2020年4月26日更新

おすすめ時代劇映画14選 最新の良作から往年の名作まで

斬、
(C)SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

日本が世界に誇る新旧の時代劇を傑作選としてお届け!1990年代以降の新しい時代劇と黒澤明作品など往年の名作に分けて紹介していきます。

目次

新旧のおすすめ傑作時代劇映画!1990年代以降編と往年の名作編に分けて紹介

日本独自の文化の一つ、時代劇。武士を主人公にした歴史物であり、テレビでも映画でも今も昔も変わらず製作され続けています。いまだ続く人気の秘密は一体何なのでしょうか。 ここではそんな疑問を持ちつつ、新旧おすすめの時代劇を傑作選としてお届けしていきます。1990年代以降に製作された比較的新しい時代劇と、黒澤明監督作に代表される往年の名作に分けて紹介します。最後にその人気の秘密にも迫ってみたいと思います。

1990年代以降の良作時代劇映画を紹介

前半は1990年代以降に製作された時代劇をおすすめ。昔ながらの時代劇様式を踏襲しつつ、新しい試みも交えた作品もたくさんあります。塚本晋也監督の哲学が込められた『斬、』や、星野源主演のコメディ時代劇『引っ越し大名』など、新時代の時代劇9本を紹介していきます。

『斬、』(2018年)

塚本晋也監督初の時代劇!武士はなぜ人を斬るのか?その根源を問う

『野火』で生と死に向き合った塚本晋也監督が、初の時代劇でも同じ問いを投げかけた問題作。なぜ人を斬らねばならないのかという武士としての存在理由の根源に問いかけ、人の生死の問題に迫っています。 江戸時代末期、長い間太平の世が続き、武士はその存在価値を失いつつありました。若き浪人・杢之進は農家を手伝いながら食いつなぐ日々を送っていましたが、ある日剣豪の澤村に出会い、開国論で揺れる京都へ出て動乱に参戦しないかと誘いを受けます。 剣の腕は立つものの、人を斬ったことがなく思い悩む杢之進を池松壮亮が熱演。塚本晋也監督も澤村役で出演し、『野火』にも出演した中村達也が流れ者の源田を、杢之進と心を通わせる農家の娘ゆうを蒼井優が演じています。

『散り椿』(2018年)

木村大作監督×岡田准一主演の新作時代劇!古き良き時代劇の美学を映す

『劔岳 点の記』で初監督を務めた撮影の名手・木村大作が監督3作目として撮った時代劇。葉室麟の同名小説の映画化で、『雨あがる』で監督を務めた小泉堯史が脚本を担当し、岡田准一が主演を務めました。 扇野藩で勘定方を務めていた瓜生新兵衛は不正を暴こうとして追放され、妻の篠も病に倒れてしまいます。篠の最期の願いに沿って藩に戻った新兵衛でしたが、かつての友・榊原采女は事件の後出世しており、ある確証を得た新兵衛と対峙することになります。 篠をめぐる采女と新兵衛との切ない三角関係が、木村大作による美しい映像とともに描き出されています。新兵衛役の岡田准一はもちろん、采女役の西島秀俊の美しい剣さばきも堪能できます。

『雨あがる』(2000年)

黒澤明の遺稿を小泉堯史監督が映画化!心優しき武士とその妻の絆を描く

山本周五郎の短編をもとに黒澤明が書いた脚本を、助監督として手伝った小泉堯史がその意志を継いで映画化した作品。日本アカデミー賞では作品賞を含め8部門で最優秀賞を獲得し、最優秀脚本賞が黒澤明に贈られました。 仕官する先もなく、当てのない旅を続ける武士の三沢伊兵衛とその妻たよ。二人はある日大雨で足止めされ、立ち寄った先で喧嘩の仲裁に入ることに。そんな伊兵衛の行いが藩主の耳に入り、人柄を買われて剣術指南番として召しかかえようという話が舞い込みます。 人を押しのけてまで出世することを良しとせず、命の危険さえ顧みずに人の仲を取り持つ伊兵衛を演じたのは、黒澤明監督の遺作『まあだだよ』にも出演した寺尾聡。宮崎美子が心優しい伊兵衛を理解して支える妻たよを演じました。

