2018年9月13日更新

第75回ヴェネツィア国際映画祭正式出品作21本を一挙ご紹介【塚本晋也監督新作も!】

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ギレルモ・デル・トロ
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アートな映画が目白押し!第75回ヴェネツィア国際映画祭

カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭と並ぶ世界三大映画祭の一つ、ヴェネツィア国際映画祭。もっとも歴史ある国際美術展、ヴェネツィア・ビエンナーレの18回目の際に開始した、世界最古の映画祭としても知られる映画祭です。 昨今はマーケット部門が設けられ、商業映画の参加も多くなってきましたが、長らく芸術的な映画祭として注目を浴びていました。 日本人監督の中でも黒澤明監督の『羅生門』や、北野武監督の『HANA-BI』が過去に受賞歴のある、アート性が高いこの映画祭。今回は、第75回となる2018年度のコンペティション部門21作品を紹介します。

カンヌから流れてきたネットフリックス組も多数参戦!

2018年の5月に開催された第71回カンヌ国際映画祭では、ネットフリックスによってネット配信される(劇場で公開されない)作品が出品を拒否され、話題になりました。 しかし、今回のヴェネツィア国際映画祭ではネットフリックス作品もコンペ出品作品として受け入れる方針を明らかにしています。後述する『The Ballad of Buster Scruggs』や『Roma』はネットフリックス作品としてネット配信されるものです。 そういった点で、ヴェネツィア国際映画祭は「新時代の映画祭」と言えるかもしれません。

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1. 注目の映像作家リック・アルヴァーソンの作品『The Mountain』

ダークなユーモアを得意とし、長い定点のカットや、たくさんの人が歌っている映像を使うなど特徴的な作風で知られるリック・アルヴァーソン監督の作品です。 映画の舞台は1950年。主人公は、母を亡くし、精神的に安定していない父親の元で育った青年アンディ。彼はロボトミー手術やショック療法を専門とする医師のもとで働くようになり、彼を師と仰ぐようになりますが……。 青年を演じるのは『レディ・プレイヤー1』で主人公ウェイドを演じたタイ・シェリダン。医師役は『ジュラシック・パーク』のイアン・マルコム役で知られるジェフ・ゴールドブラムが担当しています。

2. 『パーソナル・ショッパー』のオリヴィエ・アサイヤス監督最新作『Double Vies』

忙しいセレブに変わって買い物をする女性が主人公の映画『パーソナル・ショッパー』。同作がカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞し、注目を浴びたフランスの鬼才・オリヴィエ・アサイヤス監督の作品です。 編集者のアランと作家のレオナールは長年の友人。二人は、レオナールの新作である自伝的小説について話し合うことになります。ある三流セレブとの情事を綴ったその小説を、アランは時代遅れだと指摘しようとしますが、アランの妻は最高傑作なると確信していたのでした……。 同監督とは『アクトレス~女たちの舞台~』以来二度目の再タッグとなるジュリエット・ビノシュや、ギヨーム・カネといった演技力には定評のある実力派俳優が出演します。

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3. 冷徹な殺し屋兄弟の物語!ジャック・オーディアール監督の『The Sisters Brothers』

2015年、タミル人移民を題材にした『ディーパンの戦い』が第68回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したジャック・オーディアール監督の作品です。 時はゴールドラッシュに沸く1850年。イーライ・シスターズとチャーリー・シスターズの兄弟は、殺しを仕事としか思っていない冷徹な殺し屋兄弟。そんな彼らは、ターゲットである盗みを働いた炭鉱者を探す旅に出ます。 兄のイーライをジョン・C・ライリー、弟のチャーリーをホアキン・フェニックスと、実力派の二人が演じます。

4. アームストロング船長の伝記映画!デイミアン・チャゼル監督の『ファースト・マン』

アカデミー賞の6部門で受賞した『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督とライアン・ゴズリングが再びタッグを組んだ話題作です。 1969年に人類で初めて月面着陸を成功させたアメリカの宇宙船アポロ11号。その船長だったニール・アームストロングをライアン・ゴズリングが演じ、月面着陸の舞台裏と彼の半生を描きます。 監督と主演男優の強力タッグが早くも話題の本作ですが、2015年にアカデミー賞6部門にノミネートされた『スポットライト 世紀のスクープ』のジョシュ・シンガーが脚色を担当していることも注目です。

