2021年6月30日更新

映画『ライトハウス』はA24が送り出す傑作スリラー!あらすじや元ネタの事件まで解説

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『ライトハウス』
(C)2019 A24 Films LLC. All Rights Reserved.

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映画『ライトハウス』のあらすじ&キャスト情報を解説

2021年7月9日公開

絶海の孤島で2人の灯台守が狂気にとりつかれていく姿を芸術的な映像で描いた映画『ライトハウス』が2021年7月9日に公開されます。 北米では2019年秋にインデペンデント系の映画やテレビの製作・配給を手掛けるA24によって公開されて話題になっていたこの映画。2019年カンヌ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞したほか、2020年アカデミー撮影賞にもノミネートされ、日本公開が待たれていました。 W主演を務めたのは、ウィレム・デフォーロバート・パティンソンというベテランと若手の2大スター!2人の個性が激突する体当たりの演技も大きな見どころです。 この記事では映画『ライトハウス』のあらすじや見どころ、監督・キャストの情報を解説します。

映画『ライトハウス』のあらすじ

19世紀末のアメリカ北東部・ニュー・イングランド沖の孤島にイーフレイム・ウィンズロー(ロバート・パティンソン)は灯台守の仕事をするためにやって来ます。 彼の上役は、この島で長い間灯台守を務めてきたトーマス・ウェイク(ウィレム・デフォー)です。 着任早々ウィンズローは、貯水タンクの消毒、灯台のペンキ塗りから最上階に燃料を運び上げるといった重労働をウェイクから押し付けられます。さらにウィンズローの前の灯台守は正気を失って死んだらしく灯台守の仕事に不信感が募ります。 ウェイクはウィンズローに灯台のランプがある部屋に入ることを禁じる一方、自分は夜にランプの前で裸になる奇癖があります。またウェイクは、片目しかないカモメは死んだ水夫の生まれ変わりである、と言ってウィンズローに殺すことを禁じます。 それでもカナダの製材所をやめて新天地を求めて灯台守の仕事についたウィンズローは、忍耐を重ねて1カ月の任期満了を目前に迎えました。 しかし、彼が島を去る日の前日、ウィンズローは片目のカモメを殺してしまいます。すると島は激しい嵐に襲われ、ウィンズローを迎えに来る補給船は島に近づけなくなってしまいました。 酒を飲んで嵐が過ぎるのを待つふたりは、やがて正気を失っていき……。

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元ネタになった事件とは?

映画『ライトハウス』はエドガー・アラン・ポーの未完の小説と、1801年にイギリス・ウェールズの孤島の灯台で実際に起きた事件をもとにしています。 もとになったポーの小説は彼が死の直前、1849年に着手して絶筆となった作品で、ノルウェーの灯台守の日記の形をとっています。この小説は最初の3日のエントリーだけで途切れており、ポーの死によって中断されたものか、日記の書き手の死を意味するものか、謎に包まれた作品です。 映画『ライトハウス』は、最初このポーの小説をもとに灯台の島を舞台にしたゴースト・ストーリーとして構想されました。しかし、話に肉付けするため調査をすすめるうちに、ロバート・エガース監督は1801年にウェールズの灯台で実際に起きた事件に行き当たります。 その事件とは、孤島の灯台で2人の灯台守の1人が病死し、残された灯台守は死体と何週間も一緒に過ごすはめになって気が狂いそうになった、という出来事です。 この事件の灯台守のクリスチャン・ネームはふたりともトーマスというのですが、この点も『ライトハウス』を理解するのに重要なポイントとなります。

3つの見どころを解説!様々な映画のオマージュがある秀作

1.息もつけない主演2人の演技合戦

全編を通じて2人の灯台守以外はほとんど他の人間が登場しない映画『ライトハウス』の最大の見どころは、W主演を務める2人の俳優の熱演でしょう。 イギリスとアメリカ、若手とベテランというまったく異なる俳優の個性が激突する2人芝居。絶海の孤島で嵐に襲われる灯台の密室という極限状況で、彼らが幻想と狂気に侵されていく姿の緊迫感は筆舌に尽くし難いです。 この2人を演じるロバート・パティンソンウィレム・デフォーは、リハーサルでまったく異なる手法で役作りの準備をしたそうです。 前衛劇団の舞台での経験が豊富なデフォーが自発性を重視したのに対して、パティンソンは脚本にもとづいたディスカッションでリハーサルを行っています。

