2018年3月5日更新

名優オクタヴィア・スペンサーの魅力を徹底解説【面倒見の良いおばさん!】

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オクタヴィア・スペンサー
©Adriana M. Barraza/WENN.com

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一気にベテラン並みのキャリアを築いたオクタヴィア・スペンサー

「この人が出ているならば良作なんだろう」映画ファンをそんな気持ちにさせる役者がいるとすれば、オクタヴィア・スペンサーもその1人かもしれません。 『シェイプ・オブ・ウォーター』(2018年)で3度目のアカデミー賞ノミネートを果たしたオクタヴィア・スペンサー。3回のアカデミー賞ノミネートは黒人女優として史上2人目、2年連続ノミネートされた初めての黒人女優となりました。 また、オクタヴィア・スペンサーといえば「面倒見の良いおばさん役」がハマり役だといっていいでしょう。『ドリーム』(2017年)『ギフテッド』(2017年)『シェイプ・オブ・ウォーター』(2018年)で立て続けに主人公を支えるキャラクターを演じ、ますますそのイメージを強めました。 いまやハリウッドの歴史に名を刻み、小説家としても活動するなど順風満帆な彼女ですが、脚光をあびるまでに長い年月を要したのも事実。オクタヴィア・スペンサーはどのようにして名優たりえたのか、その人柄にも目を向けながら彼女の魅力を探ります。

実はあの作品にも出ていた!?意外な出演映画・出演ドラマ

オクタヴィア・スペンサーは1972年、アメリカはアバラマ州に7人兄妹の6番目として生まれます。演技に対して淡い興味を抱きながら、自分が将来女優になるとは思ってもいなかったんだとか。とはいえ、ウーピー・ゴールドバーグ主演の映画『ロング・ウォーク・ホーム』の制作現場でインターンをするなど、映画関係の仕事を目指していたようです。 大きな転機となったのは1996年の映画『評決のとき』でした。キャスティングの仕事に携わっていたところ、ジョエル・シュマッカー監督に頼んで自らオーディションを受けたのです。端役だったものの、これが初めての映画出演となります。 それから、のちに『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』の監督となるテイト・テイラーの勧めでLA進出を決意。今となっては「この作品にでていたの!?」と思ってしまうような数々の作品にクレジットされるようになります。オクタヴィア・スペンサー活動初期の出演作をみてみましょう。

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映画『25年目のキス』(1999年)

ドリュー・バリモアが主演と制作総指揮をつとめた映画『25年目のキス』。25歳の冴えない新人記者ジョジー・ゲラーが記事を書くため高校に潜入し、2度目の高校生活にたじろぎながらも憧れの人と初キスを果たすというロマンチック・コメディです。 スキャンダルに揉まれたドリュー・バリモアの復帰作としても知られる本作に、オクタヴィア・スペンサーはシンシアというボブカットの女性で出演。遅れてきた青春に舞い上がってしまうジョジーをたしなめるようなセリフがあります。

映画『マルコヴィッチの穴』(2000年)

『her/世界でひとつの彼女』(2013年)で知られるスパイク・ジョーンズ監督の初監督作品『マルコヴィッチの穴』。俳優マルコヴィッチの脳内に繋がっているという不思議な穴を見つけたばかりに数奇な運命を辿る夫婦を描いたファンタジー色の強いストーリーです。 ブラッド・ピットやショーン・ペン、ウィノナー・ライダー、ダスティン・ホフマンらがカメオ出演している作品なのですが、オクタヴィア・スペンサーはエレベーターに乗っている女性という端役で出演していました。

映画『ビッグママ・ハウス』(2001年)

ラジャ・ゴズネル監督の人気シリーズ『ビッグママ・ハウス』はコメディアンのマーティン・ローレンスが主演を務めたドタバタ・コメディ。 FBI捜査官のマルコム・ターナーが脱獄犯を捕まえるため、女装をして捜査に挑みます。オクタヴィア・スペンサーはメインキャストではありませんが、トゥイラという名前のキャラクターを演じています。

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映画『スパイダーマン』(2002年)

マーベル・コミックスの大人気ヒーロー実写版単独映画でシリーズ化された「サム・ライミ版スパイダーマン」の1作目。ピーター・パーカーにはトビー・マグワイアが抜擢され、世界的大成功をおさめました。 オクタヴィア・スペンサーが出てくるのは特殊能力を手に入れたピーターがレスラーに挑戦しようとするシーン。試合のプロモーター役で、一見軟弱なピーターの出場登録を断ろうとします。