5. ジョエル&イーサン・コーエン監督の最新作!『バスターのバラード』

『ファーゴ』や『ノーカントリー』といったカンヌ国際映画祭で評価されたヒット作を多く放ってきたコーエン兄弟の最新作。当初は全6話のテレビシリーズを想定して制作されていた本作ですが、映画として公開するよう企画変更されました。 主人公はバスター・スクラッグスと呼ばれるカウボーイ。開拓時代のアメリカを舞台に、オムニバス形式で構成された西部劇です。 バスター・スクラッグス役は、2000年にコーエン兄弟作品『オー・ブラザー!』に囚人役で出演して注目されたティム・ブレイク・ネルソンが演じます。

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6. 新進気鋭!ブラディ・コーベット監督の『Vox Lux』

子役出身で、2016年『シークレット・オブ・モンスター』で監督デビューした注目の若手、ブラディ・コーベット監督の作品です。 主演を務めるのはオスカー女優としておなじみのナタリー・ポートマン。本作ではクールなロックスター、セレステ役に扮し、どん底のから世界的なスターへと成長していく波乱万丈な物語を演じます。 すでに、ショッキングパープルのジャケットにリーゼントヘアという今までのナタリー・ポートマンのイメージを脱却した衣装が話題になっている、注目の作品です。また、セレステのマネージャー役は、ジュード・ロウが演じています。 そのほかにも、セレステの視点を通じて描かれるポップカルチャーの変遷も見所となっています。

7. アルフォンソ・キュアロン監督が自身の原点に迫る!『Roma/ローマ』

宇宙空間を舞台にしたサスペンス映画『ゼロ・グラビティ』が絶賛された、アルフォンソ・キュアロン監督の自伝的映画です。 自身もメキシコ出身であるアルフォンソ・キュアロン監督。1970年代のメキシコを舞台に、先住民の血を引く女性クレオと、彼女がメイドとして働く中流家庭の4人の子供達との関係を描きます。 監督が自らの原点に立ち戻り、メキシコのテレビ界で活躍するベテラン女優マリナ・デ・タヴィラを起用した注目作となっています。

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8. ノルウェーで起きたテロ事件の真相を描く!ポール・グリーングラス監督の『22 July』

ジャーナリストとしてのキャリアをいかし、ドキュメンタリーや事実に基づいた作品に定評あるポール・グリーングラス監督。2006年にはアメリカ同時多発テロ事件を題材にした『ユナイテッド93』を発表しています。 本作では2011年7月22日に起きた、ノルウェー史上最悪と言われたテロ事件をテーマにしています。オスロ郊外のウトヤ島でキャンプをしていた労働党青年部のメンバーたちが、右派テロリストが起こした銃乱射事件より殺害されてしまったのです。事件の生存者やノルウェー政界のリーダー達など、様々な視点で事件の本質に迫ります。 出演するのは『パーソナル・ショッパー』にも出演しているノルウェー人俳優、アンデルシュ・ダニエルセン・リーです。

9. 70年代の名作ホラーをルカ・グァダニーノ監督がリメイク!『サスペリア』

1977年にイタリアで制作されたダリオ・アルジェント監督の名作ホラー『サスペリア』を、『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督がリメイクします。 ストーリーは、アメリカ人若手ダンサーのスージーが意気揚々とドイツのダンスカンパニーに入団するところからスタートします。しかし、まもなく彼女の周辺では奇怪なことが起こり始め、次第に恐怖に蝕まれていくのです……。 主演に監督とは2回目のタッグとなるダコタ・ジョンソンを迎えるほか、クロエ・グレース・モレッツなど豪華なキャストが飾ります。

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10. フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督がユダヤ系ドイツ人のトラウマを描く『ネバー・ルック・アウェイ』

ベルリンの壁崩壊直前の東ドイツを舞台にした『善き人のためのソナタ』で脚光を浴びたフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督の作品。 本作では、東ドイツから亡命し、西ドイツで暮らすユダヤ系ドイツ人アーティストのクルト・バーナートに焦点を当てています。今は平穏な暮らしを送っているクルトですが、東ドイツでの過酷な日々とユダヤ人迫害のトラウマから逃れられず苦しんでいました。 出演者もドイツを代表する実力派俳優が集合している、見所たっぷりの作品となっています。

