2020年3月28日更新

歴史的名作『オズの魔法使』のあらすじ&解説 知られざるマンチキンのトリビアも

『オズの魔法使』
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1939年に公開された『オズの魔法使』は、監督やキャストの交代劇など紆余曲折をくり返し、さまざまなトラブルを乗り越えて完成したミュージカル映画の名作です。今回は、本作のあらすじ、解説、知られざるトリビアなどを紹介しましょう。

目次

古典ミュージカル映画の傑作『オズの魔法使』を徹底解説

1939年に公開された『オズの魔法使』。ライマン・フランク・ボームによる同名児童文学を映画化した本作は、古典ミュージカル映画の名作として知られています。また、カラー映画最初期の作品でもあり、色鮮やかなオズの国のパートは公開当時大きな話題になりました。 本作は、公開から80年以上経ったいまでも色褪せない魅力を持ち、多くのファンを惹きつけて離しません。そんな『オズの魔法使』について、あらすじから時代背景などの解説、キャストや知られざるトリビアまで紹介します。 ※この記事には『オズの魔法使』の結末に関するネタバレが含まれます。本作を未鑑賞の方、結末を知りたくない方はご注意ください。

『オズの魔法使』のあらすじ&解説

『オズの魔法使』
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エムおばさん、ヘンリーおじさん、そして下働きのハンクとヒッコリー、ジークとカンザスに暮らすドロシー。彼女は「虹の彼方に」ここよりよい場所があると夢見ていました。そんな彼女は、ある日竜巻に巻き込まれ、愛犬のトトとともに家ごと魔法の国・オズに運ばれてしまいます。 カンザスに帰りたいと願うドロシーに、北の良い魔女グリンダは「黄色いレンガの道をたどってエメラルド・シティに行き、オズの魔法使いに頼めば故郷に帰してくれるだろう」と言います。彼女は道すがら、知恵がほしいと願うカカシ男、心がほしいと願うブリキ男、そして勇気がほしいと願うライオンに出会いました。それぞれの願いを叶えるためともに旅をするうち、彼らは友情を育んでいきます。 しかしドロシーたちの行く手には、彼女が偶然手に入れたルビーの靴を狙う、西の悪い魔女が待ち受けていたのです。

【ネタバレ解説】『オズの魔法使』のメッセージとは?

児童文学をもとにした『オズの魔法使』には、2つのメッセージが織り込まれています。1つはドロシーのセリフにもあるように「どこよりもお家がいちばん」というもの。映画の序盤、ドロシーはカンザスの田舎での退屈な暮らしから抜け出したいと思っていました。しかし、離れてみて故郷や家族の大切さを知るのです。 もう1つのメッセージを伝えるのは、ドロシーとともに旅をするカカシ男、ブリキ男、ライオンの3人。彼らは道中で、力を合わせてさまざまな困難を乗り越えていきました。そしてようやくオズの大魔法使いに対面したとき、彼らは手に入れたいと望んでいたものが、すでに自分のなかにあることに気がつきます。 つまり、カカシ男にはもともと「自分には知恵がない」と気づくだけの知恵があり、ブリキ男には「心がほしい」と思うだけの心が、そしてライオンには「自分には勇気がない」と認めるだけの勇気があったことを意味しているのです。 オズの大魔法使いは、彼らがそれぞれ望んでいたものを持っていると証明する“物”を与えました。これは、もともと持っていたものを目に見える形にしただけですが、それは3人にとっては意味のあることだったのです。

『オズの魔法使』は派生作品・続編が多数存在!

