2025年9月3日更新

『真夏の方程式』あらすじをネタバレ解説!悲しすぎる結末と映画ガリレオ2作目の評価は?

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ガリレオ 真夏の方程式
(C)2013 フジテレビジョン アミューズ 文藝春秋 FNS27社

テレビドラマ「ガリレオ」シリーズ、劇場版第1作『容疑者Xの献身』の大ヒットを受け、劇場版パート2として満を持して2013年に映画化されたのが『真夏の方程式』です。前作から5年ぶりの製作であり、湯川のパートナーが柴咲コウ演じる内海から吉高由里子演じる岸谷に交代したことも話題に! この記事では、本作のあらすじをネタバレありで解説し、キャストや評価・感想などを紹介していきます。

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『真夏の方程式』のあらすじ【ネタバレなし】

物語の舞台は美しい海が残っている玻璃ヶ浦。玻璃ヶ浦では資源開発計画が進められており、湯川学がこの計画のアドバイザーとして現地に招かれることから物語は始まります。 海を守ろうとする開発反対派と開発推進派が激しく対立していたところに、湯川は中立の立場から意見を述べたのでした。 湯川は反対派の急先鋒である環境保護活動家の女性・川畑成美の両親が営む旅館、「緑岩荘」に湯川は宿泊し、恭平という少年に再会しました。彼は川畑夫婦の甥で夏休みだけこちらに来ているのですが、湯川は電車の中でも恭平に会っていたのでした。 翌日、玻璃ヶ浦で遺体が発見されます。身元は緑岩荘のもう1人の宿泊客、塚原正治と断定され、海岸を散歩中に足をすべらせた転落死と見られました。 ところが塚原は元・刑事で、15年前に三宅伸子というホステスが殺された事件が実は冤罪ではないかと疑い、調査のために玻璃ヶ浦に来ていたことが判明します。 塚原は15年前の殺人事件の犯人、仙波英俊を探していたらしいのです。塚原の死因に疑いをもった東京の警視庁から岸谷美砂刑事が派遣され、湯川に協力を仰ぎます。調査が進むにつれ、川畑夫妻・田中伸子・仙波英俊の意外な関係が浮かび上がってくるのです。

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『真夏の方程式』の犯人はだれ?悲しい結末とは

三宅伸子を殺害したのは誰?

まず冒頭の非常に印象的なシーン。誰かが走っているところが本人の視点で撮られていて、やがてその人物がナイフで女性を刺し、女性が真っ赤な傘を落とすと、その傘は下を通っている線路の上に落ちていきます。これは三宅伸子殺害の場面だったのです。刺したのは当時14歳だった川畑成美です。 成美がなぜ、三宅伸子を刺したのか?成美は川畑節子と仙波英俊(白龍)が不倫をした末にできた子どもだったのです。そのことで金をせびりに来た三宅伸子と川畑成美が口論になり、興奮した成美は三宅伸子を刺殺してしまったというわけです。そのことを知った仙波英俊は実の娘である成美をかばって、殺人事件の犯人として警察に自首しました

塚原正治はどのように殺害された?

その事件を当時担当していた塚原正治は仙波が冤罪であると確信し、退職後も独自に調査を続けていました。では、塚原正治はなぜ、どのように殺害されたか? 検視の結果、塚原正治の死因は一酸化炭素中毒と判明します。塚原の泊まっていた部屋のボイラーが故障していて煙が充満してしまい、窒息死。旅館の評判が落ちることを恐れた川畑重治が遺体を海岸に捨て、転落死のように装ったということで、過失致死で逮捕されます。 しかし、湯川学は真相に気づいていました。「このままでは、ある人物の人生がねじ曲げられてしまう」と考えて動きます。川畑重治はすべてを知っていて、このままでは塚原に15年前の事件の真相が暴かれてしまうと考えて、故意に塚原の部屋に煙が充満するように仕向けたのです。 ところが、足の悪い重治は煙突に上れません。重治は恭平に「ロケット花火が煙突に入らないように」と嘘をついて、恭平に濡れた段ボールで煙突をふさがせます。重治は実の子ではないものの、成美を心から愛していたのでした。

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湯川が気にかけた恭平のその後とは?

