『サカサマのパテマ』、海外でも評価の高いSFアニメ映画を解説!
『サカサマのパテマ』は2013年に公開されたアニメ映画で、前作『イヴの時間』でブレイクした吉浦康裕監督の最新作として注目を集めた作品。 重力がサカサマなヒロインという意外性のある設定と、王道をいくボーイミーツガールな物語が幅広い観客に受け、第17回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞のほか、海外でも高い評価を得ています。 今回はそんな『サカサマのパテマ』の魅力と、サカサマ世界の分かりづらい部分をネタバレありで解説します。
ある日空から女の子が!映画『サカサマのパテマ』のあらすじ
重力をエネルギーに変える実験に失敗した人類が、普通の重力を持つ人々と重力が反転したサカサマ人に分かたれた世界。 地下深くの暗く狭い町で暮らす少女パテマは、つつましい生活を送りながらも地上の世界にあこがれを抱いていました。一方地上では、イザムラを党首とする君主国・アイガが統制的な社会を築き、サカサマ人たちは罪人として忌み嫌われていました。 アイガに住む少年エイジはそんな社会を不信感を抱きながらも、鬱屈とした日々を過ごしています。そんなある日、エイジのもとへ地下世界からパテマと名乗る少女が降ってきました。パテマとエイジ、サカサマな二人の出会いが世界の謎を紐解いていく……。
サカサマな世界を生きるキャラクターたち
パテマ (CV:藤井ゆきよ)
本作の主人公で、地下の世界に住む女の子。裏表のない快活な性格で、みんなから愛されています。まだ見ぬ世界へあこがれを抱いており、冒険家ラゴスを追いかける道中でアイガへと落ちてしまいました。 パテマ役を演じたのは『甘城ブリリアントパーク』でラディファ役を演じた藤井ゆきよ。オーディションで初主人公に抜擢された彼女の等身大のパテマは可愛らしく、愛すべきキャラクターとなっています。
エイジ (CV:岡本信彦)
アイガの学園に通う2年生。父であるエイイチは飛行船で空へと旅立つ途中に、事故で失くなってしまいました。アイガの管理社会には違和感を持っており、教師の指示にも従わないため不良生徒とみなされています。 エイジ役を演じるのは二度にわたって声優アワードを受賞している岡本信彦。『バクマン』の新妻エイジ役、「とある」シリーズのアクセラレータなど数々の名キャラクターを生み出している屈指の実力派声優です。
イザムラ (CV:土師孝也)
エイジたちが暮らすアイガ国の独裁君主。サカサマ人を罪人に仕立て上げ、圧倒的な権力を使って管理社会を築き上げています。 イザムラ役は一度聴いたら忘れられない声の持ち主・土師孝也が演じました。映画「ハリー・ポッター」シリーズのスネイプ役でお馴染みです。本作はなんといってもイザムラの怪演が見事でした。
サカサマ世界の細かな描写の積み重ねでいつの間にか引き込まれる!
いよいよ明後日【4/25】は、吉浦康裕監督『サカサマのパテマ』Blu-Ray&DVDの発売日!!オーディオコメンタリーは、藤井ゆきよ、岡本信彦、大畑伸太郎による楽しいトーク&ここでしか聴けない幻の…!?必聴です。 #patema pic.twitter.com/XzkjsmqyEA
— サカサマのパテマ (@Patema_Sakasama) April 23, 2014
『サカサマのパテマ』最大の魅力はやはり、他では見たことのないサカサマ世界です。思い切った設定に最初は驚かされますが、空へと昇っていく埃、空へ落ちていく恐怖を感じさせるカメラワークなど緻密な描写の積み重ねでいつの間にかサカサマ世界へと引き込まれてしまいます。 監督を務めた吉浦康裕が前作『イヴの時間』で見せた大胆なカメラワークは今作でも健在で、サカサマを存分に生かしたカットで観客を楽しませてくれます。
ストーリーは大人から子供まで楽しめる王道のボーイミーツガール
一風変わった世界観に対して、物語は王道のボーイミーツガールが展開していきます。 典型的な悪役ながら抜群の存在感を放つイザムラと、彼に囚われてしまう姫様パテマという関係性はジブリやディズニーを感じさせるような王道な構図で、大人から子供まで楽しめます。イザムラは空に落ちていくという悪役として真っ当な最後を遂げるのも、勧善懲悪の物語として非常にスカッとします。 さらに、ハラハラするようなアクション、二転三転する世界の謎と全体の完成度は抜群に高いのではないでしょうか。
誤解されがちな『サカサマのパテマ』の世界の構造【ネタバレ】
物語の終盤では、本作の最大の謎であるサカサマ世界のギミックを使ったどんでん返しが待っていました。イザムラのもとでサカサマ人を罪人として忌み嫌っていたアイガ人ですが、実はエイジたちとアイガ人がサカサマ人だったのです。 パテマたちは実験に失敗した科学者たちの末裔で、放っておくと空に落ちていってしまうエイジたちを守っていたという結末でした。分かりづらいですが、地球の中央から考えると、中盤で辿り着いた天空の層が一番地下であり、続いてアイガ国がある層、パテマたちが暮らす層、本当の地表という構造になっています。 こうしたミスリードもあって、最後まで緊張感を維持したまま物語に没入することができるのも、高評価の理由のひとつではないでしょうか。 今回はSFアニメ映画『サカサマのパテマ』を紹介しました。突拍子もない世界で展開する王道のボーイミーツガール、最後には驚きのある展開とエンターテイメント性の高い作品です。まだ観ていない方もぜひチェックしてみてくださいね!