「キメハラ」にあなたは何を思う?『鬼滅の刃』大ヒットによる社会問題にどう向き合うべきか
映画「鬼滅の刃」大ヒットで社会問題が発生?話題の「キメハラ」とは
2020年10月16日に公開され、大ヒットとなっている『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。興行収入は公開から17日で157億円を記録し、『アバター』(2009年)を超えて日本国内の歴代映画興行収入ランキング10位にランクインしました。 いまや社会現象となっている本作ですが、そのあまりの熱狂ぶりに最近は「キメハラ」に悩む人も多いのだとか。 「キメハラ」とは「『鬼滅の刃』ハラスメント」の略で、映画を観ていない人に対して強引に鑑賞を勧めたり、観たけど面白いと思わなかったという人に対して、好みを否定するような発言をすることだそうです。SNSやニュースを賑わせている「キメハラ」について、少し考えてみましょう。
実際に不快な思いをした人がいる
ある情報番組で紹介され、SNSでも話題となった「キメハラ」。 SNSでは「上司から「鬼滅の映画まだ観てないの!?」と言われた」、「キメハラされるたびに観る気をなくす」「自分の好きな作品よりも鬼滅のほうが面白いと言われた。好きなものを否定するのはやめてほしい」など、不快な思いをしたと訴える投稿もあります。なかには「もう少し落ち着いたら観に行こうと思ってるのに……」という声も。 「『鬼滅の刃』よりも面白い作品はない」という人もいますが、それは個人の感想であって他人の好みを否定してもいいというわけではありません。
「ハラスメント」とまで言う必要があるの?という声
一方で、今回の「キメハラ」という造語に違和感を持つ人もいます。「『鬼滅の刃』ハラスメント」は、はたして「ハラスメント」という強い意味を持つ言葉を使う必要があるのでしょうか。「ハラスメント」とは「嫌がらせ、いじめ」のことで、他者に対する発言や行動などが本人の意図とは関係なく、相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、脅威を与えることを指します。 すでに社会問題として認識されている「セクハラ(セクシャル・ハラスメント)」や「パワハラ(パワー・ハラスメント)」などは、日本語では「〇〇ハラ」と略すことで問題の深刻さを隠しているという指摘もあります。そんな深刻な社会問題と「キメハラ」を同列に語ってもいいのでしょうか。 また、1つの作品を「ハラスメント」と関連付けることで作品自体に対するネガティブなイメージがついてしまうことも考えられ、「作品に罪はない」という声もあがっています。
「君の名は」「アナ雪」でも同じ経験をした人も
『鬼滅の刃』に限らず、1つの作品が大流行すると「まだ観てないの!?」「観たほうがいいよ!」と言われた経験がある人は多いのではないでしょうか。今回の「キメハラ」の話題で「『アナと雪の女王』のときのことを思い出した」という人や「『君の名は。』のときもそうだった」と振り返る人も。 映画に限らず、流行しているからといってそれに乗っていない人を批判するのは無意味なことです。人にはそれぞれ好みの違いやタイミングがあり、それを他人がどうこうすることはできないと知ることが大切です。
流行は流行、自分のタイミングで最高のエンタメ体験を
今回の「鬼滅の刃」に限らず、さまざまな物事に関して「〇〇を知らない人は人生損してる!」というのは、よくある発言だと思います。好きなものを共有したい、共感されたいという気持ちは誰にでもあるものですが、興味のない相手や意見の違う相手を否定するのは避けたいですね。 また「鬼滅の刃」のように原作漫画やアニメ版があるもの、映画がその延長線上にある作品は、流行しているからといっていきなり映画だけ観ても楽しめない可能性もあります。それはエンタメ体験としてもったいないものになってしまうのではないでしょうか。 好き嫌いは人それぞれ。興味を持つタイミングも人それぞれです。お互いに好きな作品をおすすめしあいながらも意見を押し付けない、自由で思いやりのある関係を築きたいですね。