西川美和の監督作品一覧!『ゆれる』から最新作『わたしの知らない子どもたち』まで
『ゆれる』でカンヌ国際映画祭の監督週間に選ばれ、『ディア・ドクター』でキネマ旬報ベスト・テン日本映画1位に輝いた映画監督・西川美和。人が心の奥に隠している嘘や揺らぎを、ユーモアと鋭さを交えてすくい取る作風で、デビュー以来ほぼすべての長編をオリジナル脚本で撮り続けています。 2026年10月16日には、戦後の闇市を生きる子どもたちを描いた最新作『わたしの知らない子どもたち』が公開されました。トロント国際映画祭では、日本映画として初めてプラットフォーム部門のオープニング作品に選ばれています。 この記事では、最新作『わたしの知らない子どもたち』までの監督作品一覧と、長編7本から選んだおすすめ映画7作品を、新しい順に紹介します。
西川美和はどんな監督?プロフィールと経歴

| 名前 | 西川美和(にしかわ みわ) |
|---|---|
| 生年月日 | 1974年7月8日 |
| 出身地 | 広島県 |
| 学歴 | 早稲田大学第一文学部卒業 |
| 職業 | 映画監督、脚本家、小説家 |
| 監督デビュー | 『蛇イチゴ』(2003年) |
| 代表作 | 『ゆれる』『ディア・ドクター』『永い言い訳』『すばらしき世界』 |
| 最新作 | 『わたしの知らない子どもたち』(2026年10月16日公開) |
| 主な著書 | 『きのうの神さま』(第141回直木賞候補)、『永い言い訳』(第153回直木賞候補) |
西川美和は広島県出身。早稲田大学第一文学部に在学中、テレビマンユニオンの面接を受けた際に是枝裕和と出会い、映画『ワンダフルライフ』(1999年)にスタッフとして参加しました。その後はフリーの助監督として、諏訪敦彦監督の『M/OTHER』などさまざまな現場を経験しています。 2003年公開の『蛇イチゴ』で、オリジナル脚本による監督デビューを果たしました。続く『ゆれる』(2006年)と『ディア・ドクター』(2009年)で国内の映画賞を数多く受賞し、日本を代表する映画監督のひとりとして知られるようになります。 監督業と並行して、小説やエッセイも執筆しています。短編集『きのうの神さま』と長編『永い言い訳』は、どちらも直木賞の候補に選ばれました。
西川美和の監督作品一覧
| 公開年 | 作品名 | 主な出演者・備考 |
|---|---|---|
| 2003年 | 蛇イチゴ | 宮迫博之、つみきみほ監督デビュー作 |
| 2006年 | ゆれる | オダギリジョー、香川照之カンヌ国際映画祭 監督週間出品 |
| 2007年 | ユメ十夜(第九夜) | 緒川たまき、ピエール瀧オムニバス映画の一編 |
| 2009年 | ディア・ドクター | 笑福亭鶴瓶、瑛太キネマ旬報ベスト・テン日本映画1位 |
| 2012年 | 夢売るふたり | 松たか子、阿部サダヲ |
| 2016年 | 永い言い訳 | 本木雅弘、深津絵里自身の小説を映画化 |
| 2021年 | すばらしき世界 | 役所広司、仲野太賀、長澤まさみシカゴ国際映画祭 観客賞 |
| 2026年 | わたしの知らない子どもたち最新作 | 小八重葵美、二階堂ふみ、岡田准一2026年10月16日公開 |
長編はこれまでに7本。3〜5年に1本のペースで、脚本の執筆から時間をかけて作品を作り上げてきました。ここからは、長編7本の見どころを新しい順に紹介します。
西川美和監督フィルモグラフィー
『わたしの知らない子どもたち』(2026年)戦後を「少年」として生きた少女の物語

