映画とアトラクションとの関係とは。ディズニーのアトラクションの秘話!

2017年9月7日更新

夢と魔法で私たちを魅了するディズニー。最新技術を駆使したアトラクションは乗るだけでワクワクしますが、その裏にあるストーリーを知ればより楽しめるはず。『パイレーツ』シリーズを含む、水を使ったアトラクションと関係深い3つの映画を紹介します。

ディズニーのアトラクションには、「イマジニア」が命を吹き込んでいる

アニメーション制作からスタートしたディズニーは、テーマパーク設立にあたっても、個々のアトラクションにストーリーを授けました。 「バックストーリー」と呼ばれるこの設定には、アトラクションに限らず、パーク内のレストランなどにも与えられる歴史や背景が細かに描かれます。アトラクション職人「イマジニア」たちが、具体的な形にする前の下準備ともいえますね。 イマジニアは、「イマジネーション」と「エンジニア」を合わせた造語。イマジニアの中には色々な分野の専門家がいて、アトラクションのアイディアを出すところから、実際に設計・管理するところまでをチームとして担当しています。

人気映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』はアトラクションから誕生!

2017年8月現在、5作品が公開されている『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ。こちらの起源を遡ると、バックストーリーのひとつに行き当たるのですが、その前に映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズを振り返っておきましょう。 ジョニー・デップ演じるジャック・スパロウは、「ブラックパール号」をこよなく愛する海賊船の船長。海賊らしく己の欲望に従い、自分を裏切ったバルボッサへの復讐に燃えたり、永遠の命を求めたりしています。 けれども彼は、まったくの悪人ではありません。本人が意図しているかは不明ですが、結果的にジャックに救われる人間は少なくないのです。 自身の過去の行いのせいで苦労の絶えないジャックですが、なんだかんだ落とし前をつけてしまう様は痛快。ジャックをはじめ、ぶっとんだキャラクターたちへの中毒性が高い作品です。

「カリブの海賊」の主役は、時代の海賊像を体現するキャラクターたち

いまや世界一有名な海賊といっても過言ではない、ジャック・スパロウ。彼の活躍する『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズは、ウォルト自身が最後に手がけたアトラクション「カリブの海賊」をベースに創作されました。

海賊のイメージを確立した、黒髭と『宝島』のジョン・シルバー

「カリブの海賊」に影響を与えたのは、2人の海賊たち。実在した海賊「黒髭」ことエドワード・ティーチと、小説『宝島』に登場する片足のジョン・シルバーです。 エドワード・ティーチという海賊はーー偽名ともいわれていますが、その豊かな髭に、麻の切れ端や導火線を編みこんだ姿で有名。のちの創作物に登場する海賊の典型となりましたが、ジャックの風貌もどことなく似ていますね。 もう1人の海賊、ロバート・ルイス・スティーヴンソンの『宝島』に登場する片足のシルバーも、象徴的な海賊像を打ち立てました。「肢体の一部を失っている」「オウムを手なずけた」男というイメージは、『パイレーツ』シリーズではバルボッサやジャックの手下コットンに受け継がれていますし、『ピーター・パン』のフック船長もこの系譜に加えることができるかもしれません。

『パイレーツ』シリーズのヒットで、海賊のアイコンはジャック・スパロウと仲間たちに

1967年の米ディズニーランドへの初登場以来、「カリブの海賊」を支えてきたのは上記のような17〜19世紀を代表する海賊たちでした。しかし21世紀に入って、大きな変化の波がやってきます。 アトラクションから派生した映画のキャラクターたちが、パークに逆輸入されることになったのです(米ディズニーランドは2006年、東京ディズニーランドは2007年にリニューアル)。

日本版の変化を、進行順にご紹介しましょう。最初の落下後の、宝の山で白骨化した海賊を過ぎたあたりに、タコのような風貌のデイヴィ・ジョーンズが登場します。以前からゲストの恐怖を煽る男の声が流れていましたが、スモークスクリーンに映るジョーンズが警告するように変更されました。 次は、砲撃飛び交う海戦のシーン。オリジナルのガレオン船を指揮していたのは、実在した黒髭らしき男でした。しかしリニューアルで、この座はバルボッサに奪われることに。 ちなみに黒髭というキャラクターは、映画の第4作目『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』で銀幕デビューしています。映画の公開された2011年には、デイヴィ・ジョーンズに代わって、「カリブの海賊」のスモークスクリーン・デビューも果たしました(米ディズニーランドと米国フロリダ州のマジックキングダムにて期間限定)。

