『左ききのエレン』あらすじネタバレを2部まで解説！すべての人に贈る今読むべき面白い漫画

Web掲載の漫画から火がつき、漫画リメイク化、ドラマ化もされたクリエイター群像劇『左ききのエレン』。大人のための少年漫画として話題となった本作は、天才のエレンと天才にはなれなかった光一を軸に、自分だけの人生をどう生きるのかを考えさせてくれる作品です。 本記事ではそんな『左ききのエレン』のあらすじを、ネタバレありで紹介していきます。

主人公は大手広告代理店に務めるデザイナー朝倉光一(あさくらこういち)。自分が漫画の主人公のような何者かになれると信じていた高校時代、光一は1人の天才・山岸エレンと出会います。高校時代の天才と凡人のこの出会いは、後の光一とエレンの人生に大きな影響を与えることに。 夢だった広告代理店のデザイナーになるものの、光一はなかなか思い通りの成功を手にできません。一方でエレンも天才ゆえの出会いと苦悩を重ね……。 この2人を中心に、持つ者・持たざる者たちが奮闘するクリエイター群像劇が繰り広げられます。

ここから本編ストーリーをネタバレ解説していきますが、本作は時系列がいったりきたりする作品。そこで本記事では作中の時系列に沿って、内容を紹介していきます。 ※この記事は2022年11月現在までのネタバレを含みますので、読み進める際は注意してください。またciatr以外の外部サイトでこの記事を開くと、画像や表などが表示されないことがあります。

美術部員の朝倉光一は自信家なところがあり、自分よりうまい人はそうそういないと考えていました。そんな折、美術館の壁面に何者かがラクガキするという事件が起きます。光一はこれを「横浜のバスキア」と呼び、一方的にライバル視して犯人をおびき寄せようと動き始めることに。 一方のエレンは売れない画家だった父の死をきっかけに絵はやめていましたが、いやに自信のある光一を見て、彼は自分と同じ側の人間かもしれないと心をざわつかせます。 ところが実際の光一の絵は下手くそ。絶望と怒りでいっぱいになったエレンは光一に殴りかかります。稚拙な夢を語る光一にエレンは現実を突きつけますが、それでも光一は「何かにならなきゃ退屈で生きていけねぇよ」と夢を諦めないのでした。

エレンに触発されて美大受験を決意した光一は、さゆりと共に馬車道美術学院へ。そこはエレンが子供の頃から出入りするアトリエでした。 この頃のエレンは天才ゆえの孤独に追い詰められていました。そんなある日、光一の行動のおかげで、エレンは父親が自殺したのではなく朝日を見ていたのだと信じることができたのです。 相変わらずデッサンが下手な光一は、懲りずにエレンへの絵の挑戦状を叩きつけます。「描けよ！」と一言添えられた1枚のデッサンがエレンの心を動かし、彼女に再び筆を取らせたのでした。3人はそれぞれ志望大学に合格します。

エレンの大学の後輩・岸あかりは、自分に似たタイプの「才能しかないクズ」エレンに接触します。あかりが出演するファッションショーの主催者に光一の名前を見つけると、エレンはショーに行くことを承諾。 実はエレンに近づきたいと思っていた岸あかりの姉・岸あやのも、光一をうまく乗せてファッションショーを企画させていたのでした。 このファッションショーを通じて、エレンはあかりという自分に似た天才に魅入られます。同時に光一は、岸姉妹の天賦の才を目の当たりにし、さらにエレンの眼中にも入れなかったことに、改めて自分は何者でもないことを再確認するのでした。

あかりに惹かれる光一は、半同棲状態のさゆりと決別。エレンも光一と付き合ったことで変わったあかりに失望して、彼女の絵を描くことをやめてしまいます。 あかりは休学してフランスへ短期留学、光一は目黒広告社内定。そしてさゆりとエレンは高校卒業ぶりに再会。お互いに初めて本音をぶつけあったことで、才能のエレンと知性のさゆりはタッグを組むことに。さゆりが彼女のプロデューサーとなり、大学卒業後、拠点をニューヨークへ移します。

