ついにBLが市民権を得る時代!ボーイズ・ラブの実写化ラッシュが止まらないっ【『さんかく窓の外側は夜』公開 】
BL作品の実写化がヒット連発!日本のBL実写映画&実写ドラマこれまでの歩みを振り返る
岡田将生×志尊淳のW主演で話題のホラー映画『さんかく窓の外側は夜』が、2021年1月22日に公開!実は本作の原作は、ヤマシタトモコによる同名のBL漫画です。 BLとは「ボーイズ・ラブ」の略称で、男性同士の恋愛を描いた主に女性向けの作品ジャンル。以前はひっそり隠れて楽しんでいたものですが、2000年代に入ってからは徐々に市場が拡大しながら多様化し、大衆的なジャンルとなってきました。 そこで本記事では、これまでのBL漫画の実写化作品の歴史を、5年スパンで振り返ってみましょう。実写化の波はどこから始まったのでしょうか?
2020年のBLは本当にスゴかった!【2次元から3次元へ、腐女子のスマホから映画館のスクリーンへ】
まず初めに、2020年のBL漫画の実写化映画を振り返ってみましょう。 BLを楽しむ女子を「腐女子」と呼ぶのも定着してきた近年、腐女子の日常を描いた『私がモテてどうすんだ』や『ヲタクに恋は難しい』が2020年に映画化。男子同士が触れ合うだけでBLを妄想できる特殊な才能を持っている彼女たちが、BL界を支えていることが明らかになりました。 BLや腐女子というワードが一般化し、BL漫画の実写作品でも抵抗なく映画館へ観に行くことができるようになったことも追い風に。2020年は実に豊作な年であり、『リスタートはただいまのあとで』や『life 線上の僕ら』など恋愛描写を丁寧に描いた良作も生まれています。 DAIGOの実姉・影木栄貴が原作者である『LOVE STAGE!!』が、アニメ化を経て実写化されたのも昨年。また、ハードな性描写がある『性の劇薬』も劇場公開されて、BL界隈をザワつかせました。 ここでは、2020年特に話題となったBL実写化作品を2作紹介しましょう。
ドラマ「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい (チェリまほ)」(2020年10月)
『仮面ライダービルド』の万丈役で知られる赤楚衛二が単独初主演で、劇団EXILEの町田啓太と共演したドラマ。原作は、Twitterで話題となった豊田悠による同名BL漫画です。 童貞のまま30歳を迎え、触れた人の心の声が聴こえる魔法使いになった安達清を赤楚衛二、安達に密かに恋心を寄せる同僚の黒沢優一を町田啓太が演じました。 近年稀にみる純粋なBL作品で、愛称「チェリまほ」のハッシュタグでSNSを中心に大きな盛り上がりを見せました。海外での人気も高く、チェリまほ効果で2人の初写真集がともに重版決定するなど、今後の活動にも大いに期待がかかっています。
映画『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020年9月)
『失恋ショコラティエ』の水城せとなによる同名漫画を、関ジャニ∞の大倉忠義主演で実写映画化。『劇場』(2020年)の行定勲が監督を務め、成田凌が相手役として共演しました。 既婚者で異性愛者の大伴恭一を大倉忠義、彼に片想いを続ける大学時代の後輩でゲイの今ヶ瀬渉を成田凌が演じ、2人の長年にわたる恋愛模様を追っています。 ジャニーズ所属のタレントがBL作品で主演、しかも濃厚なベッドシーンもあるというのは、かなり強烈なインパクトが!原作同様、「受け」と「攻め」の役割を固定しない「リバ」の関係性も描いている点がまた革新的です。
2015年〜2019年までのBL実写化作品【おっさんずラブ&有名BL漫画原作が次々にヒット】
次は年代を遡って、2015年から2019年までのBL実写化作品を見ていきましょう。 まず「おっさんずラブ」シリーズの成功によって、ドラマ界でSNS発信の「視聴熱」が活発化し、劇場版にまで発展したことは大きな実りでした。 それまでのBL漫画原作の実写化作品は、少女漫画が根底にあるあくまでも女子ウケするBLでしたが、『おっさんずラブ』は多くの男性鑑賞者も生んだことから、いよいよBLが大衆化してきた感がありました。 振り返ると2015年には、『宇田川町で待っててよ。』や『セブンデイズ FRIDAY→SUNDAY』といった人気BL漫画の実写映画が公開。2017年から2019年にかけて『ひだまりが聴こえる』や『ダブルミンツ』、『花は咲くか』や『パタリロ!』など多様なジャンルのBL実写も増えていきました。
ドラマ&映画「おっさんずラブ」シリーズ(2016年〜)
2016年に単発ドラマとしてスタートした「おっさんずラブ」シリーズ。2018年に連続ドラマが放送され、前述の視聴熱を中心に話題となり大ヒット作に。2019年にはシーズン2が放送、同年8月には劇場版が公開され、一大ブームを巻き起こしました。 本シリーズはBL漫画が原作ではなく、オリジナル脚本。田中圭演じる春田創一を主人公に、彼に恋する乙女な「おっさん」である黒澤部長と春田の後輩・牧凌太との三角関係を描いたラブ・コメディです。黒澤部長を演じた吉田鋼太郎と、牧を演じた林遣都のキャスティングの絶妙さも功を奏しました。