映画『キューティ・ブロンド/ハッピーMAX』(2003年)

アマンダ・ブラウンの小説を映画化したリース・ウィザースプーンの出世作『キューティ・ブロンド』。監督をチャールズ・ハーマン・ワームフェルドにバトンタッチして制作された2作目『キューティ・ブロンド/ハッピーMAX』は主人公エル・ウッズの就職と結婚をめぐるエピソードです。 オクタヴィア・スペンサーは役名はないものの、警備員役で出演しています。

映画『S.W.A.T.』(2003年)

クラーク・ジョンソン監督がサミュエル・L・ジャクソン、ミシェル・ロドリゲスらをメインキャストに迎えてテレビドラマシリーズを映画化した『S.W.A.T.』。タイトルのとおり、特別狙撃隊の活躍に注目した作品で、ギャングとの対立を描いたストーリーです。 銃弾が飛び交うようなアクションものにオクタヴィア・スペンサーが?と思ってしまいそうですが、彼女は「通りの隣人」という役でクレジットされています。

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映画『コーチ・カーター』(2005年)

実話をもとにして制作された『コーチ・カーター』はトーマス・カーター監督の作品。サミュエル・L・ジャクソンが実在のバスケットボール部コーチを演じました。落ちこぼれ集団だったカリフォルニア州のリッチモンド高校バスケットボール部がコーチのスパルタ指導のすえに更生していくストーリーです。チャイニング・テイタムの俳優デビュー作でもあります。 オクタヴィア・スペンサーはバスケットボール部員ジュニア・バトルの母親、バトル夫人として登場します。

映画『デンジャラス・ビューティー2』(2005年)

ドナルド・ペドリ監督、サンドラ・ブロック主演の映画『デンジャラス・ビューティ』(2001年)の続編『デンジャラス・ビューティ2』。1作目で爆破テロ解決のためミスコンに出場したFBI捜査官グレイシー・ハートは、世間に知られてしまったために潜入捜査が困難に。FBIはグレイシーを組織の広告に利用する計画を練ってグレイシーを捜査から遠ざけるものの、彼女が見過ごすことのできない事件が起こるのです。 この作品にオクタヴィア・スペンサーはほとんど本人役として出演しており、本屋のシーンで登場します。

ドラマ『アグリー・ベティ』(2006年〜2010年)

『アグリー・ベティ』は成績優秀で心優しいけれどファッションや美容に疎いベティ・スアレスが、外見に強いこだわりを持つ人であふれたファッション業界で成功していく姿を描いたサクセス・ストーリー。大ヒットテレビドラマシリーズとなりました。 オクタヴィア・スペンサーはコンスタンス・グラディという役で数話に出演しています。コンスタンスは、主人公ベティの父イグナシオに取り入ろうとするケアワーカー。次第にイグナシオに好意を抱き結婚を迫るも、拒否されてしまったために嫌がらせをするという厄介な女性を印象的に演じました。

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オクタヴィア・スペンサーの演技が評価された映画『7つの贈り物』(2009年)

ガブリエル・ムッチーノ監督が『幸せのちから』(2007年)に続きウィル・スミスを主演に据えて制作した『7つの贈り物』。 主人公トーマスは不注意運転が原因の交通事故を起こし、自分の婚約者を含めた7人の命を奪ってしまいます。このことがきっかけで自らの7つの臓器を、それを必要とする人に提供しようと決心した彼はドナーとなるべき患者を探し、エミリーという運命の女性に行き着くのです。 オクタヴィア・スペンサーはエミリーの世話をする看護師役を演じて、その演技が評価されました。

映画『スペル』(2009年)

オクタヴィア・スペンサーがレスリング試合場に登場していた『スパイダーマン』シリーズのサム・ライミ監督作品『スペル』。 銀行員のクリスティン・ブラウンは、1人の老婆の融資申請を取り下げたばかりに次々と怪奇現象に巻き込まれてます。怪奇現象の始まりは老婆がクリスティンに謎の呪文(スペル)を唱えたことでした。 古くからあるおとぎ話に取材したようなミステリアスなストーリーの本作。オクタヴィア・スペンサーは主人公の勤める銀行の同僚役で出演しました。

オクタヴィア・スペンサーは『ヘルプ〜心がつなぐストーリー』でオスカーを獲得!