卒業後、迷走するエレンを刺激するため、さゆりはエレンに本物をぶつけようと画策します。それはバスキアの再来と呼ばれるトニー・ジェイコブス。彼の作品を見たエレンは、売れっ子ならではの諦めを絵に見てとり、彼に喧嘩をふっかけます。 2人がギャラリーの壁に描いたグラフィティは大きな話題となり、正体不明のエレンは「左きき(ザ・サウスポー)」として連日メディアが報道。そんな折、2人の前にエレンを撮りたいという映画監督志望のルーシーが現れます。 五番街の女王・岸アンナをパトロンにつけたエレンたちは、広告動画を公開。その名を世界に轟かせます。 2010年、さゆりの結婚を機にエレンはさゆりやルーシーの人生を返すことを決意。2人のもとを離れ、アンナとともにニューヨークを離れます。

柳の同級生でいじめられっ子だった佐久間威風(さくまいふう)は、人の目を見ると触覚を感じるミラータッチ共感覚の持ち主です。漫画の主人公のような「完璧なオレ」になりたい。その一心で努力をし続けた彼は、やがてニューヨークで個展を開くほどの天才写真家と呼ばれるようになります。 柳いわく佐久間は天才ではなく、天才に成った人物でした。共感覚で一目見た人物の「圧」を見抜く彼は、一瞬出会ったエレンにも本物だけが放つ圧を感じます。 2010年、佐久間は光一の案件でもう1人の本物の天才・あかりを撮影することに。その現場で光一から人は完璧じゃないことを叩きつけられ、のちのカメラマン人生に影響を受けるのでした。

熱血な光一は、のらりくらりと働く沢村のやり方が好きになれません。沢村は自らに配らたカードで戦わなくてはならないという持論を説きます。しかしはやく一人前になりたい光一にはいまいち響いていない様子。 そんな中、光一にとって初現場のスタジオに沢村が遅れてくるというアクシデントが起きます。自分が場を仕切らないといけない立場に置かれ、光一は無力さをひたすらに恥じるのでした。 別件で遅れてきた沢村が入るだけで、現場の雰囲気は一変。ようやく光一は沢村のすごさを感じ、沢村もまた出来ないことを認められた光一を労います。 3年後、同じスタジオには沢村のようにスタッフと良い関係を築いた光一の姿がありました。

神谷・光一・みっちゃんで発足した新チームにサニートライの大口コンペの話が舞い込みます。根を詰めた光一は社内で倒れますが、最後の切り札である「ガッツ」を使って、エレンに思いを馳せながら仕事をやり遂げました。 プレゼンに勝ち光一のデザインしたロゴも使われることに。しかし社長命令で光一はプロジェクトから外されてしまいます。人知れず泣く光一ですが、そのロゴはニューヨークにいるエレンにも届いていました。 次のギガカラチップス案件を通して、光一は「夢のあるサラリーマン」として組織の中で働く意味を学びます。

アートディレクターとなった光一ですが、神谷には下っ端根性が抜けていないとダメだしされる日々が続いていました。 いつも通りボロボロの状態で仕事をする光一に、神谷は「万全の日なんてこない」「クソみたいな日にいいもんつくるのがプロだ」と教えます。 神谷に憧れる光一でしたが、唐突に神谷から打ち明けられたのは、会社を辞めて独立すること。チームで仕事をすることを教えてくれた神谷の作る新しいチーム、そこに自分がいないことに光一はショックを隠せません。 ガッツしかないから頑張ると誓う光一に、神谷は「ガッツだけでやれるかよ」と彼なりの賛辞を贈ります。光一にとって神谷は、勝ちたい相手ではなく、どこまでもなりたい理想の存在でした。

組織再編成で、光一はディレクターに降格のうえ、柳に兵隊要員として引き取られます。ワンマンな柳のやり方に、光一は戸惑いを隠せません。 その頃、営業の流川(るかわ)は老舗取引先の園宮製薬のパンフレットを誤植発注してしまうというトラブルに見舞われていました。流川はこの一件で、後に園宮製薬を継ぐ社長令嬢の園宮千晶(そのみやちあき)に恩を売ることに成功。 また、光一の最初の上司だった沢村が定年退職を迎えます。

