スタンド・アローン・コンプレックスってどういう意味?
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『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』。タイトルでも作中でも度々使われるスタンド・アローン・コンプレックス。人々の意思=ゴーストは本来それぞれが別の個性を持っているはずなのに、人は無意識に組織立って同じ行動をとってしまう現象を指しています。
また、劇中で公安九課が遭遇する『笑い男』事件の正体を表してもいます。『笑い男』の正体とは、動機とは、と考察する上で非常に重要なウェイトを占める単語です。
『イノセンス』における人形の発言の真意は?
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2004年公開の劇場版アニメ『イノセンス』。物語の発端となるのは、少女型愛玩人形が原因不明の暴走を各地で起こしたという事件。ある人形は自ら壊れる直前に「助けて」と言い残しました。
『イノセンス』の大きな要素の一つとして精神と肉体の関係性というものがあります。義体と電脳によって体は取り替えが当たり前に効くものとなりました。『攻殻機動隊』の世界の人間はアイデンティティを主観的意識に依らせるしかなくなっています。
事件の真相が判明した時にまず思うのは少女型愛玩人形の言葉は果たして”誰”のものだったのか。本来のボディに存在した意識なのか移植された意識の抵抗なのか、観た人は考えずにはいられません。人間の意識をダウンロードされた人形について草薙素子はこう述べています。「”鳥の血に悲しめど魚の血に悲しまず。声あるものは幸いなり。”人形に声があったら自分は人間になりたくないと言ったでしょうね」
傀儡廻とは誰だったのか?
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『攻殻機動隊 2nd GIG』のラストで主人公の草薙素子はある人物のゴーストを求めて、公安九課から失踪してしまいます。『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society』は草薙素子少佐が疾走した後の物語。傀儡廻という凄腕ハッカーが暗躍し、バトーにトグサを始めとする公安九課が追跡するというものですがこの傀儡廻の正体とは誰なのでしょうか?
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その正体はズバリ無意識の草薙素子です。作中で少佐は義体操作は二体までが限界と言っており、傀儡廻は彼女の発言と照らし合わせれば別人と受け取れます。
ですが『攻殻機動隊』の世界ではゴーストダビングという意識をコピーする方法も禁忌といえど存在し、タチコマのようにゴーストが発生し、ネット上にそれらを放流して生き延びています。ゴーストとは人間が思っているよりも流動的で不確かなものなので、確立したはずのゴーストから分離するゴーストがいてもおかしくありません。
笑い男事件とはどういった事件だったのか!?
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上でも紹介したスタンド・アローン・コンプレックスという概念。これが『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』を理解する上で重要となるのですが、概念の性質上一度や二度観た程度では理解するのが困難となっています。
まず覚えておくのは『攻殻機動隊』の世界の人々の多くが電脳化して生きているということ。これは脳からネットワークに接続できるようなものと考えていただければ大丈夫です。
笑い男事件の発端ですがセラノゲノミクス社のアーネスト瀬良野社長が誘拐され、相手から身代金100億円を要求されたことにあります。ボディガードを電脳ハッキングして認識を紛らわせた手口のこれは誘拐の数日後にTV中継の前で人質に犯人が銃を突きつけ、引き金を引かずに逃走するという結果に終わりました。
その際に通称笑い男と呼ばれる犯人は現場を目撃した全ての人の電脳をハッキングして例の帽子をかぶった笑顔のマークを植え付けて顔をわからなくしました。そして自らのハッキング技術を世間に知らしめた後にマイクロマシン製造ラインに殺人ウィルスを混入するという手段でセラノゲノミクス社を脅迫します。
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その六年後、時代が作中年になり物語が本格的に始まります。トグサのかつての同僚が上層部に不穏な動きがあるために直接会いたいと連絡が来ます。しかし、同僚は死亡し、その妻から封書を渡されることになります。
そこにはカメラを持っていないのに鏡越しの写真を撮られている捜査員が映っており、何者かが電脳へ違法に介入していると知ります。そのハッキングデバイスがセラノゲノミクス社と判明し、緊急記者会見が開かれます。しかし、そこで刑事部長が電脳ハッキングを受けて警視総監を脅して終わりました。加えて刑事部長の顔は笑い男の顔に上書きされています。
別行動をとっていたバトーとトグサはナナオAという囮らしき容疑者を特定し、追跡します。そのナナオAは警視総監の警備にウィルスを送り、暗殺を目論んでいたのです。そうして色々な妨害があるもなんとか暗殺を阻止した9課が知ったのが自分が真の笑い男だと自称する一般人の数々。最終的にはナナオは殺害され、法務省が管轄する授産施設にハッキングが仕掛けられたことでトグサが警備に向かいました。
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そこにいたのが事件の黒幕とも言えるアオイ。ルームメイトからは団長と呼ばれる童顔な男性でした。最終的にトグサが手に入れたのは逃れられない不治の病、電脳硬化症への特効薬村井ワクチンの受注者リストです。効果はあるも原理は不明のために握りつぶされたその薬こそがこの事件の原因とも言えます。
結局、初代笑い男らしきアオイの動機は、村井ワクチンを握りつぶした社会への義憤。セラノゲノミクスの社長を誘拐したのも村井ワクチンの公表を要求して追い返されたからでした。
そして、アオイの犯行は瀬良野社長の誘拐のみ。他の事件はそこに利用価値を見出した様々な団体と笑い男と同じく義憤に駆られた模倣犯達によるものでした。
これだけでも長いようですが種明かしをすればアオイは誘拐だけして他はそれに乗じて笑い男の手口を真似ただけ。別々の思想を持った人間が奇しくも同じ行動をとり、一個の生命体のように動く。これが『STAND ALONE COMPLEX』です。アオイも自身を模倣犯に過ぎないと語っており、アイデンティティと集合意識、無意識の総意による意思の在り処を考えさせる事件でした。
押井守監督は何度も観返して新たな発見がなくなるまで観ると語っています。『攻殻機動隊』シリーズもまた何度観ても新たな発見が見つかるものなのです。