2020年6月9日更新

映画『インセプション』をネタバレ考察!最後のシーンの意味や夢の構造を解説

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インセプション、ディカプリオ
© 2010 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

クリストファー・ノーランがメガホンをとり、2010年に公開された『インセプション』。本作はレオナルド・ディカプリオや渡辺謙など、豪華な俳優陣が出演するSF超大作映画です。 伏線に富んだ緻密なプロットで観客を魅了し続けるノーラン監督の代表作の1つといえるでしょう。 「インセプション(発端)」とは、この映画に登場する主人公たちの任務の呼称。その内容は他人の夢の中に忍び込み、ターゲットの潜在意識に何かしらのアイディアを植えつけるというものです。 この記事では、重層的な夢と現実が交錯する映画『インセプション』のあらすじやラストシーンに含まれた意味、夢の構造について徹底解説していきます。また本作のトリビアも紹介。 この記事にはネタバレが多く含まれるので、まだ観ていない方は注意してくださいね。

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映画『インセプション』のあらすじを解説!タイトルの意味とは?

「インセプション(Inception)」には「始まり」「開始」という意味があります。 本作においては、夢に潜入してターゲットの潜在意識にあるアイディアを植え付けるミッションのことを指しています。 ディカプリオ演じる主人公のコブは、もともと潜在意識からアイディアを盗み出すプロの産業スパイでした。しかしあるとき、彼は実業家のサイトー(渡辺謙)から、競合相手の跡取りロバート・フィッシャー(キリアン・マーフィ)の夢に潜入して、あるアイディアを植え付ける「インセプション」の依頼を受けます。

複雑なルール設定や用語について解説!

夢の世界

夢の世界は多層構造になっており、夢の中でまた夢を見るという現象も起きます。また夢の中では、時間の流れが現実よりも20倍遅くなり、階層が深くなるほど時間の流れが遅くなっていきます。 ターゲットが眠っている間も潜在意識を守る訓練を受けている場合は、夢の中に潜入したことがバレると潜在意識から攻撃されてしまいます。 夢から脱出するには夢の中で死亡するか、後述する「キック」を行うかの2つの方法があります。

キック

「キック」は夢の世界から脱出する方法の1つで、落下を伴う衝撃を与えることです。先述の通り夢は多層構造になっているので、下の階層にいる人物を脱出させるには、その1つ上の階層でキックを行う必要があります。 本作では例外である第4階層の虚無の世界を除いて、第3階層にいる者を目覚めさせるには第2階層でキックを行い、第2階層にいる者を目覚めさせるには第1階層でキック、と各階層でタイミングを合わせてキックを行わなければいけません。

ドリーマー

夢の世界は複数人で共有することができますが、その夢の主を「ドリーマー」といいます。夢への潜入には各階層ごとにドリーマーが必要で、その人物の状況が階層に影響を及ぼします。 ドリーマーが現実世界、または上の階層で死亡すると夢が崩壊してしまうので、注意が必要です。

虚無の世界

「虚無の世界」はもっとも深い夢の階層で、深層意識に近づくとたどり着く場所です。この階層からはキックでは脱出することができず、死ぬ以外に抜け出す方法はありません。 コブはかつて妻のモルとともに、ここで2人だけの世界を作り、約50年も一緒にいたとか。 第1階層で重症を負ったサイトーや、第3階層でモルに殺されたロバートもこの階層に落ちてしまい、コブとアリアドネは彼らを救うために虚無の世界に降りることになります。

トーテム

「トーテム」は自分が現実世界にいるのか、夢の中にいるのか、確かめるためのアイテムです。トーテムの形は特に決まっておらず各人によって違っていて、正確な形や質量を他人に知られないようにしなければなりません。 コブのトーテムはコマで、夢の中にいるときは止まることなく回りつづけます。

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映画『インセプション』のネタバレ!階層ごとのストーリーを結末まで紹介

映画『インセプション』の主人公は、他人の夢の中に忍び込み潜在意識から機密情報を盗み出す、産業スパイのコブ(レオナルド・ディカプリオ)。彼は実業家のサイトー(渡辺謙)からとある依頼を持ちかけられます。 その任務とは、ライバル企業の会長の息子・ロバート(キリアン・マーフィー)の夢の中に潜入し、企業を相続せずに解体するというアイディアを植えつけることでした。 任務成功の報酬はコブの暗い過去を帳消しにするという、彼には願ってもないものです。優秀な仲間を集めたコブはサイトーも含めたチームを結成し、ターゲットであるロバートの夢の中に潜入します。