柳のやり方についていけず追い詰められた光一は、クライアントの意見を軽んじる行動を取ってしまいます。 激昂した柳に「この仕事をなめるな」「何か残して死ね」と吐き捨てられ、光一は自分という凡人の物語は、エレンという天才の物語のようにはならないのだと心の底から理解するのでした。 2年後、光一は「柳ジュニア」と呼ばれるように。実際に賞も取って結果を残すようになった光一ですが、制作で大切なものは雑音の排除と言い切るほど、柳と同じワンマンタイプなクリエイターになっていました。 それでも柳からは変わらず才能がない、神谷にはなれないと詰められる日々。海の向こうで伝説を作るエレンやかおりとの間にある絶対的な壁に打ちのめされていきます。

化粧品「ウィークデイ」案件でブラック状態から抜け出した光一は、かおりと佐久間という2人の天才と仕事をすることに。 才能が暴走する2人を光一が止めますが、努力して天才となった佐久間との問答の中で、光一は自分は何者になれないと理解します。呆然自失となる光一の前に現れたのはエレンでした。光一のデザインした看板を塗りつぶしながら「なんでもないお前を誇れ」「描けよ」と光一に伝えるエレン。 スタジオに戻った光一は自分の人生が始まったことを感じながら、エレンに感謝を伝えます。

光一がCDへ昇格してまもなく、東日本大震災が発生。CM自粛の流れが生まれ、広告屋には辛い時期が始まります。 柳はこの事態を好機と捉え、一方で実家が被災地のみっちゃんはしばらく会社に顔を出さなくなりました。 そんな折、チャリティーイベントを開催するかおりと再会。かおりや佐久間は光一との仕事を通じて、以前ならやらなかったであろうチャリティー企画をやっていたのです。 かおりは完璧な人生を節目節目で狂わせた光一に、「あなたは私だけの天才」とプロポーズ。後に2人は結婚します。 また光一は「微力だけど無力じゃない」と仲間を鼓舞し、自分たちにできることを考え出しました。

2019年1月、光一とみっちゃんのチームがアントレースから勝ち取ったレインミュージックのイベントが「左きき」に上書きされるという事件が起きます。しかし光一は、その一件はエレンではないと考えていました。 光一いわく、そこに現れたのは2人目のエレン。それはさゆりやアンナが秘密裏に動いていたエレンの後継を探す「プロジェクト・ハイプ」の候補者の1人だったのです。 東日本大震災以降、エレンは描くことをやめていました。さゆりもエレンの再起を待っていましたが、いまだその兆しはありません。そこでさゆりは「最後の手段」としてこのプロジェクトを始動させます。

神谷は「日本のクリエイションを取り戻す」という大義の元、アントレース各国支社の優秀な社員を使ってクライアント争奪レースを仕掛けます。その様相はまるで「朝倉潰し」。 リーダーとして頭角を表しはじめた光一は、憧れの神谷と勝負をする形になります。しかし結果は光一の不戦勝状態に。納得のいかない光一は、改めて神谷に宣戦布告します。 ところが今度は世界最大手C&Gのジョージ・シモンズがアントレースを倒産させようと一斉攻撃。さらに水面下で目黒広告社の買収話を進めていたのです。 大きなうねりの中で、光一は持ち前の天才的間の悪さで渦中の人物となり、さらにエレンの後継を決めるレースもこの一件に大きく関わっていくのでした。

『左ききのエレン』のあらすじを紹介してきました。光一が苦しみながら成長していく姿は、挫折を味わったことがある人ならきっと誰でも共感できるはず。「天才になれなかったすべての人へ」のキャッチコピーがグサッと刺さった人にはぜひ読んで欲しい熱い作品です！ よりグローバルな展開が楽しめる第2部は連載中。さらに成長した光一の姿を楽しみたい人におすすめです。