11. 今回唯一の女性監督ジェニファー・ケントの『The Nightingale』

今回のラインナップの中では唯一の女性監督であるジェニファー・ケント監督。長編作品としては本作が2作目になります。 舞台は1825年のオーストラリア、タスマニア州。若いアイルランド人女性のクレアは有罪判決を受けていました。彼女は自分の家族を虐待したイギリス人将校に復讐を決意し、アボリジニであるビリーに協力を求めます。 クレア役は『ゲーム・オブ・スローンズ』のアシュリン・フランシオーシ、ホーキンス役は『ハンガー・ゲーム』のサム・クラフリンが努めます。

12. 18世紀イギリス王室で巻き起こる狂気の時代劇!ヨルゴス・ランティモス監督の『The Favourite』

2017年『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』がカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞した、鬼才ヨルゴス・ランティモスの新作です。 18世紀初頭のイングランドでは、病弱なアン女王に変わり、彼女の世話係のサラが実権を握っていました。そこへ、新しい召使いのアビゲイルが現れます。最初は彼女のことを気に入っていたサラですが……。 一線を越えればコメディにもなってしまいそうな、ヨルゴス・ランティモスが描くすれすれの狂気が見どころの作品です。 アン女王役オリヴィア・コールマン、サラ役はレイチェル・ワイズといったイギリスを代表する女優陣が担当。アビゲイル役は『ラ・ラ・ランド』で第73回ヴェネツィア国際映画祭女優賞を受賞したエマ・ストーンが演じます。

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13. イギリスが誇る巨匠マイク・リー監督の『Peterloo』

カンヌ国際映画祭でのパルムドールや金獅子賞など数多くの受賞歴を誇るイギリスの名匠マイク・リー監督。彼が、個人的に思い入れのある出来事だという“ピータールーの虐殺事件”を描いた作品です。 1819年のイギリス経済は困窮していました。加えてナポレオン戦争終結による高失業や、ヨーロッパの冷夏による不作などを背景に民衆運動が活性化しており、その年のマンチェスターで選挙改正を求めるデモが行われます。そこに軍が突入し、武力鎮圧したことにより、死者15名負傷者700名の大惨事になってしまいます。

14. イタリアの鬼才・マリオ・マルトーネ監督の『Capri-Revolution』

これまでに多くのドキュメンタリー作品を生み出してきたマリオ・マルトーネ監督が、イタリアはカプリ島を舞台に描く人間ドラマです。 1914年、イタリアは第一次世界大戦に向かって進んでいました。そんな中、人々はカプリ島こそが、芸術を開花させる理想の場所だと思うようになって行きます。そしてある日、島の娘ルチアは、全裸で海に面した崖に集う人々と出会います。 島娘、北欧から集まってきた人々、そして島の若き医師と、全く背景が異なる人物達の出会いが織り成す物語です。

15. 人種差別問題の本質に迫る!ロベルト・ミネルヴィーニ監督のドキュメンタリー『What You Gonna Do When the World's on Fire?』

イタリア、アメリカ、フランスという3カ国共同製作作品。アメリカの人種問題に迫るドキュメンタリーです。 2017年、アメリカで黒人の惨殺事件が起き、アメリカ国内外に衝撃が走りました。本作では、事件直後のアメリカ南部黒人コミュニティーの様子を描いています。 監督のロベルト・ミネルヴィーニは「本作がブラックアメリカンの闘争について議論の口火となることを願う」と語っています。

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16. 家族のルーツを探る女性を描く!ネメシュ・ラースロー監督の『Napszállta』

2015年の長編デビュー作『サウルの息子』がカンヌ国際映画祭グランプリを受賞したことで注目されている、ハンガリーのネメシュ・ラースロー監督の待望の2作目。 舞台は、1913年のブタペスト。若き帽子職人イリス・ライターは、亡き両親のものだった帽子店の門を叩くも新オーナーに追い返されてしまいます。そして、自分の過去につながる人物カールマン・ライターの痕跡をたどる決意をするのです。 第一次世界大戦前夜のハンガリーで、家族の遍歴をたどる女性の姿を35mmフィルムで描きます。

