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クリストファー・ノーラン監督作『ダンケルク』の海外評価が高い理由

2017年8月14日更新

人気映画監督クリストファー・ノーラン初の戦争映画『ダンケルク』。史上最大の救出作戦を題材にした本作は、海外では一足先に公開され高評価を得ています。そこで、実際に海外でどんな評価・批評をされているのかご紹介したいと思います。ネタバレを含む可能性がありますので、ご注意ください。

クリストファー・ノーラン監督初の戦争映画『ダンケルク』の海外評価・感想をご紹介!

クリストファー・ノーラン監督の最新作にして初の戦争映画、『ダンケルク』。 本作は第二次世界大戦中、ドイツ軍に囲まれたフランスのダンケルク港から、イギリスとフランスの連合軍の兵士、合わせて約40万人を救出したダンケルクの戦い(通称:ダイナモ作戦)を題材にしています。 第二次世界大戦の中でも重要な戦いを壮大なスケールで描いたこの作品は、海外では2017年7月に公開され、すでに高い評価を受けています。 キャストにはトム・ハーディーやキリアン・マーフィーなど、ノーラン作品の常連俳優が集結したほか、映画監督としても活躍するケネス・ブラナーやナイトの称号を持つマーク・ライランスも出演。 また、映画初出演となる若手俳優フィン・ホワイトヘッドが主演を務め、イギリスの人気ボーイズバンド、ワン・ダイレクションのハリー・スタイルズもこの作品で俳優デビューしました。

現代の巨匠、クリストファー・ノーランはどんな映画監督?

イギリス出身のクリストファー・ノーランは、7歳の頃から父親の8mmフィルムカメラでショートムービーを撮りはじめたそうです。 1998年に『フォロウィング』で長編監督デビューを果たし、2作目の『メメント』(2000)でインディペンデント・スピリット賞作品賞および監督賞を受賞。ゴールデングローブ賞やアカデミー賞にもノミネートし、一躍注目されるようになりました。 2005年には『バットマン』シリーズの監督に抜擢され、『バットマン ビギンズ』(2005)、『ダークナイト』(2008)、『ダークナイト ライジング』(2012)の3部作を完成させます。 このシリーズはいずれも評判がよく、ノーランの名をさらに世に広く知らしめました。

その後も『インセプション』(2010)や『インターステラー』(2014)など、多くの作品で高い評価を受け、現代の巨匠と呼ばれるようになります。 また、ノーランは極力CGを使わないことでも知られ、『インセプション』では無重力のような映像を撮影するために縦に回転するセットを組むなど、強いこだわりをもっています。 そんなノーランが撮る戦争映画はどんなものになるのか、制作発表段階から期待が高まっていました。 それでは、一足先に公開された海外での評価・感想を見ていきましょう。

今までの戦争映画とは一線を画す映像・視点で高評価を獲得!

大きなスクリーンで観るべき大迫力の映像!

『ダンケルク』は、IMAX70mmフィルムで撮影されています。これは現在のデジタル処理より解像度が高い唯一のフィルムフォーマット。 このフィルムで撮影された映像は、普通のデジタル撮影よりも映像が美しく、広範囲を撮影することができるため、画面も非常に大きくなります。 海外のレビューで多く見られるのは、とにかくその場にいるかのような臨場感、圧倒的な映像への没入感が体験できるということ。 そして、そう語るレビュアーの多くが「絶対にIMAXシアターで観るべき!」とおすすめしています。

陸、海、空、それぞれの物語が同時進行!

ダンケルクの海岸でドイツ軍に取り囲まれた連合軍の兵士たち。陸では砲撃が襲いかかり、空からは戦闘機の爆撃が、海では潜水艦が救助に来た船舶を狙っています。 追いつめられた兵士たちが救助を待ちつつ陸で戦闘し、空軍は敵の戦闘機を撃墜、海では救出のために軍の輸送艦、小型艦、駆逐艦のほかに民間船もが海岸に向かう様子がスピーディーに展開されます。 陸にいる兵士たちを一刻も早く救出しようと、陸海空3つの攻防が代わる代わる描かれ、臨場感や緊張感を高めていくとの感想が多くありました。 手に汗握る、戦争映画ならではの緊迫した展開に満足した観客が多いようです。

“戦争”をきっちりと描いている

戦争映画で戦争を描くのは当然と思われるでしょう。しかし『ダンケルク』は、「ダンケルクの戦い以外のことはなにも描かない」という、これまでの戦争映画とは一線を画す作品になっています。 キャラクターの多くはそのバックグラウンドはおろか、劇中で名前を呼ばれることすらほとんどありません。キリアン・マーフィーにいたってはまともな役名もなく、だた”震える兵士”とクレジットされています。 同様にドイツ軍の兵士は一切顔が映されず、得体の知れない雰囲気を醸し出します。 ひとりひとりの登場人物ではなく、ダンケルクの戦いという出来事全体を描くことに注力した結果、そのようになったのでしょう。 しかし、だからこそこの戦いの厳しさ、戦争の過酷さ・残酷さを浮き彫りにすることに成功している、という賛辞が寄せられています。

長所がそのまま短所に!?批判的な意見もチラホラ

サウンドトラックに問題アリ!?

