』
©2022映画「母性」製作委員会

お弁当を落とす描写にハンドクリームの描写、最後の首を閉める描写まで、母と娘それぞれの視点からでは、物語はとことん食い違っていました。 この食い違いが起こっていたのは、母も娘も、叶わない「母性」を求めるあまり記憶を改ざんしてしまっていたから。 母は娘を愛せないのに、愛せなければならないという母の教えに囚われていた。娘は母に愛されないのに、愛されることをあまりに切実に求めてしまった。 だから母は娘を愛してきたかのように記憶を補正し、娘は母に全く愛されなかったと誇張して憶えていたのです。どちらの証言が正しいのかはわかりません。お互いにあるときは正しく、あるときは間違っていたのかも。

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【解説2】「母性」にまつわるメッセージ

母と娘の食い違い、そして娘の自殺未遂という悲劇を招いたのは、「母性」という既成概念ではないでしょうか。 自殺未遂を経てようやく清佳は、「すべての女性が母性を持っている」という既成概念が間違っていたことに気付きます。そして昔より少しは楽に、折り合いをつけながら母と話せるようになるのです。 「母性」という概念に囚われ苦しんできたすべての「母」と「娘」を解放するために、この映画が作られたのではないでしょうか。

映画と原作小説との違いは?

映画『母性』
©2022映画「母性」製作委員会

メインであるルミ子と清佳の関係性や証言が交互に語られる大筋の流れは同じです。原作との大きな違いは田所家長女の憲子とその息子の英紀が登場しない点。 また原作で清佳の彼氏となる中谷亨は映画に登場しますが、詳しいエピソードは含まれません。映画はできるだけ母と娘の関係性に時間をかけている印象です。 >原作小説の詳しいネタバレあらすじを読む

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原作者・湊かなえは“母性”をどう思っていた?

作者の湊かなえは「女性には母と娘の2種類いるのではないか」と感じたことがキッカケで本作を執筆したとインタビューで語っています。 物語の中にも「愛を求めようとするのが娘であり、自分が求めたものを我が子に捧げたいと思う気持ちが、母性なのではないだろうか」という記述や「誰かの娘でいたい、庇護される立場でありたい、と強く願うことにより、無意識のうちに内なる母性を排除してしまう女性もいるんです。」という記述もあります。 これらから考察するに、「母性」というのは誰もが持っているものではなく、娘でいたいと強く願う女性の中には「母性」を抱かない人もいるというのが湊かなえの考え方のようです。

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2022年現代も変化する「母性」論争

一方現代では、そんな母性を持たない母親こそ被害者であるという見方での研究も進んでいます。 脳やホルモンの変化を調べた実験では「母性」は妊娠や出産によるものではなく、子育てによる可能性を示すデータも出てきました。また男女どちらにも使える「親性」という言葉も普及してきています。 つまり、子を愛する習性は女性特有の本能ではなく、「母性」という考え方は女性に育児の役割を背負わせるために都合よく使われてきた言葉なのではないかと考えられ始めているのです。 母への過度な責任の押し付けが見直され「母性」の考え方や夫婦の育児参加の分担など「母のあり方」について様々な議論がかわされています。

原作小説『母性』結末までのあらすじネタバレ

女子高生が自宅から飛び降りたと思われる事件が報道されます。1人の妊娠中の女性教師が興味を持ち、同僚らとその事件について話すことになりました。 11年前、夫の田所が夜勤でいない夜に台風が来ます。夜中に家が揺れ、ルミ子の母親と娘・清佳がタンスの下敷きになりました。ルミ子は大切な母親を助けようとしますが、彼女の説得で清佳の方を救い出します。家は火事で全焼し、母親は亡くなりました。 それ以降、一家3人は田所の実家に住むことになります。そこはルミ子にとって地獄のような場所でした。 母親の愛を感じることなく高校生になった清佳は、ある日、父・哲史が仁美と不倫していることを知ります。

そして哲史から、ルミ子の母親が台風の日に、ルミ子に清佳を助けさせるために舌を噛み切って自殺したことを知らされるのでした。 清佳はすぐに、「おばあちゃんが私を助けるために自殺したって本当なの?」と母に尋ねます。するとルミ子は清佳の首を絞めようとしました。それでは母の罪になってしまうと考えた清佳は、ルミ子を突き飛ばし、庭の木で首を吊ります。 妊娠中の女性教師が事件に興味を持ったのは、彼女が成長した清佳であるからでした。庭の木は折れて、清佳は一命をとりとめたのです。事件の女子高生が話した母親の「愛能う限り」は、母・ルミ子もよく言っていた言葉でした。 清佳は、自分の我が子には自分の全てを捧げ、「愛能う限り」など口にしないと決めています。愛を求めようとするのが娘であり、自分が求めたものを我が子に捧げたいと思う気持ちが母性なのだと、清佳は思うのでした。そして清佳は今日も、母のいる家に帰るのです。