ドラマ&映画「ポルノグラファー」シリーズ(2018年~)
丸木戸マキの同名BL漫画の実写シリーズ「ポルノグラファー」。2018年のドラマを皮切りに、続編「インディゴの気分」が2019年に制作され、さらに劇場版『ポルノグラファー~プレイバック~』が2021年2月に公開予定です。 純情な大学生・久住春彦と官能小説家・木島理生との純愛を追っていますが、単なる恋愛成就の話ではなく、1人の作家の人生を描いた意欲作でもあります。 久住を演じた猪塚健太と、木島を演じた竹財輝之助の役のハマり具合と演技力によって、シリーズ化するほどの人気作に。VODサービス・フジテレビオンデマンド(FOD)で配信されたオリジナルドラマであり、FOD史上最速100万回再生を突破したことでも注目されました。
2010年~2014年までのBL実写化作品【BL実写ヒット時代の準備期】
2010年から2014年の間に実写化されたBL漫画は、富士山ひょうたの『純情』(2010年)、秋月こおの『富士見二丁目交響楽団シリーズ 寒冷前線コンダクター』(2012年)、柊のぞむの『どっちもどっち』(2014年)と、数はそれほど多くありません。 なかでも「富士見二丁目交響楽団」は、秋月こおのBL小説シリーズが原作であり、挿絵を西炯子が担当していることを考えると、やはり少女漫画寄りの作品です。実際、同シリーズが始まった1994年当時は、BLという言葉が生まれて間もない頃。まだ商業BLという市場も草創期で、少女漫画の派生ジャンルといった感覚でした。 しかし2014年、少女漫画とは一線を画すBL漫画が実写映画化されます。それは、ヨネダコウの『どうしても触れたくない』。これが、その後のBL漫画の実写映画化の波を呼ぶ1作となったのではないでしょうか。
映画『どうしても触れたくない』(2014年)
ヨネダコウは、2020年に公開された劇場アニメ『囀る鳥は羽ばたかない』の原作者としても有名。漫画『どうしても触れたくない』は2008年に、2014年にはスピンオフ『それでも、やさしい恋をする』も刊行されました。 前の職場で同僚の恋人にゲイの噂を流され、人を好きになって傷つくことに臆病になった嶋俊亜紀(米原幸佑)。新しい職場で正反対の性格の外川陽介(谷口賢志)に出会い、徐々に惹かれていきます。 異性愛者とゲイの恋愛をテーマに描いており、2014年と2016年にLGBT映画祭でも2度上映されるなど、BLの枠を超えた作品として認知されたようです。
2005年~2009年までのBL実写化作品【元祖BL実写作品群】
2005年から2009年の大きなトピックとしては、BL作品の実写化の黎明期であり、映画「タクミくん」シリーズが公開されたことでしょうか。 実写映画化されたBL漫画としては2007年の『愛の言霊』もありましたが、まだまだBL界は漫画と小説が主流。2Dの世界がいきなり3Dで実写化されるなど、考えも及びませんでした。 もちろん、BLという言葉が生まれた1990年代にも、BL漫画・小説のドラマCD・アニメ化はありました。1992年にOVA化された吉原理恵子の『間の楔』や、尾崎南の『絶愛-1989-』も懐かしい作品です。 ごとうしのぶのBL小説「タクミくん」シリーズが初めて実写映画化されたのは、2007年のことでした。ここからBL作品の実写映画化が、徐々に始まっていったのです。
映画「タクミくん」シリーズ(2007~2011年)
#タクミくんシリーズ
— タクミくんシリーズ公開10周年(公式) (@takumikun_10) May 8, 2020
皆さまのあたたかいお言葉、本当にありがとうございます pic.twitter.com/byqfB0GwI2
「タクミくん」シリーズは、BL小説の文庫レーベル「角川ルビー文庫」で、1992年から2014年まで続いた、ごとうしのぶによる人気BL小説シリーズ。イラストはおおや和美が手がけ、実写映画化以外に漫画・ドラマCD化もされています。 葉山託生(タクミくん)を主人公に、全寮制の男子校で起こる恋愛模様を描いた作品です。タクミくんを演じたのは、元D-BOYSの柳下大。ミュージカル「テニスの王子様」の海堂薫役でも知られています。実写映画シリーズは、2011年までに5作品が制作されました。
2021年もBL実写作品がとまらない!BLの未来にも期待【1/22『さんかく窓の外側は夜』公開 】
こうして振り返ってみると、BLの歴史の奥深さに改めて驚きます。ボーイズ・ラブの出発点は、「24年組」と呼ばれた竹宮惠子の『風と木の詩』や萩尾望都の『ポーの一族』や、雑誌「JUNE」などの少女漫画でした。 初期は「禁断の恋」を尊ぶ耽美好きの少女たちのものだったBLが、次第に多様化してメジャーになり、現在ではLGBTジャンルにも食い込むような作品を生み出しています。 2021年1月22日公開の映画『さんかく窓の外側は夜』をはじめ、劇場版「ポルノグラファー」や、よしながふみの漫画『きのう何食べた?』の実写ドラマの劇場版など、2021年も豊富なラインナップ!さらに2020年から話題の新ジャンル「タイBL」も見逃せません。今後もBL界の動向に注目です!