映画『オデュッセイア』怪物&魔女を一覧で解説!帰途を襲う神々の名前や由来に迫る
クリストファー・ノーラン監督が念願だった全編IMAXで撮影した『オデュッセイア』。ホメロスの同名叙事詩を原作に、古代ギリシャの壮大な旅を描きます。 この記事では、『オデュッセイア』に登場する怪物や、魔女、神々を紹介します。映画で描かれたものから、原作にしか登場していないものまで余すことなく見ていきましょう。
映画『オデュッセイア』帰途を襲う神々・怪物・魔女を一覧で解説
| 名前 | 概要 |
|---|---|
| キュクロプス(ポリュペモス) | 仲間を食らった一つ目の巨人。ポセイドンの息子で、目を潰されたことが10年の放浪を招く |
| ラエストリュゴン人 | 巨岩を投げて船団を沈めた人食いの巨人族。11隻の船と多くの乗組員を失う |
| キルケ | 薬を仕込んだ食事で人を豚に変える魔女。のちにオデュッセウスと1年をともに過ごす |
| テイレシアス | 冥界で一行を迎えたテーバイの盲目の予言者。旅の試練と帰還後の運命を告げる |
| セイレーン | 歌声で船乗りを死へ誘う魔物。耳を蝋で塞ぎ、マストに身を縛って切り抜ける |
| スキュラ | 6つの頭と12本の足を持つ海の怪物。6人の兵士が餌食になる |
| カリュブディス | 船を丸ごと飲み込む巨大な渦の怪物。スキュラとは狭い海峡を挟んで向かい合う |
| ヘリオスの牛 | トリナキエ島の神聖な家畜。飢えた兵士が手をかけ、ゼウスの雷で最後の船も沈む |
| カリュプソ | オーギュギア島でオデュッセウスを7年引き留めた女神。不死を与えると申し出る |
| ポセイドン | 息子を傷つけられた恨みから、嵐と障害で帰路を阻みつづける海神 |
| ゼウス | 掟と秩序を司る主神。ヘリオスの訴えに雷で応じ、のちに帰還を認める裁定を下す |
| アテナ | オデュッセウスを導く知恵と戦争の女神。映画で唯一、姿を現す神 |
| アイオロス | 風を司るアイオリア島の主。不都合な風を封じた革袋を与える(原作のみ) |
| ロートパゴイ | 食べると望郷の念を忘れる蓮の実を糧とする民(原作のみ) |
| ヘルメス | キルケの魔法を防ぐ薬草「モーリュ」を授ける伝令の神(原作のみ) |
オデュッセウスがトロイアを発ってから故郷イタケにたどり着くまでには、10年もの歳月がかかりました。その道のりには、神の子である巨人や人を獣に変える魔女、船乗りを死へ誘う魔物が次々と立ちはだかります。 ここでは物語で遭遇する順に、映画と原作それぞれでどう描かれているのかを見ていきましょう。
【遭遇順①】一つ目巨人キュクロプス
原作では、キュクロプスとの戦いは、オデュッセウスの知将としての力量を見せる場面となっています。 オデュッセウスたちはキュクロプスの洞窟へ迷い込み、仲間を何人か食べられてしまいます。オデュッセウスはキュクロプスに葡萄酒を飲ませて上機嫌にし、名前を問われると「私の名前は“誰でもない”だ」と言います。 その後、オデュッセウスは眠っているキュクロプスの目を潰して逃げ出します。誰にやられたのかと問う仲間に、キュクロプスは「“誰でもない”」と答えたため、オデュッセウスは逃げおおせました。
【遭遇順②】人食いラエストリュゴン人

