2017年7月6日更新

映画『炎のランナー』に出演していたキャストの現在【アカデミー賞】

炎のランナー

アカデミー賞4部門を受賞し、2012年のロンドンオリンピックの開会式や表彰式などで音楽やシーンが使われた本作は、今でも人々の記憶に残っています。超名優から『ロード・オブ・ザ・リング』のあの人まで!多彩なキャストのその後を追いました。

映画『炎のランナー』に出演していたキャストたちは今どうなっている?

アカデミー作品賞、作曲賞をはじめ、アカデミー賞4部門を受賞した本作は、2012年のロンドンオリンピックの開会式や表彰式などで音楽や映画のワンシーンが使われたことで話題になりました。

走ることによって「イギリス人」であることを証明しようとするユダヤ人のハロルド・エイブラムスと、信仰のために走るスコットランド人宣教師エリック・リデル。二人のランナーが国家や信仰と葛藤しながら、時代をひたむきに走り続ける姿が印象的な映画です。

主演、助演共に才能溢れる若手俳優を起用し、イギリスの超名優もこっそり登場している本作ですが、作品に登場した俳優陣は現在どうしているのでしょうか?その気になる現在をご紹介します。

ハロルド・エイブラムス/ベン・クロス

ベン・クロスは、『炎のランナー』でユダヤ人青年ランナーハロルドを演じました。イギリスのユダヤ人としてのアイデンティティを確立しようともがく等身大の青年像が共感を呼んだのです。

その後、多数のCMやファッション雑誌にも登場するなどスターとして活躍。

また、映画『ソロモン』(1997)や『海底2万マイル』(1997)のネモ船長など、人気キャラクターも演じています。2007年には、『スター・トレック』にサレク役として出演しています。

実はベン・クロスは俳優の他に、監督、作曲、脚本家など様々な顔も持っています。2007年には、ブルガリア人の歌手のために歌詞を書くなど、近年も精力的に活動を続けています。

エリック・リデル/イアン・チャールソン

イアン・ホルムが演じたのは、スコットランド宣教師の青年ランナーエリック・リデルです。神の栄光のために走る敬虔なクリスチャンである彼の決断は私達の胸を打つものがあります。

1982年にアカデミー賞を受賞した『ガンジー』での演技でも知られているイアン・チャールソン。舞台俳優としてキャリアを積んできた彼らしく、『Fool for Love』(1984-1985)やテネシー・ウィリアムズ原作の『熱いトタン屋根の上の猫』(1988)での演技を評価されて、イギリスの優秀な劇や俳優に贈られるオリヴィエ賞年間最優秀男優賞にノミネートされました。

しかし1986年にAIDSを発症し、1990年に40歳の若さで亡くなってしまいます。英国において公表されたHIVによる著名人の初めての死であり、AIDS予防の啓発や患者への理解の一助となったようです。

彼は死の数ヶ月前まで公演で『ハムレット』を演じ続け、同年にロンドン劇場の賞を受けたイアン・マッケランに「完璧なハムレット」と激賞されました。

サム・ムサビーニ/イアン・ホルム

イアン・ホルムは、『炎のランナー』でハロルドのトレーナー、サム・ムサビーニを演じ、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされました。イギリス人ではないために大学側からは疎まれながらも、ハロルドを育て、信頼関係を築いていきます。その後も俳優として優秀な仕事を成し遂げていきます。

1997年には、『フィフス・エレメント』でコーネリアス神父を、『スウィート ヒアアフター』でミッチェルを演じます。1998年、『リア王』の演技でオリヴィエ賞を受賞。『リア王』と『ザ・ブロンド爆弾 最後のばら』(2001)の2回、エミー賞にノミネートされる活躍ぶりです。