『壬生義士伝』(2003年)

浅田次郎の初時代小説が原作!新撰組に参加した名もなき武士の生き様

『陰陽師』の滝田洋次郎監督が、浅田次郎の同名歴史小説を中井貴一主演で映画化。新撰組に参加した脱藩武士・吉村貫一郎を中井貴一、新撰組三番隊組長・斎藤一を佐藤浩市が演じました。 明治32年冬のある晩、斎藤一は新撰組で出会った一人の隊士・吉村貫一郎のことを思い出していました。新撰組の隊士たちは誰もが名誉を重んじ死を恐れない生粋の武士ばかり。そんな中、吉村は故郷の家族のために金を稼いで生き残ることを切望する一風変わった武士でした。 日本アカデミー賞では最優秀作品賞をはじめ、中井貴一が最優秀主演男優賞、佐藤浩市が最優秀助演男優賞を受賞。人斬りとしてしか生きられない刹那的な斎藤一とは対照的な貫一郎を主人公に据え、人はどう生きるべきかという問いを投げかけています。

『十三人の刺客』(2010年)

1963年の傑作時代劇『十三人の刺客』を三池崇史監督がリメイク

片岡千恵蔵主演の『十三人の刺客』を、47年ぶりに三池崇史監督がリメイクした新時代劇。黄金期の時代劇の熱もそのままに、CGも極力使わず東京ドーム20個分の宿場町をセットとして作り上げました。 江戸時代後期、将軍の異母弟である明石藩主・松平斉韶は暴政を敷き、無法の限りを尽くしていました。斉韶の理不尽な振る舞いに耐えかねた老中の間宮が切腹して訴え、これを受けて幕府内で極秘のうちに斉韶暗殺計画が画策されます。 「十三人の刺客」となったのは御目付役の島田新左衛門をはじめ、浪人や山の民など様々な立場の者たち。役所広司や山田孝之、松方弘樹、沢村一樹といった豪華キャストが名を連ね、斉韶役の稲垣吾郎とその腹心・鬼頭半兵衛役の市村正親の怪演も話題になりました。

『のぼうの城』(2012年)

500人の兵 vs 2万人の大軍!豊臣秀吉にケンカを売った男

和田竜の歴史小説「忍ぶの城」を野村萬斎主演で映画化した作品で、犬童一心と樋口真嗣が共同監督を務めました。天下統一を目指す豊臣秀吉の小田原征伐で、2万の大軍に500人の兵で対抗した忍城(おしじょう)の戦いを史実をもとに描いています。 天下統一目前の豊臣秀吉は、関東最大の抵抗勢力である北条氏の小田原城を攻略するため、関東各地の支城にも大軍を派遣。その中の一つ、忍城の城主・成田氏長は小田原城の籠城作戦に参戦しつつも、裏では豊臣へ密通していました。しかし城代を任された成田長親は豊臣の使者に憤慨して、たった500人の兵で戦うことを決意してしまいます。 長親は領民から慕われる「のぼう様」と呼ばれたひょうきん者でしたが、いざ決戦となると意表を突く奇策で大軍を率いる石田三成の水攻めにも対抗しました。演じた野村萬斎が披露した田楽踊りは見事で、敵も味方も魅了する天然の“人たらし”ぶりが描かれています。

『たそがれ清兵衛』(2002年)

藤沢周平の短編時代小説を映画化!幕末に生きた下級武士の生き様

藤沢周平の短編時代小説集「たそがれ清兵衛」から表題作3篇を原作とした、山田洋次監督初の時代劇。庄内地方(現在の山形県)に住む下級武士・清兵衛の生き様を描いています。 世は幕末、妻を亡くし二人の幼い娘と年老いた母の4人で極貧の中暮らしていた井口清兵衛。世話と内職のため常に定時で帰っていたため「たそがれ清兵衛」と不名誉なあだ名をつけられていました。しかしある事件をきっかけに剣の腕を買われ、上意討ちの藩命を受けることになります。 娘たちの成長と畑仕事に生きがいを見出していた清兵衛が、藩命に背けず武士の端くれとして命をかけて果たし合いに臨む姿を丁寧に描いた本作。清兵衛を演じた真田広之と、映画初出演の田中泯との壮絶な果たし合いは劇中一の見どころです。

『引っ越し大名』(2019年)

星野源主演の時代劇コメディ!引きこもり侍が引っ越し奉行に?