さて、ここからは新たに加わったジャック・スパロウの出演シーンを確認しましょう。日本のディズニーランドでジャックを見られるのは3回です。 最難関の1回目は、海賊たちに襲われた町で確認できます。進行方向右手に、井戸で拷問される男が見えたら、スタンバイ。洋服店のマネキンの陰にジャックが見えてきます。水攻めの目的がジャックの居場所を吐かせることなので、身動きがとれないようです。 二回目のジャックは、進行方向左手です。女性を追い回す海賊たちが見えてきたら、建物の外の酔っ払い男に注目。この男の背後にある樽から、ジャックが顔を覗かせます。 三回目は、アトラクション終盤。玉座に腰掛けるジャックが、オウムのさえずりを合いの手に「ヨーホー」を歌っています。

映画『海底二万哩』は、オトナなら観ておきたい古典的SF

ジュール・ヴェルヌが1870年に発表した小説『海底二万里』(仏語原題:Vingt Mille Lieues Sous Les Mers)。これを元にディズニーが映画化したのが、1955年の『海底二万哩』(英語原題:20000 Leagues Under the Sea)です。 日本では「2万マイル」が定着していますが、これは誤り。翻訳する過程で、日本人になじみのない単位からマイルに変換されたのですが、その後、原題と邦訳タイトルがごちゃまぜになったようです。なおフランス語の「リュー」(約4km)は、日本語の「里」(約3.93km)とほぼ同じ距離。『海底二万里』は距離的に問題のない訳といえます。

話が脱線しましたが、映画のあらすじに入ります。1868年、船舶が沈没する事件が多発。怪物のしわざだとの噂が広まり、海洋学者アロナクスと助手のコンセイユは調査船に乗り込みます。 ある夜、船は怪物の攻撃を受け、アロナクス教授とコンセイユ、それに銛打ちのネッドは海に投げ出されます。幸い、怪物の正体である潜水艦ノーチラス号に収容されて命はたすかりますが、船長のネモは、秘密を知った以上逃げようとしたら殺すと三人に言い渡したのでした。 ネモは謎多き人物。その知識や技術は卓越していますが、そこに目をつけた連中に妻子を殺された過去から、戦争ばかりする人間を憎み、攻撃を繰り返しているといいます。 アロナクスとの交流で、自分の科学力を他者と共有してもいいと考え始めていたネモ。しかし敵の軍艦の襲撃を受けたことで考えを改め、研究施設があるバルケニア島へ急ぎます。 科学力の粋を集めた島を、上陸した軍もろともに爆破するネモ。アロナクスたち三人はなんとか脱出できますが、最新技術を搭載するノーチラス号は船長とともに海底に葬られます。ネモは自分の技術が悪用されるのを防いだのでした。

ディズニーシーの「海底2万マイル」には、まるくなったネモが登場する

「海底2万マイル」は、ネモ船長が開発した小型潜水艇で、海底世界を探検するアトラクション。これを抱えるミステリアス・アイランドには、映画に出てくるノーチラス号や、同じくヴェルヌの小説『地底旅行』を元にしたアトラクション「センター・オブ・ジ・アース」もあります。 小型潜水艇は、コントロール室から遠隔操作されているという設定。ゲストはネモ船長の声を聞くことができます。しかしこのネモは、映画版とは大違い。ゲストに対する警戒心はなく、むしろ頼りになる水先案内人といった印象です。 冒険の途中、ゲストは潜水艇が浮上できなくなるというトラブルに見舞われるのですが、原因は映画にも登場する巨大イカ。映画ではとどめを刺せなかった電気ショックで、アトラクションのイカは撃退されます。 ゲストたちが迷い込む海洋文明やそこに住む海底人は、アトラクションのオリジナル。原作小説にはアトランティス大陸の遺跡が登場しますが、謎の海洋文明人との交流はここでしか体験できません。 2010年以降、リメイクが計画されつつ、実現していない『海底二万里』。新たな映画が製作されれば、このアトラクションにも余波があるかもしれません。