2026年10月16日に公開された最新作です。1945年の終戦後、家族を失った12歳の少女・琴子は、生き延びるために髪を切り、名前を変えて少年として生きる道を選びます。一方、かつて琴子の担任だった曽根文美子は、軍国主義教育に加担した過去を抱えながら、琴子の行方を捜し始めます。 約500人のオーディションから選ばれた小八重葵美が琴子を、二階堂ふみが曽根を演じ、岡田准一、竹野内豊らが共演しています。戦争孤児という、これまで語られることの少なかった子どもたちに光を当てた作品で、西川美和が初めて戦後の日本を描いた意欲作です。
『すばらしき世界』(2021年)役所広司が演じる元殺人犯の社会復帰

人生の大半を刑務所で過ごした三上正夫(役所広司)が、刑期を終えて東京で新しい生活を始めようとする物語です。テレビ番組の取材のために近づいた若手ディレクター・津乃田(仲野太賀)の目を通して、社会の厳しさと人の温かさが描かれていきます。 佐木隆三の小説『身分帳』を原案に、舞台を現代に移して脚色した作品で、西川美和が初めて他者の原作をもとに撮った長編です。シカゴ国際映画祭では観客賞と最優秀演技賞(役所広司)を受賞しました。まっすぐすぎて社会になじめない三上の姿に、笑いながらも胸を締めつけられる1本です。
『永い言い訳』(2016年)妻を亡くしても泣けない男の再生
人気作家の衣笠幸夫(本木雅弘)は、旅先で起きたバス事故で妻の夏子(深津絵里)を亡くします。しかし悲しむことができないまま日々を過ごすなか、同じ事故で母親を失った一家と出会い、幼い兄妹の世話を引き受けることになります。 西川美和が書いた同名小説を、自ら脚本・監督を務めて映画化しました。原作は第28回山本周五郎賞と第153回直木賞の候補になっています。竹原ピストル、池松壮亮、黒木華らが共演し、本木雅弘が自意識過剰でどこか情けない作家を好演しました。子どもたちとの時間を通じて、幸夫が少しずつ変わっていく過程に引き込まれます。
『夢売るふたり』(2012年)松たか子と阿部サダヲが結婚詐欺に手を染める夫婦に
東京の片隅で小料理屋を営む里子(松たか子)と貫也(阿部サダヲ)の夫婦は、火事で店を失ってしまいます。店を再建する資金を集めるため、妻の里子が思いついたのは、夫に女性たちを口説かせる結婚詐欺でした。 松たか子と阿部サダヲが夫婦を演じた長編で、夫婦の共犯関係と、だまされる女性たちそれぞれの孤独が描かれます。松たか子が見せる、静かな狂気をはらんだ表情は必見です。
『ディア・ドクター』(2009年)笑福亭鶴瓶が演じる村の医師が失踪
山あいの小さな村で、住民から慕われていた唯一の医師・伊野治(笑福亭鶴瓶)が、ある日突然姿を消します。村に赴任していた研修医の相馬(瑛太)や刑事たちが行方を追ううちに、誰も伊野の素性を知らなかったことが明らかになっていきます。 笑福亭鶴瓶の映画初主演作で、キネマ旬報ベスト・テンの日本映画1位に選ばれました。第33回日本アカデミー賞では西川美和が最優秀脚本賞を、余貴美子が最優秀助演女優賞を受賞しています。医療過疎という社会的なテーマを、ユーモアのある人間ドラマとして見せる手腕が光ります。
『ゆれる』(2006年)オダギリジョーと香川照之が兄弟役で共演
東京で写真家として成功した弟の猛(オダギリジョー)は、母の法事のために帰郷し、実家のガソリンスタンドを継いだ兄の稔(香川照之)と再会します。幼なじみの智恵子と3人で出かけた渓谷で、吊り橋から智恵子が転落したことをきっかけに、兄弟の関係が大きく揺らいでいきます。 西川美和が監督・脚本・原案を手がけたオリジナル作品で、第59回カンヌ国際映画祭の監督週間に出品されました。ブルーリボン賞の監督賞をはじめ、国内の映画賞を数多く受賞しています。兄弟の言葉や表情のすれ違いから目が離せない、西川美和の名を広く知らしめた代表作です。
