2017年7月6日更新

【ネタバレ】『インターステラー』をできるだけ分かりやすく解説・考察してみた

©T.C.D / VISUAL Press Agency

クリストファー・ノーラン監督、マシュー・マコノヒー主演のSF映画『インターステラー』。公開当時は絶賛されつつも、内容の難しさから難解映画とも言われました。そこで本記事ではネタバレを含めた解説を、SF用語とともにお届けします。

難解SF映画『インターステラー』をネタバレ徹底解説!

SF映画『インターステラー』は公開前には「ワームホールを通って旅をする宇宙飛行士の冒険」とだけ説明され、2014年11月より全世界で公開が始まりました。 内容は、宇宙旅行の歴史ドキュメンタリーとしての要素も感じさせるもので、そのリアリティさが話題に。さらに、科学考証の正確さや視覚効果・演技も高く評価されています。 しかし実は本作は、“愛”をメインテーマに描かれた作品。一方で宇宙空間や重力などが関わってくる難しい内容なので、一体何が言いたかったのか、結局どういうあらすじなのか疑問に思った人も多いかもしれません。そこで本記事ではネタバレを含め、作中に登場するSF・科学用語とともに徹底解説してきます。

『インターステラー』のあらすじ

異常気象による大規模な食糧問題に直面し、人類滅亡の危機にある近未来の地球。トウモロコシ農場を営む元宇宙飛行士のクーパーは、昔の仕事仲間だったブランド教授と、地下組織となったNASAで再会し、人類救済のためのプロジェクト「ラザロ計画」を聞かされます。 第二の地球を探す宇宙の旅に出る危険な任務に、娘のマーフィーは猛反対。しかしクーパーは「必ず戻ってくる」と言い残して、別の銀河系を目指す有人惑星間航行(インターステラー)するチームに加わることに。 ブランド教授の娘・アメリアと、物理学者のロミリー博士、地質学者のドイル博士の4人のチームで、宇宙船エンデュランスに乗って地球を後にしたクーパー。無事にワームホールを通過して、第二の地球を見つけることはできるのでしょうか?

「ラザロ計画」の解説:プランA・プランBとは?

インターステラー
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地球での生存が絶望的になった人類を救うための「ラザロ計画」。それは、「ワールホールを通って別の銀河系へ飛び、人類が生存できる環境を持つ惑星を探し出す。見つけた場合はシグナルを発信して救助を待つ」というもの。しかしこの「ラザロ計画」には2つのプランがあったのでした。

プランA「大規模スペースコロニーで全人類移住」

まず1つ目の使命「プランA」は、もともと考えられていたものです。 それは世界の人口を宇宙に存続させるためのもので、「方舟のような大規模スペースコロニーを構築し、人類を移住させる」という使命。こちらは地球に今住む全員を、そのまま別の星に送ろうという計画です。 ブランド教授によって推し進められていたこの大規模移住計画は、作中で彼の不正が明らかになるとともに頓挫しています。彼自身も認めるように実現不可能な計画で、真の目的は、のちに述べる「プランB」だったのです。 しかし物理学者となったマーフィーによって、真の人類救済のプランとしてよみがえり、その使命は遂行されていきます。

プランB「人類の受精卵のみを移住先で人工培養する」

ブランド教授の本命であるプランBですが、これは現在の人類すべてを救うというものではありませんでした。 ブランド教授とマン教授によって推し進められることとなる「人類の受精卵のみを移住先で人工培養する」というプラン、つまり「種の保存」のみを目的とした使命。必然的に地球に住む人類は助かりません。 クーパーはプランAが本命として知らされていたため、プランBが本命だと知ったときに憤慨します。

『インターステラー』に登場したSF用語の意味をシーンとともに解説

ここからは本作を読み解く上で必要なSF・科学用語を、映画の内容やシーンと絡めて紹介していきます。難しすぎる説明は省き、あくまで知っているとより楽しめるというライトな解説です。

宇宙の基礎知識

銀河系や光年などがサラッと登場していますが、そもそも私たちが住む地球は、銀河の中の太陽系にあります。太陽は恒星、地球は惑星、月は地球の衛星です。 地球は太陽の周りを、月は地球の周りを回っています。こんな太陽系が無数に集まってできているのが「星団」。星団が100兆ほどの規模で集まっているのが「銀河」。さらに銀河が集まって形成しているのが「銀河団」です。 人類はいまだ、無人で太陽系の外に出るのが精一杯。宇宙は本当に広いのです!その広大な宇宙を旅するためには、ワームホールが不可欠です。 「光年」とは光が一年間に進む距離で、宇宙の旅は光年が単位として使われます。銀河の端から端まで行くためには、10万光年かかるそうです。