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2.初期映画を下敷きに製作された

映画『ライトハウス』の映像面での最大の特徴は、1.19:1という特殊なアスペクト比のモノクロ映像である点です。 100年以上前の写真のような色調に正方形に近い縦横比の画面が、昔の映画を観ているような幻想的な雰囲気を醸し出します。 1.19:1というアスペクト比は、1920年代後半から1930年代にサイレント映画からトーキーへの過渡期に使われたフォーマット。このアスペクト比を『ライトハウス』で採用するにあたって、エガース監督はこの時代の映画を何本も観て研究したと語っています。 特にエガース監督はスリラー映画『M』(1931年)などのフリッツ・ラング監督の複雑なカメラワークが大好きだとか。 ちなみにアスペクト比が物語の演出に寄与している作品はG.W.パープスト監督の『炭坑』(1931年)をあげています。鉱山事故の救助活動を通じて独仏両国民の絆が培われる物語のこの映画では、横幅の狭い画面が、垂直の煙突や狭い坑道の描写に効果的に使われています。

3.ギリシャ神話への目くばせ

神話や民間伝承、文学のエッセンスをいくつも織り込んで、幻想的かつ深みのある世界を作り出していることも『ライトハウス』の見どころの1つです。 エガース監督はもともとこの映画の舞台であるニュー・イングランド地方の出身ですが、19世紀の話し言葉を脚本に取り入れるため、当時の文学も研究しました。影響を受けた文学者としては、ハーマン・メルヴィル、ロバート・ルイス・スティーヴンソン、セアラ・オーン・ジュエットといった名前があげられています。 ウェイクのキャラクターのモデルは、「海の老人」と呼ばれ予言能力のある海神・プロテウス。その外見はアルブレヒト・デューラーの銅版画「海の怪物」を参考にしたそうです。 またウィンズローの運命には、天上の火を人間に与えたことでゼウスから罰せられるタイタン族の英雄・プロメテウスの物語が関係しています。

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映画『ライトハウス』の登場人物&キャスト

イーフレイム・ウィンズロー役/ロバート・パティンソン

ロバート・パティンソン
©Brian To/WENN.com

ウィンズロー役を演じるロバート・パティンソンは1986年生まれ、イギリス・ロンドン出身の俳優です。 15歳のころからアマチュア劇団で演劇をはじめたパティンソン。彼は『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2005年)や「トワイライト」シリーズ(2008~2012年)に出演して世界的に注目を集めるようになりました。 2010年代に入ってパティンソンは、演技力の要求される映画作家のインデペンデント作品にも積極的に出演するようになります。 デヴィッド・クローネンバーグ監督の『コズモポリス』(2012年)を皮切りに、『マップ・トゥ・ザ・スターズ』(2014年)、『奪還者』(2014年)、『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』(2016年)といった個性的な話題作への出演が続きました。 2020年に公開されたクリストファー・ノーラン監督のSFスパイ・スリラー『TENET テネット』では、主人公に協力する謎めいた男ニールを好演。2022年公開予定のマット・リーヴス監督の『ザ・バットマン』では主人公・ブルース・ウェイン/バットマン役を務めることが決まっています。

