2018年6月28日更新

『昼顔』以降、日本のドラマが変わった!?不倫ドラマの系譜に迫る

2014年に連続ドラマとして放送され、大ヒットとなった『昼顔』。不倫の恋にのめり込んでいく主婦の姿を描いたドラマは大きな注目を集め社会現象になりました。なぜ『昼顔』はヒットしたのか。代表的な不倫ドラマや、以後のドラマの傾向についてまとめました。

『昼顔』が流れを変えた、日本の不倫ドラマ事情

2014年に放送され、社会現象となった大ヒットドラマ『昼顔』。結婚5年目で、昼はスーパーでパートをしている主婦・笹本紗和が、偶然知り合いとなった高校の生物教師の北野祐一郎と惹かれ合い、不倫関係に陥っていく様を切なく激しく描き、大変な話題となりました。 『昼顔』は2017年に続編として映画化され、再び話題に。『昼顔』の放送以降は、不倫を題材に描かれた連続ドラマが増え、2017年放送の『奪い愛、冬』や『あなたのことはそれほど』など、衝撃的なストーリーが注目を集めている作品も多く見られます。

『昼顔』以外にも数多くのドラマで題材として取り上げられている不倫。不倫ドラマは昔から現代にいたるまで数多くありましたが、この一大ブームを起こした『昼顔』を境に、日本の不倫ドラマは少しずつ変化してきているのです。 今回は最初にブームとなった1980年代から現代にいたるまでの不倫ドラマの変化を、代表作品を紹介しながら解説します。

始まりは「よろめき妻」の誕生から

1960年代から製作されていた「不倫」をテーマにした作品たち

不倫ドラマは1960年代頃から製作されており、その多くが昼の時間帯に放送されていました。 もちろん不倫以外のテーマを扱った昼ドラマもありましたが、初恋の相手を想い続ける未亡人の姿を描いた『真珠婦人』(1974年)はよく知られており、不倫のみならずドロドロした人間模様を描くサスペンスも放送されていました。 昼ドラ以外でも不倫ドラマは製作されていました。ミステリー要素も含まれた『黒の斜面』(1971年)は2016年にリメイク版が放送されました。また、妻の不倫をきっかけのひとつとして崩壊し、そして再生する家族の姿を描いた『岸辺のアルバム』(1977年)は名作として現在も知られています。 これらが放送されていた当時、不倫ドラマは「よろめきドラマ」と呼ばれていました。かつて想いを寄せていた相手との再会をきっかけに、不倫に走り苦悩する女性を主人公にした三島由紀夫の小説『美徳のよろめき』が由来です。ここから派生して「よろめき妻」という言葉も流行しました。

現在の不倫ドラマの元祖、大ブームとなった『金曜日の妻たちへ』

そんな中、大きなブームを巻き起こしたドラマが1983年に放送された『金曜日の妻たちへ』です。 罪悪感に苛まれながらも不倫から抜け出せずにいるヒロインを描いたそれまでの不倫ドラマと違い、自らの人生を積極的に楽しみ、自由に不倫に走る女性たちの姿を描いた今作は新しい時代を感じさせ、当時の女性たちの間で大人気を博しました。 東京郊外に住む仲の良い3組の夫婦に突如降りかかる、不倫や離婚という問題。6人でいつも家族のように仲良く過ごしていたはずなのに、1組の夫婦の不倫問題から、6人の関係性は崩れ始め、複雑に絡み合います。 これをきっかけにかつて流行した「よろめき」は忘れられていき、不倫ドラマの新しい潮流が生まれたのです。

「第一次不倫ドラマブーム」のおこり

『不機嫌な果実』が大ヒット!

林真里子の小説『不機嫌な果実』は、1997年にドラマ化され大ヒットしました。結婚生活に不満を募らせている主人公が、かつての恋人と再開、再び惹かれあって行くも、さらに年下の男性との恋を経験するという、夫のある身ながら揺れ動く女性の心情を過激に描いた作品です。 一見普通に見える主婦が「夫以外の男とのセックスは、どうしてこんなに楽しいのだろうか。」という言葉とともに、悪びれもなく不倫を楽しむ様子は衝撃を与えました。 3人の男の間で揺れる主人公の主婦・水越麻也子は石田ゆり子が演じ、その演技は高く評価されました。夫の航一を渡辺いっけい、麻也子のかつての恋人・野村を内藤剛志、年下の音楽青年・通彦を岡本健一が演じました。 本作のヒットをきっかけに起きたのが「第一次不倫ドラマブーム」です。翌1998年の、罪悪感に苦しみながらも不倫相手との子を妊娠してしまう女性の姿を描いた『Sweet Season』などの不倫ドラマが製作され、本作と同年の『失楽園』や1996年の『Age,35恋しくて』も大ヒットを記録しました。

「第二次不倫ドラマブーム」のきっかけとなった『昼顔』

ドラマの爆発的ヒットが社会現象にまで

第一次不倫ドラマブームが去り、「不倫」というコンテンツが下火になっていた2014年に放送されたのが『昼顔』でした。これはその年の流行語に「昼顔」がノミネートされるなど、社会現象を巻き起こした爆発的ヒット作となりました。 ドラマの放送と同じくして、世間では、夫が仕事に出ている昼間に不倫の恋の花を咲かせる女性「昼顔妻」が増えている、とニュースや情報番組でも取り上げられていました。ドラマ『昼顔』の主人公・紗和とその友人・利佳子もまた、昼間に思いを寄せる男性と逢瀬を重ねています。 世の中の動きとシンクロするようなストーリーが多くの女性の心を捉え、本作は爆発的ヒットドラマとなりました。そして本作は「第二次不倫ドラマブーム」の起爆剤となったのです。