ワームホールとブラックホール

宇宙、星、銀河、ブラックホール、ワームホール、フリー画像

では、「ワームホール」とは何でしょうか?作中ではエンデュランスが別の銀河系に行くために、土星近くにあるワームホールを通るシーンがあります。そこを通り抜けると、一瞬で遠い場所へ移動することができるのです。いわゆるワープですね。 「ブラックホール」とは大質量を持つ天体で、重力が大きくて光すら吸い込まれてしまいます。エンデュランスのエネルギー補填のために、クーパーが自ら飛び込んだのは“ガルガンチュア”。これは“カー・ブラックホール”という自転するもので、中心となる“特異点”はリングの上にあります。 クーパーはガルガンチュアの特異点に向かって落ちていきますが、この時に重力の謎を解くためのデータをTARSに取らせていました。重力の謎はブランド博士でさえ解けず、「プランA」を諦めた要因です。 『インターステラー』最大の功績は、この未知の天体“ブラックホール”を科学的検証のもと映像で表現したこと!正直なところ、ブラックホールにクーパーのように落ちたらどうなるのかは、誰も知らないわけです。後は正に想像の世界。作中ではクーパーが特異点の中心部を抜けて、“テサラクト”と呼ばれる四次元超立方体の空間にたどり着く様子を描いています。

次元

よく耳にする二次元キャラや、ドラえもんの四次元ポケットなど、実は次元は意外と身近に存在するワード。私たちが住んでいるのは「三次元」という立体の世界です。 一次元は線、二次元は面、三次元は立体、そして四次元は超立方体(立体に空間という概念が加わったもの)。ドラえもんのポケットは何でも入ってしまう超立方体構造なのです!クーパーがブラックホールを通り抜けてたどり着いたテサラクトも四次元超立方体でした。 われわれ三次元の人間は、紙など二次元の物体を自由に折ったり畳んだりできます。それと同じように、四次元では空間を歪めることができ、タイムトラベルをすることも可能です。ワームホールを作ったのは“四次元人”ということになります。 さらに“五次元人”は四次元を自由に動かして、テサラクトのような超立方体を作ったという考え方が『インターステラー』では登場し、“彼ら”と呼んでいました。つまり五次元では、空間と時間を自由に操ることができるのです。

相対性理論

アインシュタインが提唱した「相対性理論」は誰でも耳にしたことはありますが、実際どのような理論なのでしょうか?現代物理学の基礎理論であり、特殊相対性理論と一般相対性理論の二種類があります。 最も有名な公式「E=mc2」は、エネルギー(E)=質量(m)×光速度(c)の2乗で、質量とエネルギーの等価性を表しています。光の速度を一定とし、それを基準にして比較することが“相対性”の所以です。 三次元に時間(空間)をプラスした四次元という観念が重要になり、「時間」は光速度を基準した時間の流れであることが、本作でも「重力と時間」の問題として度々登場します。

重力と時間

歪み、時計、時間、宇宙、タイムスリップ、タイムトラベル、フリー画像

ガルガンチュアの周りを回っている水の惑星では、重力の影響で1時間が地球時間の7年に相当していました。重力が強い場所では、時間の進み方が遅くなります。クーパーたちはここで大津波に巻き込まれ、実に23年分もの時間を無駄にしてしまいました。 このように、重力は時間に大きな影響を及ぼします。重力が大きいブラックホール中心の特異点に到達する前、光すら戻れなくなる地点“事象の地平線”の存在から、重力は光の速度さえ遅くすることがわかります。 ブラックホールの外側にいる人からは、事象の地平線の先はほとんど時間が止まっているように見えますが、地球時間では何十年もの時が流れています。しかし当のクーパーにとってはほんの短い「時間」。ラストで年老いた娘のマーフィーと再会しますが、クーパーはさほど年をとっていません。実際には、クーパーが地球を後にしてから92年が経っていることになります。

二進法(バイナリ)とモールス信号

腕時計、フリー画像

二進法(バイナリ)とモールス信号は、クーパーがマーフィーに重力の謎に関するデータを送るために、とても重要な役割を果たしています。テサラクトから見えるマーフィーの部屋に重力で影響を及ぼして、データを伝えようとしました。 その方法が、二進法とモールス信号です。私たちが普段使っている十進法が「10」を基準にして進んでいくのに対して、二進法は「2」が一区切りになります。つまり、0,1を繰り返してカウントする方法です。 モールス信号はよく暗号に使用されるイメージがありますね。いわゆる「・(トン)-(ツー)」という短音と長音を組み合わせる方法です。二種類の記号を組み合わせてデータを送るという点で、二進法とモールス信号は似ています。 そこでクーパーが考えたのはこの二つを組み合わせて、重力のデータをマーフィーに伝える方法。マーフィーが持つアナログ時計の秒針で情報を送り続けました。

本棚の謎。クーパーは空間と時間を超えたのか?