オクタヴィア・スペンサーがスターダムを一気に駆け上るきっかけとなった作品は、なんといっても『ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜』(2012年)でしょう。 主人公であるライター志望のユージニア役をエマ・ストーンがつとめた本作は、1960年代のアメリカにはびこっていた黒人への差別や偏見をテーマとしています。オクタヴィア・スペンサーはユージニアの友人の家で働くメイドのミニーを演じました。ミニーは、主人のトイレを使ったというだけで解雇されたことをきっかけに黒人が置かれる理不尽な現実に憤慨し、黒人差別の実態を暴こうとするユージニアの取材を受ける、という役どころ。 オクタヴィア・スペンサーはこの役を見事に演じきり、数々の助演女優賞をほとんど全て獲得してしまったのです。アカデミー賞、英国アカデミー賞、ゴールデングローブ賞にSAG賞、BFCA賞。ひとつの年にこれだけの賞を勝ち取るのは、ハリウッド史上11人目なのだとか。この快挙をさかいに、彼女は一躍注目の女優となったのです。 また先述のように、『ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜』のメガホンをとったテイト・テイラー監督はかつてオクタヴィア・スペンサーにLA行きをアドバイスした人物。長い下積み時代にどんな端役であっても丁寧に演じてきたことに加え、信頼できる交友関係を築いていたことも成功の秘密だったのではないかと思います。

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『スノーピアサー』の度胸ある母親役

2013年には韓国のポン・ジュノ監督による SFバンド・デシネ原作の映画『スノー・ピアサー』に出演。クリス・エヴァンズやソン・ガンホ、ティルダ・ウィンストンらと共演しています。 物語の舞台は地球温暖化に足掻いた人類の失敗によって、すっかり荒廃してしまった近未来の地球。一面雪と氷の世界で、残された人間は「スノー・ピアサー」という列車にのって暮らしています。ただし、文明が失われたというのに階級社会であることは変わらず、列車の車両によって階級が分けられているのです。 オクタヴィア・スペンサー演じるターニャは貧困層の人類が押し込められた最後尾車両の住人。富裕層に虐げられた過酷な環境でも強く生きる母親役です。 『ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜』で既に評価されていたように、被差別の立場でも立ち上がることをやめないキャラクターは彼女の得意とする役になっていきます。

オクタヴィア・スペンサーはSF映画でもやっぱり頼れる女性に。『ダイバージェントNEO』

2015年からは「ダイバージェント」シリーズに参加。ロベルト・シュヴェンケ監督が手がけたシリーズ2作目、『ダイバージェントNEO』に出演しました。 『スノーピアサー』に続き、本作もまた文明を喪失した未来世界が舞台で、共同体に分かれて生きる人類の物語です。オクタヴィア・スペンサーは「平和lと呼ばれる世界の統率者ジョアンナ・レイズを演じました。 ワインレッドのゆったりとしたドレスに身を包んで現れる彼女は威厳たっぷりで、まさに指導者の風格。崩壊後の世界が舞台のSF作品でも、やはり頼りがいのある女性を演じました。

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『パパが遺した物語』で再びムッチーノ作品に出演

ラッセル・クロウとアマンダ・サイフリッドが父娘役を演じた映画『パパが遺した物語』(2015年)。交通事故で母を失った娘と、事故のトラウマを抱えた父親の複雑な関係を描いた感動作です。 オクタヴィア・スペンサーはドクター・コールマン役で出演しているのですが、本作の監督はガブリエレ・ムッチーノ。彼女が過去に看護婦役で出演していた『7つの贈り物』の監督でもあります。 無名だった頃に出演した作品の監督作品にオスカー女優としてカムバックするというのは、ロマンチックですね。

『ズートピア』では自身と似たキャラクターに!?

ディズニーが2016年に公開した3Dアニメーション映画『ズートピア』。動物だけの世界をコミカルに表現した本作は、現実の人間世界を彷彿とさせる問題を巧みに掘り下げることで高い評価を得ました。 オクタヴィア・スペンサーが演じた動物は、オッタートン夫人。毒薬によって凶暴化されていたカワウソ、エミット・オッタートンの妻ですね。 ピンクのカーディガンを着てハンドバッグをさげたオッタートン夫人は、大きな丸い目が可愛らしいキャラクター。オクタヴィア・スペンサー本人も大きくて丸い瞳が印象的。似ている、とおもった人も少なくないのでは? ともかく、彼女の演技力が動物たちの楽園をリアルに表現することに貢献したのは確かです。