『オズの魔法使』は原作小説を完璧に映像化しています。そのため実写映画は、本作のほかにはトニー賞受賞ミュージカルを映画化した『ウィズ』(1978年)のみ。こちらはドロシーの故郷をカンザスからハーレムに変更するなどの再解釈を加え、ダイアナ・ロスやマイケル・ジャクソンらが出演したオール黒人キャストの作品です。 しかしアニメ作品や続編、派生作品は数多くあります。1950年代から80年代にはドロシーが再びオズの国を訪れる続編アニメがいくつもが製作され、そのうちの『ジャーニー・バック・トゥ・オズ』(1972年)では、本作で主演を務めたジュディ・ガーランドの娘ライザ・ミネリがドロシーを演じました。 また、「トムとジェリー」や「マペッツ」などのキャラクターによる「オズの魔法使い」も製作されています。2013年には、サム・ライミ監督、ジェームズ・フランコ主演で本作の精神的続編『オズ はじまりの戦い』が公開に。 2003年からブロードウェイで上演され大人気となった『ウィキッド』は、エルファバという緑色の肌の少女が、いかにして“悪い”魔女になったのかという経緯を描いています。本作は世界中で上演された大ヒットを記録したほか、2007年から2016年には、日本でも劇団四季によって上演されました。

キャラクター/キャストを紹介

ドロシー/ジュディ・ガーランド

ジュディ・ガーランド『オズの魔法使』
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ドロシーを演じたジュディ・ガーランドは、本作でアカデミー子役賞を受賞したことをきっかけに大人気となりました。演技とともにその歌唱力でも評価された彼女は、その後も数々の映画で活躍し、1954年の『スタア誕生』でも、その美声を披露しています。 しかし、栄光の影でジュディの生活は過酷なものだったようです。本作のドロシー役は、当初は当時10歳だった人気子役、シャーリー・テンプルが演じる予定でした。しかしその契約が決裂し、代役に指名されたジュディは16歳。胸をつぶして幼く見せるために、きついコルセットをつけて演技をしていたのだとか。 また彼女は、本作の撮影中から当時ハリウッドで「やせ薬」として頻繁に使われていた覚醒剤(アンフェタミン)を、スタジオの社長の指示で服用しており、のちに薬物依存に苦しむことになります。 度重なる自殺未遂や薬物治療のための入院など、苦難の連続だったジュディの人生は、47歳という若さで幕を閉じました。

カカシ男(ハンク)/レイ・ボルジャー

『オズの魔法使』
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カカシ男を演じたのは、歌やダンスをなどを披露するヴォードヴィルショーの出演者、ヴォードヴィリアンとして人気を博したレイ・ボルジャーです。彼はトニー賞主演男優賞を2度受賞した名優で、ハリウッドのウォーク・オブ・フェイムにも名を連ねています。 本作では特殊メイクも話題になりましたが、カカシ男のメイクは藁の質感を出すため、ゴム製の素材が使用されていました。そのため、ボルジャーの顔からゴムの痕が消えるには1年かかったのだそうです。

ブリキ男(ヒッコリー)/ジャック・ヘイリー

ブリキ男を演じたジャック・ヘイリーも、ヴォードヴィリアンとしてキャリアをスタートさせ、その後俳優、コメディアンとしても活躍した人物です。1977年には名作ミュージカル『ニューヨーク、ニューヨーク』にカメオ出演し、ジュディ・ガーランドの娘であるライザ・ミネリと共演しました。 実は、ヘイリーはブリキ男を演じることになった3人目の俳優。最初はカカシ男を演じたレイ・ボルジャーがブリキ男にキャスティングされていましたが、役を交代。その後、バディ・イブセンがブリキ男を演じることになりますが、当初ブリキの衣装にはアルミニウムの粉塵が使用されており、イプセンはアレルギー反応を起こして降板しています。 その後衣装が改善され、最終的にジャック・ヘイリーがブリキ男を演じました。

ライオン(ジーク)/バート・ラー

本作では、俳優、コメディアンとして知られるバート・ラーがライオンを演じています。15歳で学校を退学以降、ヴォードヴィルからブロードウェイ、ハリウッド映画へと着実に活躍の幅を広げていきました。 実は、本作のライオンの衣装には本物のライオン革が使われており、重量が40キロを超えていたとか。ただでさえ暑いスタジオで、彼は一日中汗だくになりながら撮影に臨み、夜中にスタッフが2人がかりで衣装を乾かしていたそうです。暑さ、重さに加え、ひどい臭いに耐えながら演技をしていたようです。

