【ネタバレ】映画『インフィニティ・プール』結末の意味は?ラストのジェームズは本物なのか考察!
『X エックス』(2022年)のミア・ゴスと『ゴジラvsコング』(2021年)のアレクサンダー・スカルスガルドが初共演した『インフィニティ・プール』。 ホラー映画の巨匠、デヴィッド・クローネンバーグの息子ブランドン・クローネンバーグがメガホンをとった本作は、不気味な雰囲気に包まれたSFホラーに仕上がっています。 この記事では、『インフィニティ・プール』のネタバレあらすじから解説・考察などを紹介します。
映画『インフィニティ・プール』のあらすじ 【ネタバレなし】
公開年 | 2024年4月5日 |
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メインキャスト | ミア・ゴス , アレクサンダー・スカルスガルド |
監督 | ブランドン・クローネンバーグ |
スランプ中の作家ジェームズ(アレクサンダー・スカルスガルド)は、裕福な資産家の娘である妻エム(クレオパトラ・コールマン)とともに、高級リゾート地として知られる孤島を訪れます。彼はここで、新作のインスピレーションを得たいと思っていました。 そんなある日、ジェームズは彼のファンだという女性ガビ(ミア・ゴス)に話しかけられ、彼女の夫アルバン(ジャリル・レスペール)と4人で一緒に食事をすることに。意気投合した彼らは、観光客は行かないようにと警告されていた敷地外へとドライブに出かけました。しかし帰りに交通事故を起こしたジェームズは、国の奇妙な制度に救われます。
【ネタバレ結末】最後に生き残ったジェームズはオリジナルなのか考察
罪を犯してもお金を払う事で、自分のクローンを作成し代わりに罪を償わせることができるリゾート地が舞台の本作。 主人公のジェームズは交通事故で人を殺してしまい、この制度を使って自分のクローンが死刑になるところを目にしました。そこから、ジェームズはどんな罪を犯してもクローンに肩代わりさせればいいと考え、どんどん横暴になっていきます。 ある時、いつものように暴行していた誰かのクローンが自分自身のクローンであることに気が付いたジェームズ。正気に戻った彼は、リゾート地から逃げようとするものの、おかしくなってしまった彼の仲間に自らのクローンを殺すように唆されます。 彼は申し出を拒否しますが、ジェームズのクローンが襲ってきたため、やむをえずクローンを撲殺してしまいました。翌日、ジェームズは仲間と共にアメリカへ帰国することになりましたが......。
最後のジェームズはオリジナル?クローン?
アメリカ行きの飛行機を見送り、ひとり孤島に残ったジェームズ。ここで1つ疑問が出ます。彼はクローンを作る前のオリジナルのジェームズなのでしょうか?それともクローンなのでしょうか? この答えには、2つの解釈があると思います。 1つは島に残ったのはオリジナルのジェームズであるということ。狂気のバカンスを経験した彼は、もう元の自分には戻れないと感じ、島に残った可能性です。 もう1つは、生き残ったのはジェームズのクローンで、もともと倫理観を持っていないために島に残ったという可能性です。ジェームズは最初に死刑を逃れたあと、“人が変わったように”横柄に、暴力的になりました。これは、処刑されたのがオリジナルのジェームズで、生き残ったのがクローンと考えると簡単に説明がつきます。 また、ジェームズのクローンのうち、少なくとも1つは本人の知らないところで作られていました。こうしたことから、狂気のバカンスを生き残り、島にとどまったのはジェームズのクローンなのではないでしょうか。
【ネタバレ】映画『インフィニティ・プール』の詳細なあらすじ
【起】リゾート地での出会い
スランプから抜け出すため、妻のエムとともに高級リゾート地にバカンスにやってきたジェームズ。あるとき彼は、彼のファンだという女性ガビとその夫アルバンと出会います。2人で過ごしたがるエムをよそに、4人で食事をしたあと、彼らはドライブに行くことにします。行き先は観光客が過ごすことのできるリゾートの敷地の外でした。 警告されたにも関わらずドライブに出かけ、目的地のビーチでバーベキューを楽しむ4人。ジェームズが木陰で用を足していると背後からガビが忍び寄り、彼の性器をつかみます。思わず振り返った彼にガビは目もくれず立ち去りました。 その後、酔っ払った3人を乗せて運転していたジェームズは、車のライトが故障していることに気を取られて、男性を撥ねてしまいます。ガビはまずはリゾート地に戻ろうと提案し、4人は逃げるようにその場を去るのでした。
【承】富裕層だけに許された特権