「超高速!参勤交代」シリーズで知られる土橋章宏の時代小説「引っ越大名三千里」の映画化。『のぼうの城』の犬童一心が監督、土橋章宏が脚本、星野源が主演を務めました。 姫路藩の書庫番を務める片桐春之介は、コミュ障の書物好きで書庫に引きこもりがち。そんな春之介がなんと、藩の国替え=引っ越しを担う「引っ越し奉行」に任命されてしまいます。 本作のモチーフとなったのは、幕府の命によって生涯に7回も国替えさせられた実在の大名・松平直矩。及川光博が直矩を、星野源が春之介を演じています。参勤交代よりも労力と財力が必要だったという藩の一大事業「国替え」の全貌を知ることができる作品です。

『必死剣 鳥刺し』(2010年)

藤沢周平の「隠し剣」シリーズが映画化!運命を切り開く秘剣「必死剣 鳥刺し」が炸裂

藤沢周平の短編時代小説シリーズ「隠し剣」の一編「必死剣 鳥刺し」を、平山秀幸監督、豊川悦司主演で映画化。山田洋次監督による『隠し剣 鬼の爪』と『武士の一分』に続く同シリーズの映画化3作目となった作品です。 海坂藩の藩士で剣の達人・兼見三左エ門は、斬首も覚悟の上、藩政に口出しし悪影響お及ぼしていた藩主の側室・連子を刺殺。しかし思いの外処分は軽く、剣の腕を買われた三左エ門は藩主の命を狙っていた帯屋隼人正の暗殺の命を受けることになります。 武士としての死に場所を求めて連子を刺した三左エ門が、侍として生きることも死ぬことも許されず苦悩する姿を描いています。吉川晃司演じる隼人正を相手に、三左エ門の秘剣「必死剣 鳥刺し」が繰り出される決死の戦いが見どころです。

往年の名作時代劇映画を紹介

後半からは、黒澤明監督による傑作時代劇を中心に往年の名作5本を紹介。黒澤明監督の不朽の名作『七人の侍』はもちろん、勝新太郎の代名詞となった『座頭市』や、侍社会の矛盾を衝撃的に描き出した『切腹』など、時代劇を語る上で絶対に外せない作品ばかりです。

『座頭市』(1989年)

勝新太郎のライフワーク「座頭市」シリーズ、最後の映画化作品

勝新太郎の代表作でありライフワークとなった「座頭市」シリーズ最後の映画作品で、勝新太郎が監督・製作・脚本・主演を兼任しました。勝新太郎が1962年から演じてきた盲目の居合剣士・座頭市の集大成となった作品です。 牢を出た後、ある漁村にたどり着いた盲目の按摩・座頭市。そこでは賭場を仕切る五右衛門一家が地区一帯を監督する八州取締役に取り入り、それに対立する赤兵衛一家との抗争の幕が開こうとしていました。 勝新太郎が演じた「座頭市」シリーズは、1962年から映画26作が製作、テレビドラマ4シリーズが放映された大ヒット作。日本国内はもちろん、海外にも多大な影響を与え、1989年のハリウッド映画『ブラインド・フューリー』や北野武監督作『座頭市』などのリメイク作を生んでいます。

『隠し砦の三悪人』(1958年)

『スター・ウォーズ』にも影響を与えた黒澤明監督による痛快な娯楽時代劇!