ガリレオ 真夏の方程式
(C)2013 フジテレビジョン アミューズ 文藝春秋 FNS27社

湯川が気にかけていたのは、恭平がいつか真相に気づいて知らぬうちに自分が実行犯になっていたことに罪悪感を抱くのではないかということです。湯川は、打ちのめされている成美に恭平を守る役割を託します。 湯川は玻璃ヶ浦を去るときに、恭平に言います。「問題には必ず答えがある。(中略)君がその答えを見つけるまで、僕も一緒に考える。一緒に悩み続ける。忘れるな。君は1人じゃない。」と。 この湯川のセリフこそ、タイトルの『真夏の方程式』を指していると読み取ることもできます。湯川は、今後1人で悩み苦しんでしまうであろう恭平に、すぐに「答え」が出るような問題ではないのだと、自分でも悩むような問題なのだと伝えようとしたのではないでしょうか。 子供嫌いの湯川にしては、珍しく優しい言葉でもあります。恭平のその後は描かれていませんが、きっと恭平の今後の人生において湯川の「君は1人じゃない」という言葉、そして「真夏の方程式」は、心強い存在となったことでしょう。

恭平が事件に巻き込まれた理由を考察

重治は塚原の殺害を急遽思い立ったため、その場にあるもので遂行しなければなりませんでした。節子や成美には秘密にして実行しなければならず、もちろん湯川にも不審がられてはいけません。 一酸化炭素中毒を起こすための口実として花火を使うのなら、子どもである恭平を実行の協力者にするのは自然です。さらに恭平は好奇心旺盛で素直なため、重治の指示にも言われた通り実行してしまいました。 本来なら子どもに殺害実行を協力させるなど、重治には思いもよらないことだったかもしれません。しかし成美を守りたい一心で、この時の重治にはこの方法しか思いつかなかったのでしょう。警察に自首した後、湯川に会って「恭平に伝えたいことは?」と聞かれた時、事の重大さに気付いたようでした。

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劇場版2作目!『真夏の方程式』の感想・評価

2人の父親に守られていた成美……彼女の葛藤が苦しい

この作品の中で、一番葛藤を抱えていたのは最初に罪を犯した成美だったのかもしれません。伸子を殺害したのが成美だと気付いた母・節子、その罪をかぶった実の父・仙波、成美が実の子でないと知りながらも愛し続けた父・重治。この3人に成美はずっと守られてきました。 成美が玻璃ヶ浦を守ろうと必死だったのは、実の父の出身地であり彼が愛した海だったから。彼女の活動はまるで贖罪のようであり、その美しい海を守り続けることでここに生きる意味を見出そうとしていたようにも見えました。 最後に重治の自分に対する深い愛情を知り、罪を償う決意を湯川に打ち明けた成美。湯川はそんな彼女に、「恭平を守る」よう伝えます。これまで自分の罪と守ってくれる親たちの愛情の間で葛藤し続けた彼女が、今度は意図せず罪を背負った恭平を守ることこそが贖罪になると考えたのでしょうか。

パートナーの交代と物語の悲劇性の違い

劇場版1作目の『容疑者Xの献身』ではドラマ版からのパートナーである内海刑事が登場しましたが、2作目の『真夏の方程式』では岸谷刑事が湯川のパートナーとなっています。岸谷は内海とは正反対なキャラクターで、内海とのようなチグハグなかけ合いはあまりなく、湯川に振り回されつつも淡々と捜査をこなしている有能さが目立ちました。 また両作はどちらも「最愛の人を守りたいが故の犯行」である点は同じであるものの、前作は他人である隣人、本作は家族という違いが物語の悲劇性を増しているように思えます。家族間での罪の隠蔽と秘密が積もり積もって、最終的に子どもの恭平に罪を背負わせてしまうという点が、本作の最大の悲劇といえるでしょう。

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映画『真夏の方程式』のロケ地は?