批判的な感想・評価に散見されるのは、音響についての意見です。 それは「音が大きすぎる」というもので、どの劇場でも同じように感じた観客が多くいる様子。 映画への没入感を重視するノーランは映像へのこだわりも強くありますが、それは音響についても同じです。 『ダンケルク』では、実際に戦場にいるような感覚を体験してもらうため、あえて爆撃音などを大きくしているのだとか。しかし、それが裏目に出てしまったのでしょう。 キャストのひとりであるケネス・ブラナーが実際にダンケルクから帰還した元兵士に感想をたずねたところ、やはり爆撃の音は実際よりも大きかったと言われてしまったとか。 また、一刻を争う事態を演出するために入れられている時計の針が動くような効果音も、耳障りで集中力を奪うと感じた観客も多いようです。

3つの物語の同時進行が混乱を招く!?

先ほども触れたとおり、『ダンケルク』では陸海空3つの物語が同時に展開されます。 つまり、1つの物語が映し出されている時間にも別の場所では別のことが起こっており、同じ時間のひとつの出来事を、もう一度別の視点から見るという重複がおこる場合があるのです。 そのため、ひとつひとつの物語がどのように進んでいるのか追うことが難しくなるという声も。 多方面から展開された作戦であることは理解できるものの、もう少し整理して編集できたのではないかとも言われています。

キャラクターが作り込まれていない、ストーリーがないとの意見も

本作のキャラクターたちには個性がなく、誰が誰でもすぐに代わりを見つけられる状況だという批判もあります。 フィン・ホワイトヘッド演じる主人公トミーをはじめとするキャラクターたちは、バックグラウンドが不明でほとんど会話も交わさないため、ひとりの人間として見ることが難しいと感じる観客も多い様子。 同時に、それは兵士ひとりひとりの命を軽んじる態度だと感じた観客も多いようです。名も無い若い兵士たちが次々と死んでいっても、誰もなんの感傷も示さないことに不満の声も。 また、ストーリーは予告編で映されている以上のことはなく、単純すぎて面白みがないという意見もありました。 海岸に取り残された兵士たち、助けに向かう船舶は潜水艦に狙われ、船団を守るのはたった3機の戦闘機。 それぞれに厳しい戦いを強いられながらも、「仲間を助ける」というひとつの目的に向かっていく、というわかりやすいもの。 映像は確かに圧倒的ではあるものの、それ以外に見るところはないという厳しい意見もありました。

人気俳優のムダ使い?トム・ハーディの顔が見えない

本作でトム・ハーディは戦闘機のパイロット、ファリヤーを演じています。 彼のシーンはほとんどすべてがコクピット内であるため、ずっと酸素マスクを着用しており、そのため顔が見えない、演技がよく分からないという批判も。 ファリヤーの戦闘機が燃料漏れのために不時着した際、やっとハーディの顔がはっきりと映ります。 『ダークナイト ライジング』しかり『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)しかり、ハーディは顔がはっきり見えない役が多いですね。

実際に“ダンケルクの戦い”を生き残った元兵士たちの感想は?

2017年7月13日にロンドンで行われた『ダンケルク』のワールドプレミアには、実際にダンケルクの戦いを生き残った元兵士たちが招かれました。 彼らの多くは映画が史実に沿っており、自分たちの経験を的確に描いていると好意的な感想を寄せています。 同じくダンケルクの戦いを生き残り、現在はカルガリーに暮らしているケン・スターディーは、カナダでのプレミアに招かれ、映画を見た感想を次のように語りました。 「またあの光景を見るとは思っていなかった。まるであの場所に戻ったようだった」。 さらに、この映画はセリフが少ないながらも映像が雄弁に語っており、それがとてもリアルだったと付け加えています。

スターディーにとっては当時のつらい記憶が鮮明に蘇る経験となったようですが、若い世代にはぜひこの映画を観てほしいと話しました。 そして、この作品をエンターテイメントとして楽しむだけでなく、戦争を考えるきっかけにしてほしいと語っています。

『ダンケルク』の日本公開は2017年9月9日!

ダンケルクの戦いは、1940年5月24日から6月4日にフランスの海岸沿いで展開された史上最大の救出作戦です。 連合軍を撤退させたこの作戦は一見負けた戦いのように思えますが、この救出劇が成功したことで軍の人的資源は守られ、その後戦況を逆転させることになります。 民間船を含む900隻の船が40万人の兵士を助けるため、危険を顧みず自らの意思で現地に向かったこの歴史的出来事は、残念ながら日本ではあまり知られていません。 実際に現地で戦った元兵士たちも太鼓判を押すほどの的確な描写や、迫力の映像で歴史を学んでみるのもいいのではないでしょうか。 全体のために自らを犠牲にすることと、個人の命を尊重すること、自分の考えがどちらに近いかで感じ方は大きく変わってきそうです。 ひとつだけ言えることは、やはりIMAXシアターで鑑賞すべきだということでしょう。