17. 違う道を選んだ幼馴染みとの再会!ダヴィド・オールホッフェン監督の『Frères ennemis』

本作が長編3作目となるベルギー人監督ダヴィド・オロファンの作品です。 ドリスとマニュエルは、麻薬取引が横行する郊外で兄弟のようにして育ちました。成長し、ドリスは警官へ、マニュエルは悪の道への進みますが、ひょんな事から二人は再会を果たします。そして、この世界で生きていく上で、お互いが掛け替えのない存在であるということに気づいていくのです。 ハリウッドでも活躍するベルギー人俳優マティアス・スーナールツと、フランス人俳優レダ・カテブが幼馴染の二人を演じます。

18. 期待のメキシコ人監督!カルロス・レイガダス監督の『Nuestro Tiempo』

2012年『闇の後の光』がカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞したメキシコ出身のカルロス・レイガダス。本作には自ら俳優として出演もしています。 主人公のエスターは、闘牛用の牛を育てる牧場で、作家のファンと暮らしていました。オープンな関係を望む二人でしたが、彼女が他人と恋に落ちた時、二人の関係にひずみが生まれ始めます。 美しい背景をを中心にした映像を撮りつつも、人間というものに焦点を絞って展開する監督の手腕が期待のポイントです。

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19. 苦悩の画家、ゴッホの物語!ジュリアン・シュナーベル監督の『At Eternity's Gate』

デビュー作『バスキア』がヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門に出品された経歴を持つジュリアン・シュナーベル監督。自身も画家である彼が、苦悩の画家ゴッホを描きます。 19世紀のフランスで、オランダからパリにやってきたゴッホは周囲の人の無理解や拒絶に打ちのめされていました。人生を立て直すためゴッホはアルルへと向かいますが、認められたい欲求のあまり彼はさらに精神を病んで生きます。 ゴッホを演じるのは、2018年『アクアマン』にも出演するアメリカの俳優ウィレム・デフォーです。

20. 友人が殺され、人生が狂った女子学生!コンサロ・トバル監督の『Acusada』

アルゼンチン出身のゴンサロ・トバルが、メキシコの国際的スター・ガエル・ガルシア・ベルナルとタッグを組んで放つ、サスペンス作品。 主人公のドロレス・ドライアーはごく平凡な学生でした。しかし、ある日親友が惨殺され、その殺害の嫌疑をかけられたことから彼女の人生は一変。メディアはドロレスを追い求め、人々は好奇の目で彼女の有罪無罪を議論します。

21. 塚本晋也監督初の時代劇『斬、』

2010年『鉄男 THE BULLET MAN』、2015年『野火』に引き続き、3作目のコンペティション部門選出となる塚本晋也監督。今回は監督初の時代劇となりますが、実は20年以上温めていた企画だそうです。 開国するか否かで揺れる江戸時代末期の農村を舞台に、一人の浪人と周囲の人々を通して繰り広げられる“生と死”の問題を描きます。浪人役として主演を務めるのは池松壮亮。なぜ人を斬らねばならないか悩む若者を演じます。ヒロイン役は蒼井優が担当し、浪人の隣人で農家の娘を演じます。

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今年のコンペティション部門の注目ポイントは?

ギレルモ・デル・トロ
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アルフォンソ・キュアロン監督やカルロス・レイガダス監督といったメキシコ出身の監督が名を連ねている今回のヴェネツィア国際映画祭。審査員長は同じくメキシコ出身のギレルモ・デル・トロが務めていることもあり、彼らが同胞の心を揺さぶることは間違い無いでしょう。 また、デイミアン・チャゼル監督とライアン・ゴズリングの『ラ・ラ・ランド』コンビや、ヨルゴス・ランティモス監督とオリヴィア・コールマン、レイチェル・ワイズの『ロブスター』チームなど、過去に高評価を得た監督と俳優の再タッグ作品にも期待が高まります。

あなたの気になる作品はどれ?

エンターテイメント作品よりも、芸術性の高さが重んじられるヴェネツィア国際映画祭。ラインナップも個性的で特徴ある作品が多く見受けられます。 ご紹介した中には、気になる作品はありましたでしょうか?そして、その作品はどのような評価を映画祭で得られるのでしょうか? 日本公開の情報も含めて、注目して見てみてください。