『蛇イチゴ』(2003年)宮迫博之主演、平凡な家族が崩れていく監督デビュー作
一見ごく普通の家族が、長く家を離れていた長男の帰還をきっかけに、隠していた綻びをあらわにしていくホームドラマです。調子のいい兄を宮迫博之が演じ、つみきみほ、平泉成、大谷直子らが家族を演じています。 是枝裕和のプロデュースで製作された、西川美和のオリジナル脚本による監督デビュー作です。毎日映画コンクールの脚本賞を受賞したほか、同年の国内映画賞で新人賞を数多く受賞しました。重いテーマをユーモアで包む、のちの作品につながる作風がすでに表れています。
オムニバス・テレビドラマで手がけた作品
長編のほかに、オムニバス映画やテレビドラマでも演出を手がけています。 2007年公開の『ユメ十夜』は、夏目漱石の短編集『夢十夜』を10人の監督が映像化したオムニバス映画です。西川美和は第九夜の監督・脚本を担当し、戦地へ行った夫の帰りを待ちながらお百度参りを続ける母親の姿を描きました。 また、2005年のオムニバス映画『female』では一編「女神のかかと」を、2010年にNHK BS2で放送された『太宰治短編小説集』では「駈込み訴え」の脚本・演出を担当しています。
小説家・エッセイストとしての西川美和
西川美和は、映画と同じくらい言葉の作り手としても評価されています。『ゆれる』を自らノベライズした小説は第20回三島由紀夫賞の候補に、短編集『きのうの神さま』は第141回直木賞の候補に選ばれました。 長編『永い言い訳』も第153回直木賞の候補となり、映画化に先がけて小説として発表されています。エッセイでは、映画づくりの日々をつづった『映画にまつわるXについて』や、地元・広島への思いもつづった『遠きにありて』などがあります。映画を観たあとに小説やエッセイを読むと、作品の奥行きがさらに広がります。
西川美和についてよくある質問
西川美和の最新作は何ですか?
2026年10月16日に公開された『わたしの知らない子どもたち』です。戦後の闇市を舞台に、少年として生きる12歳の少女と、彼女を捜す元担任教師を描いた作品で、小八重葵美、二階堂ふみ、岡田准一らが出演しています。詳しくは作品解説記事で紹介しています。
西川美和の長編監督作品は何本ありますか?
2026年10月時点で、デビュー作『蛇イチゴ』から最新作『わたしの知らない子どもたち』までの7本です。ほかに、オムニバス映画『ユメ十夜』の第九夜なども手がけています。
西川美和と是枝裕和はどんな関係ですか?
西川美和は早稲田大学在学中に是枝裕和と出会い、映画『ワンダフルライフ』にスタッフとして参加したことが映画界に入るきっかけになりました。監督デビュー作『蛇イチゴ』も、是枝裕和のプロデュースで製作されています。
西川美和の映画に原作はありますか?
ほとんどが西川美和自身のオリジナル脚本です。『永い言い訳』は自身の小説を映画化した作品で、長編で他者の原作をもとにしたのは、佐木隆三の小説『身分帳』を原案とした『すばらしき世界』が初めてです。
西川美和は小説も書いていますか?
小説家としても活動しています。短編集『きのうの神さま』は第141回直木賞、長編『永い言い訳』は第153回直木賞の候補に選ばれました。エッセイ集も多数出版しています。
西川美和の監督作品は、人の心の揺らぎを見つめ続けてきた
デビュー作『蛇イチゴ』から最新作『わたしの知らない子どもたち』まで、西川美和は家族や兄弟、夫婦、医師と村人といった関係のなかで揺れ動く人の心を描き続けてきました。どの作品も、観終わったあとに誰かと語り合いたくなる余韻を残します。 まだ観ていない作品があれば、気になったものから手に取ってみてください。


