2018年5月17日更新

2018年カンヌ国際映画祭のニュースまとめ【パルムドールは誰の手に!?】

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カンヌ国際映画祭

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2018年のカンヌはニュースで盛りだくさん!?気になるのはパルムドールだけじゃない!

風光明媚なコート・ダジュールの陽光とどこまでも続く美しい海岸、華やかなレッドカーペット、セクシーなドレスをまとい微笑む女優たち、そして個性豊かな上映作品の数々。今年で71回目となるカンヌ国際映画祭も、いつものごとく華やかに幕を開けました。 しかしその一方、今回は例年にも増していろいろなニュースがありました。ここでは、そんな2018年のカンヌ国際映画祭で起こったニュースや出来事をまとめてご紹介します! 今回のコンペティション部門に出品された映画は以下の記事でご紹介。

1. Netflixがカンヌからの撤退を表明

米国の動画配信サービスNetflixが今回以降、カンヌ国際映画祭から撤退する意向を明らかにしました。 前回の第70回カンヌ国際映画祭でNetflixは『マイヤーウィッツ家の人々 (改訂版)』と『オクジャ/okja』の2作品をコンペに出品しました。しかし、これに対してカンヌ側から「ネット配信された映画は伝統的な映画の形とはかけ離れている」という批判が噴出。結果、映画祭側は今回から「コンペティション部門に出品される作品は、フランスで劇場公開された作品でなければならない」という新たな規定を敷くことになりました。 それに対し、Netflix側は「コンペティションに出品できないのなら、カンヌに行く意味はない」と反論。今回カンヌで上映予定だった作品を全て引き上げることを発表しました。 今回 Netflixがカンヌ上映を取りやめた作品には、アルフォンソ・キュアロン監督の『Roma(原題)』やポール・グリーングラス監督の『Norway(原題)』などの話題作や、オーソン・ウェルズ監督の未完の遺作『The Other Side of the Wind(原題)』といった幻の映画まで多岐にわたり、今回のNetflix側の決定を嘆く声もありました。

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2. 今年の審査員は女性揃い!

毎年、その個性的な面子が話題になるカンヌ国際映画祭の審査員の面々。 今回の審査員は全部で9人いました。メンバーは以下の通り。 ・ケイト・ブランシェット(審査員長。オーストラリアの女優) ・チャン・チェン(台湾の男優) ・エヴァ・デュヴァネイ(アメリカの監督) ・ロベール・ゲディギャン(フランスの監督) ・カジャ・ニン(ブルンジのシンガーソングライター) ・レア・セドゥ(フランスの女優) ・クリステン・スチュワート(アメリカの女優) ・ドゥニ・ヴィルヌーヴ(カナダの監督) ・アンドレイ・ズビャギンツェフ(ロシアの監督) このうち、メンバー9人の過半数である5人(ブランシェット、デュヴァネイ、ニン、セドゥ、スチュワート)は女性であり、毎年審査員の多数派を占める白人男性は3人だけにとどまる結果になりました。 セクハラ告発運動「me too」が話題になり、また世界的に人種問題が取り沙汰されている昨今の世相を反映させたものだと考えられます。

3. レッドカーペットに居座り続ける女優とイタすぎる無名のブロガー

今年のカンヌでは、中華圏からも多数の映画人が参加。 昨年の審査員だった女優のファン・ビンビンや若手女優のマー・スーチュン、映画『六月的秘密(原題)』に出演した香港の俳優・アーロン・クォックのほか、審査員に選ばれた台湾の俳優・チャン・チェン、コンペティション部門で『江湖児女(原題)』が上映されるジャ・ジャンクー監督と主演女優で監督の妻でもあるチャオ・タオなどが人々の注目を集めました。 その一方で、映画『如影随心(原題)』に出演する女優のマー・スーが、規定に反して6分もの間レッドカーペットに留まり続け、「海外で恥を晒した」として批判にさらされています。 さらに、中国で「網紅(ワンホン)」と呼ばれる著名なネットユーザーのひとりが、なぜかレッドカーペットに登場。わざとらしく階段で転ぶなどの痴態を見せ、ネット上では呆れる声が噴出しました。