トーマス・ウェイク役/ウィレム・デフォー

ウィレム・デフォー
©Van Tine Dennis/ABACA/Newscom/Zeta Image

トーマス・ウェイクは、新人のウィンズローを監督してこき使う先任の灯台守です。 長いこと船乗りをしていたというウェイクは、海にまつわる伝説や迷信を信じています。さらに彼は大酒飲みでハーマン・メルヴィルの小説『白鯨』に出てくる船乗りのような独特の訛りでしゃべります。 ウェイク役を務めるウィレム・デフォーは1955年生まれ、これまで出演した映画の数は100を超えるアメリカの伝説的ベテラン俳優です。 地元ウィスコンシン州の大学で演劇を専攻していたデフォーは、前衛劇団シアターXの活動に専念するため大学を中退。シアターXの公演で欧米各地を4年間旅行した後、ニューヨークで劇団活動を続けます。 このとき創設に関わった劇団ウースター・グループの活動に、デフォーは2000年代まで参加することになります。 20歳代後半から映画に出演するようになったデフォー。彼はオリバー・ストーン監督の戦争映画『プラトーン』(1986年)やマーティン・スコセッシ監督の『最後の誘惑』(1988年)で演技派俳優として注目されるようになりました。 デフォーは個性的な容貌で1990年代からはアクション映画の脇役なども多数こなしています。サム・ライミ監督の『スパイダーマン』(2002年)におけるノーマン・オズボーン/グリーン・ゴブリン役や『ジョン・ウィック』(2014年)での凄腕殺し屋・マーカス役がその代表作です。

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話題のA24が贈り出す!監督を務めるのはロバート・エガース

A24とは?

『ライトハウス』の製作と米国における配給を手掛けた会社・A24は、2012年に設立されたアメリカのエンターテイメント企業。ニューヨークを拠点にインデペンデント系を中心とした映画やテレビ番組の製作、出資、配給を行っています。 「A24」という会社名は、創業者の1人であるダニエル・カッツが会社を設立しようと思い立ったときに車で走っていたイタリアの高速道路・A24にちなんでつけられました。 当時カッツはグッゲンハイム・パートナーズの映画ファイナンス・グループのトップを務めており、A24は同社から創業資金を調達して設立されました。 A24が初めて手掛けた劇場公開映画はロマン・コッポラ監督の『チャールズ・スワン三世の頭ン中』(2013年)。同年にはソフィア・コッポラ監督の『ブリングリング』も公開しています。 その後も独創的な作品の製作と配給で急速に成長したA24は、大手スタジオが幅を利かせるアカデミー賞を受賞する作品を送り出す力もつけてきました。 2016年のアカデミー賞では『ルーム』がブリー・ラーソンの演技で主演女優賞を受賞。2017年のアカデミー賞では『ムーンライト』が作品賞を含めて3部門を制しています。

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ロバート・エガース監督

ロバートエガース
©︎Dominic Chan/WENN.com/Zeta Image

『ライトハウス』の監督と脚本を務めたロバート・エガースは1983年生まれ、アメリカ・ニューハンプシャー州出身の映画監督、脚本家です。 ニューヨークの実験的劇団において演出や舞台プロデュースを経験した後、映画監督に転身したエガース。彼は2015年にアニャ・テイラー=ジョイ主演の歴史ホラー映画『ウィッチ』で長編映画監督デビューを果たしました。 17世紀前半のニュー・イングランドを舞台に、美人の長女が魔女ではないかと疑った家族が猜疑心から狂気の淵に沈んでいく姿を描いた『ウィッチ』。2015年のサンダンス映画祭でプレミア上映されたこの映画は、A24の配給で翌年全米劇場公開されました。 『ウィッチ』は約400万ドルの製作費に対して世界興行収入は約4,000万ドルというインデペンデント映画としては成功を収め、批評家からも高い評価を受けています。 この成功を受けてエガース監督が世に送り出した2作目の作品が、やはりニュー・イングランドを舞台にした映画『ライトハウス』なのです。

【7月9日公開】映画『ライトハウス』はA24が送り出す傑作スリラー

この記事では2021年7月9日に公開される映画『ライトハウス』のあらすじ、見どころ、キャストや監督について解説しました。 荒波や機械の重厚な低音を背景に、100年近く前の映画を思わせる幻想的な映像で描き出される男2人の緊迫のドラマ。ウィレム・デフォーとロバート・パティンソンの渾身の2人芝居は圧巻としか言いようがありません。 正方形に近いアスペクト比で大画面に映し出されるクローズアップの迫力も、ぜひ映画館で味わっていただきたいです。