『アイアムアヒーロー』最終回をネタバレ解説!意外な結末を考察
『アイアムアヒーロー』は『ビッグコミックスピリッツ』にて連載されていた青年漫画です。作者は花沢健吾で、1人の男性を中心に謎の感染症でパニックとなった世界を描いています。 作り込まれた世界観を楽しめる本作では、様々な人物の様々な謎が入り乱れていました。そこで本記事では『アイアムアヒーロー』のあらすじを最終回までネタバレ解説しながら、多くの謎について考察していきます! 本記事では最終回までのネタバレを含むので、注意してください。
『アイアムアヒーロー』のネタバレあらすじ
最終回までのあらすじは?
35歳の漫画家である鈴木英雄(すずきひでお)は、デビュー作が打ち切られて以降パッとしない活動に悶々としていました。ネームを持ち込んでも相手にされず、唯一の癒しである恋人から売れっ子漫画家である元彼の話を聞く日々。 そんな中彼の周りで、謎のウィルスが蔓延し人間が常軌を逸した行動をとる事件が起こります。恋人さえも異常な身体能力を得て理性を失う「ZQN」になってしまい、英雄は富士の樹海にまで逃亡しました。 樹海で半ZQNの女子高生、早狩比呂美(はやかりひろみ)と出会った彼は、行動を共にするように。そしてアウトレットモールにいた看護師の小田つぐみも旅の仲間に加え、一行は足を進めます。しかし小田がZQN化してしまい死亡、残された2人は希望を見出し東京へと向かいました。 一方で他の生存者は、埼玉にいる闇を抱えた変人「来栖(クルス)」に希望を抱くようになります。そして漫画家である中田コロリは、支配者である浅田のもと池袋の高層ビルに籠城していました。
最終回のネタバレあらすじは?
半ZQNとなった引きこもりの江崎崇(えざきたかし)が、来栖を倒し組織を奪取。こうして3つの組織が、池袋に集結します。 ヘリコプターの操縦資格を持っているためトップに立つ浅田に不満がある人間は、コロリを含め少なくありませんでした。そんな中江崎たちがヘリコプターを奪うため、ビルに攻め入ってきます。英雄も池袋に到着し、ビルの中にはZQNも侵入、ヘリコプターを争うパニックに陥りました。 最終的にヘリコプターで脱出できたのは、苫米地(とまべち)、コロリ、瀬戸、おばちゃん、まーくんの5人のみです。5人は島に着陸し、穏やかな日常を取り戻します。 一方、ビルを間違えた英雄は、たった1人で池袋に取り残されていました。そしてZQNもいなくなった雑草だらけの世界で、彼は新たな生活を始めたのです。
【考察1】鈴木英雄がZQN化しない孤独な理由
最後までZQN化しなかった鈴木英雄ですが、彼は決してZQNに触れなかったわけではありません。 ウィルスの体内侵入がZQN化のトリガーであり、ZQNの体液が体内に入るとZQNになってしまいます。そして英雄はZQN化した彼女に噛まれたり、ZQNに飲み込まれたりしていました。 実は作中にて、心に闇を抱える人間はZQNになりにくいと判明しています。半ZQNの比呂美にもいじめられていた過去がありました。英雄も悪癖と言える妄想癖があり、常に劣等感に苛まれています。そんな彼だったからこそ、ZQN化せずに済んだのでしょう。 また半ZQNにすらならなかったため、もともと彼は抗体を持っていた可能性もあります。
【考察2】早狩比呂美の目的は?
比呂美は自ら大型ZQNに取り込まれます。多様性ではなく1つになることを目的とした大型ZQNの中で尚、彼女は意識を保っていました。しかし対峙した英雄に撃たれ、比呂美は怒りに支配されてしまったのです。 そして大型ZQNに包まれ、自身も取り込まれてしまう英雄。勘違いから怒りに支配された比呂美は、それでも大型ZQNを操り英雄を助けたのでしょう。最後は「生きて」という言葉を、彼に送っています。
【考察3】おばちゃんはなぜ若返ったのか?