翌日、ジェームズは警察に逮捕されました。この国では殺人は死刑ですが、独自の司法制度があると説明されます。それは罪を犯した者が裕福な場合、お金を払って自分のクローンを作成し、身代わりにすることができるというものでした。 エムの実家が裕福なため、ジェームズはクローンを作ることに。謎の赤い液体に浸かったジェームズは幻覚を見て気を失います。エムの声で目覚めた彼は、赤いゴムのようなものに包まれた自分のクローンを見学。エムが嫌悪感を隠せずにいるなか、クローンが突然目を覚まし、こちらを見つめてきたため、2人は立ち去りました。 死刑執行会場で多くの見物人が見守るなか、被害者の長男が柱に固定されたジェームズのクローンをナイフで何度も刺し、クローンは絶命します。それを見てなぜか笑みを浮かべるジェームズ。 クローンの骨壺を渡されたあと、エムは一刻も早く帰ろうとしますが、ジェームズはパスポートを失くしたと嘘をついて孤島にとどまります。
【転】狂気的な娯楽を楽しむ富裕層
滞在を1週間延ばしたジェームズは、ガビやアルバンと再会。そこで彼はジェームズと同じように死刑を免れた欧米人観光客たちを紹介されます。彼らは土産物屋を襲撃して仮面を手に入れた後、武装し、ある屋敷に侵入。住人を縛り上げて殺そうとしているところに、隠れていた男に反撃されたため、1人が負傷。 彼らはその場から逃げますが、翌日全員逮捕されてしまいました。そんな彼らの処刑を拍手をしながら見物するジェームズたち。ガビに紹介された観光客たちは、毎年このリゾートを訪れ、あらゆる凶悪犯罪を起こしてもクローンを身代わりにし、「自分」が処刑されるところを見て楽しんでいたのです。 再び「自分」の骨壺を持ってホテルに戻ったジェームズを見てエムは愛想を尽かし、1人で帰国していしまいました。落ち込むジェームズを慰めるガビ。2人は幻覚剤を服用し、激しいセックスをします。 彼らと出会ったことで、ジェームズは人が変わってしまいました。観光客にツバをかけ、リゾートのスタッフに暴言を吐くなど、横暴な性格になってしまったのです。
【結末】衝撃のラスト!ジェームズの選択とは
ある夜、ジェームズはいつものように仲間たちと幻覚剤を吸って、頭に袋を被せられた誰かのクローンをいたぶっていました。ガビが袋を取ると、それはなんとジェームズのクローン。正気に戻ったジェームズは、洗面所に隠してあったパスポートを手に逃げようとしますが、ガビが彼の脚を銃で撃ち抜きます。 ジェームズはアルバンが差し伸べた手を拒否しますが、今度はガビが犬のように首輪に繋がれたジェームズのクローンを連れてきて、このクローンを殺せば変身が完了して仲間になれると言い、彼にナイフを渡します。 ジェームズは拒否しますが、クローンが本当の犬のように襲ってきたため、何度も頭を殴ってクローンを殺しました。 次の日、アメリカへ帰るためにバスに乗り込んだジェームズたち。仲間たちはなにもなかったかのように帰国後の予定などを話していましたが、ジェームズは無表情でした。 彼は孤島に残ることを決め、アメリカ行きの飛行機を見送ります。バカンスのシーズンが終わり、風雨にさらされるビーチにジェームズはひとりで座っていました。
【解説】『インフィニティ・プール』のメッセージとは
『インフィニティ・プール』は、もし罰を受けないとしたら、人間はどこまで残酷で暴力的になり、堕落するかを描いています。 タガが外れた人間はどこまでも堕落し、快楽主義にのめり込み、人間性を失っていきます。ガビたちは、お金さえ払えば凶悪犯罪も許されてしまうリゾート地で享楽に溺れていました。倫理的な判断を「罰せられるかどうか」で決められるのであれば、「罰せられなければ、なにをしてもいい」と解釈する人もいるのです。 またジェームズは、自分にそっくりなクローンが処刑されるところを見て言いようのない興奮を覚えます。彼は否定される(殺される)自分と、それを見るている生きている自分の対比によって自尊心が満たされるのを感じていたのかもしれません。これは観客に自分の存在とはいったいなんなのか、生きる意味とはなにかを問うているのではないでしょうか。
映画『インフィニティ・プール』の感想・評価
見応えのある映像とそれにぴったり合った音楽、雰囲気づくりが抜群に良い。『パージ』に似たテーマではあるけど、登場人物のモラルの低下っぷり、それを余すところなく表現するミア・ゴスに魅了される。
前作『ポゼッサー』のほうが好きだった。設定は最高におもしろいのに、エログロを薬物でのトリップですべて済ましているのが浅い。ミア・ゴスやアレクサンダー・スカルスガルドの演技が魅力的なだけに、プロットが浅いのが残念。
映画『インフィニティ・プール』をネタバレ解説・考察でおさらい
鬼才の遺伝子が感じられるブランドン・クローネンバーグの新作『インフィニティ・プール』。エログロ満載で観る人を選ぶ作品ですが、そこには独自の魅力があります。 『インフィニティ・プール』は2024年4月5日(金)から公開中です!