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4. 82人の女性たちが「無言の抗議」

審査員の過半数を女性が占めた今年のカンヌですが、コンペティション部門に選ばれた21作品のうち、女性監督によるものはわずかに3作品のみ。これには、審査員長であるケイト・ブランシェットも失望感を表明していました。 また、アメリカのプロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインによるセクハラ・性的暴行問題に端を発する「me too」運動が世界中に広まったこともあり、映画業界における女性の権利がいかに低いかが露呈されています。 それを踏まえ、5月12日の夜、今回のカンヌに参加した女性たちによる、映画業界における性差別に対する抗議運動が行われました。この運動は、彼女たちがレッドカーペットが敷かれた階段を登り、映画祭のメイン会場に向かって無言で静止する、というもので、女性が映画業界で成功するのがいかに困難かを表現しました。 参加者は、今回の審査員であるケイト・ブランシェットやクリステン・スチュワート、レア・セドゥ、カジャ・ニン、エヴァ・デュヴァネイらはもちろん、マリオン・コティヤール、ジェーン・フォンダなどの女優陣や監督のパティ・ジェンキンス、さらには今年で90歳を迎える「ヌーヴェル・ヴァーグの母」アニエス・ヴァルダなど総勢82人でした。

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5. 是枝裕和監督最新作『万引き家族』が大絶賛!

万引き家族 カンヌ
​(C)2018『万引き家族』 製作委員会

今回のコンペティション部門には、日本から是枝裕和監督の最新作『万引き家族』が出品されました。 2001年の『DISTANCE』以来、『誰も知らない』、『そして父になる』、『海街diary』と過去に4度、カンヌのコンペティション部門に選ばれた是枝監督。そのうち、『そして父になる』は審査員賞を受賞しました。 同作は5月13日にカンヌで上映され、2200席もの会場は見事、満席に。上映後は9分間に及ぶスタンディングオベーションを受け、出演者のリリー・フランキーが男泣きを見せる一幕も。海外メディアからも好評で、絶賛の声が続出しています。 なお、映画『万引き家族』は、6月8日に日本公開されます。

6. 濱口竜介監督『寝ても覚めても』で観客総立ち!

寝ても覚めても カンヌ
(c) Kazuko WAKAYAMA

そして今回はもうひとつ、日本からのコンペ出品作品がありました。気鋭の濱口竜介監督の最新作『寝ても覚めても』です。 濱口竜介監督は東京芸術大学大学院映像研究科を卒業後、主にインディーズ映画の分野で活動してきましたが、2015年の『ハッピーアワー』がロカルノ国際映画祭で絶賛されるなど、その特異な作風が世界的な注目を集めています。 今回、初のカンヌ入りを果たした濱口監督。5月14日に行われた公式上映には、濱口監督のほか、主演の東出昌大と唐田えりかが登場しました。上映終了後、エンドクレジットの段階から始まった拍手は10分以上にわたり、2000人もの観客が総立ち。絶賛の嵐が吹き荒れました。 『寝ても覚めても』の日本公開は、9月1日になります。

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7. テリー・ギリアム監督が執念で完成させた新作、ついにカンヌへ!

テリー・ギリアム
©Vivienne Vincent/Landmark Media. Landmark Media/Newscom/Zeta Image

テリー・ギリアム監督が長年に渡って完成を願いつつも、約20年の間に8回も制作中止に追い込まれた映画『The Man Who Killed Don Quixote』がようやく完成!今回のカンヌで初めて公開されることになりました。 今回の上映の直前には、撮影で使った教会から損害賠償を請求する訴えを起こされたり、以前このプロジェクトに関わっていたプロデューサーが突然この映画に対して訴訟を起こしたり、挙げ句の果てにはギリアム監督自身が心臓発作を起こすなどのハプニングが続出。 一時は上映が危ぶまれましたが、結局、無事に5月19日に上映されることに。上映に際してテリー・ギリアム監督もカンヌ入りする予定です。

8. あの『2001年宇宙の旅』が公開50年を記念し70mm上映!