第1階層:ロサンゼルスの街

目的 ロバートに「父の金庫に別の遺言状がある」というインプットする
ドリーマー ユスフ
潜入メンバー コブ、アーサー、アリアドネ、イームス、ユスフ、サイトー、ロバート

ターゲットの潜在意識の深いレベルにアイディアを植えつけるために、コブたちは3階層にわたる夢の世界をデザインしました。 第1階層であるロサンゼルスの街での目的は、ロバートに「父は別の遺言状を遺している」とインプットすること。ここでコブたちは予期せぬ抵抗にあい、サイトーが瀕死の重傷を負うものの、後戻りはできないので作戦を続行します。 夢の第2階層へと潜っていくためには、眠り続けるメンバーを守り、第1階層の夢を提供し続けるメンバーすなわち「ドリーマー」が必要になります。 第1階層のドリーマーはユスフ。彼は第1階層にとどまり、チームメイトを守ってタイミングよく目覚めさせるよう任されます。

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第2階層:ホテル

『インセプション』
© 2010 Warner Bros. Entertainment, Inc.
目的 ロバートにあえて夢であると教え、第3階層へ誘導する
ドリーマー アーサー
潜入メンバー コブ、アーサー、アリアドネ、イームス、サイトー、ロバート

第2階層の舞台は高級ホテル。ここでコブたちは第2段階の作戦、「ミスター・チャールズ」を開始します。その目的はターゲットであるロバートに「これは夢だ」と教え、彼の信頼を得て第3階層の夢へと導くことです。 ここでもコブたちのチームはロバートの意識による抵抗にあいますが、間一髪で第3階層に潜り込みます。第2階層ではアーサーがドリーマーとしてとどまり、第3階層の夢に入ったコブたちを守ることに。

第3階層:雪山の要塞病院

目的 ロバートを父と和解させ「自分の道を歩め」と植え付ける
ドリーマー イームス
潜入メンバー コブ、ロバート、アリアドネ、イームス、サイトー、ロバート

第3階層にたどり着いたコブたち。ここでの目的は、ロバートに死んだ父親からの「企業帝国を捨てて自らの道を歩め」というメッセージを植えつけることです。 ところがこの夢の中に、自殺したはずのコブの妻が現れてロバートを殺してしまいます。夢の中で死ぬと通常の場合は目が覚めるのですが、この作戦では特殊な鎮静剤を使用しているため「虚無」の世界に陥ってしまうのです。 同じく第1階層で重傷を負ったサイトーもここで命を落としてしまいました。 コブとチームメイトのアリアドネはロバートとサイトーを救出するため、さらに潜在意識の深い部分である「虚無」の世界に入ることに……。

第4階層:虚無の世界

目的 ロバートとサイトーを虚無から助け出す
ドリーマー コブ
潜入メンバー コブ、アリアドネ、(ロバート、サイトー)

「虚無」の世界は、コブが今は亡き妻とともに作り上げた、夢の世界の廃墟でした。コブは夢の世界に妻との思い出を閉じ込めていたのです。 モルがコブに虚無の世界に留まってほしいと懇願するなか、アリアドネはロバートを高所から突き落とし、自らも飛び降りることで“死に”、脱出に成功。 コブは気がつくと映画冒頭と同様に海岸に打ち上げられており、歳を取ったサイトーと再会します。映画内では描かれていませんが、2人が現実世界に戻れたのは、サイトーがコブを射殺し、自らも拳銃で命を絶ったためと思われます。 そして一行は、飛行機の中で目を覚ますのでした。

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最後のシーンに監督が込めた意味を考察!コマは倒れたのか?

ラストシーンでコブはコマを回します。このコマは夢と現実の見分けがつかなくなったときに使うアイテム「トーテム」で、コマが回り続ければ夢、倒れれば現実と判断することができます。 ところがラストシーンはコマが倒れるかどうかわからないうちに暗転するため、ファンの間ではラストシーンの解釈が分かれました。 2023年のインタビューで、監督のクリストファー・ノーランは「あのショットのポイントは、彼(コブ)はあのとき、そんなことを気にしていないということです」と語っています。つまりコブにとってはそれが現実か夢かはどうでもよく、子どもたちに再会できたことがもっとも重要だということなのでしょう。 「彼は前に進み、子どもたちと一緒にいる。あの曖昧さは感情的な曖昧さではありません。観客にとって理知的なものです」ともコメントしています。

登場人物とキャストを一覧で紹介!コブやアーサーが担った役割とは?