一体なぜ?ドラマ『昼顔』がヒットしたわけ

道ならぬ恋であり、許されない関係である不倫。その不倫を描いたドラマ『昼顔』がここまでヒットしたのは一体なぜなのでしょう? 『昼顔』では、平凡で幸せな生活に寂しさと物足りなさを感じている主人公・紗和が、北野との出会いや恋によって少しずつ本来の姿を取り戻していく姿が切なく丁寧に描かれています。夫婦仲が悪いわけではなく、大きな不満があるわけでもない、でもその毎日に紗和は消耗していました。 そんな紗和に女性視聴者たちは共感し、自分の姿を重ね合わせ、北野との不倫の恋にのめり込んでいく紗和の姿に胸をときめかせたのでしょう。 これまでは、男性側のみが既婚者であったり、男性側の視点で描かれることも多かった不倫ドラマです。平凡で幸せなはずの主婦が、寂しさと葛藤を抱え、不倫の恋に苦悩する姿は、リアリティあふれる生々しいドラマとして、世の女性たちの心を掴んだのです。

『不機嫌な果実』がリメイク版として蘇る

『昼顔』のヒットをきっかけに不倫ドラマブームの起こりが見られ始め、その中で1997年に放送され大変な話題と注目を集めた不倫ドラマ『不機嫌な果実』が、2016年に蘇りました。「第二次不倫ドラマブーム」の象徴とも言えます。 2016年放送のドラマ『不機嫌な果実』は、設定やストーリー展開はそのままに、それぞれのキャラクターが濃く過激にパワーアップ。冷え切った関係の夫・航一がヒステリックでマザコン気質だったりと、思わず麻也子に共感できてしまった女性も多いのではないでしょうか。

前代未聞!不倫ドラマ戦国時代

ドラマ『昼顔』のヒットを受け、その後のドラマが不倫を描いたものが増えたことは、言うまでもありません。 2015年には田中麗奈主演の『美しき罠~残花繚乱~』、2016年には、『毒島ゆり子のせきらら日記』、『不機嫌な果実』と連続ドラマで多数の不倫ドラマが話題と注目を集めました。 2017年には『奪い愛、冬』、『あなたのことはそれほど』と不倫を題材にした過激なストーリーのドラマが人気を博しています。大体1クールには1本、不倫ドラマがあるという状態で、どの作品がいちばんの注目を集める勝利者となるのか、まさに不倫ドラマ戦国時代と言えるでしょう。

「第二次不倫ドラマブーム」のテーマとは?

『昼顔』を境に起きたこの「第二次不倫ドラマブーム」での大きな潮流が「復活愛」だといえます。それは忘れられない過去の恋人、または好きな人との再会によって始まってしまった不倫のことで、その「復活愛」を描いた作品がこの時期は大変多かったのです。 2017年4月より放送された『あなたのことはそれほど』では波瑠が不倫にはまってしまう妻を演じました。彼女の演じる美都は初恋の相手である有島(鈴木伸之)と再会してしまい、「2番目に好きな人」である夫(東出昌大)をよそに有島と不倫関係になります。 これはいわゆる「ダブル不倫」を描いたもので、この時期社会でも注目を集めていた不倫スキャンダルとも関係する作品となりました。また、本作の特徴として“透明感のある”作品と評されたことがあります。演技派ながら清純なイメージを持つ波瑠が主演を務めたことが関係しているのでしょうか。

また2018年1月に放送された『ホリデイラブ』も、他の不倫ドラマとは一線を画するものとなりました。不倫をする立場の人物ではなく、不倫をされる妻・通称「サレ妻」を主人公にした本作は、他の不倫ドラマと比べると身近なストーリーとして感じやすい作品となりました。 近年恋愛ドラマは多様化しています。様々な愛の形を認めようとする社会の流れに従ってのことかもしれませんが、それによって恋愛ドラマの在り方が拡張されているのも事実です。「あなそれ」の透明感の正体は、「恋愛の一つの形」として不倫を描こうとしたことが関係しているのでしょう。 今後「不倫ドラマ」は昼、深夜の時間帯にのみ放送される大人向けの所謂「ドロドロドラマ」のみならず、他の恋愛ドラマと同じような位置づけで語られることとなることになるのかもしれません。

いま、不倫ドラマが流行するわけ

不倫を描いたドラマは数多くあれど、それが流行になるのはどうしてなのでしょうか。 ドラマや映画の中で繰り広げられる恋愛や人間関係は、どれだけリアリティがあってもフィクションの世界の話です。実際にはできない不倫のような背徳の恋は、フィクションのドラマ内でしか楽しむことができないものだからこそ、需要があるのかもしれません。 また、系譜を振り返ってもわかるように、女性の社会進出や独立とともに、多様な恋愛のあり方を描く機会が増えていったとも言えそうです。 不倫ドラマの視聴者は主婦が多いと言われていますが、その視聴者の多くが不倫願望を持っていたり、影響を受けているわけではないでしょう。道ならぬ恋、許されぬ背徳的な恋は、日常とは相反するものなので、刺激が強く、心を打たれるのではないでしょうか。 実際に願望を持つ女性が増えた、ということもあるかもしれませんが、日頃家事をがんばり、家族を大切にしているからこその、その裏返しなのでしょう。