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オクタヴィア・スペンサー、『ドリーム』で2度目のノミネートを果たす

セオドア・メルフィ監督が実話に取材した『ドリーム』(2017年)はNASAに勤める黒人女性を描いています。 黒人女性であるキャサリン、ドロシー、メアリーはNASAで計算係をしている仲良し3人組。人種差別に抗いながら、夢をつかむために奮闘します。オクタヴィア・スペンサーが抜擢されたのは計算室長ドロシーの役でした。出世でキャサリンとメアリーに遅れをとっていることを感じながら、常に友人の味方であり続け、チャンスを逃さない行動力をもった女性です。女性でキルスティン・ダンスト扮する管理職の白人女性とピリピリとした会話を繰り広げるシーンも見どころでした。 この作品で2度目のアカデミー助演女優賞ノミネートを獲得します。

『gifted/ギフテッド』で「面倒見の良いおばさん」イメージを強化?

『ドリーム』で友人を鼓舞するドロシーを演じ、「面倒見の良いおばさん」というイメージを固めつつあったオクタヴィア・スペンサー。『ドリーム』と同じく2017年公開のマーク・ウェブ監督作品『gifted/ギフテッド』で演じたロバータ・テイラー役は、そのイメージを急激に強化した役柄だといえるかもしれません。 7歳とは思えないほどの数学の才に恵まれた少女メアリーとその叔父フランクが徐々に近づいていく愛にあふれたストーリー。ボニータはフランクの隣人です。厳格な実家に辟易して決して豊かでない暮らしを選んだフランクと同じエリアに住んでいるのですから、ボニータもあまり恵まれた生活環境にあるとは思えません。けれどもボニータは子育て未経験のフランクを気にかけ、何かと世話を焼くのです。 フランクの抱える問題に口出ししてくるけれども、なぜだか全く鬱陶しくはない魅力的な「となりのおばさん」を作り上げました。

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『シェイプ・オブ・ウォーター』に垣間見えるオクタヴィア・スペンサーの丁寧な役作り

黒人女優としてハリウッド初の2年連続3度目のアカデミー賞ノミネートを達成した作品、ギレルモ・デル・トロの『シェイプ・オブ・ウォーター』で演じたのは、主人公イライザといつも一緒にいるゼルダ。 声が出せないイライザの手話を読み取って彼女のコミュニケーションを助けたり、大胆な行動に出るイライザを咎めつつも協力したりと本作でも「面倒見の良い」キャラクターを演じることとなりました。 この作品でのゼルダの特徴は、声が出ないために職場のマイノリティであるイライザと同様、黒人という社会的なマイノリティを背負っているということ。オクタヴィア・スペンサーは1962年という時代設定に目をつけ、ゼルダが置かれた状況を徹底的に考察したのだそう。黒人差別の問題は本作のメインテーマではないものの、劇中のゼルダは物語の舞台が黒人には厳しい60年代であったことをしっかりと伝えています。 丁寧な役作りに支えられたオクタヴィア・スペンサーの演技は、スクリーンの外側までも想像させるのです。

ニンジャガールの小説で作家デビュー!

オクタヴィア・スペンサーが作家としても活動しはじめたことをご存知でしょうか。 2015年から児童書を執筆していたのですが、そのストーリーはなんと忍術を扱うランディという少女が主人公のシリーズもの。少女が次々と事件を解決していく内容で読者から高評価を受けているようで、『The Case of the Time-Capsule Bandit 』と『The Sweetest Heist in History 』の2作が既に出版されています。 児童書とはいえ年齢に関係なく全ての人に読んで欲しいとのこと。演じることのほかに「書く」という表現方法でも、彼女のメッセージを伝えていくのかもしれません。

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オクタヴィア・スペンサーの今後の活躍にも期待です!

短くない下積みを経てハリウッドが誇る名女優となったオクタヴィア・スペンサー。「面倒見の良いおばさん」を演じても鬱陶しいキャラクターにならないのが彼女自身の人柄がなせる技なのかもしれませんね。 そして、映画ファンにハマり役を認識されるということ、すなはち他には譲らない女優としての「定位置」をつくるというのはそうそう簡単ではないはず。華やかな受賞歴をもっていながら、そのキャリアに甘んじることなく役作りに挑む姿に大変な魅力を感じます。 これからどんな素晴らしいキャラクターを生み出してくれるのでしょうか。今後の活躍にも目が離せません!