沖田修一監督に聞く生涯ベスト映画3選―『さとこはいつも』に影響を与えたイタリア映画の名作とは?
有村架純、石田ひかり、姫野花春がトリプル主演を務める、沖田修一監督の長編デビュー20周年記念作映画『さとこはいつも』が、2026年9月18日(金)より公開。年齢も境遇も異なる3人の“さとこ”が、それぞれの人生を「自分の物語」として歩み始める姿を、温かなユーモアで描きます。 本作の公開を記念して、沖田修一監督に“映画”をテーマにインタビューを実施。高校生の頃に「こんな映画が作りたい」と思った一本から、本作の演出に直接影響を与えた場面までお話いただきました。 ※インタビュー取材の模様を撮影した動画コンテンツをYouTubeのciatr/1Screenチャンネルで公開中!
映画『さとこはいつも』作品概要
初恋に揺れる15歳の中井聡子を演じるのは、約300人が参加したオーディションで抜擢された新鋭・姫野花春。仕事と不倫に迷う35歳の西田沙都子を有村架純、子育てを終え、新たな夢に目覚める55歳の飯島里子を石田ひかりが演じます。さらに、聡子が通う学校の国語教師・寺尾千穂役で吉田羊も出演。 年齢も境遇も異なる3人の“さとこ”が、それぞれの人生を「自分の物語」として歩み始める姿を、沖田修一監督が温かなユーモアとまなざしで描くオリジナル作品です。
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沖田修一監督プロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | 沖田修一(おきた しゅういち) |
| 生年月日 | 1977年8月4日 |
| 出身地 | 埼玉県 |
| 出身校 | 2001年 日本大学芸術学部映画学科卒業 |
| デビュー | 『このすばらしきせかい』(2006年)で長編監督デビュー/『南極料理人』(2009年)で商業映画デビュー |
| 主な監督作 | 『南極料理人』(2009年)/『キツツキと雨』(2012年)/『横道世之介』(2013年)/『滝を見にいく』(2014年)/『モヒカン故郷に帰る』(2016年)/『モリのいる場所』(2018年)/『おらおらでひとりいぐも』(2020年)/『子供はわかってあげない』(2021年)/『さかなのこ』(2022年) |
| 主な受賞歴 | 短編『鍋と友達』で第7回水戸短編映像祭グランプリ/『南極料理人』で2009年度新藤兼人賞金賞・藤本賞新人賞/『キツツキと雨』で第24回東京国際映画祭審査員特別賞/『横道世之介』で第56回ブルーリボン賞最優秀作品賞・第23回日本映画プロフェッショナル大賞監督賞 |
| 最新作 | 『さとこはいつも』(2026年9月18日公開) 監督・脚本 |
沖田修一は、1977年8月4日生まれ、埼玉県出身の映画監督・脚本家。2001年に日本大学芸術学部映画学科を卒業後、自主制作映画を手掛け、短編『鍋と友達』で第7回水戸短編映像祭グランプリを受賞。 2006年の『このすばらしきせかい』で長編監督デビューを果たした。元南極観測隊員・西村淳のエッセイを映画化した『南極料理人』(2009年)で商業映画デビューし、同作で2009年度新藤兼人賞金賞を受賞。 その後も『キツツキと雨』『横道世之介』『滝を見にいく』『モヒカン故郷に帰る』『モリのいる場所』『おらおらでひとりいぐも』『子供はわかってあげない』『さかなのこ』などを監督してきた。 何気ない会話や人物同士の関係性からユーモアと情感を引き出し、日常を独自の視点で描く作品を数多く発表。2026年には長編映画デビュー20周年を迎え、監督・脚本を務めた完全オリジナル作品『さとこはいつも』が公開された。
沖田修一監督が選ぶ生涯ベスト映画3選

