【ネタバレあらすじ】映画『ドリームシナリオ』いたたまれない結末を考察！悪夢はどこまで現実だったのか

アリ・アスター＋A24スタジオ製作×ニコラス・ケイジ主演のドリームホラー『ドリーム・シナリオ』が、2024年11月22日から日本でも公開！この記事では、本作のあらすじをネタバレありで紹介し、気になる点を解説・考察していきます。

『ミッドサマー』(2019年)のアリ・アスターとA24が製作するスリラー・ホラー『ドリーム・シナリオ』。『リービング・ラスベガス』(1995年)でアカデミー賞主演男優賞を受賞したニコラス・ケイジが主演を務め、ノルウェー出身のクリストファー・ボルグリが監督・脚本を担当しています。 ニコラス・ケイジは本作の演技で、第81回ゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネート！自身も「キャリア史上最高の作品」と認めています。

特に有名でもなく、ごく普通に暮らしていた大学教授ポール・マシューズ(ニコラス・ケイジ)。しかしある日突然、何百万人もの人たちの夢の中にポールが現れて、一夜にして有名人になってしまいます。 いきなり人々やメディアに注目され、夢に見ていた自分の本の出版まで持ちかけられて、ポールは有頂天に。ところが唐突に、夢の中のポールが人々に様々な悪事を働くようになってしまい、現実の世界では大炎上！一転してポールは人々の恐怖の対象となって嫌われ者になり、悪夢のような日々が始まります。

妻ジャネット(ジュリアンヌ・ニコルソン)、長女ハンナ(ジェシカ・クレメント)、次女ソフィー(リリー・バード)の4人家族で平和に暮らしていた生物学の大学教授ポール・マシューズ(ニコラス・ケイジ)。 ある日友人のクレアに声をかけられ、このところずっとポールが夢に出てくるという話を聞きます。この話はクレアだけではなく、他の周りの人たちの夢にもポールが現れているよう。 クレアが夢のことを書いた記事にポールのSNSアカウントのリンクを張っていたため、何百もの人たちから「あたなが夢に現れた」という内容のメッセージが届いていました。驚いたポールはその場に倒れてしまいます。

この現象はメディアにも取り上げられ、ポールは一躍有名人に。教室でも生徒たちから拍手で迎えられたポールはにわかにセレブになったような気持ちになります。 生徒たちもポールの夢を見ていましたが、彼はどんな夢の中でも“ただ見ているだけ”の傍観者だったようで、ポールは少しがっかり。ジャネットは彼の夢を見ておらず、もし現れたらかっこいいスーツを着て自分を助けてくれる夢が見たいと言います。 ポールの存在を知ったマーケティング会社のトレント(マイケル・セラ)、メアリー(ケイト・バーラント)、モリー(ディラン・ゲルーラ)が彼を招き、ポールの夢には広告力があると契約に誘います。しかしポールは自分の本が出版したいだけだと断るのでした。

夢のおかげでセレブ気分を味わっていたポール。しかしソフィーが見る夢の中のポールは、部屋に荒々しく踏み込んでくるようになってしまいます。ポールの生徒たちも彼に襲われたり、殺されたりする悪夢を見るように。 ポールの顔を見たくないという理由で講義にはほとんどの生徒が欠席するようになり、校長には嫌味を言われ、ジャネットの友人にも避けられるようになります。レストランで食事をすれば他の客が嫌がり、ついにはソフィーも学校の劇に出ないよう言われてしまうのでした。 ジャネットは職を失いかけ、ソフィーは学校でいじめられ、ポールの車も落書きされ、それを見て激怒している動画も大炎上。さらにポール自身もランニング中にクロスボウを持った男に襲われますが、それは世界中の人の夢に現れるポールでした。

首を射抜かれて死んだと思った途端、それが夢だったことに安堵したポール。しかし人々が感じた恐怖を自分も体験したため、謝罪のビデオを撮って公開します。ところが自分も被害者だと主張したことが酷評され、ジャネットにも批判されてしまいました。 ソフィーの劇をこっそり見ようと学校へ忍び込みますが、先生に止められてもみ合ううちに先生が小指をドアで切断する大惨事に。ソフィーが舞台の中央で大泣きしている横で、保護者に捕まったポールは外へ連れ出されました。 結局ポールは家族と別れて町を出ますが、その途端に人々はポールの夢を見なくなりました。この騒動がきっかけで「NORIO」という夢旅行機器が開発され、人の夢から夢へ渡り歩くことが可能に。ポールはフランスで自伝を出版しますが、あまり売れませんでした。 ポールはNORIOを使ってジャネットの夢に入り、スーツ姿で望み通り彼女を助けますが、「これが現実だったらいいのに」と呟くポールは空に浮いていきます。ジャネットが目を覚ましたのでした。

本作で描かれる一夜にしてセレブからの転落劇は、現代のキャンセル・カルチャーを風刺しているようです。キャンセル・カルチャーは2010年代にSNSの広がりとともに見られるようになった現象で、名のある人物や企業などの言動を糾弾し、不買運動やボイコットなどを起こすこと。 劇中ではSNSではなく人々の夢がそのツールとなっていますが、まさにポールはこのキャンセル・カルチャーを経験することになります。普通の人がセレブに祭り上げられ、(彼自身は何もしていないのに)悪夢を彼のせいにして糾弾し、彼自身を“キャンセルする”という流れは恐怖しか覚えません。 ポールの人生と結末が悲哀に満ちたものであればあるほど、この風刺は功を奏しているといえます。

もう1つのテーマとして、夢のサブリミナル効果とその広告力があります。劇中ではマーケティング会社がポールの夢の広告力に目を付け、企業と契約させようとしていました。 本作は2009年頃から始まったネット・ミームの「This Man」騒動を彷彿とさせますが、この騒動も実は「ゲリラ・マーケティング」の一環だったことがわかっています。 ラスト近くでポールの夢騒動をきっかけに「NORIO」という夢旅行機器が開発されたことが語られますが、これこそ夢のサブリミナル効果と広告力をつなげる装置になり得るもの。どうやらポールの悪夢は、より商品を売ろうとする資本主義社会に対する警告にもつながっているようです。

アリ・アスター×A24製作のスリラー映画『ドリーム・シナリオ』は、2024年11月22日から劇場公開がスタート。ニコラス・ケイジが最高の演技を見せているというもの気になります！ぜひ映画館でご覧ください。