ドム・コブ/レオナルド・ディカプリオ

本作の主人公は、レオナルド・ディカプリオ演じるコブ彼は他人の夢の中に潜り込み、潜在意識から機密情報を盗む産業スパイです。 実はコブには、インセプションのテクニックを使って妻を現実の世界に引き戻した過去がありました。しかしその結果、現実と夢の区別がつかなくなった妻・モル(マリオン・コティヤール)は自殺してしまいます。 それまでの犯罪歴に妻の自殺が加わって、コブは子どもたちをおいて逃亡生活を余儀なくされたのです。

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サイトー/渡辺謙

渡辺謙が演じたサイトーは、本作でミッションを依頼する企業家。彼は航空会社を買い取ることも出来る大富豪であると同時に、コブの犯罪歴を電話1つで帳消しに出来る権力者です。 今回の作戦にかける意気込みは並々ならぬものがあり、ミッションの成否を見極めるためコブたちのチームに同行します。 しかし彼は第1階層で重傷を負い、第3階層で死亡。虚無の世界に落ちてしまいました。虚無の世界で歳をとったサイトーは彼を救いに来たコブに再会し、現実世界に戻ることができました。

アーサー/ジョセフ・ゴードン=レヴィット

ジョセフ・ゴードン=レヴィットが演じたアーサーはコブの長年のパートナーで、ターゲットの調査などを担当しています。知的で非常事態にも冷静に対処する、クールさが魅力のキャラクターです。 彼は第2階層の豪華ホテルでドリーマーとしてとどまります。ホテルのフロアにおける無重力空間での戦いは、本作の中でも印象的なシーンの1つです。

アリアドネ/エレン・ペイジ

エレン・ペイジ演じるアリアドネは、「設計士」の任務を引き受ける聡明な大学院生です。義理の父・マイルズ教授(マイケル・ケイン)からの紹介で、ミッションにおける夢の世界のデザインを担当。 彼女の名前の由来は、ギリシア神話でアテーナイ王・テーセウスを迷宮から救出した女神・アリアドネだと言われています。その名前通り、彼女はチームの窮地を救う存在に。

設計士

設計士の役割は、共有する夢の世界の構築・設計することです。 ターゲットが夢を現実と思い込んでしまうような、リアリティと緻密さが要求されますが、自分の記憶に基づいて実在の街並みなどをそっくりに設計すると、現実との区別が曖昧になって目覚めづらくなってしまうので、それは避けなければいけません。

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イームス/トム・ハーディ

トム・ハーディが演じたイームスは、コブのチームにおける「偽装師」です。彼は夢の中で、ターゲットのロバートが信頼する父の秘書ピーターや金髪女性に姿を変えて、彼を困惑させます。 一方で第3階層の雪山では武装集団に1人で立ち向かうなど、豪快なアクションも披露。

偽装士

偽装士は夢の中で姿を変えて他人になりすまし、ターゲットを惑わします。 イームスはあらゆる人物になりきって、ロバートを翻弄しました。

ユスフ/ディリープ・ラオ

ディリープ・ラオが演じたユスフの担当は、夢の世界を安定した状態に保つための鎮静剤を調合する「調合師」。今回のミッションは第3階層の夢まで潜る必要があったため、かなり強力な鎮静剤が使用されました。 また彼は第1階層のドリーマーでもあり、コブたちがより深い潜在意識に潜っていくための重要な役割を果たします。

調合士

調合士は夢の世界を安定させる鎮静剤を作る者のことです。 ユスフは、3階層分の夢にも対応できるよう強力な鎮静剤を調合しました。

モル/マリオン・コティヤール

モルはコブの妻で、かつて虚無の世界で彼と2人だけの世界を作り上げ、約50年一緒に過ごしました。しかし夢と現実の区別がつかなくなり、コブは彼女を現実に引き戻すために虚無の世界で「これは現実ではない」という考えを植え付けました。 その結果、彼女は現実世界に戻ってもその考えに取り憑かれ「自分は今夢の中にいるので、現実世界に戻るためには死ななければいけない」と危険な行動をくり返し、あるときついに自ら命を絶ってしまいました。

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監督はクリストファー・ノーラン!

