2018年1月11日更新

史上最低の映画の製作過程を描いて高評価!?『ザ・ディザスター・アーティスト(原題)』とは?

©︎Brian To/WENN.com

史上最低の映画といわれた『The Room』の製作過程を描いた『ザ・ディザスター・アーティスト(原題)』に注目が集まっています。世紀の駄作と称された恋愛映画を作った男を主人公にしたコメディ作品がなぜ話題になっているのか、その謎を探ってみたいと思います。

ジェームズ・フランコ監督・主演作『ザ・ディザスター・アーティスト(原題)』が話題に!

2017年12月1日にアメリカで公開された『ザ・ディザスター・アーティスト(原題)』が、高い評価を受けて大きな話題を呼んでいるのをご存知ですか?『127時間』『ミルク』のジェームズ・フランコが監督・製作・主演を務めたコメディ作品で、『The Disaster Artist』というノンフィクション小説を原作としています。 『The Disaster Artist』は2003年にアメリカで公開された恋愛映画『The Room』が作られた経緯を記した作品で、著者のグレッグ・セステロは『The Room』に製作と出演で深く関わっていました。しかしこの作品、実は「史上最低の映画」と評され、「駄作界の『市民ケーン』」とまで言われた駄作中の駄作だったのです! ところが『The Room』は最悪の評価を受けながらも、摩訶不思議な人気を獲得して知る人ぞ知るカルト映画に成長!今回はなぜ『The Room』がカルト的人気を得たのか、そして『ザ・ディザスター・アーティスト(原題)』が高評価を受けた理由を探っていきたいと思います。

史上最低のカルト映画『The Room』(2003)とは!?

『The Room』はなぜ史上最低の映画と言われたのでしょう?それは、破綻したストーリーラインとキャラクター設定、出演者のベタな演技、伏線をまったく回収しないミステリーめいた本筋、意味不明なプラスチック・スプーンのサブリミナル的乱用、などなど数え上げたらキリがないほどの「突っ込みどころ満載」な内容だったからです。 あらすじは簡単に言えば、男女の三角関係を描いた恋愛もの。銀行員のジョニーが婚約したリサは何不自由ない暮らしになぜか満足できず、ジョニーの親友マークを誘惑して関係を持ってしまいます。彼らの周りの人々を巻き込みながら、ジョニーの苦悩を描いていくという悲恋話ですが、先述のような不可解さが終始ついて回ります。 当然、公開当初は興行的に大失敗!しかしどういうわけか、その突っ込みどころ満載な内容に惹かれ始めた観客たちが徐々に劇場に集まり、再上映されると登場人物のコスプレをしたりプラスチック・スプーンを鑑賞中に投げては映画を不出来さをツッコミ合うといった、まるで『ロッキー・ホラー・ショー』のようなカルト的ファンを獲得していったのです。 こんな不思議な作品を作った張本人は、これまた謎めいたトミー・ウィソーという人物。ウィソーは一人で『The Room』の脚本を書き上げ、製作・監督を兼ね、主演のジョニーを演じましたが、とんでもなく演技ベタな上セリフが覚えられない!『ザ・ディザスター・アーティスト(原題)』のティーザー映像にはその滑稽な様子が映し出されています。

『ザ・ディザスター・アーティスト(原題)』とは!?

では、『ザ・ディザスター・アーティスト(原題)』は一体どんな内容になっているのでしょう?セステロが『The Disaster Artist』で明らかにした『The Room』を作ることになった経緯と、その製作過程を忠実に描いたシニカルなコメディ映画に仕上がっているようです。まさにタイトル通り、「失敗作を上手に作った」作品といえるでしょう。 この物語は、俳優を目指していたセステロが演劇学校でトミー・ウィソーという不思議な雰囲気を持つ男と知り合い、次第に親交を深めていくところから始まります。しかし交友関係にも演技力にも差がつき始めたころからウィソーの嫉妬が気になり、セステロは『リプリー』を鑑賞するように勧めます。 ところがこの作品に感動したウィソーが『The Room』の脚本執筆に熱中、映画製作の知識もないまま『The Room』製作に乗り出してしまいます。製作総指揮として現場を仕切るウィソーに振り回されるスタッフやキャストたちは困惑しっぱなし! 『The Room』ファンであることを公言しているジェームズ・フランコがウィソー役を演じ、製作現場ではジョニー役を演じているという劇中劇の要素もあります。ジェームズの弟デイヴ・フランコがグレッグ・セステロ役で出演し、マーク役を演じていることも注目されました。ジェームズ・フランコはこのエキセントリックな演技が評価され、2018年ゴールデングローブ賞ミュージカル・コメディ部門で主演男優賞を受賞しています。

『The Room』の監督・主演、トミー・ウィソーとはどんな人物?

こうなると当然、作品同様謎めいたトミー・ウィソーとは一体どんな人物なのか気になってきますが、実はそれこそが『The Room』への興味を引き立てたといえます。実際、ハリウッドに掲げられた『The Room』宣伝の大看板は、誰も知らない男ウィソーのホラーのような顔面が一面にあるだけで、通る者誰もが「あれは誰?何の映画?」と気になっていたようです。 ウィソーは自分の過去を語ろうとしなかったようですが、注目を浴びてからは次第に過去が明らかになってきています。数々のインタビューから判明したのは、1955年ポーランド・ポズナン生まれのアメリカ移民であること。フランスに住んでいたこともあり、ルイジアナ州に住んでいた叔父叔母と一緒に住むという名目でアメリカに移住したようです。

ジェームズ・ディーンやマーロン・ブランドに憧れて俳優になる夢を持っていたようで、サンフランシスコへ移り住んでからは様々な仕事をしながら演技の勉強をするようになりました。『理由なき反抗』やテネシー・ウィリアムズの戯曲に影響を受けており、『The Room』には『理由なき反抗』のセリフが強烈に引用されています。 作品の巨額の製作費や宣伝費をどこからともなく工面してきたり、ジェームズ・ディーンや吸血鬼に対する妄執がすごかったり、謎のなまりがあったりと、やはりミステリアスな面が多々あることは否めませんが、その独特な風貌に反して意外にもフレンドリーな人物のようです。ファンの質問やインタビューにもフランクに応えており、映画愛は間違いなく深く、よく史上最低の監督と呼ばれたエド・ウッドと比較されることもあります。

『ザ・ディザスター・アーティスト(原題)』の海外の批評・感想は?

『The Room』の感想は10段階評価でいえば、1/10か10/10のどちらかというすさまじい落差が生じています。つまりすっかり魅了されるか一切受け付けないかの両極端!では『ザ・ディザスター・アーティスト(原題)』の評価はどういったものになっているのでしょうか? まったく面白さがわからないといった低評価はごく一部で、ほとんどが6/10以上の高評価を獲得しているようです。特にウィソーになりっきたジェームズ・フランコの振り切ったコメディ演技に多くの賞賛が集中しています。彼の新たな一面を引き出したともいわれているようです。

印象的なのは、『The Room』のファンでなくても十分楽しめるといった感想。逆にこの作品を見て『The Room』が気になり始めるという現象もあるようです。実際本作の成功を受けて『The Room』が2018年1月10日からアメリカで拡大公開されるというレアな事態まで起きています。 どちらの作品とも2018年1月現在では日本での公開は未定ですが、ゴールデングローブ賞を受賞した『ザ・ディザスター・アーティスト(原題)』の劇場公開の可能性は大いにあるのではないでしょうか?