前述の通り、四次元超立方体のテサラクトは地球の過去のマーフィーの部屋に通じていました。クーパーはブラックホールの重力によって、空間と時間を超えたのです。テサラクトでは地球の過去と現在、そして未来の時間が繋がっており、空間さえも自在になっていると考えられるでしょう。 物語の冒頭で起こっていた、マーフィーの部屋の奇妙なポルターガイストのような現象。本棚から勝手に本が落ちていたのは、実はテサラクトからクーパーが重力波によって起こしていた二進法のメッセージだったのです。 不思議なことですが、空間と時間を超えてクーパー自身が自分の送った暗号を解き、地下組織NASAにたどり着き、エンデュランスに搭乗することになるのです。

人類の未来は?ラストシーンから作品が伝えたかったメッセージを考察

マーフィーはこうして「プランA」を成功に導く、宇宙ステーション建設に必要なデータを受け取ります。そしてブランド教授にもなし得なかった重力の謎を解明し、“クーパーステーション”の打ち上げと人類の移住に成功。子や孫に囲まれて余生を過ごし、ラストには父との感動の再会を果たします。 これ以上ない幸せなエンディング!しかし『インターステラー』はここでは終わりません。マーフィーはクーパーに、エドマンズの星で待つアメリアの元へ向かうように言います。 エドマンズの星へ向かうクーパーの顔は、使命感で溢れていました。なぜなら、宇宙ステーションの建設の先には、第二の地球探しという大本命があったからです。間違いなくエドマンズの星がそれだと確信し、再び宇宙へ飛び立ったクーパー。 エンデュランス号で地球を旅立つ時に、ブランド教授が引用したディラン・トマスの詩の一節「穏やかな夜に身を任せるな」「老いても怒りを燃やせ、終わりゆく日に」が印象的です。これは人類のネクストステップ=宇宙への挑戦を、滅びゆく運命に抗おうとする人類を鼓舞する一節でもあったのです。

なぜ難解映画となったのか?ノーラン監督のインタビューから考察

クリストファー・ノーラン
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多くを語らず、想像を掻き立てる『インターステラー』

クリストファー・ノーラン監督は、「本作は、想像を超えて別の場所にたどり着く宇宙旅行について描いてるんだ。遥かな銀河には、悠久の時間と空間が存在しているからね」というコメントを残し、『インターステラー』について多くを語ろうとしませんでした。 ノーランが監督した『インセプション』や『ダークナイト』三部作は、想像を掻き立てるためのより多くの要素が詰まっていた作品。これらの作品以上を目指す製作者たちの想いと、未知の宇宙を表現する特殊効果によって実現したのが、『インターステラー』だったのです。

製作の背景

『インターステラー』の企画は元々、理論物理学者の権威であるキップ・ソーンと、SF映画『コンタクト』のプロデューサーだったリンダ・オブストによって考案されたものでした。そこへノーラン監督の弟・ジョナサンが脚本家として参加し、監督に兄・クリストファーを推したことで、共同で脚本も練り上げられていったのです。 つまり、企画の根本が現代物理学を盛り込んだハードSFだったわけです。製作総指揮に名を連ねているキップ・ソーンは、重力波研究の功績によって2017年にノーベル物理学賞を受賞しています。

原点は『スター・ウォーズ』!自然体で自由な宇宙映画を目指して

ノーラン監督にとって、映画作りは『スター・ウォーズ』が原点とのこと。その後、宇宙に関する作品は何でも“必見”と決めて観るようになりましたが、「まだまだ宇宙映画の奥の深さを本当には理解できていない」と告白しています。 子どもの頃に何度も観た『スター・ウォーズ』によって、彼の宇宙への果てしない夢と映画作りが始まったのです。 加えて、自身が作りたい映画について次のように述べています。 「僕は家族映画をたくさん観る環境で育ったんたけど、批判や軽蔑する要素が含まれない、すごく自然体で自由な作品が多かったよね。僕が作りたい宇宙映画も、まさにそういうトーンのものなんだ」 製作の経緯とノーラン監督のこの作品への想いを振り返ると、現代物理学を基本としたハードSF作品に、“愛”をテーマとした家族映画的要素が加わって本作が生まれたことがわかります。この絶妙なバランスが、難しいSF映画なのに不思議な感動を覚える『インターステラー』という稀有な作品を作り出したのです。

『インターステラー』が教えてくれた。人類を救ったのは“愛”だった!

クリストファー・ノーラン監督は、『インターステラ―』は宇宙の映画ではなく、家族の映画だと主張しています。この作品の撮影中、監督にとって初めての子が生まれていました。彼はこの作品の最初の方のシーンを見た時、脚本を書いた頃とは全く違う感情が出てきたと語っています。 確かに合理的だけれど、血も涙もない非情な「プランB」は、マン教授のエゴにより失敗しました。結果的に人類への“愛”や親子の“愛”によって達成された「プランA」が成功しています。 クーパーがなぜブラックホールを抜けて過去のマーフィーの部屋にたどり着いたのか、唐突すぎる展開にも思えますが、これも“愛”のなせる業なのかもしれません。四次元+愛=五次元だとしたら、なんというエモーショナルな展開! また恋人の星が正しいと主張し、実際その星へ向かった、つまり恋人の“愛”を信じたアメリアも救われています。『インターステラー』でノーラン監督が本当に伝えたかったテーマは、“愛”が人類を救うということなのは間違いないでしょう。