2023年3月28日更新

【ネタバレ】『エゴイスト』あらすじと感想考察!原作は実話?献身的な愛は自己満足なのか

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『エゴイスト』(2023年)
© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

高山真の小説を原作に、映画『トイレのピエタ』(2015年)の松永大司監督により映画化した『エゴイスト』(2023年)。鈴木亮平と宮沢氷魚が格差あるカップルを演じ、「演技力がすごすごる」「とにかく泣けた」と話題を呼びました。 本記事では、そんな映画『エゴイスト』の結末までのネタバレあらすじや、感想、タイトルの意味についての考察などを紹介していきます!

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映画『エゴイスト』のあらすじ

斉藤浩輔(鈴木亮平)は、中学生の時に愛する母と死別し、田舎町でゲイである⾃分を隠しながら思春期を過ごしました。現在は上京して出版社でファッション誌の編集者として働き、プライベートも気ままで充実した日々を過ごしています。 そんな浩輔が出会ったのは、パーソナルトレーナーの中村龍太(宮沢氷魚)。2人は惹かれ合い、浩輔は自身の亡き母への想いを重ねるように、シングルマザーである母・妙子(阿川佐和子)を支える龍太をサポートします。しかし思いもよらなかった運命が彼らを襲い……。

映画『エゴイスト』の結末までのネタバレあらすじ

【起】どうしようもなく惹かれ合う

30歳を過ぎた身体を引き締めたい斉藤浩輔(鈴木亮平)は、仲間の紹介でパーソナルトレーナーの中村龍太(宮沢氷魚)に出会います。トレーニングで親しくなり、どうしようもなく惹かれ合った2人。 龍太はシングルマザーで病気がちな母・妙子(阿川佐和子)を支えながら働いており、浩輔は龍太に「お母さんに」と言ってお土産を持たせるようになります。 しかしある時、龍太は突然「もう終わりにしたい」と告げます。戸惑う浩輔が問いただすと、龍太は男性に身体を売っていると告白しました。

【承】深い愛と、満ち足りた時間

浩輔は連絡が取れなくなった龍太に会うために、客のふりをしてホテルで待っていました。取り乱す龍太に対して、浩輔は「俺が買うよ、専属の客になる」「一緒に頑張ろう」と伝えます。お金は受け取れないという龍太を説得し、2人は恋人に戻るのでした。 そうして龍太はウリの仕事を辞めました。浩輔が龍太に毎月10万円を渡し、足りない分は龍太がバイトをしてまかないます。昼は産廃処理、夜は食堂の皿洗いのバイトをこなす龍太は大変そうであるものの、母に仕事を隠さなくて良いと喜んでいました。 ある日、浩輔は龍太の家に招かれます。恋人だとは名乗れないため緊張する浩輔でしたが、妙子は温かくもてなしてくれました。それは母を亡くしている浩輔にとって、幸せで満ち足りた時間でした。

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【転】突然襲いかかる過酷な運命

妙子が体調を崩して手術を受けることになり、浩輔は2人に対して何かしてあげたいという思いが強くなります。 龍太は医療費を稼ぐためにバイトを増やし、ハードワークに疲れている様子でした。そんな龍太のために浩輔は車を購入することにします。 納車の日に車で海へ行く約束をした2人。しかし当日、約束の時間に龍太は現れませんでした。浩輔が電話をかけると、出たのは妙子でした。 「あの子、亡くなりました……。今朝ふとんの中で……」

