2020年12月12日更新

2020年、映画市場で何が起こった?コロナの影響を受けた1年を振り返る

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2020映画市場振り返りサムネイル

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激動の2020年!コロナ禍の映画業界を振り返る

新型コロナウイルス感染症によるパンデミックで激動の年となった2020年。世界的に経済活動が打撃を受けた1年でしたが、特にエンターテイメント業界への影響は計り知れないものがあります。映画業界も、もちろんその1つ。 コロナ禍の中、日本の映画業界では何が起こっていたのでしょうか?映画館勤務の筆者が体感した激動の2020年を、ここで振り返っていきましょう。

前代未聞!劇場公開延期が続出

「ドラえもん」を皮切りに3月から公開延期が続出

新型コロナウイルス感染症の存在が、マスコミを賑わし始めたのが2月。この頃にはもう映画館は、3月の春休みを迎える準備に入っていました。3月といえば映画「ドラえもん」の新作が封切られ、例年なら映画館は家族連れで賑わう月です。 ところが、3月の初めから全国の学校の一斉休校が決まり、これを受けて3月6日公開の予定だった『ドラえもん のび太の新恐竜』は公開延期。それから続々と公開延期となる作品が発表され始めました。 外出自粛や新作の公開延期もあり、映画館への足が遠のく中、臨時休業する映画館も続出。そして全国に緊急事態宣言が出された4月16日、ついに全国的に映画館が営業休止になりました。

6月から映画館が再開!徐々に延期作も公開

全国的な緊急事態宣言は5月25日に解除され、映画館は5月末から、学校も6月から再開。6月には公開が延期されていた作品も、徐々に公開日が発表されるようになっていきます。 とはいえ、まだまだ映画館で公開できる作品は足りない状況。6月は新作と旧作が入り乱れていました。例えば『君の名は。』や『アベンジャーズ』といった過去のヒット作が、新作『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』や3月公開の『Fukushima 50』などと一緒に上映する稀有なスケジュールが組まれています。

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ジブリ作品のリバイバル・ヒットと夏の興行の復活

『千と千尋の神隠し』ハク、千尋
© 2001 Studio Ghibli・NDDTM

映画館再開を待ち望んでいたコアな映画ファンが戻りつつあった6月、その月末には『千と千尋の神隠し』などジブリ作品4作が劇場でリバイバル上映されることに。これが、ファミリー層も映画館に戻るきっかけとなったように思います。 ジブリ作品が映画館への動員を牽引した7月上旬を経て、下旬からは話題作『コンフィデンスマンJP プリンセス編』と『今日から俺は!!劇場版』が公開。この2作が、子どもたちを含めた全年齢層の観客を映画館に戻してくれました。 しかしこの頃からコロナ第2波の到来が報道されつつあり、8月7日に公開延期していた『ドラえもん のび太の新恐竜』が再延期の可能性も。それでも「ドラえもん」は予定通り公開し、一斉休校のため短くなった夏休みの中でも多くの家族が映画館を訪れました。

『TENET テネット』以外、洋画大作は軒並み公開延期

テネット、tenet
© 2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

映画館に観客は戻ってきましたが、依然としてマーベル新作『ブラック・ウィドウ』や『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』といった洋画の大作は公開延期が続いています。これは、コロナ感染拡大が深刻な欧米の影響に他なりません。 映画館でのIMAX上映に執念を燃やすクリストファー・ノーラン監督の新作『TENET テネット』は無事9月に公開されましたが、映画館閉鎖が続く欧米での興行収入は期待されたものではありませんでした。洋画に飢えていた日本の映画ファンには吉報で、26億円超えのヒットとなっています。 2020年公開予定だった洋画の大作は公開日が二転三転し、ほとんどが2021年以降に延期されていますが、今後の感染状況ではさらなる再延期も考えられるかもしれません。

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動画配信サービスでいきなり配信!動画配信サービス市場の拡大