沖田修一監督に生涯ベスト映画を3本選出いただきました。まずは1本目のご紹介をお願いします。
生涯ベスト映画①『家族ゲーム』(1983年)
1本目は、森田芳光監督の『家族ゲーム』です。 高校生の時に観て、「こんな映画を作りたいな」と思った作品でした。今でも何度も観ますし、当時作品に関わっていた方にお話を聞くこともあります。それくらい、今でも自分にとって影響の大きい映画だと思います。
『家族ゲーム』作品概要
森田芳光が監督・脚本を手がけた1983年公開の日本映画。本間洋平の同名小説を原作に、受験を控えた次男・茂之(宮川一朗太)のもとへやって来た風変わりな家庭教師・吉本勝(松田優作)が、平凡な中流家庭を揺さぶっていく姿を描きます。父・孝助を伊丹十三、母・千賀子を由紀さおりが演じました。 家族が横一列に並ぶ有名な食卓のシーンをはじめ、常識にとらわれない構図や乾いたユーモアによって、家族の空虚さや歪みを浮かび上がらせた本作。第57回キネマ旬報ベスト・テンでは日本映画第1位に選出され、第7回日本アカデミー賞でも作品賞・監督賞・脚本賞など7部門で優秀賞に選ばれ、宮川一朗太が新人俳優賞を受賞しました。既存のホームドラマの枠を大胆に打ち破った、日本映画史に残る傑作です。
生涯ベスト映画②『大誘拐 RAINBOW KIDS』(1991年)
2本目は、岡本喜八監督の『大誘拐 RAINBOW KIDS』です。 母が好きな映画で、年に一回くらいは必ず家族で観ていました。 今でもふと観たくなって、たまに見返します。特に、樹木希林さんと緒形拳さんのやり取りが好きで、そこを観たくなるんですよね。大好きな映画です。
『大誘拐 RAINBOW KIDS』作品概要
岡本喜八監督が1991年に発表した日本映画。天藤真が1978年に発表した小説『大誘拐』を原作に、和歌山の大富豪・柳川とし子刀自(北林谷栄)を誘拐した3人の若者が、当のとし子から「身代金は100億円」と持ちかけられ、思わぬ事態に巻き込まれていく犯罪コメディです。 とし子を追う和歌山県警本部長・井狩大五郎を緒形拳が演じ、誘拐犯・とし子・警察の三者が入り乱れる展開が痛快な一作。沖田監督が名前を挙げた樹木希林は、柳川家の元女中頭・中村くらを演じています。 第15回日本アカデミー賞では、北林谷栄が最優秀主演女優賞、岡本喜八が最優秀監督賞・最優秀脚本賞を受賞しました。
生涯ベスト映画③『イル・ポスティーノ』(1994年)
3本目は『イル・ポスティーノ』です。 この間、4Kのリバイバル上映があって、それも真っ先に観に行きました。フィリップ・ノワレがすごく好きで、昔のフランス映画に出ていた若い頃のノワレも好きですし、この作品の頃のような年齢を重ねた姿も好きです。 もともとイタリア映画が好きというのもあって、『イル・ポスティーノ』は今でも大好きな一本です。
『イル・ポスティーノ』作品概要
マイケル・ラドフォード監督による1994年製作のイタリア・フランス合作映画。日本では1996年に公開されました。 イタリアの小さな島に亡命してきたチリの詩人パブロ・ネルーダ(フィリップ・ノワレ)と、彼専属の郵便配達人となった青年マリオ(マッシモ・トロイージ)の交流を描く物語です。ネルーダから詩や比喩の表現を学んだマリオは、恋する女性へ自分の想いを届けようとしていきます。 主演のマッシモ・トロイージは重い心臓病を抱えながら撮影に臨み、撮影終了の約12時間後にあたる1994年6月4日、41歳で急逝しました。第68回アカデミー賞では作品賞・監督賞・主演男優賞・脚色賞・ドラマ作曲賞の5部門にノミネートされ、ドラマ作曲賞を受賞しています。
【『さとこはいつも』への影響】吉田羊×聡子の“比喩”の場面に重ねた