来栖のもとにいたおばちゃんは、ビルでの戦いでZQNに取り込まれてしまいます。そこをコロリに助けられた彼女は、なぜか20代ほどの見た目に若返っていたのです。 16巻で描かれたイタリアにて、ZQN化は宇宙人の侵略であり、数を増やすために人間と宇宙人のハイブリッドを作ろうとしていると語られていました。そのため明言はされていませんが、おばちゃんが若返ったのは子を産む女王蜂に選ばれたからかもしれません。
【考察4】ZQNとは何だったのか
ZQNの基礎知識
ZQNとは作中の世界に突如出現したゾンビのような生き物です。感染していない人間に噛みつく習性があり、噛みつかれるとZQN化してしまいます。異常に高い身体能力を持ち、自我を失ってしまっているのが特徴です。 人間だった時代の記憶や能力が変化に受け継がれる傾向があり、より身体能力が高い種類なども存在します。頭を破壊したり首を切り落としたりと、完全に致命傷となる攻撃を与えると撃退できました。
ZQNの謎
作品の主題となるZQNの正体は、作中で明かされていません。しかし匿名掲示板では宇宙人による書き込みがあり、地球侵略を企てる彼ら宇宙人の仕業と考えるのが1番自然でしょう。 人間の中にはこれまでの日常を地獄と感じ、ZQNに塗れた日々の方が幸せだと考える人もいます。宇宙人は9割の人間を滅ぼすと語っていました。本人たちが話していたように、現実に絶望していたクルスは選ばれた存在だったのかもしれません。
【考察5】クルスとは?
物語開始時点では個人名であったクルスですが、後半では半ZQNの総称として使われています。 心を閉ざしていた人物がZQNに噛まれても、完全なZQNにはなりません。理性や知能を失わないまま、高い身体能力を手に入れます。そんな半感染者がクルスです。 作中に登場するクルスには、いじめられていた比呂美や引きこもりだった江崎、半身不随だったスコップの男などがいました。
『アイアムアヒーロー』最終回の感想
読者の反応
「ZQNの謎」「英雄の存在」「比呂美のその後」など、『アイアムアヒーロー』には多くの謎がありました。しかし本作はほとんどの伏線を回収せず、最終回を迎えています。 この結末に読者の感想は、まさに賛否両論でした。もちろんしっかりと楽しめた人もいれば、中には楽しく読んでいたのに突然の終了に困惑した人もいたようです……!
あの結末は作者の意図通りだった!
伏線を回収しない突然の終了に、読者の間で打ち切りでは?という噂も流れました。しかし元担当編集者がツイッターにて、『アイアムアヒーロー』は予定通りの終わり方だったと語っています。 『ボーイズ・オン・ザ・ラン』の作者でもある花沢健吾は、パッとしない男性をリアリティ満載で描くのが特徴的な漫画家です。そのため謎がすべて明かされるわけではない、リアリティを追求したラストになったのではないでしょうか。 ゾンビ作品ではなく、ヒューマンドラマ作品だと考えれば納得です。
主要キャラの活躍、生存状況
中田コロリ
中田コロリは英雄の恋人である、黒川徹子(くろかわてつこ)の元恋人です。英雄がライバル視している漫画家で、彼自身も英雄の才能を買っていました。 ZQNが発生してからはビルに籠城するコミュニティに所属し、補給隊長として活動していました。頭が良く状況判断能力も高いため、彼を慕うコロリ隊が存在します。 ビルでの戦いではヘリコプターでの脱出に成功し、その後は島で漫画家としての活動を再開しました。
来栖
来栖は本名や年齢が不詳の青年です。ZQNが騒ぎになる以前からZQN化した母を殺す動画をアップしており、動画の言動から多くの支持者を得るカリスマになりました。 クルスであった彼は一派を率いますが、同じくクルスの江崎に敗北。集合したクルスの一部となります。
おばちゃん
おばちゃんは来栖のアジトで家事を担当していた女性で、本名は不明です。風貌は普通のおばちゃんですが、ZQNであれば容赦なく首を切り落とす姿が印象的でした。 最終的におばちゃんは20代程度にまで若返り、島で子供を産んでいます。
『アイアムアヒーロー』の最終回は考えさせられる結末!
謎を多く残しながら、解釈を読者に任せる形で最終回を迎えた『アイアムアヒーロー』。読んでいた人の中には、衝撃を受けた人も多いのではないでしょうか。 時間が経てば、感じ方が変わる可能性もあります。1度読んだ人、もしくは映画しか観ていない人も、ぜひもう1度本作を楽しんでみてください!