【結末】愛とはなんなのか

龍太の葬儀で泣き崩れる浩輔を支えた妙子は、2人が恋人同士であることを知っていました。後日、浩輔は妙子を訪ね、今後もお金を受け取ってほしいと言います。お金を受け取っていたことを驚く妙子でしたが、これまでのことをなかったことにしたくない浩輔は必死にお願いするのでした。 それから浩輔が妙子のもとを訪ねることが増え、一緒にご飯を食べたり、いろいろな話をしたりして、親しくなっていきました。ところがある時、家を訪ねると妙子の姿がなく、妙子が入院していることがわかります。彼女はすい臓がんで余命わずかの宣告を受けていました。 龍太の時と同じく異変に気が付けなかったと悔やむ浩輔は「ごめんなさい」と謝ります。浩輔を慰めて、「愛してくれてありがとう」と言う妙子。「愛がなんなのかわからない」と返す浩輔に、妙子は「自分で分からなくても、私たちがそう思っているから大丈夫」と優しく言うのでした。 いつも見舞いに来る浩輔は、周囲から息子だと勘違いされるようになっていました。「天国では、浩輔さんのお母さんが龍太の面倒をみてくれてるわね」と笑う妙子。ラストで手を握りあう2人は、まるで本当の親子のようでした。

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映画『エゴイスト』の感想・評価

エゴイスト
© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
エゴイスト』の総合評価
4.25 / 2人のレビュー
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20代女性

こんなに泣くとは思ってなかったです。映画館でぼろぼろ泣きました。予想していなかった展開と、龍太のお母さんの温かい言葉が涙腺に……。ラストはしんみりしすぎず、胸にストンと落ちたのがまた良かったな。

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30代男性

俳優陣の演技が本気ですごい。映画の中のキャラクターではなくて、どこかに存在しているみたい。見た後にキャストやスタッフのインタビューを読むと、作品やLGBTQコミュニティにしっかり向き合っていて、その姿勢も素晴らしいと感じた。稀に見る良質な邦画だと思った。

【解説】映画『エゴイスト』はどこまで実話なのか

映画『エゴイスト』の原作は、エッセイスト高山真(たかやま まこと)の自伝的小説『エゴイスト』で、ほぼ実話です。 エッセイ『羽生結弦は助走をしない』などで知られる著者・高山真は、2020年にがんで亡くなりました。本人が「100%実体験である」と公言しているわけではないものの、小説を読んだ高山真の友人が「書かれた出来事はほぼ実話」と話しています。鈴木亮平が演じた浩輔のモデルが高山真です。 高山真は浩輔と同じようにゲイであることを周囲に隠していましたが、亡くなる直前に「自伝的小説が映画化するかもしれないということを含めてすべてをお話された」と担当編集者が明かしていました。 本人の文章で書かれた小説はもちろんですが、ドキュメンタリーのようなタッチで映像化された映画版も、リアルな空気感が伝わってきます。

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【考察】タイトル『エゴイスト』の意味とは?

タイトルの「エゴイスト」の意味は、直訳すると「利己主義者(自らの利益だけを求めて行動する人)」です。浩輔は、深い愛ゆえに龍太にお金を渡してウリをやめさせました。しかし結果的にハードワークをさせてしまいます。 自分を責めた浩輔は、自分の愛は「龍太を自分だけのものにしたい」「妙子と龍太に亡き母と自分を重ねて、奉仕することで欲求を満たしていた」という、ただのエゴだったのではないかと思ったのでしょう。 タイトルの『エゴイスト』とは、浩輔と著者・高山真が自分自身を表現した言葉ではないでしょうか。高山真が愛用していた香水の名もまた、シャネルの「エゴイスト」だったそうです。 しかし映画の後半は、「愛ではない」とは決して言えないもので溢れていました。セクシャリティに関係なく、人間の行為には必ずエゴが含まれるものなのだと考えさせられます。

映画『エゴイスト』をネタバレ解説・考察でおさらい

人のためにした行為が、本当は自分のための行為だったのかもしれない、と気付いたことはありませんか?映画『エゴイスト』は、「愛」と「エゴ」がいかに紙一重であるか考えさせられる作品です。 完成度の高い生々しい演技と、映像のリアルな空気感も見どころ。ネタバレ解説を読んでおさらいしたら、ぜひもう一度、愛とはなにかと考えながら鑑賞してみてください。