スプラッシュ・マウンテンの原作『南部の唄』は、幻の名作

ディズニーランドのなかでも、高い人気を誇るスプラッシュ・マウンテン。アトラクションの知名度に反して、元となった1951年の映画『南部の唄』を観たことがある人は少ないかもしれません。 アトランタから南部の農場へ移住してきたジョニーは、仕事で都会に戻ってしまった父親が恋しい白人の少年。そんなジョニーを、農場の下働きの黒人・リーマスおじさんはおとぎ話で元気づけてくれます。 ブレア・ラビットのお話は、聴くだけで気分爽快。自分を食べようと悪巧みするブレア・フォックスとブレア・ベアを、小さなウサギがやっつけてしまうのです。( 各キャラクターについている「ブレア[Br'er]」は「Brother」の略。スプラッシュ・マウンテンでの呼称「うさぎどん」の「どん」にあたります)

ジョニーやおじさんの出てくる現実パートを実写で、ブレア・ラビットのとんち話をアニメーションで表現した、ディズニー初のハイブリット映画ともいえる本作。 特に残虐な表現があるわけではなく、むしろ劇中の白人と黒人は仲良く暮らしています。しかしこの表現こそが、黒人差別があったという歴史認識を歪めるとして、全米黒人地位向上協会は抗議。ディズニーは自主規制に追い込まれました。 日本ではかつてVHSやレーザーディスクが入手可能でしたが、2017年8月現在DVDの販売は未定。アメリカではフルバージョンのソフトが発売されたことはなく、何度も計画されてはいるものの、実現にいたっていません(「ジッパ・ディー・ドゥー・ダー」の歌やアニメパートの一部は、米国版の『ふしぎの国のアリス スペシャルエディションDVD2枚組』に収録されています)。

『南部の唄』には、びしょ濡れエピソードがない

スプラッシュ・マウンテン最大の見せ場は、なんといっても滝壺へのダイブ。分かっていても、実際に急降下したり濡れたりすると悲鳴を上げてしまいますよね。しかしこのような、水のスペクタクルは『南部の唄』には登場しません。映画におけるブレア・ラビットの冒険をみてみましょう。 イバラの茂みに住むブレア・ラビットは、あるとき「笑いの国」を目指して旅に出ます。途中でブレア・フォックスとブレア・ベアに捕まってしまいますが、機転をきかせて叫びます。「イバラの茂みには投げ込まないで!」 相手はまんまと騙されて、ウサギをイバラの茂みに投げ込みます。しかしそこはウサギにとっては勝手知ったる場所。痛くもかゆくもないブレア・ラビットは、意気揚々と逃げ出します。 「イバラの茂みに投げ込まれる」感覚は、アトラクションで再現されています。山の頂上から急降下するとき、私たちは濡れることに気を取られがちですが、滝壺の周囲にはイバラが茂っているのです。

イバラの茂みに投げ込まれたブレア・ラビットは、アトラクションでは、生まれ育った土地こそが自由で楽しい「笑いの国」だったことに気がつきます。しかし映画にはもうひとつの、ブラックな「笑いの国」があります。 仕返しをする目的で、ブレア・ラビットが「笑いの国に連れて行ってやる」と二人組をおびき出すのです。ハチの巣へ案内されたクマとキツネは当然酷い目に遭いますが、切れ者ウサギは「これこそが笑いの国だ」と大笑い。 ウサギの残虐性が見え隠れする、映画の「笑いの国」。アトラクションでは、川下り後のゲストがほっとできる空間に様変わりしていて、キツネとクマがワニに狙われる勧善懲悪シーンさえ微笑ましく感じられます。 この明るく楽しい雰囲気に一役買っているのは、BGMの「ジッパ・ディー・ドゥー・ダー」。リーマスおじさんが劇中で歌ったこの曲は、1947年のアカデミー歌曲賞を受賞しました。

永遠に完成しないディズニーランドの挑戦はまだまだ続く

ここまで、アトラクションと映画が巧みにミックスされた3作品をみてきました。けれども、ディズニーの魔法はこれにとどまりません。 生前ウォルトは、「ディズニーランドは永遠に完成しない。世界に想像力がある限り、成長し続けるだろう」と語りました。 まったく新しい作品との出会いはもちろんですが、エマ・ワトソン主演の『美女と野獣』のように、名作アニメが続々と実写リメイクされるのも、ファンにとっては楽しみのひとつ。 実写映画化によってアトラクションがパワーアップするかもしれないし、『パイレーツ』シリーズがそうだったように、アトラクション発の映画が生まれる可能性だってゼロではありません。 夢の仕掛け人イマジニアが、次はどんな魔法を体験させてくれるのか。映画を観ながら、そんな想像をしてみるのも楽しいかもしれませんね。