5月12日の夕方には、スタンリー・キューブリック監督によるSF映画の名作『2001年宇宙の旅』が上映されました。 この上映は、1968年に同作が初公開されて今年でちょうど50周年を迎えたことを記念したもの。キューブリックは生前、自らが手がけた映画のフィルムの状態や視覚的な効果に対してこだわりを見せていたことで知られるため、今回はより画質の綺麗なオリジナルの70mmフィルムでの上映を実現。 上映フィルムのプリントにあたっては、『2001年宇宙の旅』に大きな影響を受けたことで知られるクリストファー・ノーラン監督がノーラン監督の常連キャメラマンであるホイテ・ヴァン・ホイテマとともに監修。オリジナルの70mmネガから新たに色調整を施してポジフィルムをプリントしました。

今回の上映には監修者のノーラン監督はもちろん、『2001年宇宙の旅』で主演した俳優のケア・デュリア、キューブリックの長女・カタリーナ・キューブリック、キューブリックの義弟でプロデューサーのヤン・ハーランが登場し、会場を沸かせました。

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9. ゴダールがスマホ越しにカンヌ出席!

ジャン=リュック・ゴダール
©Abaca Press/Khayat Nicolas/Sipa USA/Newscom/Zeta Image

さて、『2001年宇宙の旅』が公開されたのと同じ1968年には、もう一つ忘れがたい出来事がありました。それは、カンヌ国際映画祭の粉砕事件です。当時の官僚主義的な映画祭の姿勢に怒った映画人たちが映画祭を無茶苦茶にし、中止に追い込んだのです。 事件を引き起こした映画人の中には、先鋭的な映画人・ジャン=リュック・ゴダールもいました。この出来事はフランス全体に影響を及ぼし、やがて五月革命に発展するきっかけとなりました。

それからちょうど50年が経った今回のカンヌ。5月11日、いまや映画史に名を刻む巨匠となってしまったジャン=リュック・ゴダールの最新作『Le livre d'image(原題)』が上映されました。 今年で88歳を迎えるゴダールはカンヌから遠いスイスに住んでおり、高齢のためにカンヌへ足を運ぶことが難しくなっていました。しかし上映翌日、なんとゴダールがスマートフォンのビデオ通話を通して記者会見に参加。記者たちの質問に答え始めたのです! 会見は、質問のある記者が前に出てスマホ越しにゴダールに質問。スイスの自宅にいるゴダールがそれに答える、という前代未聞のものでした。 各国の記者が質問をする中、日本人の記者が英語で質問すると「自分の国の言葉でなく、みんな英語で話すんだな」とジョークを飛ばし、いざ質問を終えると「あー、そうですか」と突然日本語で答えるなど、難解な映画作家とは思えぬお茶目な一面を見せました。

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ゴダールの新作短編「西風」の正体は?

カンヌでの新作の上映を目前に控える中、突如ゴダールによるものとされる短編映画『Vent d'ouest(西風)』がYouTube上で公開されました。 様々なフッテージに大きな文字のテロップが重なるという近年のゴダール作品に類似した作風が見られるこの動画。1970年にゴダールが『東風』という映画を制作していたこともあり、何の公式アナウンスもなく公開されたこの「新作映画」は、ネット上で小さからぬ注目を集めました。 しかし数日後、実はゴダールとは全く無関係な贋作であることが判明。作中で流れるゴダール本人によるものとされるナレーションも、第三者が声を似せていただけでした。 見る者のネットリテラシーが問われるような出来事でしたが、今でも贋作が作られてしまうほどゴダールが愛されているということかもしれません。

10. ラース・フォン・トリアー監督の新作上映中に退席する観客が続出!

2011年のカンヌ国際映画祭で『メランコリア』を上映した際、ヒトラーに関する発言を行った結果、カンヌから追放されてしまったラース・フォン・トリアー監督。 それから7年が経ち、ようやく追放命令が解除されたトリアー監督は、新作スリラー映画『The House That Jack Built』を携えて今回、久しぶりにカンヌ入りしました。 トリアー自身が「自身が手がけた中で最も残忍な作品」と語ったこの映画でしたが、5月14日のカンヌでの上映中、100人以上もの観客が退席したとの情報が。特に退席が相次いだのは、マット・ディロン演じる主人公の殺人鬼が女性や子供を惨殺するシーンだったようで、賛否両論ある映画となりそうです。

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今年のパルムドールは誰の手に!?

ここまで、5月16日時点で明らかになっているカンヌ関連のニュースを色々とまとめてみました。今年のカンヌはいつにも増して、様々な出来事が起こっています。 とはいえ、皆さんお待ちかねのパルムドール発表は来る5月19日!「黄金のシュロ」は一体誰の手に渡るのか?乞うご期待!