アニメ映画『パーフェクトブルー』がもっと楽しめる6のこと

2018年3月20日更新

『パプリカ』、『千年女優』でお馴染みのアニメ監督今敏の初監督作品『パーフェクトブルー』。この記事では本作がより楽しめるトリビアを紹介し、さらにネタバレを交えながら本編を解説します。

『パーフェクトブルー』、今敏の初監督作のあらすじ・魅力を解説!

『パプリカ』、『千年女優』、『東京ゴッドファーザーズ』など珠玉の名作を残し46才の若さでこの世を去ったアニメーション作家、今敏(こんさとし)。 今回紹介する『パーフェクトブルー』は今敏の初監督作品にして、日本アニメ史に残るサイコスリラーの傑作です。本記事では本作がより面白くなるトリビアや、内容について紹介します。

見れば見るほど怖い映画、『パーフェクトブルー』のあらすじ

アイドルから女優への転向のため、所属していたアイドルグループ「チャム」を辞めることを発表した霧越未麻(きりごえみま)。当初は出番の少なかった未麻ですが、マネージャー・ルミの反対を押し切って受けたレイプシーンやヌードグラビアなどの汚れ仕事のおかげで彼女は着実に売れつつありました。 しかし、同時に未麻の周囲では不穏な事件が立て続けに起こり始めます。 未麻になりすました何者かが書いているブログ、行方をくらませたルミ、行く先々に現れる謎のストーカー、カメラマンや脚本家の変死、アイドルだった頃の自分の幻覚……。精神的に追い詰められた未麻は徐々に現実と幻覚の区別がつかなくなっていきます。

『パーフェクトブルー』でも描かれている、今敏が多用するテーマとは?

今敏の作品に共通して見られるテーマは「現実と虚構の交錯」。 『パプリカ』では夢が現実を侵食し、『妄想代理人』では妄想が現実に影響を与え、『千年女優』では映画というフィクションが現実世界と交じり合う……。今監督はひとつのテーマを繰り返し語り続けてきました。 そして初監督である『パーフェクトブルー』の中核を為しているのもやはり、「現実と虚構の交錯」というテーマ。ハードな仕事の連続で精神的に追い詰められた未麻は悪夢や幻覚を度々見るようになり、やがて彼女は現実と幻覚を区別できなくなっていきます。

『パーフェクトブルー』が他の映画に与えた影響

優れた映画監督は国内外問わずファンを持つものですが、今敏監督もまた海外で評価されているアニメ作家のひとり。 『ブラック・スワン』のダーレン・アロノフスキー監督もまた今監督の熱烈な支持者で、アロノフスキー監督は『レクイエム・フォー・ドリーム』の劇中で『パーフェクトブルー』の、憔悴した未麻が湯船の中でうずくまるシーンを殆んどそのまま再現しています。 また『ブラック・スワン』も、女優が精神を病んで幻覚を見るようになったりと、本作と共通点の多い映画だと言えるでしょう。

『パーフェクトブルー』に散りばめられた平沢進ネタ

日本のテクノミュージックの旗手である平沢進は『パプリカ』、『千年女優』、『妄想代理人』など今監督の作品の多くに楽曲を提供しています。プライベートでも今敏は平沢進の音楽の熱心なファンだったようで今監督の告別式では出棺の際、千年女優の主題歌「ロタティオン」が流されたのは有名なエピソード。 『パーフェクトブルー』の段階では平沢進は楽曲を提供していませんが、当時から今監督は彼の音楽に惚れこんでいたらしく、劇中で映りこむ印刷物などに平沢進の楽曲名が登場します。 わかりやすいのは「チャム」が載ったヒットチャートの書かれた雑誌が映し出されるカットですが、他にも平沢進ネタが転がっているので、鑑賞しながら探してみてはどうでしょうか。

【ネタバレ注意】未麻のマネージャー・ルミの正体とは

未麻のマネージャーでありこの映画の黒幕のような存在でもあるルミですが、映画を見通しても彼女についてその全貌を知ることはできません。 未麻になりすました何者かが更新していたブログ「未麻の部屋」の管理人はおそらくルミだと思われますが、だとすればルミは「未麻の部屋」の存在が未麻に判明した時点で既に多重人格の兆候があったと考えられます。 また気になるのがルミのキャラクターデザイン。彼女は左右の目が離れた典型的な魚顔で、魚顔という点において本作に登場するもう一人の狂った人物・MI-MANIAと共通しています。ルミが精神に異常をきたした人物であることはキャラクターデザインの時点で暗に演出されていたのかもしれません。 ルミがどこまで事件に関わっていたのか、カメラマンや脚本家を殺したのはルミなのか、考えれれば考えるほど謎は深まります。

【ネタバレ注意】『パーフェクトブルー』ラストシーンの意味

錯乱したルミから逃れ一命を取り留めた未麻。その数年後ルミがいる精神病院を訪れた未麻が、去り際に呟いた「私は本物だよ」という一言でこの映画は幕を閉じます。 ミスリードだらけの映画だっただけに最後のセリフも信用しきれず、まだ何か裏があるのではと邪推してしまいそうですが、ラストシーンに関しては監督が制作記「パーフェクトブルー戦記」で言及しています。 「パーフェクトブルー戦記 その16」によれば、未麻がルミを助けて二人とも生き残るラストは本来シナリオには無かったシーンで、報われる話にしたいという監督の意向で追加されたとのこと。であれば、「私は本物だよ」のセリフは、前向きな意味で捉えるのが妥当ではないでしょうか。

『パーフェクトブルー』は制作記とあわせて二度楽しめる

監督の制作ノートや絵コンテ集などを眺めながら、その監督の作品を再見する方は少なくないかと思いますが、今監督は『パーフェクトブルー』が企画として持ち込まれてから完成するまでの過程を詳細に記録したブログを公開しています。 「KON's TONE」と題されたブログの中の「パーフェクトブルー戦記」なる記事は、24回+番外編に渡って本作が完成するまでの正しく戦争のような日々が綴られていて、読み応え抜群。 一度映画を見た方も、ぜひ一度制作記と一緒に『パーフェクトブルー』を再見されてはいかがでしょうか。