ラエストリュゴン人は、山のように巨大で凶暴な人食い巨人たちです。後世の伝承では海神ポセイドンの血を引くとも語られますが、ホメロスの原作にその記述はありません。 激しい嵐に見舞われたオデュッセウスたちは、彼らの港に迷い込みました。危険を察知したオデュッセウスは自身の船を海峡の外側に避難させますが、港に入った11隻の船はラエストリュゴン人たちに巨大な石を投げつけられ、破壊され沈没してしまいました。 海に投げ出された乗組員たちはラエストリュゴン人に食べられてしまい、オデュッセウスは1日で多くの兵を失うことになってしまいました。
【遭遇順③】船員を獣に変える魔女キルケ
キルケは島を訪れた者に薬を仕込んだ食事を与え、豚に変えてしまう魔女です。館の周りをうろつく狼や獅子も、かつて彼女の魔法を受けた者たちだと語られています。 島を訪れたオデュッセウス一行も豚に変えられてしまいますが、オデュッセウスだけはヘルメスから授かった薬草のおかげで魔法を跳ね返します。剣を抜いて部下たちをもとに戻すよう迫るオデュッセウスに屈し、魔法を解きます。 自分の魔法が効かなかったオデュッセウスにキルケは心を奪われ、1年の間恋人としてともに過ごしました。
【遭遇順④】冥界にあらわれる予言者テイレシアス

テイレシアスは多くのギリシャ神話に登場するテーバイの盲目の予言者です。ソポクレスのギリシャ悲劇『オイディプス王』や『アンティゴネ』にも登場しています。 キルケの助言に従って生贄を捧げて冥界に入り、死んだ兵士たちの霊に出迎えられたオデュッセウスたち。彼らはテイレシアスに面会します。彼はオデュッセウスに彼らの旅に待ち受ける試練やポセイドンの怒りを鎮めるための条件、そして無事にイタケに帰還したあとのことまで予言しました。
【遭遇順⑤】船乗りを死へ誘うセイレーン
セイレーンは船乗りを惑わす海の魔物です。上半身は人間の女性で、翼を持ち鳥のような下半身をしています。後には下半身は魚のような姿とされ、人魚伝説の元になったともされています。 オデュッセウスはセイレーンに惑わされないよう、部下たちに自身をマストに縛り付けさせ、ほかの兵士たちは耳に蝋を詰めます。歌声に心を奪われて縄を解こうともがいたのはオデュッセウスひとりで、部下たちは彼をさらに強く縛りつけ、船は無事に海域を通り抜けました。
【遭遇順⑥】海の怪物スキュラと巨大な渦カリュブディス
カリュブディスは巨大な渦の怪物です。ホメロスの原作はその出自を語っていませんが、後世の伝承では海神ポセイドンと大地の女神ガイアの娘だったとされ、あまりの大食のためヘラクレスの連れていた牛を盗んで食べ、罰としてゼウスに怪物の姿へ変えられたと伝えられています。 セイレーンから逃げ延びたあと、オデュッセウスたちはカリュブディスの渦に遭遇しますが、なんとか回避に成功。しかしそのせいで、3列に並んだ歯を持つ6つの頭と12本の足が生えた怪物スキュラの進路に迷い込み、6人の兵士がスキュラに食い殺されてしまいました。
【遭遇順⑦】太陽神ヘリオスの牛とゼウスの怒り
一行はトリナキエ島にたどり着きます。オデュッセウスはテイレシアスから「太陽神ヘリオスの牛を狩ると全員が命を落とす」と忠告されていたため、部下に牛を狩らないよう命令しました。しかし飢えに耐えきれなかった兵士たちはオデュッセウスの命に背いてしまいます。 それに怒ったヘリオスはゼウスに頼んで猛烈な嵐を起こさせ、残っていた最後の1隻も沈没。オデュッセウス以外の全員が死亡してしまいました。
【遭遇順⑧】ロートス(蓮)を与えるカリュプソ