『インセプション』の監督を務めるのは、2001年の映画『メメント』で一躍脚光を浴びたクリストファー・ノーランです。 その後「ダークナイト」トリロジーなどを手掛け成功を収めたノーランは、『インセプション』をはじめ『インターステラー』(2014年)、『ダンケルク』(2017年)、『TENET テネット』(2020年)、『オッペンハイマー』(2023年)など、次々とヒットを連発しています。 彼の作品は時間軸が入り乱れる難解なストーリーが特徴で、新作が公開されるたびにファンの間で考察が盛り上がります。 またCGを好まないことでも知られており、『ダークナイト』(2008年)では本物の建物を1棟まるごと爆破したり、『インターステラー』では広大なトウモロコシ畑を苗から育てるなど、映像作りへのこだわりが強いのも特徴です。

『インセプション』の製作にまつわるトリビアを紹介

世界各地で撮影が行われた

本作でアーサーがホテルのフロアを飛び回るシーンは、イギリスにある倉庫で撮影が行われました。また雪山でのシーンの撮影はカナダのカルガリー。 その他にもモロッコや東京、ロンドンやロサンゼルスなど、撮影で巡った地は計6ヵ国に及んでいます。

現実味を持たせるために

クリストファー・ノーラン監督は、爆発などのシーンを通常ハリウッドで使われるオレンジ色の炎ではなく、さらに現実的に表現したいと考えていました。 パリで撮影を行った際には安全のために実際の爆発は起こすことができなかったため、俳優陣のすぐ近くで高圧窒素を使用したのだそう。 特殊効果ディレクターは「実際に演技をしている人のすぐそばで爆発を起こすのと、ただの緑のスクリーンの前で爆発が起きたものと想像して演技するのでは全く違ったリアクションになった。」と話しています。

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運も味方した雪山でのシーン

カナダのカルガリーで撮影が行われた雪山でのシーン。しかし撮影が開始するまで、ロケ地には雪が全くない状態だったそうです。 撮影チームは山肌が露出した状態の現地の写真が送られてくるたびに、かなり不安になったといいます。しかしそんな心配をよそに、実際に撮影に入る時には10年に1度の大雪に見舞われ、完璧な雪山でのシーンを撮ることができました。

特殊効果はそれほど使用していない?

CGを駆使して製作されたようにみえる本作ですが、実際にはそれほど特殊効果は使用されていません。 特殊効果があまり好きではないクリストファー・ノーラン監督の意向もあって、そのまま撮影できるシーンには極力CGを使用しなかったのだそうです。

レオナルド・ディカプリオは脚本作りにも大きく関わった

俳優であるレオナルド・ディカプリオが脚本作りに関わったというのは少し不思議に感じますが、ノーラン監督が書いたオリジナル脚本に手を加えたというのは本当のようです。 レオナルド・ディカプリオは劇中のキャラクターにそれぞれに個性を与え、自身の役であるコブの設定についてもノーラン監督と何週間も議論を交わしたそう。

映画製作に関わる職業をもとにして

インタビューの中でノーラン監督は、本作に登場する人物たちは、映画製作に関わる人たちの職業をもとにしたと話しています。 ノーラン監督曰くコブはディレクターでアーサーはプロデューサー、アリアドネはプロダクションデザイナーでイームスは俳優、サイトーがスタジオでロバートたちは観客なんだそう。劇中でそれぞれが担っている役割を考えてみると納得ですね。

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映画『インセプション』の精神的続編?

『TENET テネット』ティーザービジュアル
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この記事では、多重構造の夢が交錯するSF映画『インセプション』のラストシーンや、夢の構造について解説しました。 クリストファー・ノーラン監督の最新作『TENET』は、本作の精神的続編と噂されています。また『TENET』主演のジョン・デヴィッド・ワシントンは2つの作品の関係を、別の街に住んでいてたまに会うだけの「血のつながらない親戚」と例えていました。 内容として繋がっているわけではなくても、関係のある作品だと思われます。常に新しい世界を創り出すクリストファー・ノーラン監督の今後も見逃せませんね!