Q. 今回選出した生涯ベスト映画3本が、監督の作品に影響を与えたことはありますか。 沖田 『さとこはいつも』を撮る時に、『イル・ポスティーノ』は観返しました。 フィリップ・ノワレが、郵便局の人と「比喩とは何か」について話すシーンがあって。吉田羊さん演じる先生と聡子が「比喩って何なんだろう」と話す場面は、そのシーンのイメージをなんとなく持ちながら撮りました。
【映画の原体験】『グレムリン』とともに刻まれた映画館の記憶

Q. 映画の原体験についてお聞かせください。 沖田 小学生の時に映画館へ観に行った作品で覚えているのは、『グレムリン』ですね。当時、「『ゴーストバスターズ』とどっちを観に行く?」みたいな話をして、友達の家族と一緒に『グレムリン』を観に行きました。 ある程度大きくなってから映画館に行くのが、その時ほとんど初めてだったので、映画そのもの以上に、映画館という場所にすごくワクワクした記憶があります。電気が落ちる瞬間がちょっと怖くて、それもすごく覚えていますね。
【映画にのめり込んだきっかけ】近所のレンタルビデオ店で広がった映画の世界

Q. 映画にグッとのめり込んだきっかけがあればお聞かせください。 沖田 もともと家で映画をたくさん観る環境ではなくて、テレビでたまにジャッキー・チェンの映画を観るくらいでした。そんなに多くの作品を観ていたわけではないんですけど。 中学校を卒業する15歳くらいの頃に、友達とビデオカメラで遊び始めて、少しずつ映像に興味を持つようになりました。 近所に「よむよむ」という本屋さんがあって、その2階がレンタルビデオのコーナーだったんです。そこには昔の日本映画がたくさん置いてあって。そういう作品を観るようになったことが、映画にのめり込んでいくきっかけだったのかもしれません。
【監督を志したきっかけ】自主映画にのめり込んだ学生時代
Q. 映画監督を志したきっかけをお聞かせください。 沖田 中学・高校の頃に日大の付属校に通っていて、何か映画の仕事をしたいと思った時に、日芸に映画学科があることを知りました。 「自分に何ができるんだろう」と考えて、まずは脚本ぐらいは自分で書こうと思って。実際に脚本を書いてみたら、今度は「自分で撮るしかないな」となったんです。 その後、映画の学校に通いながら自主映画を撮るようになって。自主映画にのめり込んで1年留年したりもしました。そうやって初めて自分で映画を撮ったことが、映画監督を志すきっかけだったと思います。
【最近印象に残った1本】『大統領のケーキ』の切なすぎるラスト
Q. 最近鑑賞して印象に残っている1本をお聞かせください。 沖田 『大統領のケーキ』が面白かったです。とにかく最後が切なすぎて。最近は戦争を題材にした映画をよく観ているんですけど、『大統領のケーキ』は特にドキッとするものがありました。
【劇場での鑑賞習慣】ポップコーンの悲劇と、通路側へ移った座席
Q. 座席の選び方や、鑑賞前後で行うことがあればお聞かせください。 沖田 一人で映画を観に行く時は、普通にポップコーンを買ったりもします。一回バラっとこぼして悲劇が起きたことがあるので、それ以来ちょっと気をつけています。 座席は、だんだんトイレが気になるようになってきて、最近は通路側を選ぶことが増えました。 あと、予告編の音が大きすぎる時があって。『アベンジャーズ』みたいな映画の予告だと、ちょっと怖くなって、軽く耳を塞いでしまうこともあります。
【映画監督として幸せを感じる瞬間】観客と作品を共有する瞬間

Q. 映画監督として一番幸せを感じる瞬間についてお聞かせください。 沖田 初めて一般のお客さんと一緒に自分の映画を観る時ですね。 僕の場合は、上映中に笑いが起きたり、いろいろなリアクションが返ってきたりすることが多くて。そういう反応を感じながら映画を観ていると、すごく「やってよかったな」と思います。
▼取材・文:増田慎吾