ゼウスの怒りに触れ漂流したオデュッセウスは、カリュプソの住むオーギュギア島に漂着し、7年もの歳月をこの島で過ごすことになります。 『オデュッセイア』には、オデュッセウスとカリュプソの出会いについて詳しく描かれていません。しかし彼女はオデュッセウスを深く愛し、彼の世話をするだけでなく、不死を与えることさえ約束したといわれています。 映画ではカリュプソは蓮を使ってオデュッセウスの過去を忘れさせていました。しかし原作では蓮は使っておらず、当初ふたりはしあわせに暮らしていたものの、オデュッセウスはすぐに望郷の念に囚われるようになります。
その他帰途を左右した神々の名前と役割
復讐に燃える海神ポセイドン
オデュッセウスが故郷への帰路で最初に目を潰したキュクロプスはポリュペモスという名前で、海神ポセイドンの息子でした。 ポセイドンは息子を傷つけられたことに激怒し、オデュッセウスの旅路を数々の嵐や障害で妨害しつづけました。オデュッセウスの帰還の旅が10年にも及ぶ困難の連続となったのは、ポセイドンが仕組んだことだったのです。
掟で罰を下す主神ゼウス
ゼウスは、客人をもてなす掟や神々への敬意といった秩序を守らせる立場から、オデュッセウスの旅に幾度も関わります。 トリナキエ島で部下たちが太陽神ヘリオスの牛に手をかけたとき、ヘリオスの訴えを受けて雷を落とし、船を難破させたのもゼウスでした。一方で、ポセイドンの妨害を退けてカリュプソに解放を命じ、オデュッセウスの帰還を認めたのもまたゼウスの裁定によるものです。
唯一姿を現す女神アテナ
知恵と戦争の女神であるアテナは、知将として知られるオデュッセウスを導く存在として登場します。 映画では、過酷な試練に直面するオデュッセウスの前に現れ、彼の内心の罪悪感や後悔、道徳心を映し出す鏡のような存在として描かれています。カリュプソが真実を打ち明け、オデュッセウスが筏で海に漕ぎ出した後、彼はアテナの助けによって故郷に帰還を果たします。 原作では、父を迎えに行くテレマコスの旅も導いています。
ホメロスの原作にのみ登場する怪物・神々
風袋を託した風神アイオロス
アイオロスはアイオリア島の主で、風神、あるいは風を管理する人間の王として、ゼウスから風をコントロールする権利を与えられています。 アイオリア島に立ち寄ったオデュッセウス一行を1カ月にわたって歓待したアイオロスは、彼らが出発する際、船を故郷に進めるための西風(ゼピュロス)を解放し、航海の邪魔になる「不都合な風」を閉じ込めた風袋を与えました。
蓮を食べさせる民ロートパゴイ
ロートパゴイ(ロートス族)は、ロートス(蓮)の木の実を食べて生活していたため、このように呼ばれています。 北風によって航路を外れてしまったオデュッセウスの船団は、ロートパゴイの土地に漂着。ロートパゴイと遭遇したオデュッセウスの部下たちは、蓮の実を振る舞われ、それがあまりに美味だったため、望郷の念も忘れてそこに住みたいと思うようになりました。 オデュッセウスは部下たちを無理やり船まで引っ張っていき、ほかの部下が木の実を食べないうちに、急いで出発しました。
魔法を防ぐ薬を渡したヘルメス
神々の伝令役であるヘルメスは多くの機能を持つ神ですが、旅人や国境の神としての側面も持っています。 ヘルメスはオデュッセウスの部下が魔女キルケによって豚に変えられた際、オデュッセウスの前に現れて薬草「モーリュ」を授け、彼をキルケの魔法から守りました。
『オデュッセイア』の怪物・魔女・神々を紹介しました

トロイア戦争の英雄として故郷に帰ろうとしたオデュッセウスは、ポセイドンの怒りを買ったことで、数多くの困難に直面することになります。 10年という長い旅路で彼はさまざまな怪物や魔女、神々に出会い、なんとか帰還を果たしたのです。