彼は1981年、『指輪物語』をラジオドラマ化した『BBC ラジオコレクション ロード・オブ・ザ・リング』で、フロド・バギンズを演じました。

そのことが縁となり、ピーター・ジャクソン監督の映画『ロード・オブ・ザ・リング』と『ホビット』でフロドの養父であるビルボ・バギンズ役に抜擢されました。

アンドリュー・リンゼイ卿/ナイジェル・ヘイヴァース

映画の冒頭にハロルド・エイブラムスを追悼するスピーチをするアンドリュー・リンゼイ卿を演じたのは、ナイジェル・ヘイヴァースでした。ハロルドの学友で障害物競走のランナーであり、エリックとの関係でも重要な役割を果たします。本作で、英国アカデミー賞にノミネートされました。

その後、『太陽の帝国』(1988)や『インドへの道』(1984)などの大作に出演したナイジェルですが、実は映画俳優というよりもTVスターとして名前が売れています。

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『リトル・プリンセス』(1986)では主演を張り、BBCのコメディー番組『Don't Wait Up』(83-90)ではトニー・ブリトンと共演、ロイド銀行のCMにも出演するなどイギリスのお茶の間では親しまれているようです。

オーブリー・モンタギュー/ニコラス・ファレル

ニコラス・ファレルは『グレイストーク -類人猿の王者- ターザンの伝説』(1984)にも出演。TV向けに翻案された、ジェイン・オースティン原作の『マンスフィールド・パーク』(1986)では主演を務めています。

そして『オセロ』(1996)、『ハムレット』(1997)、『12夜』(1998)など、シェイクスピア原作の映画にも多く出演しています。

近年でも『ビューティフルピープル』(2000)や二コール・キッドマンがグレース・ケリーを演じた『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』(2014)に出演するなど、まだまだ現役で活躍しています。

トリニティの学長/ジョン・ギールグッド

ケンブリッジ大学のトリニティ・カレッジの学長を演じたのは、ジョン・ギールグッドです。ムサビーニを雇ったハロルドを咎める場面など、重厚な印象を映画に与えています。

1904年生まれのジョン・ギールグッドは、イギリス演劇界の巨人と言えるでしょう。1980年代には『炎のランナー』、『ガンジー』(1982)、『プレンティ』(1985)をはじめ、20本以上の映画に出演しています。1981年には『ミスター・アーサー』でアカデミー賞助演男優賞を受賞しています。

長いキャリアの末、シェイクスピアの『テンペスト』を題材にした映画『プロスペローの本』(1990年、ピーター・グリーナウェイ監督)がジョン・ギールグッドの最後の映画での仕事となりました。映画自体の評価は賛否両論でしたが、ジョン・ギールグッドの演技への評価は高かったようです。

そして1999年に妻に先立たれ、憔悴した彼は翌年、息を引き取りました。約70年間舞台に立ち続け、60本以上の映画に出演した彼の実績は、ラルフ・リチャードソン、ローレンス・オリヴィエと共に、「20世紀のイギリス演劇の三位一体の一つ」と称えられています。

シビル・ゴードン/アリス・クリーグ

ハロルドの婚約者のシビルを演じたのはアリス・クリーグです。「男達の友情と闘い」に大きな比重がある映画なので彼女の存在が画面に彩りを添えています。

『炎のランナー』が映画初出演となったアリス・クリーグは、同年、ジョージ・バーナード・ショー作の舞台『武器と人』で、ローレンス・オリヴィエ賞新人賞を受賞し才能を認められました。その後、舞台と映画での仕事を地道に続けています。

なぜかSFやホラー作品への出演も多く、『ゴースト・ストーリー』(1981)、『スリープウォーカーズ』(1992)、『サイレントヒル』(2006)などに出演しています。1997年、映画『スタートレック ファーストコンタクト』でのボーグ・クイーン役で、サターン助演女優賞を受賞しました。

19の映画祭で受賞を果たした、アパルトヘイトがテーマの映画『肌(原題 Skin)』では主役の母親を演じ、南アフリカ出身の女優として記憶に残る演技を見せてくれました。