実はここが違っている!?ディズニー映画の異民族キャラクター
外国のアニメに出てくる日本人のキャラクターは、日本人から見ると結構おかしな設定が多いと感じませんか? やはり、異文化を描くとどうしても製作側が持っているその文化の典型的なイメージが強く出てしまいます。それは世界的に影響力のあるディズニー映画も例外ではありません。 インディアンやポリネシアンに馴染みのない私たち日本人には分からないかもしれませんが、ディズニーに登場するインディアンやポリネシアの人々はちょっとおかしな点があるんです。今回は『ポカホンタス』、『ピーターパン』、『モアナと伝説の海』を例に実際の文化との違いを挙げていきます。
実在したインディアンの女性がモチーフのポカホンタス
『ポカホンタス』はディズニー史上初めて実在の歴史上の人物を主人公にした映画です。 好奇心旺盛で知性に溢れたインディアンの族長の娘、ポカホンタスはイギリスからやって来た開拓者ジョン・スミスと言葉の壁を越え、恋に落ちます。 しかし、イギリス人探検隊とインディアンの仲は険悪で、2人は争いを止めようとしますが......。 自然を愛するポカホンタスはアライグマのミーコとハチドリのフリットと一緒にいることが多く、柳の木のおばあさんの言うことにも素直に耳を傾ける自然を愛する性格です。 また、スミスが父親に処刑されそうになった時は身を挺して庇う勇敢な女性です。
実際のインディアン・ポウハタン族との相違
本作の主人公ポカホンタスはアメリカのヴァージニア州東部に集落があったインディアン・ポウハタン族です。 実在の人物ですが、彼女がジョンスミスと恋に落ちた、という記録はないのです。それもそのは ず、実際に伝わっている歴史では、彼女がスミスに出会ったのは10歳、11歳の時なので恋が始まるはずもありません。 さらに、ポウハタン族は主に鹿皮で作られた腰布を纏い生活していたので、劇中でポカホンタスが着ているような丈の短い肩紐ドレスはポカホンタスを性的に描写しているとインディアン側から批判されています。 歴史を白人の都合のいいように、さも史実かのように改変していることで、この作品には多くの批判もあるのです。
可愛いけど勝ち気で誇り高いインディアンの娘、タイガーリリー
1953年に公開された長編アニメ映画『ピーターパン』はネバーランドで暮らす永遠の少年ピーター・パンとロンドンで暮らす3人兄弟の物語です。 ネバーランドの住民は人魚や妖精、動物の衣装を着たピーターの部下のロストボーイなど多種多様なキャラクター達がいます。その中には赤い肌のインディアンもいて、日々ロストボーイ達と戦争ごっこを繰り広げています。 タイガーリリーはインディアンの酋長の娘で可愛いけど気の強いピーターのよき友人の一人です。ピーターを目の敵にしているフック船長に攫われた時も、毅然とした態度を取りピーターの居場所を言いませんでした。
実際のインディアン・ブラックフット族との相違
劇中で頭脳派なウェンディの弟ジョンは、ネバーランドに住むインディアン達のことをとても残忍なブラックフット族と説明しています。しかし、映画の中のインディアン達は、実際の様々な部族の文化がごちゃ混ぜになっています。 実際にネバーランドのインディアンキャンプにはトーテムポールがありますが、ブラックフット族にはトーテムポールを作る文化はありません。 また、タイガーリリーは映画の中で酋長の娘であり、インディアンのプリンセスとして扱われていますが、そもそもインディアンに王族というものは存在しません。インディアンの社会は民主主義で誰もが平等です。 そのため、族長というのも現代の日本のようにただの職業であって、身分が高いからというわけではないのです。 タイガーリリーをフック船長から救ったピーターパンが酋長として選ばれた時の儀式では、タイガーリリーもピーターと一緒に踊ったりと儀式に参加しています。ところが、ブラックフット族の儀式に原則女性は参加することはできないのです。
『モアナと伝説の海』で描かれたマウイ
2016年に公開の『モアナと伝説の海』では、南国の島モトゥヌイを舞台に、海に愛された少女モアナと半神半人のマウイが大海原を大冒険する物語です。 白い砂浜に美しい海と島にある火山などの形状からハワイ島をイメージさせられますが、モトゥヌイは実際には存在しない島という設定です。登場人物はハワイ・サモア・タヒチを含むポリネシア人をモチーフとしています。 コミカルなキャラクターとして描かれているマウイは腕の立つ航海士なのに、泳ぎが苦手。お調子者で、モアナにはちょっと傲慢な態度をとっていますが、赤ん坊の時に海に捨てられたことから自分自身を信じることのできない、しおらしいところもある憎めないキャラクターです。
実際のポリネシアンとの相違
本作の主人公の1人、マウイは実際のポリネシア神話に登場する伝説の人物で、ポリネシア人にとっては偉大な英雄として扱われています。 そもそも昔のポリネシア人は太っていること自体が珍しかったにもかかわらず、ディズニー版マウイは、ポリネシアの人々が想像してきた伝説上のマウイと違って太り過ぎです。 西洋人が考える典型的なポリネシア人のイメージが強すぎると、ポリネシアのバックグラウンドを持つ人々から非難の声が挙がっています。 そして、ディズニー版ではマウイは人間の両親に海に捨てられ「神の釣り針」を与えられた後、神になっていますが、もともとの神話では月の女神、ヒナと人間との間に生まれた子どもという本当の意味で半神半人なんです。
まとめ
ディズニー映画に登場する異文化と実際の文化の微妙な違いに気付いていただけたでしょうか? インディアンもポリネシアも名前は聞いたことがあるけど、詳しい文化はあまり知らないという方も多いので映画を観たことがあっても、その描かれ方に違和感を感じた方は少ないと思います。 しかし『モアナと伝説の海』においては5年ほど現地調査をしてもポリネシアコミュニティの人々から非難の声が出てしまっています。 確かに自分達の文化が外国の映画に出てくるのならその国の勝手なステレオタイプで描かれるのは気になってしまいますね。私たちが出来ることは、映画の中での文化はあくまでフィクションとして考え、鵜呑みにせず、作品として楽しむことです。 そして、その映画をきっかけに、詳しい文化や、実際の歴史などを調べることができたら一番いいのかもしれません。