黒澤明監督による初のシネスコープ作品で、戦国敗将が姫と軍用金を抱えて敵陣突破する娯楽時代劇。主人公の侍大将・真壁六郎太を『七人の侍』の三船敏郎が演じています。 時は戦国時代、褒美目当てに山名家と秋月家の戦いに参戦した農民の太平と又七。秋月の城が落ち、山名の捕虜となった二人は、秋月家の侍大将・真壁六郎太と遭遇します。六郎太は雪姫と軍用金を持って隠し砦に身を潜め、脱出の機会をうかがっていました。 物語の狂言回しを務める太平と又七を、黒澤明監督作常連の名脇役で知られる千秋実と藤原釜足がコミカルに演じました。本作はジョージ・ルーカス監督の「スター・ウォーズ」の構想にも影響を与え、太平と又七のコンビはC-3POとR2-D2のモデルにもなっています。

『七人の侍』(1954年)

黒澤明監督の代表作となった時代劇!野武士に立ち向かう七人の侍と農民たち

世界で最も有名な日本映画の一作といっても過言ではない、黒澤明監督の代表作。黒澤監督は敬愛するジョン・フォード監督の西部劇から影響を受け、さらに本作が世界に影響を与え、西部劇『荒野の七人』としてリメイクされました。 戦国時代末期の農村で、野盗と化した野武士たちが略奪を繰り返していました。困窮した農民たちは飯付きという条件で食い詰めた侍を雇って対抗しようとします。そして七人の侍が集まり、農民たちとともに野武士との戦いに挑もうとしていました。 集まった七人の侍たちはそれぞれ個性的ですが、志村喬演じるリーダーの島田勘兵衛の強さと人柄に惹かれて勝手についてくる「菊千代」が物語の肝。三船敏郎が荒々しくもコミカルに演じた菊千代は武士のように振る舞いますが、実は農民出身。しかし誰よりも侍らしく、踏みにじられてきた農民の心もわかる男なのです。

『用心棒』(1961年)

西部劇から影響を受け、さらに影響を与えた黒澤明監督の傑作アクション時代劇

黒澤明監督が西部劇の要素を取り入れ、三船敏郎主演でさすらいの用心棒を描いたアクション時代劇。1962年には本作の続編的作品『椿三十郎』も製作されました。 賭場の元締め・馬目の清兵衛とその部下だった丑寅一家との抗争で荒れる、ある宿場町。そこに桑畑三十郎と名乗る凄腕の浪人が現れます。三十郎は抗争で荒れた町の住人に肩入れし、二組のやくざ一家を相打ちさせる策を立てます。 丑寅の弟で殺し屋の卯之助を仲代達矢が演じ、マフラー姿のニヒルなガンマンで存在感を発揮しています。本作は1964年にセルジオ・レオーネ監督が撮ったマカロニ・ウエスタンの傑作『荒野の用心棒』にも影響を与えました。

『切腹』(1963年)

社会派監督・小林正樹による侍社会へのアンチテーゼ!「切腹」に込められた真意とは

大作『人間の條件』で知られる社会派監督・小林正樹が挑んだ初時代劇で、「切腹」に代表される武士道精神の残酷性をテーマにした異色作です。主演を『用心棒』の仲代達矢が務めています。 1630年(寛永7年)の10月、津雲半四郎と名乗る浪人が井伊家の江戸屋敷を訪ね、「切腹」を申し出ます。この頃、食い詰めた浪人が切腹をネタに金品を要求するゆすり行為が横行しており、家老の勘解由は半四郎に先日この屋敷で実際に切腹させた千々岩求女という男の話を始めます。しかし実は求女は半四郎の娘婿でした。 仕官もできず困窮する武士が多かった時代を背景に、「切腹」という残酷な行為を通して、侍社会の理不尽さや武士の体面の脆さなどを痛烈に批判した作品です。しかし小林正樹監督の意図とは逆に、海外では侍の悲劇的美徳が高く評価されるという皮肉な結果も生まれました。

武士を主人公にした時代劇の人気の秘密とは?現代にも通じる侍社会

明治時代に活動写真として始まった日本の映画文化とともに、庶民に親しまれる一大ジャンルに成長してきた「時代劇」。いまだに新しい時代劇が作られ続ける人気の秘密は、侍の社会が現代社会にも通じる部分があるからかもしれません。 藩主が一会社の社長なら、下級武士は平社員といったところ。『切腹』で描かれたような体面を重んじる理不尽な社会構造は、今も昔も変わらないような気がします。『七人の侍』の農民たちのように、最後に勝利するのが庶民であることを願うばかりです。