映画『真夏の方程式』の舞台は、青い海が美しい「玻璃ヶ浦」という架空の小さな町。では、どこで撮影が行われたのでしょうか?実は都心からさほど遠くない西伊豆町浮島(ふとう)がメインのロケ地。「緑岩荘」として撮影されたのは「五輪館」という民宿で、実際に宿泊もできるようです。 玻璃ヶ浦は浮島海岸で、映画の通りの風光明媚な海岸です。海水浴シーズンは観光客も多いのでしょうが、オフシーズンは少しひなびたような何とも言えない味わいのある町並みが楽しめるようです。 また、玻璃ヶ浦駅のシーンは愛媛県の高浜駅で撮影されたそうです。趣のある駅舎を楽しむのも一興でしょう。

『真夏の方程式』の登場人物・キャスト

湯川学役/福山雅治

福山雅治

湯川学は「ガリレオ」シリーズの主人公にして探偵役。帝都大学物理学助教授(准教授)であり、物理学のみならず様々な雑学に関する知識の持ち主です。「ガリレオ」は、難事件を論理的に解き明かす見事な手腕から、警察がつけたあだ名ですが、本人は嫌がっています。 ドラマ版、映画版では「実に面白い」が口癖ですが、原作にはありません。福山雅治のクールなイメージを決定づけた当たり役と言えるでしょう。 湯川は子どもが苦手ですが、本作では恭平という少年との交流が重要なプロットになっています。理科が不得意だという恭平のためにペットボトル・ロケットを作って、海岸で飛ばすシーンがあります。 本作で少年と絡むシーンの福山の演技は、直前に撮影した『そして父になる』の影響が強いのでは?と見る向きもあるようです。

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岸谷美砂役/吉高由里子

吉高由里子

岸谷美砂は、柴崎コウ演じる内海薫に代わって登場した、原作にないオリジナルキャラクター。内海が海外研修に行くので、代わりに湯川の担当になった国立大学出のキャリア刑事という設定です。 自信家でプライドが高く時として無神経な発言をしてしまうので、捜査にむしろ支障が出てしまうのではとハラハラするほどです。内海薫とは正反対とも言えるキャラクターを吉高由里子が演じきります。

川畑成美役/杏

杏 アー写
©Junko Tamaki(t.cube)

川畑成美は、玻璃ヶ浦の海を守る環境活動をしている女性。かなり過激な活動さえしており、そのために湯川と対立します。物語の終盤でその行動原理には成美が抱えている秘密に原因があることを、湯川が示唆します。 歯に衣着せぬ意見を述べるものの、実は影の部分を隠している、という難しい役に女優の杏が挑戦しています。

川畑重治役/前田吟

川畑重治は成美の父親で、玻璃ヶ浦の旅館・緑岩荘の主人です。膝を壊していて杖をついているという事実が後に重大な帰結をもたらします。 娘を心から愛していて、そのためには何でもするという人物を、名バイプレーヤー前田吟が熱演しています

川畑節子役/風吹ジュン

川畑節子は成美の母親で、重治の妻。冒頭のシーンで何か重大な秘密を隠しているらしいことが示されます。演じるのは、最近ではめっきりお母さん役が似合うようになった風吹ジュンです

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柄崎恭平役/山﨑光

柄崎恭平は、川畑節子の弟の息子で、成美の従弟に当たります。小学校5年生で、夏休みを親戚の経営する旅館で過ごすために玻璃ヶ浦に来ました。湯川学の科学的知識に敬意を覚えているので、湯川からも一目置かれます。実は殺人事件で重大な役割を演じさせられていたことが判明し、湯川を苦悩させます。 そんな難しい役どころの恭平を演じたのは当時9歳だった山﨑光。本作の公開翌年には『烈車戦隊トッキュウジャー』でトッキュウ4号/ヒカリ(横浜流星)の幼少期を演じ、2019年には『まく子』で映画初主演を務めました。『素晴らしき哉、先生!』(2024年)や『極道上司に愛されたら』(2025年)などドラマにも出演しています。

『真夏の方程式』を復習して「ガリレオ」シリーズを楽しもう

「ガリレオ」シリーズの映画『真夏の方程式』。その結末は、シリーズ映画第1弾の『容疑者Xの献身』を超えるほど悲しいもので、心に鋭く突き刺さります。 結末を知っていても、実力派俳優陣の演技込みの映像で見ると、感情移入して感動できるはず。