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原作『母性』の感想と考察

“母親の娘であること”に幸せを感じ、娘に母性を感じられないルミ子と、そんな母親の愛を切望する娘。母娘の危うく切ない関係性にゾクゾクしながら読みました。 この物語は、「母・ルミ子の手記」と「娘・清佳の回想」の2つの視点で進みます。ルミ子の手記には、「愛能う限り、大切に育ててあげて」という最愛の母の最期の言葉を胸に、愛せない娘をできる限り愛そうとしたことが綴られていました。 清佳が首を絞められたと回想した場面についても、ルミ子は「抱きしめるために手を伸ばした」と書いています。母と娘の記憶は、大きく食い違っているのです。 清佳の記憶もあくまでも彼女の回想であり、どちらが正しいのかはっきりと書かれていないのもポイントでしょう。母のできる限りの愛(=愛能う限り)ではなく「無償の愛」を求めるあまり、清佳がどこか歪んでいるような気もします。 愛とは決して思うように伝わらず、思うようには与えられないものなのだと、深く考えさせられる物語です。

『母性』登場人物・キャスト一覧

母・ルミ子 戸田恵梨香
娘・清佳 永野芽郁
ルミ子の母 大地真央
ルミ子の夫・田所哲史 三浦誠己
田所の母 高畑淳子
佐々木仁美 中村ゆり
田所律子 山下リオ

相関図解説

『母性』相関図

原作で詳しい相関を確認する

母(ルミ子)役/戸田恵梨香

母性を持てず、娘を愛せない母親・ルミ子。誰よりも自分の母親のことを愛しており、夫である田所哲史との結婚も、母親が気に入ったという理由で結婚しています。 ルミ子を演じるのは、人気女優・戸田恵梨香です。映画「デスノート」シリーズや、『LIAR GAME』「SPEC」など、多数の人気シリーズで主演を務めてきました。2018年のヒットドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』では演技力の高さで注目を集めました。

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娘(清佳)役/永野芽郁

清佳(さやか)はルミ子の娘。母に愛されていないと感じており、何をしても認めてもらえない自分が嫌で、母の愛を求めています。 清佳を演じるのは、2021年公開の映画『そしてバトンは渡された』で日本アカデミー賞 優秀主演女優賞を受賞した永野芽郁。2022年7月放送開始のドラマ『ユニコーンに乗って』と、今秋公開の映画『マイ・ブロークン・マリコ』でも主演を務める、今引っ張りだこの若手女優です。

ルミ子の母役/大地真央

ルミ子の母親は、ルミ子を愛する上品で優しい女性。孫である清佳を可愛がっていました。 ルミ子の母親を演じるのは、元宝塚歌劇団月組トップスターの大地真央。ドラマ『アンダーウェア』(2015年)やNHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(2016年)、正直不動産(2022年)などに出演しています。

田所哲史役/三浦誠己

田所哲史はルミ子の夫で、清佳の父親。絵画教室で出会ったルミ子に絵のセンスを褒められて結婚します。 演じるのは三浦誠己(みうら まさき)。映画『火花』(2017年)や『検察側の罪人』(2018年)、『朝が来る』(2020年)などに出演しています。

田所の母役/高畑淳子

田所の母親は、ルミ子にとって義母(姑)。清佳の名付け親でもあります。口が悪く、ルミ子はそんな彼女に逆らうことができません。 演じるのは、高畑淳子。ドラマ『3年B組金八先生』や『白い巨塔』などへの出演で知られ、近年もNHK連続テレビ小説『なつぞら』や『アライブ がん専門医のカルテ』などに出演しています。

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佐々木仁美役/中村ゆり

仁美はルミ子の親友。田所哲史とは同級生で、ルミ子に対して「結婚はやめておいた方が良い」と忠告する“訳知り顔”な女性です。 演じるのはドラマ『今夜はコの字で』(2020年)で浅香航大とW主演を務めた中村ゆり。映画『そして父になる』(2013年)や『Arc アーク』(2021年)などにも出演しています。

律子役/山下リオ

律子は田所家の次女で、哲史の妹。ルミ子の義妹、清佳の叔母です。実家を出ていましたが、ある時突然帰ってきてます。 演じるのは山下リオ。NHK連続テレビ小説『あまちゃん』(2013年)や、廣木隆一監督作品である映画『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(2017年)などに出演しています。

主題歌はJUJUの「花」

映画『母性』の主題歌には、JUJUが書き下ろした新曲「花」が起用されることになりました。 映画を観て、常に「どきり」という感情があったというJUJU。楽曲は、母に愛されたいと思う娘の思いやすれ違う親子2人の気持ちを表していて、穏やかなバラード曲になっています。 主演の戸田恵梨香は「JUJUさんの強さと包み込むような歌声からこの曲を聴き終わってようやく『母性』という作品が完成するのだと実感しました。」とコメントを寄せています。

映画『母性』ネタバレ解説を読んで物語をおさらい

『母性』海外用ポスタービジュアル
©2022映画「母性」製作委員会

母役を戸田恵梨香、娘役を永野芽郁が演じる映画『母性』。 「母は娘を愛するはずだ」という既成概念に苦しめられた母娘の悲劇を描いたことで、改めて現代に母性という概念自体のあり方を問い直している傑作です。 湊かなえによる衝撃的なミステリー小説を実写化した本作を、豪華キャストの迫真の演技とともに劇場でぜひ鑑賞しましょう!