2018年6月12日更新

傑作ばかり!橋口亮輔監督のおすすめ映画4選【LGBTの先駆者】

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橋口亮輔

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寡作ながらも傑作ばかり!日本映画界を代表する才能、橋口亮輔監督

自主制作映画の時代から注目され、長編映画デビュー後も発表する作品がどれも国内外で非常に高い評価を得るなど、極めて突出した才能を発揮している橋口亮輔監督。寡作で知られながらも、今日の日本映画界を代表する名監督の一人であることは間違いありません。 早くからゲイであることを公表しており、邦画界でカミングアウトしたクィア(LGBTQ)としては先駆的存在だとも言えます。また商業ベースではなく極めて作家性の強い作風で知られ、ストーリーも脚本も自身で手掛けるという独自の世界観は他の名匠とは一線を画しています。 ここでは、自主制作時代の短編含めても10作に満たない中から、必見の4作品をご紹介したいと思います。

橋口亮輔監督のプロフィール

橋口亮輔は1962年7月13日生まれで長崎県出身です。高校生のころから自主制作映画を撮り始め、大阪芸術大学映像計画学科に学びました。 1986年の作品『ヒュルル…1985』がぴあフィルムフェスティバル(PFF)で入選します。3年後には『夕辺の秘密』が同グランプリに輝き、テレビ局のADを務めながらPFFスカラシップで制作した『二十才の微熱』により1993年に長編映画デビューを果たしました。 その後は発表する作品がいずれも国内外で賞を受賞するなど非常に高い評価を得ます。ところが2000年代に長らくうつ病を患ったことなどもあり、デビュー後25年のキャリアで手掛けた長編はたった5作に留まっています。 とはいえそれらは全て傑作ばかりであり、新作が待望される監督の一人であることは間違いありません。

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1.浜崎あゆみらフレッシュな役者陣にも注目!切な過ぎる青春群像【1995年】

同性に恋した少年と彼に近づく少女の関係を軸に、6人の若者のみずみずしくも切ない青春模様を描いた群像ドラマです。ロッテルダム国際映画祭とトリノ国際ゲイ&レズビアン映画祭でダブルのグランプリに輝いたほか、国内でも毎日映画コンクール最優秀脚本賞など極めて高い評価を得ました。 同級生の吉田にひそかな恋心を抱く高校2年生の伊藤修司。転校生の果沙音はそんな伊藤に興味を持ってなにかとちょっかいを出すものの、肝心の吉田の方は果沙音に好意を抱き始めます。 ナイーブな伊藤を岡田義徳、どこか風変りな果沙音を浜崎あゆみ、吉田を草野康太ら、絶妙なキャストがフレッシュな魅力で演じました。悩みながら成長していく若者たちの心情に寄り添う橋口亮輔監督の優しい眼差しが光る傑作です。

2.時代を先取り!ゲイカップルと一人の女性の奇妙な家族トライアングル【2002年】

一組のゲイカップルと孤独な女性が織り成す奇妙な三角関係とそこに芽生える新しい家族の形を、笑いあり涙ありで描いた感動人間ドラマです。カンヌ国際映画祭では大反響を巻き起こし、また橋口監督の新藤兼人賞金賞含めさまざまな賞に輝きました。 オープンで自由気ままな直也とゲイであることをひた隠す優柔不断な勝裕のゲイカップル。ある日、偶然出会い親しくするようになった歯科技工士の朝子から子供を授けて欲しいと打診され、2人の関係がぎくしゃくし始めます。 田辺誠一、高橋和也、片岡礼子の3人が見せる珠玉の演技が秀逸です。『二十才の微熱』『渚のシンドバッド』と合わせて橋口亮輔監督の「ゲイ3部作」とも呼ばれています。

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3.ある夫婦の10年を描いた苦難と再生のラブストーリー【2008年】

1990年代から21世紀にかかる10年間を舞台に、その時々の社会情勢を織り交ぜながら一組の夫婦の歩む道のりを切々と描いた大人のラブストーリーです。2人を演じた木村多江とリリー・フランキーの演技は絶賛されて数々の賞を席巻したほか、キネマ旬報の年間第2位にも選ばれました。 法廷画家をしている夫カナオと妻の翔子は幸せな日常を送っていましたが、大切な子供を亡くしたことがきっかけになり、几帳面すぎる翔子が心を病んでしまいます。翔子を温かく支え続けるカナオの姿とともに、2人の希望と再生を描きました。 『ハッシュ!』から6年のブランクを経た作品であり、その間に橋口亮輔が苦しんだ辛いうつ病の体験がそのまま物語に生かされています。倍賞美津子、加瀬亮、光石研、寺島進、柄本明ら豪華な脇役陣にも注目です。

4. 異例のロングラン!映画賞総なめ!キネマ旬報年間第1位の傑作【2015年】

それぞれ事情を抱え、不器用ながらも必死に日常を生きる3人の姿を軸に、喪失や絶望からの再起と生きることそのものの意味を綴った傑作です。橋口亮輔監督自身がオーディションで選んだ篠原篤ら主人公3人のほか、リリー・フランキー、木野花、光石研らがどうしようもない人間関係を織り上げます。 通り魔に妻を殺された男、夫や姑との無味乾燥な日常に孤独を抱える主婦、親友に秘めた想いを抱くゲイの弁護士……。3人はそれぞれの事情を背負ってもがきながらも、なんとかわずかな一歩を踏み出す決意をします。 公開後から話題をよび異例のロングランヒットを記録したほか、さまざまな映画賞を総なめしました。キネマ旬報ではついに年間第1位の作品に選ばれ、橋口亮輔の監督賞と脚本賞含む4冠に輝いています。

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最も新作が待たれる監督の一人、橋口亮輔

1993年の長編映画デビュー以来、これまでに発表したわずか5作の長編がどれも傑作ばかりというのはあらためて驚嘆に値します。 また作品には他者による原作がなく、すべて橋口亮輔のオリジナルストーリーであり、監督のみならず脚本も手掛けるという多才ぶりです。自身のセクシュアリティに向き合った初期の作品、うつ病による苦しみを乗り越えて生み出した作品、その結果として辿り着いた境地……。その意味でも、非常にパーソナルで魂の籠った作品であり、圧倒的な力を持っているのはそれゆえでしょう。 さて、次はどんな作品を手掛けるのでしょうか?楽しみにして根気よく待ちましょう!