『ムーラン』
9月4日(金)よりディズニープラスで配信中 © 2020 Disney 

コロナ禍のエンターテイメント業界で市場が拡大したといえば、動画配信サービスでしょう。映画館に行けない自粛期間には、自宅で映画を鑑賞する機会が増えました。2020年以前から映画界にも存在感を示し始めていたNetflixはオリジナルドラマや映画を次々配信し、ヒット作を連発しています。 劇場公開を見送った作品が、動画配信サービスでいきなり配信する流れになってきたのも2020年。特に、公開延期が続いて劇場公開を断念したディズニー大作、実写版『ムーラン』が、ディズニープラスで9月からプレミアアクセス対象作品として配信されたことは衝撃でした。 コロナ禍にあえぐミニシアターを救うために始まった「仮設の映画館」も、配信サービス優勢の時代を乗り切るための1つの方策。「仮設の映画館」はインターネット上で特定の劇場公開作品が視聴できるサービスで、そこでの鑑賞料金は興行収入にカウントされます。 映画館が再開した後は“本物の映画館へお越しください”というのも、ミニシアターならではの重要なコンセプトです。

映画ファンによるミニシアターを救う動き

自粛期間中の3月から5月にかけて、「ミニシアター・エイド基金」や「SAVE the CINEMA」といった、映画関係者や映画ファンによるミニシアターを救う活動が行われたことも思い出されます。日本の映画文化の多様さを守るため、多くの人々がこれらの活動に賛同しました。 クラウドファンディングでいち早く支援の輪を広げた「ミニシアター・エイド基金」は、映画監督の深田晃司と濱口竜介が発起人となって立ち上げたプロジェクト。「SAVE the CINEMA」は、政府への要望書を提出するための署名活動を行いました。 前述の「仮設の映画館」や、国内のインディペンデント映画を中心とした動画配信サービス「Cinema Discoveries (シネマ・ディスカバリーズ)」なども、ミニシアター救済のため立ち上がったプロジェクトです。

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ポップコーン禁止など、鑑賞方法に変化も

ポップコーン 映画館 フリー画像

5月末に全国の映画館が再開した際、一番初めに行われたのが徹底したコロナ対策でした。座席や手の触れる場所の拭き上げ清掃をはじめ、収容率50%で1席間隔を空けての座席販売やマスクの常時着用、劇場内の換気システム周知など、様々な対策が講じられています。 しかし9月19日にイベント開催制限の緩和が発表されると、それまで行われてきたコロナ対策にも変化が!映画館は全席開放が可能になりましたが、その代わりに劇場内での飲食は禁止になり、映画館でポップコーンが食べられないという事態に。常時50%の収容率を継続するシネコンもあり、各社により対応にも違いが生じました。 一方で、映画館での「ニューノーマル」は浸透しつつあるようで、マスク着用や1席間隔にはほとんどの人がすでに「ノーマル」と受け取っているようでもあります。 そんな中、人との接触がほとんどないドライブインシアターが再評価されています。ドライブインシアターを開催するプロジェクト「ドライブインシアター2020」がクラウドファンディングで資金を集めたり、横須賀に常設ドライブインシアターがオープンするなど新たな活動にも注目です。

興行収入の落ち込みは映画業界をどう変える?

鬼滅の刃 無限列車 煉獄
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

年間興行収入2611億円、公開本数1278本で、過去最高を記録していた2019年の日本映画業界。しかしそんな高い山から一気に大幅な転落を余儀なくされたのが、コロナ禍の2020年です。 2019年の興行収入第1位は141億円を超えた『天気の子』で、2〜4位までを『アナと雪の女王2』など100億円超えのディズニーとピクサー作品が占めていました。しかも12位の『ドラえもん のび太の月面探査記』までが50億円超え。2020年に50億円を超えたのは1位の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』と2位の『今日から俺は!!劇場版』のみです。 しかし!1位を突っ走る「鬼滅の刃」が、苦境にある日本の映画業界の救世主であることは間違いありません。2020年12月12日現在、2位の「今日俺」を大きく引き離す288億円超えを出しており、今後はどれだけ歴代興行収入ランキングを塗り替えるかが焦点。 洋画の大作がほとんど公開されず、公開本数も過去最高の前年と比べれば圧倒的に少ない状況ですが、「鬼滅の刃」フィーバーによって、これからの映画業界に一筋の光明が見えてきたようにも感じます。

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これからの映画業界はどうなる?ニューノーマルは定着するのか

コロナ禍に翻弄された2020年、一時は映画館の再開もほど遠く感じられたものです。翻って後半、このような「鬼滅の刃」ブームに沸くことになるとは思いもよりませんでした。 しかしそのブームが去った後は?これからの映画業界はどうなっていくのか?コロナ禍が残した負の遺産はかなりなものかもしれません。ニューノーマルはこのまま定着するのか、あるいはコロナ収束後には元通りになるのかもいまだ予測がつきませんが、2021年にはより明るい話題が語れるよう祈っています!