恋愛映画『親愛なるきみへ』
『親愛なるきみへ』(Dear John)は、恋愛小説を得意とするアメリカ人作家ニコラス・スパークスの『きみを想う夜空に』が原作です。
スウェーデン人のラッセ・ハルストレム監督によって映画化され、日本では2011年に公開されました。
本作品は業界内においては評価があまり高くないのですが、人気ミリオネア作家が事実に基づいて書いた話として、多くの人たちの興味をひいています。
それぞれに問題を抱えた男女が、お互いの愛を確立するまで非常に長い時間のかかった物語です。
恋愛映画の王道である三角関係
恋人同士のジョンとサヴァンナが愛を育む過程で、それを邪魔する形で現れる二人の友人ティム。
さて、サヴァンナが選ぶのはどちらの男性なのでしょう?
サヴァンナが選んだ男性
サヴァンナは悩んだ末にジョンとの別れを決意し、ティムを選びます。
実際に映画を観た人たちの間ではさまざまな感想があげられていますが、彼女がティムを選んだことによって、ジョンのサヴァンナへの一途な愛がより際立っていることは確かです。
恋愛映画に必要なものートラブルー
更に観客を飽きさせないようにするには、次のトラブルが必要という原則にのっとり…
ティムは癌にかかってしまいます。
そこでジョンは、とても価値のあるコインコレクションを売り捌き、恋のライバルのために治療費を捻出しました。
原作では、このままジョンは甘くフワフワした自己満足の気持ちを抱きつつ去っていきます。
しかし映画においてはティムに2ヶ月間だけ余命が与えられ、彼の死後ジョンとサヴァンナは結ばれるというハッピーエンディングになっています。
ジョンとサヴァンナが結ばれることを期待していた観客にとっては大満足のラストのはず。ではいったい何が映画の評価を下げたのでしょう?
恋愛映画に不要なものー余命とナレーションー
まずティムの生きた「余命2か月」というのは余計であり、作品の価値を下げたと考えられています。
なぜならこの2か月間を描く間に、観客の気持ちはリセットされていくからです。
しかしこの作品の要は、「ジョンの献身的な愛」。この意義深い愛を薄れさせるわけにはいきません。
そこで映画の最後はナレーションによって、ティムの若い最期がハッピーであり、讃えられるべきものであったことを暗示させる必要が出てきました。
そのことを印象付けることで、ジョンの愛を再び観客に思い出させようというわけです。
ナレーションの説明なしで、ジョンの献身的な愛を感じたまま幕を閉じさせるのがベストという考え方の評論家たちにとっては、余命もナレーションも無用の産物だったのですね。