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カンヌに愛された鬼才・河瀬直美監督のおすすめ映画!
河瀬直美は1969年5月30日に奈良県で生まれ、大阪写真専門学校(現:ビジュアルアーツ専門学校)映画科を卒業後、同校の講師業と並行して映画制作を行いました。 特殊な境遇から生まれた独自の作風が特徴で、初商業作『萌の朱雀』は1997年のカンヌ国際映画祭にて、カメラ・ドール(新人監督賞)を受賞。同映画祭との縁は深く、2009年黄金の馬車賞をアジア人女性として初めて受賞しています。 監督として常に新しいことに挑戦するだけでなく、女優としての出演やプロデューサーの立ち位置から多くの作品に携わってきました。 今回の記事では、カンヌに愛された河瀬直美監督のおすすめ映画を紹介します。
1.鮮烈な商業監督デビューを飾った(1997年)
商業映画監督デビュー作にして、初の35mm作品『萌の朱雀』は、河瀬直美の出身県・奈良県の架空の村「恋尾」を舞台とした作品です。 田原一家の日常を通して、過疎化の厳しい現実の中で生きる人々の想い、喪失と再生が自然豊かな風景と共に描かれました。ロケ地は奈良県西吉野村(現:五條市)で、地元の中学生だった尾野真千子に河瀬が声をかけ主演に抜擢した、尾野のデビュー作でもあります。 第50回カンヌ国際映画祭では、何と史上最年少でカメラ・ドールを受賞!日本映画界初の快挙であり、第12回高崎映画祭の若手監督グランプリなども獲得しました。
2.河瀬直美が主人公の母親役で女優デビュー!(2003年)
『萌の朱雀』、2000年の『火垂』と高い評価を得た河瀬直美により、再び故郷の奈良県を舞台に描かれたヒューマン・ドラマです。 奈良の神秘的な街並みを背景に、代々墨職人として暮らす麻生家の双子の兄が失踪し、喪失感に苛まれる家族と悲しみを背負った弟、俊の成長が綴られます。出演は河瀬自らスカウトした福永幸平、兵頭祐香の新人ふたりに加え、樋口可南子や生瀬勝久が脇を固めました。 本作は河瀬の女優デビュー作で、俊の母親の礼子役で出演しています。カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、受賞は逃すも高い評価を得ました。
3.カンヌ国際映画祭の審査員特別大賞に輝いた『殯の森』(2007年)
世界の注目が集まる河瀬直美が、互いに家族を喪った認知症の男性と女性介護士の交流を通して、人間の「生と死」が描かれた作品です。日本、フランスの合作であり、第60回カンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールに次ぐ、審査員特別大賞(グランプリ)を受賞しました。 出演は古書店店主、文筆家などのうだしげきが、妻を亡くした「しげき」を好演。彼と交流する女性介護士の真千子を、『萌の朱雀』で主演をつとめた尾野真千子が演じました。 ちなみに殯(もがり)とは、本葬まで遺体を棺に納め、別れを惜しむ葬儀儀礼を指します。
4.河瀬直美が初めて故郷以外の地を舞台にした(2008年)
これまで、一貫して故郷の奈良県を舞台にしてきた河瀬直美監督。物語の舞台を初めて異国・タイへと移し、本人自ら「トライだった」と語る意欲作です。 主演の長谷川京子演じる日本人女性が、タイで古式マッサージや現地の人々と出会いに癒され、新しい自分を見つけていく様が描かれます。日本、タイ、フランスと多国籍の俳優とスタッフが集まり、詳細は伝えられないまま即興的手法で撮影されたそうです。 河瀨は前作『殯の森』での経験から海外でも映画制作は可能だと思い付いたそうで、「新しいことに挑戦するのがクリエーター」だと語りました。
5.死生観を色濃く投影した河瀨直美最高傑作(2014年)
河瀨直美の祖先の出身地、鹿児島県・奄美大島を舞台にした『2つ目の窓』。神と人が共存する地に暮らす少年少女が生と死に直面し、大人へと成長する姿が描かれました。 育ての親(母方の祖母の姉)の認知症介護、出産や子育てで芽生えた「生命の連鎖」という死生観が、過去作同様に投影されています。主演はオーディションで選ばれた村上虹郎、吉永淳(現:阿部純子)、脇には杉本哲太、松田美由紀、渡辺真起子らが名を連ねました。 河瀬にとってターニングポイントになった作品であり、第67回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品されました。
6.国内外で異例のロングランヒットを記録した(2015年)
河瀬直美監督初の"原作もの"であり、原作者のドリアン助川から河瀬の元に小説『あん』と手紙が送られてきたことから映画化が実現しました。 元ハンセン病患者の老女・徳江と、彼女が勤めるどら焼き屋の雇われ店長・千太郎の交流を通して、人はどう生きるべきかを問いかけます。主演の樹木希林を始め、永瀬正敏、樹木の孫の内田伽羅、市原悦子ら豪華キャストの共演にも注目です。 第68回カンヌ国際映画祭では、ある視点部門のオープニング作品に選ばれています。そのほか、バレッタ映画祭やTAMA映画祭など国内外の映画祭を席巻しました。
7.映画の音声ガイドにフォーカスしたラブストーリー(2017年)
弱視の天才カメラマンと、視覚障がい者向けの映画の音声ガイドを制作する女性が出会い、葛藤しながら変わっていく様を描くラブストーリーです。 河瀬直美は『あん』の永瀬正敏と再タッグを組み、ヒロインに水崎綾女を迎えました。実は前作制作時に「映画の音声ガイド」を知り、映画化を決断したのだとか。ガイド制作に携わる人の姿を通し、自分が映画において何を良しとしているか伝えられると考えたそうです。 第70回カンヌ国際映画祭では日本勢で唯一コンペティション部門に出品され、公開上映後は約10分にわたってスタンディングオベーションが続きました。
8.三代目JSBの楽曲がモチーフのセンチメンタル・ラブストーリー『パラレルワールド』(2018年1月26日公開)
HIRO率いるLDH JAPAN、国際短編映画祭ショートショート フィルムフェスティバル&アジア、作詞家・小竹正人のコラボ企画「CINEMA FIGHTERS」。EXILE TRIBEの楽曲が、若き監督たちの手で6作のショートフィルムとして映像化されます。 その第1弾となるのが、河瀬直美監督による『パラレルワールド』です。モチーフは三代目 J Soul Brothersの「Unfair World」で、山田孝之とE-girlsの石井杏奈が出演します。 物語は山田演じる徹が15年ぶりに母校を訪れ、思い人だった真矢からのメッセ―ジを発見するという、切ないラブストーリーになるようです。2018年開催のフィルムフェスティバル&アジア2017で、本作を含む約250本の作品が公開されます。 他にも監督と脚本を務めた『Vision』と、エグゼクティブプロデューサーを務めた『東の狼』の公開が控えており、今後も河瀬直美から目が離せません!