グリンダ/ビリー・バーク

北の良い魔女グリンダを演じたのはビリー・バーク。 彼女はサーカスで道化師を務める父を持ち、世界中を旅して育ちました。22歳のときにブロードウェイデビューを果たし、その後ハリウッドへ進出。映画女優として人気を獲得するも、結婚を機に引退します。しかし、夫の破産・死去にともなって女優に復帰し、1938年の『Merrily We Live(原題)』でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされました。

西の悪い魔女(ミス・ガルチ)/マーガレット・ハミルトン

『オズの魔法使』
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北の悪い魔女を演じたマーガレット・ハミルトンは、幼いころから児童劇団で活動していました。そのこともあり、舞台女優としてキャリアをスタート。1933年に映画デビューを飾ると、その後も順調に映画女優としてのキャリアを積んでいきました。 彼女は、もともとライマン・フランク・ボームの原作小説の大ファンだったそうで、映画のオファーが届いたときには、跳び上がるほどよろこんだといいます。 しかし、トラブル続出の撮影現場では彼女にも災難が。魔女が消えるシーンで、煙が予定より早く上がりマントに火が移ってしまったため、ハミルトンは手と顔に重度の火傷を負ってしまいました。

オズの大魔法使い/フランク・モーガン

オズの大魔法使いを演じたのは、フランク・モーガン。彼は本作で魔法使いのほかに、占い師マーヴェル、カラフルな馬車の御者、城の門番の合計4役を務めています。 モーガンはブロードウェイの舞台で経験を積み、1914年に映画デビューした俳優です。1934年の『The Affairs of Cellini(原題)』では、主演を務めアカデミー賞にノミネートされました。1949年に死去したあと、1960年にはハリウッド・ウォーク・オブ・フェイムの仲間入りを果たしています。

『オズの魔法使』のトリビア あの名曲がカットされる寸前だった?

マンチキンの声はほとんどが吹き替えだった!その理由は当時の時代背景に

『オズの魔法使』
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マンチキンを演じた多くの俳優たちはナチスから逃れるために撮影に参加したといわれています。そのため、彼らは英語があまり得意ではありませんでした。2人を除いた全員のセリフ、歌声が吹き替えです。 吹き替えされていない2人はドロシーに花を手渡すマンチキンです。

魔女が空にメッセージを書くシーンは意外な方法で撮影された

西の悪い魔女が、ほうきに乗って空に“Surrender Dorothy(降伏せよ、ドロシー)” と書く有名なシーンは、意外な方法で撮影されています。 スタッフはこのシーン撮影のため、水のタンク、注射器、小さな魔女のモデル、牛乳を用意しました。牛乳を入れた注射器の先に魔女のモデルを取り付け、タンクの中へ。それから文字を書き、タンクの底から撮影しました。

名曲「虹の彼方に」はカットされる寸前だった!?

この作品では多くのシーンが撮影後にカットされていましたが、ドロシーが「虹の彼方に」を歌うシーンもその候補の1つだったそうです。その理由は、カンザスのシーンが長すぎたこと、子供向きの歌ではなかったことだったとか。 実際、魔女の城に捕らわれたドロシーが故郷を思ってこの曲を歌うシーンは、カットされています。

『オズの魔法使』は多くの苦難を乗り越えて完成した歴史的名作!

『オズの魔法使』
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「オズの魔法使い」の物語は知っていても、本作は観たことがないという人は意外と多いかもしれません。 古典ミュージカル映画の名作である『オズの魔法使』は、この記事で紹介したほかにも、さまざまなトラブルや困難を経て完成した作品です。その制作過程も興味深いですが、内容も映画好きなら1度は観ておいて絶対に損はない作品なのです。 名曲「虹の彼方に」をはじめとする素晴らしい楽曲の数々や、舞台で経験を積んできたキャストたちによるダンスも楽しめる『オズの魔法使』は、子供はもちろん大人にもおすすめ。観たことがないという人は、ぜひ観てみてはいかがでしょうか。